No.533155

IS x アギト 目覚める魂 35: 激怒

i-pod男さん

倒れた一夏の事で秋斗に詰め寄る代表候補達、箒、そして千冬。そして千冬は・・・・?!

2013-01-18 01:57:44 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2452   閲覧ユーザー数:2344

一夏は現在点滴を受けながら保健室で寝ていた。心電図もようやく安定した数値を見せている。箒は秋斗のジャケットの裾を掴んで睨み付けている。

 

「何故だ!?説明しろ!何故一夏はこの様な状態に陥った?!」

 

「アギトの力が一時的に暴走した所為だろうな。言ってもコイツはまだガキだ。完全に体に馴染めていないと俺は推測している。俺も経験した事がある。時折起こる現象だから心配はしなくて言い、死にはしない。まあ、確かに今回はここまで早く症状が出るとは思わなかったと言うのは事実だが。」

 

秋斗は箒の手を払い除けて落ち着き払った口調で説明する。

 

「何暢気な事言ってんのよアンタは!?一夏は死にかけてるのよ!?」

 

興奮のあまり唾を飛ばしながら秋斗を殴ろうとする鈴音をラウラは必死で取り押さえていた。

 

「気を失っているだけだ。死にかけてはいない。あれを見た時はそうとしか見えないのは事実だが、それは違う。声を張り上げるな。人が来るぞ。」

 

「でも、どうして・・・・・どうして黙ってたんですか?!一夏と秋斗さん二人が、その」

 

「言える筈無いだろう。『自分は人間の進化した姿に変身出来ます』なんて言って『はいそうですか』と信じる奴なんかいない。仮にそれを見せたら、大抵の人間は逃げ出すに決まってるだろう。普通の人間はまだしも、神経が図太い奴はこちらに敵意が無いにもかかわらず攻撃して来る可能性だって十分にあり得る。それに、これはISを超える力だ。委員会が目をつけたらどうなると思う?」

 

シャルロットの質問を質問で返した。

 

「あ・・・・・」

 

セシリアはその質問の意味が分かったのか、さっと顔が青くなった。

 

「察しが良い様で助かった。お前らだってこいつと無理矢理引き離されるのは嫌だろう?だから黙っていたのさ。特異ケースに近付き易い人物、例えば代表候補生は、政府に何を命令されるか分からない。本人の思惑は兎も角、政府の思惑が介入しているとなったら、自ずと信用し辛くなる。こっちにも既に束縛はあるんだ。こちとら尻尾振って『取って来い』をやる下僕(イヌ)にはなりたくないんでね。」

 

保健室の扉が開き、千冬が入って来た。

 

「門牙。ちょっと来い。話がある。」

 

(話って肉体言語だろうに・・・・)

 

秋斗は何も言わずについて行く。ついた場所はアリーナだった。

 

「一夏は何故あんな事になった?」

 

千冬の底冷えする様な声に怯みもせず、表情一つ変えない秋斗。

 

「さっきも説明したが、あれは正常な現象だ。特に、ギルスはな。」

 

「ギルス・・・?アギトではないのか?」

 

「強いて言うならばアギトの不完全形態さ。一夏が変身した姿は負担がかかるだが、その負担を補う為に更なる『光』を取り込んだ。体がまだ完全にその力に順応し切れていないだけの事さ。俺も過去にアレを経験したから死にはしないと言う事は断言する。一晩眠れば直ぐにまた元に戻るからな。あの症状が再び出るまでの間隔は長い。俺は今まで数年間何も起こっていない。心配なのは分かるが、俺を信じろ。俺は嘘をついてはいない。」

 

「だが、真実を全て話した訳では無い。」

 

「不満か?あれが誰か、とは一言も質問されなかったぞ?」

 

ビュオッ!!

 

繰り出された拳を避けた。ビリビリと空気が震えるのを感じる。

 

「何故一夏を・・・・一夏をアンノウンと戦わせた?!」

 

「戦わせてはいない。奴が自分の意志で戦うと決めた。たとえあいつの姉だろうと、あいつの意思を踏み躙る様な真似は許さないぞ。」

 

腰にオルタリングを出現させ、フレイムセイバーを引き抜き、千冬の足元に投げつけた。

 

「取れよ。そこまで俺の・・・・いや、一夏の決断が不満なら、俺を倒して納得させてみろ。」

 

自分はストームハルバードを引き抜き、刃を展開しない状態で構えた。

 

「私を相手に勝負を挑むと言うのか?」

 

「俺には勝てないぞ。それだけはハッキリと言っておく。」

 

ブォン!!

 

振り下ろされる剣は空気との摩擦で唸り声を上げる。

 

ガギィイィイイン!!

 

ストームハルバードとフレイムセイバーがぶつかった。ビリビリと秋斗の手が震える。

 

「おお・・・・良いね・・・流石は世界最強だ。相変わらずだね、その力は。ソレ、結構重量がある筈なんだけどな。」

 

再び振り下ろされる刃に身じろぎもせずに、真っ向から受け止めた。秋斗も負けじと素早い攻撃を繰り出す。何十合と打ち合った結果、どちらも決定打に欠けていた。秋斗も遂にストームハルバードの刃を展開して斬り結ぶ。そして横薙ぎに振られるフレイムセイバーを後ろを向いて受け止めた。

 

「おおう、危ない。」

 

即点の要領でストームハルバードを軸に体を宙に浮かせて回転し、距離を取った。

 

「何をする気かは知らんが、させると思うか?」

 

ストームハルバードでガードに徹して千冬の腹に両手のパンチを叩き込んだ。よろめいた所で足をすくい、ストームハルバードの切っ先を喉元に突き付けた。当然フレイムセイバーは回収していざという時の為に右手に構えておく。

 

「言っただろ。あんたの動き、癖、呼吸の仕方、全部知ってるし、見えるんだよ。だから、俺には勝てない。どんな攻撃パターンだろうと、どれだけ速度を上げようと、俺は全てを見切れる。」

 

「まさか・・・・超能力を操れるとでも言うのか!?」

 

「大当たりだ。あんたは一夏を今の今まで全力で守って来た。今度は、あいつの番だ。あいつにも、いい格好させてやれよ。男って物は、たとえ姉だろうと女の前では見栄張って意地張ってカッコ付けたい生き物なんだよ。あいつの決意を、無駄にしないでやってくれ。それだけ。俺は一旦部屋に戻るよ、先生。」

 

ピットから出て、部屋に戻る途中で一条に電話をかけた。氷川を襲ったアンノウンを始末したと言う報告の為だ。

 

(決意、か・・・・・思えば、そうかもしれないな。過保護過ぎるのも考え物か・・・・全く、私も甘くなった物だ。)

 


 
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