No.549340

IS-インフィニット・ストラトス ネクサス ディナータイムーDinnertimeー

ザルバさん

蘭の学園祭が終わり、一夏はホテルに向かおうとしていると憐に呼び止められた。

2013-02-27 19:40:06 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2657   閲覧ユーザー数:2584

 蘭の学園の学園祭が終わり、一夏はホテルの方に向かおうとしていた。

「あ、あの、一夏さん。」

「ん?」

「きょ、今日はありがとうございました。」

「いいって。それに招待してくれてありがとな。」

「い、いえ。私のほうも招待してもらったのですからこれは当然です。」

「そうか?」

「そうです。」

「ふ~ん。そういうもんか。」

「ええ。ところでこれから何処か行く予定なんですか?」

「ああ。ちょっとホテルにな。」

「あ!それって確か箒さんと一緒に取材した報酬でもらったヤツですよね。」

「まあな。」

「ちょっと羨ましいです。」

「まあ金と機会があったら行けるよ。」

「そういう問題じゃないんです!」

「?」

「まあ一夏さんだから仕方ないんですけど・・・・・・・・・気をつけていってくださいね。」

「ああ。」

 一夏は学園を後にし、ホテルに向かった。

 

 憐が紙袋を持ちながら道を歩いていると一夏の姿見た。

「ん!一夏じゃん。」

 憐は一夏に駆け寄る。

「おーい、一夏。」

「憐さん!どうしたんですか?」

「見かけたから話しかけてみたんだ。どこに行くつもりだ?」

「このホテルに行くつもりです。」

 そう言って一夏は携帯電話の画面を見せる。

「ここってスーツいるぞ。」

「ああ、やっぱり。」

「丁度良かった。これからIS学園に行こうと思ってたところなんだが・・・・・・・てかどうやってここに来たんだ?」

「こいつのおかげです。」

 一夏は憐にエボルトラスターを見せる。

「そっか。じゃあそこの店で着替えようぜ。」

「え!いいんですか?」

「状況が状況。仕方ないだろ。」

「そういうもんですかね?」

「そういうもんだって。さっさと済まそうぜ。」

 一夏は憐に背中を押されて店へと入れられる。

 数分後

 一夏は黒を主張としたスーツに赤ネクタイを締めていた。

「結構に似合っているじゃん。」

「そ、そうですか?」

「それとこれ。」

 憐は一夏にカードを渡す。

「なんですか、これ?」

「さっき福引きで手に入れた花屋の券なんだがな。花束と交換できるらしいか使えよ。」

「え!でも・・・・・」

「瑞生はあまり高価なものを好まないから持ってても意味無いんだって。それにホテルでも待ってるかもしれないだろ。だから男が花束を贈るのは当たり前だろ。てか基本な。」

「はあ・・・・・」

「と、言うわけで行って来い。」

「は、はい・・・・・・」

「これはおれがIS学園に持っていくから心配するな。」

「悪いですって。」

「いいっていいって。お前も大変なんだろ。これくらいはやってやるから。早く行け。」

「・・・・・・・・・・わかりました。」

 一夏は憐に一礼して花屋の方へ向かった。

「憐。」

「瑞生!」

「あんな嘘ついてよかったの?」

「なんのこと?」

「とぼけても無駄よ。雑誌社の人から聞いてたの見たんだから。」

「ありゃま。」

「後輩思いもいいけど程ほどにね。」

「はーい。」

「じゃあ一緒に行こうか、IS学園。」

「助かるよ、瑞生。」

憐と瑞生は手を繋いでIS学園の方へと向かって行った。

 

「・・・・・・・」

 ホテルから夜景が一望できる窓際の席に放棄は赤いドレスを着て一夏を待っていた。

 とういのもこのホテルはスーツかドレスではないとは入れない店であるからである。 箒は女性であるため店側からドレスを借りている。

(な、なかなか慣れないな。こういう服は・・・・・・・・やはり私には和服が似合うな。)

 そう思いながら待っていると後ろから声をかけられる。

「箒、遅れてすまん。」

「一夏、遅い・・・・・」

 振り返った瞬間箒の時間が止まった。スーツを着た一夏の姿を見て箒は見とれる。

(か、格好いい・・・・・)

 言うつもりだった文句は何処かへ行き、もう手元には残っていない。

 ぼーっと一夏を見つめていると花束を手渡された。

「これ、受け取ってくれ。」

「こ、これは・・・・・バラ、か・・・・・・・?しかも赤一色・・・・」

 箒は乙女の夢である異性からの赤いバラを受け取り、箒は内心混乱していた。

(い、一夏が遅れて、私は怒っていて、落ち着かなくて、そしたらやっと一夏が来て、いきなりバラの花束を渡されて・・・・・・)

 なにがなんだかわからない。

 わからないまま立っていると老紳士のウェイターに着席を促された。

「それでは、当店のスペシャル・ディナーにようこそお越しくださいました。」

 丁寧にお辞儀をされ、一夏と箒は遅れてお辞儀をする。

「基本的にコースメニューで順番にお料理を出させていただきます。お二人は未成年なのでアルコール類は出せません。代わりにミネラル・ウォーターをボトルで提供させていただきます。」

 箒は 緊張していていまいち理解しない顔で頷く。一夏は平常心で聞いている。

 それからまだ少し説明が続いて、やっとウェイターから解放された二人は自然に深くため息を吐いた。

「な、なんというか・・・・・・あれだな、場違いだな。」

「まあな。こういうのはしばらくしたらあるだろうし慣れておかないとな。」

 他のテーブルを見ても、いるのは大人ばかり。それも普通の大人というよりは間違いなく上流階級の大人達だった。

(それにしても・・・・・)

 テーブルに置いたバラの花の束それからスーツを着ている一夏。普段より大人びている一夏、箒は一言―――――――『素敵』だった。

(ど、どうしてこいつは、大人の男の服がこうも似合うんだ・・・・・)

 学園祭で着ていた執事服もそうだ。とにかくびしっとした格好の服を着こなすのがうまい。

(わ、私は・・・・・見劣りしていないだろうか・・・・・・)

 自分のドレスを見下ろす。

「箒。」

「な、なんだ一夏!」

「そのドレス―――」

「!!」

「すごく似合っているぞ。」

「あ・・・・・・・」

 箒の心臓が弾む。

「そ、そうか。それは、何よりだな。」

 なんでもない風を装って、咳払いを一つする。けれどその胸は今にも張り裂けそうな高鳴りをし、箒は自分でも顔が赤くなっているのがわかっていた。

(しょ、証明が暗くて助かった・・・・)

 それから料理が順番に運ばれてくるも、箒は味がわからなかった。

 むしろ喉を通るのが不思議なくらい箒は一夏にドキドキしていた。

「さすが一流ホテルだな。どの料理も美味い。」

「そ、そうだな。」

 だか箒は味などわかるはずもなかった。その下人は言うまでもなく一夏であるからである。

 箒は一夏を上目使いで睨む。

「ん?」

「っ・・・・・・・」

 箒の対応に一夏は笑顔で返してくる。箒は耳まで赤くなる。

 一夏は格好良くて、素敵で、正面から顔を見れなくなっていた。

(い、今だ・・・・・・今しかない・・・・・。こ、こっ、告白するんだ!)

 自分の想いを伝え用と意気込むがその勇気が出ない。焦った箒は、景気づけにテーブルの上のグラスに手をとって一機に中身を飲み干す。

「い、い、一夏!」

「ん!」

「わ、わっ、私は―――」

 箒が一夏に向け告白しようとした瞬間であった。

「はれ?」

 突然身体の力が一機に抜ける。箒はイスにもたれぐっすりする。一夏は箒立ち上がって箒の側に移動する。

「箒、どうした、おーい。」

「ふにゃ・・・・いひかぁ・・・」

 ん!この匂い・・・・・・・・・まさか!

「お客様、どうかされましたか?」

 ウェイターが駆け寄ってきた。

「いや、グラスに入っている水を飲んでみたら・・・・・」

「水・・・・・?失礼」

 ウェイターは空のグラスを手に取り、匂いをかぐ。

「誰だ、このお客様にお酒を出したのは!?」

「ああ、やっぱこの匂い、お酒か。」

「おしゃきゅぇ?」

「は、はい!自分です!」

「またお前か!運ぶテーブルを間違えるなと何度言ったら・・・・」

 若者にがみがみ起こるウェイター、若者はぺこぺこ頭を下げている中、一夏は箒を見てため息をつく。

 

 真夜中の帰り道、一夏は箒に上着をかぶせお姫様抱っこで帰っていた。

「まああの店員若かったから間違えんのは仕方ないか。でもまさか箒がお酒に弱いとは思わなかったな。」

 あなたもですよ。弱い酒に弱いんですけど。

「い、いひか~~~~~。」

「まだ酔ってる。」

「・・・・しゅき・・・・・」

「?」

 

「じゃあ鷹月さん、後よろしく。」

「わかったわ。でもまさかこんな真夜中にこういう服で戻ってきたなんてね。」

「なんにとか他の女子には見られないように木の上跳んだよ。」

「相変わらず人間離れしているね。じゃあおやすみ。」

一夏は鷹月と別れ、自室に戻ろうと廊下を歩いていると千冬とばったり会った。

「ん!織斑か。丁度お前に渡すものがある。」

 そう言って千冬は一夏に紙袋を手渡した。中には一夏がきていた私服が入っていた。

「憐さんが来たんだ。」

「あの男が憐か。なんか女性と一緒だったぞ。」

「ああ、多分それ彼女の瑞生さんだ。」

「で、どうだった?人生初めてのホテルでの食事は?」

「なんていうか・・・・・緊張したし、場違いって感じもしたな。」

「そうか。だがこれからそういう経験も多くなるだろうから慣れておけ。」

「はい。」

「ところで織斑。」

「はい?」

「黛から聞いたんだが、左肩怪我でもしたのか?」

「え!?」

「お前が黛を支えたときに肩を庇ってたといってたからな。大丈夫か?」

「・・・・・はい。ちょっと自主トレしているときに肩を打撲したんで。」

「そうか。気をつけろよ。」

「はい。」

 一夏は一礼してその場を去った。

 

 まああいつがあんなヘマするとはな。だが、もし嘘をついているのなら・・・・・・・・・・・・いや、よそう。私も人のことは言えん。

 千冬は一夏に話してないことが一つあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一夏が誘拐されたあの日、千冬は一人の、家族になるはずだった子を見殺しにしたことを。

 


 
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