第27話 過激派ギルド
一人の男が決死の覚悟を決めていた頃、宿ではフィナンシエの突然の訪問と彼女の報告ですっかりパニックに落ちいていった。
いつも通り街を巡回し、謎の虐殺事件の犯人を捜索して皆がすっかり疲労しきってるところに彼女が来たのだ。
「んで、あんたらいつまでパニックになってるつもりよ」
アイエフが若干呆れ気味で目の前で「やばい、ヤバイよ!」などと叫びすっかりひよこさん状態に陥ってるネプテューヌとコンパを見ている。
これと似た状況を何度も経験しているのか、ライカとタイチはいつも以上に落ち着いていた。
アイエフは最初のうちは少しばかりテンパりもしていたが、タイチに諭されすぐに落ち着きを取り戻したが、この二人だけはお手上げ状態になってしまうほどのテンパリ具合だった。
すでに報告を知らされてから数十分が経過していた。
未だに落ち着かない二人をほっておいて四人はソファーに座り話をはじめる。
「過激派ギルドが協会に対して、蜂起か」
「はい、これは確かな情報です。もし、この伝聞に記された通りに相手が動くなら彼らは既に協力者の力を借りて何らかの動きを起こしているはずなんです」
「だが、それが起きない。そうなると協力者に何らかの支障があったってことになるわね」
「はい。ですから、助け出すには今しかないんです」
「ですが、あの道を使うとなると相当時間が掛かり、着いた頃には遅いかもしれません」
「いいえ!そこはこの女神さまの侍女フィナンシエにお任せ下さい!!」
「フィナンシエ、あなた何か方法があるって言うの?」
「はい。実は協会はこういったことを予想して地下になん通りもの抜け道を作っているのです」
「なら、女神様だってそのことを知ってるんだろ?どうして、自分から逃げないんだ?」
「それが、ホワイトハート様は少しばかり変わった人でして....」
「....好戦的なわけだな。....抜け道は過激派ギルドの連中は知らないのか?」
「はい。こういったものを知っているのは協会で働く方の中でも数人しか知りません」
「つまりフィナンシエは、女神様に信頼されてるわけですね」
「いいえ、そんな恐れ多い。けど、そうであったら私はすごく嬉しいです!」
「そんなフィナンシエの笑顔を守るためにも俺たちは女神様を無理やりにでも連れ出さなきゃな」
「時間があまりないわ。あまりこんなことさせたくないんだけど、タイチ!あなたがフィナンシエを背負って走りなさい!!」
「ちょっとまて!理由がわからん!!」
「そんなのあなたが無駄に体力あるんだし、私を背負って走った時みたいになんとかなるでしょう!!」
最後の方ではアイエフは羞恥に頬を赤らめ、半ば叫びながらのものとなっていた。
一方タイチの方は何を言ってるかさっぱりという表情をしていた。
「わかったよ。ほれ、フィナンシエ。俺がおぶってやるから」
「はい。そ、それでは失礼します」
むにゅという柔らかな感触が背中に伝わり、タイチは思わず「すげえ」と呟いてしまった。
もちろんそんな彼のセリフを聞いて女性陣が黙っているわけもない。
殺気を感じるほどの視線にタイチは苦し紛れにこんなことを言った。
「あんまり胸の大きさとか気にすんなよ!!」
そんな言葉を残し、宿から逃げるように飛び出していった。
「「「「逃げるなーーーー!!」」」」
こうして宿から協会を目指すまでには近道を使ったことによりかなりの速さでつけたことは言うまでもない。
「な、なんてこった....これじゃあすぐに、出発も、できないじゃ、ない、か」
フィナンシエを膝下に乗せ、息を付きながら女性陣を見るタイチ。
そこには変身したネプテューヌ、ライカがそれぞれ背中にコンパとアイエフを背負った状態で平然とたっていた。
この二人は途中で変身のことを思い出し、二人を背負って飛んできたのである。
一方のタイチはフィナンシエに怖い思いをさせたくないの一心で、全力疾走をしてここまで来たのである。
つまり、現状で動けないのはタイチだけなのである。
「ごめんなさい、タイチさん!!私のせいで」
「いいよ、それに久々に長い間良い感触を堪能できたしな」
「~~~っ!?そ、そんなことは軽々しく言っちゃいけません!」
フィナンシエは子供に諭すような感じでタイチを注意する。
そんなやりとりを見ていた四人の美少女たちは、自分の胸を見て
「お、大きいだけじゃダメなのかしら?」「小さいからって感触ぐらいあるわよ」「お兄様の好みは、美乳なのですか?」「お胸を小さくする手術を受ければいいです!」
などなどつぶやいていた。
女子おそるべし、そして、胸の大きさ関係なし!!
と、タイチは喉まで来ていた言葉をなんとか飲み下し、息を落ちかせることに意識を専念させる。
女神様には既に話を通しており、いま準備をしているらしい。
「準備できた」
噂をすればなんとやら、奥の方の扉ががさつに開けられ、現れたのはルウィーの女神ことホワイトハート。
ショートな髪の毛にふわふわとした感じの暖かそうな帽子。
そんな可愛らしいイメージを完全にぶち壊す、手にある巨大なハンマー。
誰がどう見ても戦闘態勢としか思えないその姿にタイチたちはお互いにやることを確認済みなのか、ただその場で同じタイミングでうなづいた。
そこからの彼らの行動はあらかじめ段取りが済んでいたかのような動きで、俊敏なものだった。
まずは意外と力持ちなライカがホワイトハートのハンマーをひょいと取り上げ、それをされて怒った彼女をアイエフとコンパがうまいことなだめネプテューヌが背負い作業は数分で終わった。
「よし、準備が出来た「待て、何かが近づいてきてる」...過激派がもう来たの?」
「違うな、こいつはもっと厄介なのだ。お前らはここから脱出しろ」
「俺は奴らの進行を食い止める」
ライカを除く全員はタイチの言っていることが理解できていない様子だった。
タイチはそんな彼女たちに目もくれず、フィナンシエに降りてもらい何も告げずに扉から出て行った。
彼のそんないつもとは違う対応にライカは初めて彼に違和感を感じた。
━━━━あの人は本当にお兄様なの?
10年間一緒に彼と地獄で過ごしてきた彼女にとって、最近のタイチは妙に冷たいところがあるのにうすうすと気づき始めていた。
そして、ついには彼が本物なのかという疑問さえ浮かんできてしまった。
━━━━私が確かめなきゃ...
彼女は手に持っていたハンマーを足元に置き、ネプテューヌに向かい一言告げた。
「私も行ってくる!」
それを聞いたネプテューヌ達は皆がそれぞれの反応をしていたが、やがて納得したのか「行ってらっしゃい」と返してくれた。
ライカはそれを聞いてすぐに協会を後にするのだった。
「タイチのことはライカに任せて私たちは女神様を運ぶわよ」
「了解!」「わかったです~!」
「皆さんこちらへ!」
残された彼女たちも急いでタイチ達とは別方向に向かうのであった。
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フィナンシエから協会に対する過激派ギルドの蜂起があると聞かされた一同は急いで協会に向かうのであった。