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真・恋姫無双 三人の天の御遣い 第二章『三爸爸†無双』 其の十九

雷起さん


得票数19の数え役満☆シスターズのお話です。
天和、地和、人和と三ヶ月連続で懐妊するお話+おまけ二本となります。
シスターズと一緒にオリキャラの炙叉も懐妊します。

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2013-02-10 08:13:25 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:3528   閲覧ユーザー数:2747

 

 

第二章  『三爸爸†無双』 其の十九

 

 

房都 天下一品武闘会会場 門前       (時報:桂花一人目 金桂生後一ヶ月)

【董の兄ぃturn】

 門前の掲示板前に人垣が出来ている。

 今現在、掲示板に書き出されているのは武闘会に関する物ではない。

 その内容は・・・・・。

 

『今月予定されていた数え役満☆シスターズの公演は天和さんが急病の為中止となりました。何卒、ご了承下さい。つきましては、払い戻しを・・・・・』

 

 と云う事が書かれている。

 この会場は数え役満☆シスターズのライブにもよく使われるのだ。

 私は集まっている人達の声に耳を傾ける。

 

「天和ちゃんが病気じゃしょうがないよなぁ・・・」

「早く良くなってくれるといいけど・・・」

「知ってるか?なんか噂じゃ、病気は病気でも・・・」

「あれは醜聞をでっち上げる事で有名な瓦版屋の記事だろ?」

「いや、それが次に出る『風来出(ふらいで)』の記事にもなるらしいぞ!」

「なにい!あの特ダネを載せるので有名な瓦版が!?」

「じゃあ天和ちゃんの病気って腹の膨れる・・・」

「や、やめてくれえええええええええええええっ!!」

「あ、相手は誰なんだっ!!」

「そんなの決まってる・・・・・」

 

『あの種馬だっ!!』

 

 私はこっそりと人垣から離れ本城に向かった。

 

 

 

「マズイな・・・・・もう既に噂になっていたぞ。」

 本城の光禄勲執務室に戻った私は北郷親衛隊の仲間たちに報告をした。

「やはり箝口令を出しても余り効果が有りませんでしたね。」

 インテリが腕を組み、深刻な顔で言った。

「兵の殆どがシスターズのファンだからな・・・・・自棄酒(やけざけ)呑んで口が滑ったんだろ。」

 その気持ちは良く解る・・・。

「俺達も他人の事は言えないけど・・・・・あいつ程じゃないからな・・・」

 そう言った尻好きが見た先には、追っかけが居た。

 

「・・・天和ちゃんが・・・天和ちゃんが・・・天和ちゃんが・・・・・・」

 

 力なく椅子に体を預け、虚ろな目で天井を見ている

 こいつは元黄巾党だ。しかもかなり初期からのファンだったと本人の口から聞いた事が有る・・・・・。

「しっかりするのだ、追っかけ!」

「俺と兄者は天和ちゃん派だが堪えているぞ!お前は人和ちゃん派だと言っていたではないか!」

 袁家兵の兄者と弟者の言葉に追っかけが凄い形相で睨み返す。

 

「オレは確かに人和ちゃんが一番好きッスが、天和ちゃんと地和ちゃんも好きなんッス!!」

 

 追っかけの剣幕に私達全員がたじろいだ。

「今までは敢えて考えない様にしてたッスが、こうして現実を突きつけられたら・・・・・天和ちゃんが・・・か・・・かか・・・懐妊したと云う事は・・・・・・・・いずれ地和ちゃんと・・・人和ちゃんも・・・・・・・うがああああああああああああああっ!!」

 いかん!自分の想像に拒絶反応を起こしているっ!!

「取り押さえるんだっ!!」

『応!!』

 のたうち回る追っかけを押さえつけ、舌を噛まないように口に布を突っ込んだ。

 私は追っかけの腕を押さえながら北郷親衛隊の仲間に話しかける。

「追っかけですらこの状態だ。街中でも暴動が起きるのは時間の問題だぞ。」

「早いところ上奏して、対策を練ってもらわないといけませんね。」

「上奏って・・・・・・・誰に?」

 私達は北郷様たちの直属扱いになっている。

 三人の北郷様に報告するのが本当なのだろうが、北郷様たちの性格を考えると自分たちで説得すると言い出しかねない。

 あんな状態の民衆の中に北郷様たちが現れたら、火に油どころか火薬を放り込むようなものだ。

 では、親衛隊を束ねる光禄勲、呂布将軍の所か?

 それとも都の治安を担当する執金吾の孫策様の所か?

 呂布将軍は妊娠八ヶ月の身重だし、孫策様も先日ご出産なされたばかり・・・・・いや、あのお二人ならそれでも出動されるだろう。

 むしろ問題はお二人に任せた時の対処法だ。

 有無を言わさず即殲滅・・・・・・・・ダメだ、やはりここは軍師のどなたかにまずは報告すべきだ。

 そうなると・・・・・。

 

「やはり丞相様・・・諸葛亮様に報告すべきだな。」

 

 

 

 

同時刻

本城 後宮天和個室

【天和turn】

「一刀ぉ~、次はそっちのお菓子が食べたいなぁ。」

「はいはい、あ~ん。」

「あ~ん♡」

 えへへ♪やっと一刀たちに甘えられた~♪

 懐妊の報告した後で、すぐに一刀たちに甘えられるかと思ってたのに、華琳さんのお話とかお引越しとかで全然そんな暇なくて三日もかかっちゃった。

 しかも一刀たちを独り占めできるの、今日だけなんだから思いっきり甘えちゃうんだぁ~♪

「なあ、天和。俺たちの事を華琳から聞いたんだろ?・・・・・・その・・・」

「気にしない、気にしない♪一刀たちの過去がどうでも、一刀は一刀♪わたしだって妖術使いで黄巾党の元首領でアイドルで・・・・・でも今はお嫁さん♡」

 一刀たちも本当は気にしてるんだ。

 華琳さんも言ってたけど、一刀たちを幸せな思い出で一杯にしてあげるんだから!

「お姉ちゃんに任せなさい♪」

「「「え?何を?」」」

「うふふ♪とりあえず今は元気な赤ちゃんを産むことかな。一刀たちって子供が好きでしょ、何人だって産んであげるね♪」

「「「・・・・・ありがとう、天和。」」」

 一刀たちが私を抱き寄せてくれた。

 暖ったかいなぁ・・・・・。

 幸せな気持ちになったら自然と歌を口ずさんでた。

 私はしばらく、一刀たちの温りの中で歌を謡い続けた。

 

 

 

 

本城 丞相執務室

【インテリturn】

 我々の目の前に諸葛亮様と龐統様・・・・・・と曹操様が居いらっしゃいます。

 天女様に会いに来たら一緒に天帝様まで居たと云う様な状況です。

「成程。状況は理解したわ。」

 相変わらずの存在感と威圧感に、顔を上げていられない程です。

 北郷様たちが曹操様と普通に接する事が出来るだけでも凄い方だと改めて実感しますね。

「はわわ!どうしましょう、華琳さん!このままでは黄巾の乱がまた起こってしまいますよ・・・」

「大丈夫、張三姉妹を私の所で保護した時から、こうなる事は想定済みよ。」

 紫北郷様をシスターズの管理人にする時点でこうなる事は、私にも想像はできます。

 しかしその対策は私にはとても考えつきません。

「あ、あの・・・・・できるだけ穏便な解決を・・・」

 龐統様のお優しいお心遣いに胸が熱くなります。

「ええ、勿論そうするつもりよ。現在の兵の半数以上は張三姉妹が集めたものだし、今では古参の兵の大半も彼女達の“ふぁん”なのだから。それこそ貴方達みたいにね。」

 私が恐る恐る顔を上げると、曹操様が微笑んでおられた。

 諸葛亮様や龐統様とはまた違ったその微笑みは、絶対的な安心感を私に与えてくださいました。

 貧乳党曹操様派の同志が『この微笑みの為なら命を掛ける』と言っていましたが、その気持ちが今なら良く解ります。

「そこでイモムシみたいに縛り上げられてるのが、丁度良い見本になりそうだし。」

 曹操様が示された先に居るのは追っかけ君です。

 この場で暴れだす事は無いでしょうが、縄を解くのが面倒・・・いや、時間が惜しかったので運んだ時のままにしてあります。

「ちょっと耳を澄ましてみなさい。」

 曹操様に言われ、この場に居る全員が耳に意識を集中しました。

「歌が聞こえますね・・・」

 諸葛亮様が小さく、そして優しい声でそう仰いました。

「天和ちゃんの歌声ッス・・・・・」

「そうね・・・・・貴方ならこの歌に込められた天和の気持ちが解るわね。」

「・・・・・・・・・天和ちゃんは・・・・・今とても幸せなんッスね・・・・・」

 追っかけ君が涙を流して唇を噛んでいます・・・・・。

「自分は今までライブの時に、張三姉妹から勇気や幸せをたくさん貰ってきたッス・・・・・その恩を返す時が来たんスね・・・・・」

「よくぞ言ったっ!追っかけ!!」

「漢だ!今こそお前は『漢』になったのだっ!!」

 兄ぃと尻好き君が一緒に涙を流し、縄でグルグル巻の追っかけ君の肩を抱いて讃えています。

「これで対策は決まりね。今回の“しすたーず”の公演は予定通り開催!但し料金は無料とする様に関係者に通達しなさい!」

 確かにこの歌ならば事態を一気に終息させる事ができます!

 我々は心の底からの敬意を以て曹操様に返答しました。

 

『サー・イエス・サー!!』

 

 

 そして、曹操様の読み通り、事態は解決しました!

 

 しかし・・・・・それはひと月しか保ちませんでした・・・・・。

 

 

 

 

本城 後宮談話室            (時報:桂花一人目 金桂生後二ヶ月)

【地和turn】

「赤ちゃん達みんなカワイイなぁ~♪ちぃも早く産みたい♪」

 今月生まれた祭さんの子の宴ちゃんなんてホントちっちゃいんだもん。

「地和ちゃんの赤ちゃんだったらスッゴイ可愛い赤ちゃんだよ、きっと♪」

 そう言ってくれたのは羌族王の炙叉。

 炙叉も今回の検診で懐妊が分かって、ちぃと一緒に後宮に今日引っ越して来た。

 炙叉と涼州の冥安で初めて会ったときは、敵軍の王で凄い妖術使いだからって警戒してたけど、話をしてみたらちぃ達のファンだって言うしお洒落なんかの話で盛り上がるし、すぐに打ち解けちゃった。

 炙叉が都に来てからはライブの舞台で妖術を使う演出を手伝ってくれたりして、今では親友って感じになってる。

「ふっふ~ん♪その自信は有るわね!でも、炙叉の赤ちゃんだって絶対カワイイって♪これはちぃが保証しちゃうよ!」

「あはは♪ありがとう♪」

「本当に二人は仲がいいなあ。」

 今までちぃと炙叉の会話を聞いていた紫一刀が嬉しそうな顔でそう言った。

「俺が言うのも何だけど、二人揃って懐妊って不思議じゃないか?」

「それにはちょっと理由が有ってネ~。」

「御子様。実は今星の巡りが良くって、私らみたいな妖術使いの運気が上がってるのよ。」

 炙叉ったら、そんなすぐにバラしたら面白く無いじゃない。

「へぇ、そういうのって有るんだなあ・・・」

「聞きましたか、炙叉さん?今のはちぃ達の存在意義を疑問視する発言ですよ。」

「全くですね、地和さん!ここは一つ我々二人で妖術の素晴らしさを再認識させる必要が有りそうですよ!」

 こういう炙叉のノリの良さが、ちぃと気が合うトコなんだよね♪

「え?ちょっと?何をする気だ・・・・」

「ちぃと炙叉の分で二日間は一刀たち三人を自由に出来るからねぇ~♪」

「緑と赤の御子様が戻ってくるまでは、お一人で頑張って頂きますよ♪」

 まあ、実際にはちぃ達が甘えるだけなんだけ、ちぃ達の運気が上がってるから一刀たちにもいい影響が有るはずだもんね♪

 

 

 

房都 天下一品武闘会会場 門前

【尻好きturn】

「おい!来てみろ!掲示板にシスターズの特別公演の案内が出てるぞっ!!」

「何だってっ!?地和ちゃんと人和ちゃんだけで舞台をやるのか!?」

「いや、ここには三人とも謡うって書いてあるぞ。」

「でも天和ちゃんは先月の舞台の時・・・」

「そ、それ以上言わないでくれ!ようやくその現実から逃避できそうなんだっ!!」

 

 今回は俺が様子を探りに来ている。

 噂が立つ前に対処したけど・・・・・曹操様が言う通りこの手はもう使えないな。

 先月が天和ちゃんで今月が地和ちゃん・・・・・来月はきっと人和ちゃんだろう。

 北郷様たちってこの手のお約束を外さないからなぁ・・・・・。

 

 

 

 

本城 皇帝執務室

【人和turn】

「か、一刀さん・・・・・私も懐妊できました・・・」

 

「「「うん♪ありがとう、人和!」」」

 

 うわぁ・・・先月、先々月と姉さん達が連続で懐妊したから期待されてたみたい・・・。

 それは私自身もだけど。

「これで本当に数え役満☆シスターズは暫く休業だな。」

 紫一刀さんが少し寂しそうな顔をした。

 黄巾党の張三姉妹ではなく、数え役満☆シスターズとして復活できたのは紫一刀さんのおかげ・・・・・きっとあの頃を思い出してくれているんだわ・・・。

 戦でも謡ってみんなを励ます事ができると教えてくれた。

 黄巾党の頃の罪滅ぼしができている事を実感させてくれた。

 ありがとうと口にするのは簡単だけど、私は歌手だ。

 感謝の気持ちは全て歌にのせて伝えたい。

「大きな舞台はお休みだけど・・・・・これからは後宮が数え役満☆シスターズの舞台よ。一刀さん♪」

「おお!流石プロだ。頑張れ、人和!」

「ふふ♪これからは謡っている時に必ず一人は聞いてくれてる相手がいるんですもの。常に本気の歌を謡わなくちゃ。」

 私はお腹に手を当てて宣言した。

「胎教・・・と言うか英才教育みたいだな。人和はその子も歌手にしたい?」

「う~ん・・・・・歌の楽しさと素晴らしさを教えてあげたいとは思う・・・でも、歌手になるかは本人の意志を尊重してあげたい。」

「そうだよな。強制して歌が嫌いなったら可哀想だ・・・・・なんか、早くも媽媽してるな、人和は。」

「あの姉さん達と一緒にいたら、嫌でも現実的になっちゃいますよ。」

 私は笑ってそう答えた。

 一刀さんにはああ言ったけど・・・・・自分の子供と一緒に舞台に立てたら楽しいだろうなぁ♪

 

 

 

 

二日後

【紫一刀turn】

 

『君も挑戦!北郷一刀を探せ!!』

[今、都に三人の北郷一刀が隠れているよ。見つけたら石をぶつけたり、棒で突っついて追い立てよう!

え?そんな事をして大丈夫かって?

それは王、将軍、軍師全員が了承してくれてるから安心だよ!

ただし、期限は今日の日没までだ!溜まった鬱憤を爆発させようぜ!

君は上手く見つけられるかな?

みんなガンバレ!]

 

 こんな立札が街のあちこちに立てられている。

 ご丁寧に可愛いイラストまで付いて・・・・・。

 この状況に至った経緯は華琳から説明してもらった。

 天和の時とちぃの時に、ファンの動向の報告が無かった事に何で気が付かなかったんだろうな、俺たち・・・・・。

 二人が懐妊した後にやったライブが、ファンの怒りを鎮める為の物だったとは・・・・・流石に三ヶ月連続ではライブじゃファンの気持ちも治まらないだろうし、何より天和とちぃのつわりが始まってライブなんてとても無理だ。

 みんなを守る為なら何でもやると決めたんだ!

 日没まで逃げ切ってみせるさ!詠の『不幸』を引き受けるので慣れてるから、これくらい大丈夫だ!

 ・・・・・・と、自分に言い聞かせる。

 兎に角、これはファンの気持ちを鎮める任務だ!

 隠れていてもしょうがないので通りに出るか・・・・・正直、怖いです・・・・・。

 あれ?あそこに居るのは天和、ちぃ、人和、それに炙叉と・・・白蓮だ!

 シスターズの三人は変装してるけど、俺が見間違える事は無い。

 あ、向こうも俺に気が付いたな。

 五人が俺に駆け寄って来てくれる。

「ごめんなさい、一刀さん・・・こんな事になってしまって・・・」

 人和の優しい言葉に涙が出そうだよ。

「街の人達で味方になってくれる人も居るからガンバってね、一刀♪」

「御子様、これを・・・四人で霊力を込めた護符だから・・・・・酷い怪我は避けられると思う。」

 ちぃから情報、炙叉から護符を貰い少しだけ光明が見えた気がする。

「ありがとう、心強いよ。」

「お姉ちゃんはそれ以外にコレもあげる♪」

 そう言ってハンカチを俺に手渡してくれた。

「なあ一刀・・・・・本当に大丈夫か?」

 白蓮は心配そうに俺を見つめて言った。

 白蓮がこの四人と一緒にいるのは単に護衛ってだけじゃなく、天和と白蓮の仲が良いからだ。

 意外な組み合わせって言ったら白蓮に失礼だけど・・・。

「大丈夫、大丈夫!戻ってきたら白蓮に介抱してもらうさ♪」

「ば、馬鹿!何言ってんだ!」

 これくらいの軽口を言っとけば、少しは安心してくれるかな?

 

「いたぞ!あそこだっ!!」

「こんな状況で女の子達に声を掛けてるぞっ!!」

「ゆ、許さねえ!爆発しろおおおおっ!!」

 

「おわっ!ついに見つかった!!」

 俺は五人に手を振って走り出す。

 そんな俺に街の人達が笑顔で声援を送ってくる。

「がんばれ~、紫北郷様!」

「モテる男はツレぇなあ♪あやかりたいねえ♪」

 街に笑顔が溢れるならこんな役もやりがいがあるってもんだ!

 春蘭相手に鍛えたこの足を、今こそ見せてやるぜ!

 

 

 

【エクストラturn】

 走り去る紫一刀を、五人は見えなくなるまで目で追った。

「さてと、緑と赤の御子様を探さないと。」

 炙叉は懐から遁甲盤を取り出し、その遁甲盤の上で糸の付いた小さな水晶玉を垂らす。

 すると水晶玉が引っ張られる様に南西の方角を示した。

「よし、あっちね。さ、急ごう!」

 地和の声に全員が小走りで移動を始めた。

「いつも思うけど、妖術って便利だなあ。」

 白蓮が感心してそう言うと、天和が笑顔で答えた。

「街中じゃあまり使わないけどね~。今日は炙叉ちゃんがいるからやってもらってるけど、わたしがやったら変装してても正体バレちゃうし。」

「ああ、成程なぁ・・・・・私も妖術使えたら良かったのにな・・・そうすれば一刀の居場所を・・・」

 白蓮の呟きに四人が黙ってバツの悪そうな顔をした。

 

 実は有るのだ。白蓮にしかない特殊な能力が!

 それは『普通』であること。

 白蓮の周りには自然と『普通』の空間が発生するのである。

 先程、紫一刀を追いかけて熱狂的なシスターズファンが、彼女達の横を通り過ぎたが誰も気が付かなかった。

 いくら変装をしているとは云え、圧倒的な存在感を持つ張三姉妹にファンが気付かない等という事があるだろうか?

 つまり、それは白蓮の『普通』の力が天和達を『普通の女の子の集団』と認識させたからなのだ。

 詳しい事は後日述べるが、炙叉は白蓮のこの能力に『存在感殺し(プレゼンス・ブレイカー)』と名付けていた。

 この力が有ったので天和は白蓮と一緒に買い物に出かける事が多くなり、どんどん仲良くなっていったのである。

 

 場の雰囲気を変える為、地和が話題を替える。

「今日のこの『一刀探し』ってさ、星の巡りが変わってちぃ達の運気が元に戻った所為なんだよね。」

「私達の上昇した運気が一刀さんたちを守ってたんです。それが無くなったから、矛先が全て一刀さんたちに向いてしまって・・・」

 人和が地和の言葉の補足をした。

「でも今度は白蓮ちゃんの運気が上がってるから、丁度いいかもね~♪」

「さっき御子様が白蓮に介抱してもらうって言ってたし・・・・・来月は白蓮の番かな~♪」

「ちょ、ちょっと!そんな!・・・・・・・・・・ホントに?」

 天和と炙叉の言葉に赤くなったが、期待もしてしまう白蓮だった。

「わたし達四人が協力するからね♪」

 天和のその笑顔は、ステージの時と同じ位輝いていた。

 

 

 

【紫一刀turn】

 追い掛けてくる奴らの顔がどっかで見た事あると思ったら、この前の真変態集会の時に居た奴らじゃないか!

 変わり身早いぞ!チクショウ!!

 ずっと走り回ってる所為で汗が・・・・・そう云えばさっき、天和がハンカチくれたっけ。

 なんかもったいないけど使わせてもらうか・・・・・・・・・あれ?これはハンカチじゃなく・・・・・・・パンツだ。

 嬉しいがヤバイぞ!

 これ持ってるのがバレたら・・・・・・。

 

 捕まった時に奪われる!

 

 それだけは絶対に阻止だっ!!

 あ、なんか体が軽くなった気がするな。

 前にもこんな事が有った様な・・・・・。

 ああ、みんながブルマを履いてくれた時だ。

 

 よし!このまま日没まで走りきってやるぞっ!!

 

「ふぉおおおおおおおおおおぉぉぉおおおっ!!」

 

 

 

 

おまけ壱

天和の娘 張甲(ちょうこう) 真名:九蓮(ちゅうれん) 生後三ヶ月

地和の娘 張大(ちょうだい) 真名:四喜(すーしー) 生後二ヶ月

人和の娘 張吉(ちょうきつ) 真名:一色(いーそー) 生後一ヶ月

炙叉の娘 迷当(めいとう) 真名:(なお) 生後二ヶ月

本城 後宮談話室         (時報:桂花 二人目七ヶ月)

【炙叉turn】

「私、前から思っていたんだけど・・・・・」

 妖術使い四人組で赤ん坊にお乳をあげていた時に、人和が唐突に切り出した。

「三姉妹の中で私だけ役満じゃない。」

 

「は?」

 

 私は思わず声を出してしまった。

 天和と地和が視線を逸らして沈黙している所を見ると、この話題は過去にも有った様だ。

「え~と・・・ほら、地方によっては役満の所もあるらしいけど・・・・・」

 声を出してしまった以上、私が話し相手になるしかない・・・・・貧乏くじ引いたなぁ・・・。

「逆に倍満の所も有るよね。姉さん達はどこに行っても役満なのに・・・」

「そ、それはまあ・・・・・」

 無表情で話す人和が怖いよぅ・・・・・誰か助けて・・・。

「それからちぃ姉さんの子供の四喜も役満だし、天和姉さんの九蓮なんて場所によっては五倍満だよね・・・・・」

 ヤ、ヤバイ!三人の子供の真名を選んだの私じゃん!

「昨日、雪蓮さんがこの子の事を混一色(ほんいーそー)って呼んだの・・・・・それって食い下がったら二役にしかならないよね・・・」

 あ、あの人はあああああ!

「そうだ!この子は緑一刀さんの子って限定してしまえば緑一色で役満に・・・」

「待って!待って!待って!それはマズイって!!」

 御子様は三人いても同じ人間。子供は飽くまでも三人の御子様の子。三人の内、誰の子種か断定しないのが暗黙の了解なのに、それを破る気!?

 

「おあ゛あ゛あ゛あ゛!」

 

 人和の腕の中の一色が突然泣き始めた。

「あらら、お腹がいっぱいになったら、今度は出ちゃったの?すぐにオシメを替えてあげますね~♪」

 人和はさっきまでの暗い雰囲気とは一転、明るい声でオシメを替えに行った。

「た、助かった・・・・・」

「(ゴメンネ、炙叉ちゃん・・・)」

「(アレは人和の発作みたいなモンだから、気にしないでね・・・)」

 天和と地和が人和に聞こえないように小声でそう言ってきた。

「(二人共ヒドイよ!私に押し付けて!)」

「(ああなった人和ちゃんは元に戻るまでひたすら耐えるしか無くて・・・)」

「(触らぬ神に祟りなしってね・・・)」

 次からは気を付けよう・・・・・。

 

 

 

 

おまけ弐

『姐姐†無双』四

(時報:桂花 六人目九ヶ月)

房都近郊 

【璃々turn】

 今日は北郷学園の遠足です。

 わたしは今、ちびっ子達と一緒に大きな馬車の中で目的地の湖に向かう途中。

「さあ、みんなでお歌を謡お~♪」

 天和お姉ちゃん達、数え役満☆シスターズの歌声に合わせてちびっ子達も一緒に謡い始めた。

 今回の遠足に、ご主人様たちがサプライズを用意していた。

 もうそろそろかな?

 そう思って外を見た時、馬車が止まった。

「な、なんですの、あなたたちは!?」

 麗羽先生の声に振り返ると怪物の様なお面を付けた男達が馬車に入って来ていた。

「オレ達は地獄から来た『好菌族(こうきんぞく)』だ!この馬車はオレ達が乗っ取ったぞ!!」

 うん、台本通り。

 もう一度外を見ると、同じような格好をした人達が馬車を取り囲み始めていた。

 それじゃあ、わたしも。

「そんな事はさせないわよ!」

 一番後ろの席に居たわたしが立ち上がると、お面の一人が右手を上げた。

「かあああああああああっ!!」

「きゃあ!」

 わたしは敵の『氣』に飛ばされた振りをして馬車の窓から外に。

 そっちは頼むわね、地和お姉ちゃんと眞琳ちゃん。

 

【エクストラturn】

『ああ!護衛の璃々ちゃんがやられちゃったわ!』

 マイクを握って司会のお姉さん役の地和がノリノリで熱弁を振う。

「きゃああああ!」

『あ、今度は眞琳ちゃんが人質に取られた!』

 

「(うう、こんな姿かみさんと子供に見せられねえ・・・)」

 悪者役のヒゲがお面の下で涙を流していた。

「(オレとデブだって来月やっと結婚するんですよ・・・こんなトコ見られたら破談しちまうよ・・・・・)」

 チビも涙ながらに言った。

「(すいません。爸爸たちが無理言って・・・)」

 眞琳が済まなそうに囁く。

「(うう、曹沖さまはやざじいなぁ・・・)」

 デブも涙声で囁いた。

 子供達の中で眞琳だけがこの芝居を知らされていた。

「おっと、動くなよ!動けばこの子の命はねえぞ!(むしろ無くなるのはオレ達の命だけど・・・)」

 烈夏や愛羅、他の武将の子も隙を伺っていたがこの台詞で動きを止めた。

「あなたたち!眞琳さんをお放しなさい!人質はわたしくしが代りになります!」

「(え?麗羽先生!そんな台詞無かったよ?)」

 麗羽は芝居に入り込みすぎているのか、その瞳は真剣だ。

 いつもの様に、ただ芝居だと云うのを忘れているだけかも知れないが。

(袁紹の姐さんも更生したんだなぁ・・・この人にならオレの子も預けたいぜ・・・・・おっと、芝居続けなきゃ。)

「そんな事をしても無駄だ!ここに居る全員、地獄に連れて行って掃除や洗濯でこき使ってやるんだからなあ!その前にこの先の湖に毒を流し込んで都の奴らを苦しめてやるのだあ!」

 ヒゲがアドリブで元の流れに戻したのを受けて、地和がマイクに向かった。

『みんな、大変よ!このままでは爸爸と媽媽に会えなくなっちゃうわ!こんな時は正義の味方を呼ぶのよっ!!せーの!』

 

『華蝶連者――――!!』

 

 その直後、テーマ曲と共に星華蝶の声が!

 

「か弱き華を守るため

    美々しき蝶が舞い降りる!

我ら幼き命を守り、愛をもたらす

      正義の使者!

   華蝶連者っ!!見参っっ!!」

 

 

 岩山の上に六人の姿が現れた!

 

「天知る!」

「神知る!」

「我知る!」

「子知る!」

「悪の蓮花の咲くところ!」

「正義の華蝶の姿あり!」

「煌めく知謀!朱華蝶!」

「・・・ええと・・・・恋華蝶・・・」

「艶めく踊り子ぉ!貂華蝶!」

「恋の預言者!巫女華蝶!」

運命(さだめ)の戦士!星華蝶!」

 

「溢れる勇気!黄華蝶!」

 

 黄華蝶。その正体は璃々。

 先程馬車から抜け出したのはこの為だったのだ!

 

「華蝶の連者!」

「六人揃って!」

「・・・・・・・・ただいま・・・」

「「「「「参上っ!!」」」」」

「・・・・・・さんじょう・・・」

 

ドドドオオォォン!!

 

 街中では使えなかった火薬を今日は大盤振る舞いで使用しての登場だ。

 

 

 

【璃々turn】

 わたしが本物の華蝶仮面になれるなんて・・・なんか夢みたい。

 小さい頃はお母さんに『璃々も華蝶仮面さんになりたい』って言って困らせたっけ。

 あ、馬車から悪役の人達が出て来たわね。

 うん、眞琳ちゃんはきちんと人質役してる。

 あの子達の中で華蝶連者の正体が見破れるの眞琳ちゃんだけだからなぁ。

 ああしないと悪役の人達が烈夏ちゃんや愛羅ちゃんにボコボコにされちゃうもんね。

 

「現れたな!華蝶連者!早く終わらせてくれ・・・じゃない!今日こそは倒してやる!」

 

 ・・・・・今、ちょっと本音が・・・・・・。

「野郎ども!かかれえええええええええっ!!」

 馬車を取り囲んでいた悪役の人達がこっちに走ってくる。

 

『この戦いが終わったら彼女と結婚するんだあああああああああ!!』

 

 ・・・・・なんでそんな掛け声なの?

 

 

【紫一刀turn】

 少し離れた場所で俺たち三人と思春、そして白蓮は芝居の様子を見ていた。

「何だ?今の戦闘員の掛け声は?」

「いくら負けるの前提でも死亡フラグを叫ばなくてもいいだろうに・・・」

「なんか海に突っ込んで行くレミングの集団みたいだ・・・」

 俺たちの疑問に思春が済まなそうに答える。

「例の三人組に人集めを頼んだのだが、特別賞与を出すと言ったら結婚資金を増やしたいのを集めたみたいで・・・」

「・・・・・本当に結婚直前の奴らばっかりなのか・・・・・金額をもう少し上乗せしてやらないとダメだな。」

「ありがとう、一刀。奴らも喜ぶ。」

 思春がホッとした顔でそう言ってくれた。

 芝居の方は華蝶連者と戦闘員の戦いが始まっていて、璃々も活躍していた。

 朱華蝶は今回も名乗りだけ。朱華蝶が戦闘に参加したのって戦乱の時の一回だけだな。

 ここには戦闘に参加したくても出来なかった仮面白馬が居るけど。

「白蓮、今回は我慢してくれな。」

「い、いや・・・気にしてないって!」

「ん?あぁ、学園の教師なのに馬車に乗れなかった事か?璃々と白蓮の二人が同乗していて乗っ取られるのは問題が有るからな。」

 俺と白蓮のやり取りを思春はそう勘違いして受け取った様だ。

 仮面白馬と華蝶連者の正体を未だに知らない思春じゃしょうがないけど。

 因みにここに居る五人は、先に目的地の湖に行って準備をしていると子供たちには話してあった。

「お、戦いも山場を迎えたな。」

 

 

【璃々turn】

 仮面の力って本当に凄いなぁ。

 体が軽いや♪

 子供達も喜んでくれてるわね。

 崔莉と露柴もあんなに身を乗り出して・・・・・わたしも小さい頃はあんな感じだったんだろうなぁ。

 あ、星華蝶が眞琳ちゃんを助け出したわ。

 このお芝居も次の大技で終わりね。

 

「みんな!華蝶旋風だ!」

『応!!』

 

 星華蝶の合図で必殺技を繰り出し、最後に残った悪役の人達を吹き飛ばした。

 

「「「「「正義は勝つっ!!」」」」」

「・・・・・正義はかつ!」

 

 悪役の人達は大丈夫かな?怪我をしてないといいけど・・・。

 

「良い子のちびっ子達!危機が迫ったらいつでも我々を呼ぶがいい!では、さらばだ!とうっ!!」

 

『ありがとう!華蝶連者!さあみんな、華蝶連者にお礼を言うよー!』

『かちょうれんじゃ、ありがとーーー!』

 

 わたしは子供達から見えない所に着地した後、馬車の近くの岩陰に更に移動した。

 戦闘よりもこっちの方が大変なんですけど・・・・・。

 

 でも楽しかったから良いか♪

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

かんたか媽媽の描かれた、一迅社発行の萌将伝コミックアンソロジー十五の表紙の華琳様に毎日ハァハァしている雷起です(;´Д`)ハァハァ

 

シスターズに加えて作者特権でオリキャラの炙叉も今回入れさせて頂きました。

シスターズの子供の名前は正史に無いのでオリジナル。

逆に炙叉の子供の迷当は正史、演義共に名前が出てきます。

 

天和と白蓮の仲を良くしたのは、中の人ネタですw

キャラソンでもこの二人の歌が有りますし、かなり前から考えていました。

そして先に発表してしまいますが

次回は白蓮のお話です!

今回はその前フリでもありました。

 

おまけ壱について

人和だけが役満じゃないと云うネタは、他の方も書かれてますね。

子供達の真名を考えていたらこの話が浮かんだのでヤッちゃいましたw

 

そしておまけ弐の姐姐†無双

璃々ちゃんを華蝶仮面にしたかった

その想いだけで出来た話ですw

 

 

《次回のお話&現在の得票数》

 

☆白蓮   21票

 

という事で前述の通り、次回は白蓮に決定しました。

 

以下、現在の得票数です。

 

秋蘭   20票

詠    20票

月    20票

朱里+雛里19票

流琉   19票

ニャン蛮族16票

小蓮   16票

焔耶   14票

明命   14票

亞莎   13票

猪々子  13票

音々音  12票

二喬   11票

春蘭   10票

穏    9票

斗詩   8票

璃々   7票

華雄   6票

星    6票

稟    4票

真桜   2票

季衣   1票

 

※「朱里と雛里」「美以と三猫」「大喬と小喬」は一つの話となりますのでセットとさせて頂きます。

 

リクエスト参戦順番→ 朱里+雛里 猪々子 穏 白蓮 亞莎 流琉 ニャン蛮族 小蓮 詠 焔耶 明命 秋蘭 月 斗詩 二喬 春蘭 音々音 華雄 稟 星 璃々 真桜 季衣

 

過去にメインになったキャラ

【魏】華琳 風 桂花 凪 数え役満☆シスターズ

【呉】雪蓮 冥琳 祭 思春 美羽 蓮華 七乃

【蜀】桃香 鈴々 愛紗 恋 紫苑 翠 蒲公英 麗羽 桔梗

 

引き続き、皆様からのリクエストを募集しております。

リクエストに制限は決めてありません。

何回でも、一度に何人でもご応募いただいても大丈夫です(´∀`)

よろしくお願い申し上げます。

 

 


 
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