「すいません、ここはどこでしょう?」
その子はこちらを見て言う。
「どこって?」
俺は動揺していた。
刀を抜いたら、女が出てきた?
そんなことありえない。
しかし、刀は鞘だけが残っていて、刀身のほうがなくなっている。
「おばあちゃんはどこですか?」
その子は赤い着物を着て、髪の毛を小さく一つに結んでいた。
円らな瞳が愛らしい。
しかし今にも泣きそうに見つめてくる。
俺は恐る恐る聞いた。
「おまえは誰だ?もしくはなんだ?」
その子はびくっと肩を震わすと、うっすらと目に涙を浮かべる。
泣かしてしまった。
「すまん、驚かせたなら謝る。」
驚いたのはこちらだが。
その子の視線まで腰をおろして言う。
「俺はお前が思っているほど怖くない。」
自分で言って嘘くさいと思った。
俺は確かに悪人顔をしているからだ。
「えーっと、あなたは誰でしょうか?」
その子は恐る恐る、必死で泣くのをこらえるように、俺の手の中にあった鞘を指差して言った
「私はその中に入っていた刀ですが、何であなたが私を抜いたのですか?」
「は?」
「ひいっ、スイマセンすいません。」
その子は泣きながら謝る。
俺はどんだけ怖い顔をしてるんだ。
「もしかして、おばあちゃんって師匠、ってえーっと、香織さんのことか?」
頬をかく。
名前では言い慣れていない。
その子は「はい、」と頷く。
「そして刀って言うのは?」
額に手を当てる。
嫌な予感がひしひしとする。
あの師匠めふざけるな。
「私はその鞘に入っていた刀です。さくらって呼んでください。」
あー
…
やっぱり?
「俺は相良流人だ。」
とりあえず考えることを放棄した。
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http://www.tinami.com/view/53826 の続きです。と言っても、別にここからでも読めます。
五分小説です。
読んでやってください。