No.522643

IS x アギト 目覚める魂 16:対面

i-pod男さん

ショッピング中にSAULと一夏がコンタクトを取ります。では、どうぞ。

2012-12-24 22:02:47 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2627   閲覧ユーザー数:2507

あの後一夏はラウラと和解し、クラスとの蟠りも溶けた。それが意外に速く、色々と誘われている様だ。シャルルも男としての性別を偽るのを辞め、女子として転入し直した。そんな中、臨海学校の時期が近付いて来る。そして一夏は現在ショッピングモール・レゾナンスに来ていた。同行者は、合計三人。シャルロット、ラウラ、そして簪の三人である。

 

「何で、いるの・・・・?」

 

「簪も見てただろ?色々あったんだ。勘弁してくれ、頼む。(昼飯奢るから。)」

 

最後の部分は口パクだが、簪は納得してくれたのか、頷いた。では、この状況を想像してみると良い。顔立ちが整った一人の高校生が、美少女三人に囲まれてショッピングモールを練り歩いているのだ。殺意と言う名の視線が突き刺さるのを感じる。到着したのが、レゾナンスと言う店の前だ。

 

「ここで水着を買うのか?俺は一応持ってるから別にいらないんだが。」

 

「じゃあ、僕達のを選んで欲しいな。」

 

「・・・・・女物の事はあんまり良く分からないから、無駄な期待はするなよ?それより、一番物を買う必要があるのはラウラだと思うんだが。」

 

「?何故だ?」

 

首を傾げるラウラ。

 

「シャルに聞いた所によると、お前は軍服と今着ている制服以外衣類は何も無いそうだな。」

 

「それがどうした?」

 

「だからだ。男の俺でも服装とか身だしなみに気を使うのに、お前がそうしなかったら、その、何と言えば良いかな・・・・惜しい、と言うか・・・・?」

 

「勿体、無い・・・・」

 

「そうそう、それそれ。」

 

簪が一夏の探していた言葉を的確に口に出した。

 

「一夏に賛成。彼女の服の見立てに付いては私がやるから、それは心配しないで。」

 

シャルロットもやる気の様だ。

 

「おう、頼む。俺は・・・・薄いジャケットが欲しい。んーーーーーっと・・・・・あ、この前カタログで見たのこれだったな。」

 

ラックから引っ張り出したのはカモフラージュグリーンのどこかミリタリー風なジャケットだった。生地は軽く薄いが、袖が脱着可能、ファー付きフードも収納可能、そしてポケットも多数と多彩な機能を持っている。値段はそれなりだが、一夏は白式のデータを定期的に倉持技研に贈っている為、その分の給料が振り込まれている。加えて、バイト漬けの中学時代を送り、物欲も大して無かった為、貯蓄はかなりあるのだ。

 

「どうだ、これ?」

 

羽織っていたワイシャツを脱ぎ、、黒いタンクトップの上にそれを羽織った。元々の服装がライダーファッションなので多少ズレている所があるが、それでも似合っている事に代わりは無い。

 

「一夏って、何を着ても似合う様な気がするんだけど、気のせい?」

 

「俺だって似合わない服装位ある。」

 

「たとえば?」

 

「着ぐるみパジャマと紋付袴。」

 

かなり予想の斜め上を行く例だったので、閉口してしまう三人。

 

「何だよ。俺は事実を言ったまで」

 

そんな時に携帯が鳴る。

 

「悪い。もしもし。」

 

『私よ。小沢澄子。』

 

「お久し振りです。」

 

『いよいよマズい事になって来たわね。また学園の方でアンノウンが出たって聞いたわ。門牙君にはG4-Mildのデータを渡してあるから、貴方のISにそのデータを入れて頂戴。こっちも戦力は多いに越した事は無いの。』

 

「分かりました。」

 

「後、貴方のバイクも直ぐに届く筈だからそれだけよろしく。』

 

「バイク?いや、俺未成年・・・・」

 

『あー、もう一々細かいわねー!男の癖にグチグチグチグチ鬱陶しい!それはこっちでどうにかするからさっさと受け取りなさい!良いわね?!』

 

「・・・・・・はい・・・・」

 

彼女の気迫に押されて否定と言う選択を潰されてしまった一夏。一方的に通話も切られてしまい、嘆息する一夏。

 

「どうしたの?」

 

「いや、ちょっと滅茶苦茶な人に電話をもらってな。それよりも、腹減ってないか?」

 

「うん。確か、近くにファミレスがあった気がする・・・・」

 

「じゃあ、そこで合流しよう。俺ちょっと用事を思い出した。五分・・・・・いや、十分もあれば済むから。シャルもラウラも悪いな。」

 

一夏はさっさと会計を済ませてその場を立ち去り、ショッピングモールの外に出た。丁度外には警察の物と分かる制服姿の男女一組が黒とグリーンのペイントを塗ったカワサキZ1000を止めていた。

 

「君が、織斑一夏か?」

 

「はい。」

 

「俺は一条誠。警視庁の未確認生命体対策班、通称SAULのG3装着員だ。小沢さんの指示でコイツを君に届けに来た。」

 

一条はバイクのカウルをポンポンと叩きながら言う。人当たりの良さそうな笑みだ。

 

「直接会うのは初めてだったわね。改めて、私がG3ユニットの統括を勤めている小沢澄子よ。よろしく。」

 

彼女も背丈は低いが、しっかり者でかなり勝ち気な感じがする。肝が据わっている事は一目瞭然だ。

 

「後、これがG4 Mildのデータチップよ。読み込めば直ぐに使える様になるわ。」

 

「でも、俺に会った事すら無いのに何でホイホイとこんな・・・・?」

 

「門牙の報告を受けているからな。お前は、信用に足る人間だと彼女は判断したって事さ。そして今まで彼女の人を見る目は誤った事は無い。お前が、アギトの力を持っている事も、当然知っている。キーと、特許の大型原付免許証だ。失くすなよ?」

 

「はい。ありがとうございます。っ?!」

 

「どうしたの?まさか・・・」

 

「はい。アンノウンです。俺、先に行ってます。出来る事なら倒します。」

 

「分かった。倒したら連絡くれ。免許証に俺と俺の同僚の連絡先が書いてある。何かあったら電話しろ。」

 

小沢と一条は走り去り、一夏もモトクロス用のヘルメットを被った。新車に跨がり、キーをイグニッションに差し込んだ。エンジンがまるで『待っていたぞ』とでも言いた気に鳴り響き、細やかなシートの揺れが体のみならず心をも揺さぶる様な気分に見舞われる。ヘルメットを被り、アクセルを捻ると、バイクは吠える様に爆音を上げ、車道を走って行った。

 

(アレか・・・・!!)

 

見た目はエジプト神話に出て来るアヌビスの様な姿をしており、手には死神を彷彿させる巨大な鎌を持っている。丁度人を殺し終えたのか、刃からは血がポタポタと滴り落ちた。そこには、血みどろになって体がバラバラに切り裂かれた肉の塊しか無い。

 

「てめえ・・・・・変身!」

 

体が変化して行き、ギルスに変身した。乗っていたバイクもアギトの力を受けて、生きたマシン、ギルスレイダーに変わる。そのままアクセルを更に捻って前輪キックを繰り出し、ジャッカルロード スケルス・ファルクスを吹き飛ばす。

 

『ガルルルル・・・・アギ、トォ・・・・・』

 

ギルスレイダーから飛び降り、ジャッカルロードに飛びかかった。

 

「ガルルルゥウアアアアア!!!」

 

そのまま地面に組み伏せると、(デモンズファングクラッシャー)を頭に突き立てた。

 

『グギャアアアアアアアーーーーーーーーー!!!!』

 

その余りの痛みに暴れるジャッカルロード。だが、幾ら暴れた所で地面に押さえ付けられるそのパワーと激痛に抗える筈も無く、頭の一部を噛み千切られ、肉を大きく裂かれた。一旦距離を取る為に離れると、両腕のギルスクローを伸ばす。

 

「グルルウゥアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーー!!!!」

 

立ち上がったジャッカルロードにクローを振り下ろし、駐輪場の鉄柵辺りに向かって蹴り飛ばす。そして踵のギルスヒールクローを上段後ろ回し蹴りの要領で喉笛に突き立てようとしたが、持ち前のジャンプ力で避けられてしまう。

 

(糞!!)

 

そのまま逃亡を図ろうとしたが、突如銃声が鳴り響き、そこで見たのは、オレンジ色の複眼、青と銀のアーマー、そして硝煙が立ち上るスコープが付いた大形拳銃。その後ろに同じ様な出で立ちをした者も二人。

 

「アンノウンを包囲。殲滅しろ!」

 

「「了解!」」

 

良く通る声だが、それは間違い無く一条誠の声だった。スコーピオンを構え、ジャッカルロードにGM01スコーピオンの銃弾を浴びせる。残りの二人も背中に背負ったショットガンをぶっ放す。

 

「離れてろ!」

 

GG02サラマンダーのアタッチメントをスコーピオンの銃身に連結させ、スライドを操作して引き金を引いた。必殺のグレネードショットがジャッカルロードを捉え、吹き飛ばした。最早虫の息となったジャッカルロードは獣の様に四つん這いになっていた。それを良い事に、ギルスは踵のヒールクロウを伸ばし、前転しながら踵落としを決めた。後頭部を面浮かれたジャッカルロードは絶命し、頭を踏み抜かれた。足元で爆発が起こり、その爆炎の中からギルスが一夏の姿に戻る。G3-Mildを装着した二人がギルスにまで武器を向けようとするが、メットを外した一条が武器を下ろさせた。

 

「一条さん・・・?」

 

「何で・・・?」

 

「あいつは良いんだ。あいつは、門牙の仲間であるからして、俺達の味方だ。これは、尾室も、俺も、小沢さんも保証する。異端の存在であってそれが人間の姿に戻ったからと言って、武器を向けていい理由にはならん。良いな?あいつは、門牙と同じ協力者なんだ。」

 

ヘルメットを被っていたお陰で幸い面は割れていない。一夏は一度一条に頭を下げるとバイクに飛び乗り、再びショッピングモールの方に取って返し、どうにかレストランまで辿り着いた。

 

「三分遅刻。」

 

簪からの駄目だしを入店直後に喰らってしまう。

 

「勘弁してくれ、俺も色々あったんだ。荷物の受け渡しついでにそれの試運転(テスト)を頼まれて。」

 

「テスト?」

 

「ああ。これ。」

 

ポケットから鍵を引っ張り出してヒラヒラする。

 

「それ・・・・車の鍵?」

 

「惜しいな。バイクの鍵だ。カッコいいぞ?もう食べ始めたのか?」

 

「一夏が来ないのが悪いのだ。」

 

不機嫌そうにするラウラ。

 

「悪い悪い。ここの費用は俺が持つから、それで勘弁してくれ。何を頼もうが構わん。」

 

「あら、奇遇ね。」

 

「そうだな。水着を新調しに来たと思ったらまさか会うとは思わなかったが。」

 

「偶然ですわね。」

 

聞き慣れた声が三つ。一夏は恐る恐る振り向いた。

 


 
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