No.54549

刀と ~2

さん

http://www.tinami.com/view/53826 の続きです。と言っても、別にここからでも読めます。

五分小説です。
読んでやってください。

2009-01-27 18:33:11 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:765   閲覧ユーザー数:740

「すいません、ここはどこでしょう?」

その子はこちらを見て言う。

 

「どこって?」

俺は動揺していた。

刀を抜いたら、女が出てきた?

そんなことありえない。

しかし、刀は鞘だけが残っていて、刀身のほうがなくなっている。

 

 

「おばあちゃんはどこですか?」

その子は赤い着物を着て、髪の毛を小さく一つに結んでいた。

円らな瞳が愛らしい。

しかし今にも泣きそうに見つめてくる。

 

俺は恐る恐る聞いた。

「おまえは誰だ?もしくはなんだ?」

 

その子はびくっと肩を震わすと、うっすらと目に涙を浮かべる。

泣かしてしまった。

 

「すまん、驚かせたなら謝る。」

驚いたのはこちらだが。

その子の視線まで腰をおろして言う。

「俺はお前が思っているほど怖くない。」

自分で言って嘘くさいと思った。

俺は確かに悪人顔をしているからだ。

「えーっと、あなたは誰でしょうか?」

 

その子は恐る恐る、必死で泣くのをこらえるように、俺の手の中にあった鞘を指差して言った

「私はその中に入っていた刀ですが、何であなたが私を抜いたのですか?」

 

「は?」

 

「ひいっ、スイマセンすいません。」

その子は泣きながら謝る。

俺はどんだけ怖い顔をしてるんだ。

 

「もしかして、おばあちゃんって師匠、ってえーっと、香織さんのことか?」

頬をかく。

名前では言い慣れていない。

 

その子は「はい、」と頷く。

 

「そして刀って言うのは?」

額に手を当てる。

嫌な予感がひしひしとする。

あの師匠めふざけるな。

 

「私はその鞘に入っていた刀です。さくらって呼んでください。」

 

あー

やっぱり?

 

「俺は相良流人だ。」

とりあえず考えることを放棄した。


 
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