ここは某国のとある倉庫・・・・その中では一人の乙張りのあるボディーを持った美女がオータムの頭を膝に乗せて寛いでいた。
「どうしようかしらね・・・・・流石に、あのアンノウンとか言う化け物を相手に戦う訳にも行かないし・・・・狙いは、私達と同じみたいだし・・・・・困ったわねぇ。」
「まあ、向こうがどうにかアンノウンを片付けてくれる事を祈るしか無いな。我々にはアンノウンに対抗する為の手段が無い。ハックした監視カメラの映像からも、ISは全く役に立たない。絶対防御も無いに等しい程の攻撃力を持つ。それにしても、自分一人で行くと意気込んでおきながら手ぶらとは、腕が落ちたな、オータム。」
千冬に顔立ちが良く似た年格好が中学生程の女の子が腕組みをしながらオータムを嘲った。
「んだと、エム!?」
逆上したオータムはエムと呼ばれたその少女に歩み寄る。今にも殴り掛かりそうな勢いだ。
「事実だろう?お前が自爆したお陰でアラクネの修理に時間が掛かり、貴重な戦力も減っている。現在動けるのは、私とスコールだけだと言う事を忘れるな。」
「てんめぇ・・・・!!」
「エム、オータムをあまり虐めないであげて?」
スコールが立ち上がって喧嘩を仲裁する。その姿は姉妹の喧嘩を止める母親の様だ。直後、
ドカァァァアアアアアアアアアアアーーーーーーーーン!!!
爆発が起こった。
「侵入者です!今映像を・・・・!!これは!?」
「ここにまで来たのか?!どう言う事だ!」
「騒ぐな、オータム。ISを持って一旦退くぞ。」
すると、倉庫の屋根をぶち破って水のエルとフォルミカ・レギアが大量のフォルミカ・ペデスを引き連れて現れた。
「見捨てられし人よ。滅び去るが良い。」
群れをなして動くフォルミカ・ペデスは、倉庫内にいた人間に口から何らかの液体を顔に吹きかけた。それを浴びた彼らは、首を押さえて苦しみ始めた。口からは、まるで溺れているかの様に泡が吹き出し始める。何人かは銃火器で応戦していたが、当然そんな物が通用する筈も無く、無惨にも殺されてしまう。水のエルは、『怨念のバルディッシュ』と呼ばれる矛斧で障害物を全て吹き飛ばし、飛んで来る銃弾の運動エネルギーを吸収した。更に、それを別方向に撃ち出す。残ったのは、パイロット三人のみとなった。三人の周りには、フォルミカ・ペデスの大群が・・・・
「お前の体・・・・・貰うぞ。」
そして、スコールの体に、水のエルが変化した青い発光体が吸い込まれた。
「アアアアアアアアアアアアアァァァアアアアアアア!!!」
まるで電気ショックを受けたかの様に体がビクンビクンと激しく痙攣し、頭を上げると、虚ろな目でとなりにいるオータムとエムを見る。
「殺せ。」
スコールの口から、水のエルの声が発せられる。そして、フォルミカ・レギアがその手に持った三叉槍で、オータムの心臓を抉り出した。
「あ・・・・!う、く・・・・・そ・・・・・?」
グシャリ!
更に倒れたオータムの頭を踏み潰し、クイーンアントロードは得物の矛先をエムに向ける。
『私の子供達・・・・・私はもう、貴方達を愛する事は出来ない。もう、二度と・・・・滅びなさい・・・・滅びなさい!』
だが、頭上から戦闘機が離陸するときの様な耳障りな音が鳴り響き、轟音と共に再び倉庫にもう一つ穴が開いた。そして、煙が晴れると、そこに立っていたのは、黒い装甲に、銀色のアンテナ、虫の様な水色の複眼を持つ、仮面の戦士。左肩には黄色いペイントで塗られた『G-4』の文字。
「CIC、こちらG4。アンノウン多数を確認。ギガントの使用許可を願います。」
その奥から聞こえたのは意外に若い声だった。流暢な日本語で喋り、GM-01改四式のフルオート射撃でフォルミカ・ペデスを押し返しながら応戦する。
『こちらCIC、受諾しました。ギガント、投下。』
先程開けた穴から肩掛け式のミサイルランチャーが投下され、G-4はそれを片手で掴んで振り回し、距離を取らせた。ケーブルをバッテリー残量を表示するベルトの右腰に接続し、左腰のスイッチを捻った。四発のミサイルはそれぞれ標的を捉え、射出された。フォルミカ・ペデスが起こす連続の爆発によって倉庫はバラバラに吹き飛ばされてしまい、煙が晴れると、水のエルとフォルミカ・レギアの姿は消えていた。地面に大きな穴が開いている事から、どちらか一体、もしくは両方がそこから逃走したのだろう。
「ふう・・・・」
ヘルメットを外したのは、秋斗とは違い長い髪をそのままざんばらにした茶髪の『男』だった。
『お疲れ様でした、桐生さん。』
「うーい。しかし、何と言うか・・・・恐ろしいな。アンノウンとは。」
桐生と呼ばれた男は顎髭を撫でながら呆然としていたエムの方に、ゆっくりと歩み寄った。
「あんたにも、来て貰うよ。本当なら、俺はこんな事したくないんだけどね。」
時を同じくして、レストランAGITOでは・・・
「いらっしゃいませ。あ、秋斗君!一夏君も!どうしたの?」
息も絶え絶えに辿り着き、崩れ落ちそうになった二人を翔一がキャッチした。
「ちょっと事情がありまして。テレビ・・・・・見ました?」
秋斗は喘ぎながらもそう聞いた。
「うーん・・・・最近菜園の世話で忙しいからねー、ここ一週間あんまりまともに見てないんだ。何かあったの?もしかして何かやっちゃったとか?」
「実は・・・」
一夏は手短に事の顛末を話した。それを聞いて、翔一は顔をしかめる。
「そっか・・・・・分かった。それ位なら別に良いよ。部屋ならまだ余ってるからさ。」
「どうも・・・・あ、そうだ・・・・小沢さんに電話しないと・・・」
秋斗は店の固定電話まで歩いて行き、手早く番号を打ち込んだ。幸いすぐ繋がった。
『もしもし?』
「あ、小沢さんですか?!」
殆ど怒鳴る様に声を出した。
『ちょっとどうしたのよ、門牙君。落ち着いて話して。』
「G-4が、G-4が・・・・!!もしかしたら、また作られたかもしれないんです!IS委員会に!」
『なんですって?!』
途端に彼女は気色ばんだ。G-4は装着者を過負荷によって殺す『呪いのシステム』とすら呼ばれた危険な代物だ。その開発者ともなれば当然の反応だろう。
『何でそんな物が?!あの時間違い無く氷川君が機能停止にまで追い込んだ筈よ!?』
「深海理沙。」
『聞いただけでも虫酸が走る名前ね。死んだ人のことを悪く言いたくはないけど・・・・彼女の最後っ屁と言う所かしら?』
「恐らくは。やっぱり、アギトやアンノウンが怖いんでしょうね。バックアップを既にどこかに作っていたとは・・・・まあ、流石にESPシステムは使えないと思いますけど、油断は出来ません。あれは・・・・・・開発者の小沢さんに言うのもアレですけど。あれは、この世に存在しちゃ行けないシステムです。」
『言われなくても分かってるわ。』
明らかに小沢の声は沈んでいた。済んだと思った問題が再び水面下から浮上して来たのだ。
「氷川さんと一条さん、後、尾室さんにも伝えておいてくれますか?もしかしたら・・・・・・G3-XやG3のみならず、G-5を全員動かす様な事態になるかもしれませんので。一応、待機命令を出しておいて下さい。木野さんとかには、翔一さんと俺が話しますんで・・・・」
『分かったわ。それより、貴方の方、G4-X0の残弾はどう?』
「・・・・・心許無いですね。一夏も、結構使ってます。このままだと、マジでヤバいです。流石に、システムを使って素手で倒すのは無理がありますから。」
忌々し気に唸る秋斗。
『出来るだけ直ぐにそっちに向かうわ。弾薬の補給は、五分もあれば済むから。明日にでも。』
「すんません、毎度毎度。」
『気にしないの。同じSAULの仲間でしょ?また近い内に、皆で焼き肉でも食べに行きましょ?勿論私の奢りよ。』
「ゴチになります。後、言うまでもないかもしれませんけど俺が電話した事、極力秘密にしておいて下さい。匿ってもらってる翔一さんにまで迷惑掛かったら、ちょっと・・・」
『ええ、分かってるわ。じゃあね。』
受話器を置くと、手近にあった椅子に深く腰掛けた。
「ふー・・・・」
「秋斗さん、シャワー浴びたら寝ますか?俺、いい加減疲れました。」
「そうだな。」
二人は翔一に案内された部屋にあるベッドにダイブし、そのまま眠りについた。
「そろそろ危ないかな・・・・葦原さんと木野さんにも連絡しなきゃ。(後キャベツ栽培・・・)」
翔一は通常戦闘以外では見せない様な真剣な眼差しでその部屋のドアを静かに閉めた。
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