No.534776

IS x アギト 目覚める魂 38: 嵐の前の静けさ

i-pod男さん

すいません、やはりこの時期になると毎日更新は無理になると思います。書き溜めだけは出来るだけ勤めようと思っていますので、なにとぞご了承下さい。では、どうぞ。

2013-01-22 10:56:05 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2262   閲覧ユーザー数:2185

学園に戻った秋斗と楯無は、現在秋斗の一人部屋で沈黙していた。一夏には既に事情を話し終えて納得してもらった。

 

「何時からだ?」

 

秋斗が沈黙を破る。

 

「え?」

 

「いつから自分に人間が持つ筈の無い力を持っていると言う事に気付いた?」

 

「・・・・・十歳の、頃から。」

 

「今まで、使った事は?」

 

楯無は何も言わずに首を振る。

 

「聞きたい事がある。怖いか?俺が。そして、アンノウンとあの男が。」

 

「アンノウンは怖いけど・・・・門牙さんは、怖くない。」

 

「何故だ?言ってしまえば、俺も奴らと大差無い。何の苦も無く人の命を奪う事が出来る。」

 

ハッキリとそう答えられた秋斗は複雑な気持ちだった。誰だろうとアギトの変身した姿を見れば誰だろうと普通は逃げ出すか怯えて腰が抜けてしまうかのどちらかでしかない。

 

「そもそも、あの男は一体」

 

「奴は・・・・言わずもがなだが、人間じゃない。奴は『力』その物だ。」

 

「力・・・・その物・・・?」

 

「ああ。人間に可能性を求めたのが光、否定しようとしたのが闇としよう。光の力はアギトの種となって人間に降り注ぎ、闇の力はそれらの蒔かれた種を全て根絶やしにしようとアンノウンを使って不可能犯罪を起こしている。あの時見た男が、闇の力。ラテン語で言うDeus()だ。そしてその神は俺達アギトを殺しに来る。それこそ自分の分身、子供の様な存在である人間を見限ったとしても。」

 

「そんな!」

 

「闇は恐れているのさ。人間の早過ぎる進化はいずれ自滅を招くと考えているのだろう。確かに、アギトが今後増えて、それを自覚している人間が現れ、自分を『選ばれし新人類』とでも思い始めたら、どうなるかは想像に難くない。分からなくはないが、やっぱりそう易々と俺の命をくれてやろうとは思えない。」

 

「何でそんな事知ってるんですか・・・・?」

 

「俺も、超能力を使えるから。いや、使えたからと言った方が的確か。得意なのは予知だな。それに、俺の予知夢はどうやら的中率百パーセントらしい。夢に見た物が性格に現実世界に再現されるんだ。どう足掻いても変わらなかった。」

 

「じゃあ・・・・こうなる事も知ってたって事?」

 

「いや。見れる時と見れない時があるからな。今回は見れなかった。」

 

「・・・・ごめんなさい・・・・」

 

「まだ気にしてるのか、お前?良いんだよ、俺が勝手にやった事だ。寧ろ余計な事だったかもしれないしな。お前、自分のアギトの力を手放したいと思った事は?」

 

秋斗はうんざりした様子で謝罪する楯無から目を逸らして窓の外を眺めた。

 

「あります。」

 

「今でもそれは変わらないか?」

 

「・・・・・それは・・・・・・分かりません。」

 

「まあ、分からないなら良いさ。その時になって決めれば良い事だからな。俺はシャワー浴びに行く。今日は色々とあり過ぎて疲れた。」

 

洗面所にタオルと着替えを持って行き、中に入って行った。十分程すると、ノック音がして一夏と簪が(手をつないで)入って来た。

 

「あ・・・・・お姉ちゃん・・・・・」

 

「よう、来たか。」

 

下はジーパン、上半身は裸で首にかけたタオルで濡れた髪の毛を拭いていた。

 

「どう言う事ですか、あれ・・・アギトの力を奪われたって。」

 

「言葉通りさ。お前も気をつけろ。全身黒服で首元まである茶髪。二十代前半辺りの男で、アンノウンを統率する存在だ。」

 

タンクトップを着用して髪の毛を乾かし続ける。

 

「奴は言ってしまえば神だ。前に言ったよな、創造主の事。それが奴だ。」

 

「自分に似せて作った人間を殺そうとしてるって事ですか・・・・」

 

「向こうも俺達みたいに反抗する人間に辟易して来てるんだ。今の俺は、もう変身出来ない。俺の力をまた取り戻すまで。」

 

「でも、そんな事どうやって・・・?」

 

「それはまだ分からない。津上さん達に聞かなきゃならない。兎に角一夏。お前も気をつけろ。力を奪われたら・・・・・ヤバいぞ。」

 

「俺にはG4-Mildがありますから。」

 

「武装は殆ど使えないだろう。精々出来るのが足止めだ。戦うなとは言わないが・・・・無茶はするな。お前の命は、お前だけの物じゃないんだからな。」

 

「分かってます。」

 

一夏は簪の手をもう少し強く握ってやる。

 

「まあ、いざとなれば津上さんや一条さん達が協力してくれるから、戦力は充分ある。まだ心配する様な段階じゃない。」

 

「でも、テレビじゃ未だに不可能犯罪が起こってるって・・・・」

 

「向こうの事はあの人達に任せなきゃならない。あの人達は、今までずっとアンノウンと戦って来た。知識も経験も俺達より圧倒的に上だからな。なる様にしかならない。俺達が今更グダグダ考えても仕方無いだろう?少し疲れた。俺は寝る。」

 

「じゃあ、俺達もこれで。」

 

「おう。」

 

二人が出て行くと、秋斗はベッドの上にどさりと倒れ込んで天井を見ながらうつらうつらとし始めた。

 

「で、お前はこれからどうする?お前は選べるんだぞ?アギトの力を捨てて人間として行きて行くか、アンノウンに狙われ続けるか。」

 

「それは・・・・・・でも、この力があれば簪ちゃんを守れるのよね?」

 

「まあ、当面は一夏がやると思うがな。だが、忠告しておこう。身の丈に合わない力は、身を滅ぼす。保有するのと、使いこなせる事は全く別だ。それに、まず他人の命を心配している余裕は無いだろう?お前の背中には今でっかい的が出来てるんだ。出来る事なら、お前には死んで欲しくない。一家の頭首ともなれば、尚更だし、それ以前に一人の女だ。お前にどんな事情があろうと、(オレ)(おまえ)守ってナンボの生き物だ。その歳で頭首ってのも大変だろ?少しは周りを頼れよ。じゃ、俺は寝るぜ。」

 

「何で・・・・そこまでして・・・・」

 

「親父との約束でね。一つは、思い立ったら即行動。行動しながら策を練れ。二つ目は、飯を作る時、食う時は笑え。しかめっ面で飯を作ったり食ったりしたら料理した奴、食ってる奴に失礼だし、何より飯がまずく感じる。三つ目は、女はたとえ誰であろうと優しくしろ。守らなきゃならない時は守れ。これ全部受け売りだから、あんまり気にするな。」

 

秋斗はそれ以上言う事は無いとばかりに顔を背けて目を閉じた。余程疲労が重なっていたのか、物の数分で軽いいびきを立てながら眠り始める。

 

「男は女守ってナンボ、ね・・・・私はそんなに弱くないわよ?」

 

 

 

 

 

 

 

「一夏・・・・・・」

 

ベッドの上で体育座りになった一夏は、簪の腕の中で震えていた。

 

「正直、俺は怖い。俺の一部を奪い取られる様な気がして・・・・戦えなくなる様な気がして、怖い・・・・この力があってこそ、俺は簪や、皆を守れたのに・・・・・それが無くなったら俺は何も出来なくなる・・・・!!そんなの、俺は嫌だ!!」

 

 

 

 

 

 

「もうすぐ・・・・貴方達の力も、全て頂きますよ。」

 

どこかにある森の中で、黒服の青年、神が仰向けになって空中で静かに眠っていた。その周りには、三体のアンノウンが彼の前に跪いている・・・・

 

「滅びなさい・・・・・私の、子供達。」

 


 
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