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魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第三十四話 二度ある事は三度ある

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2012-12-22 18:28:18 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:41881   閲覧ユーザー数:36578

 ~~第三者視点~~

 

 「目覚めた気分はどうかね。オリジナル」

 

 「…まさか貴方達が私を目覚めさせるとは思ってもみなかったよ」

 

 ポッドの中に浮かぶ脳味噌、最高評議会の一人が室内にいる人影に尋ね、人影もまた答える。

 

 「我等とて貴様を目覚めさせるのは本意ではなかった」

 

 「左様。だが我等の『駒』が予想外にも早く消えてしまい、手駒が無いのが現状だ」

 

 「だから私を貴方達の手足として使おうと?」

 

 「無論だ。新たな『駒』が出来次第、貴様には再び眠りに就いてもらう」

 

 「抵抗は無駄だ。貴様も我等には逆らえぬ様『枷』を……」

 

 ザシュッ

 

 そこから先の言葉を発する事は無かった。部屋の中に居る人影がポッドの中にいる脳味噌をポッドごと真っ二つに斬り裂いたからだ。いつの間にか人影の手には剣が握られていた。

 

 「なっ!?き、貴様……」

 

 ザシュッ

 

 人影の行動を見た別の脳味噌が言葉を紡ごうとするがまたも最後まで言い終える事が出来ず、ポッドもろとも斬り伏せられた。

 

 「これで後は…」

 

 最後に残った脳味噌が浮かんでいるポッドに人影は少しずつ近づいて行く。

 

 「ば、馬鹿な!?貴様には確かに『枷』を施した筈!!何故我等に逆らえる!?何故我等を殺せる!?」

 

 「あの程度の術式で本当に私を抑え込めると思っていたのかね?私にとってはもはや児戯にも等しいレベルの術式だよ。解除法なんてとっくに知っている」

 

 「そ…そんな馬鹿な……」

 

 「もう充分に生きただろう。ゆっくりと休みたまえ」

 

 「や…止め……」

 

 最後の脳味噌もあっけなく切断された。

 

 「この様な姿になってまで生き恥を晒す事はないだろう。『死』という安らぎを与えた私に感謝したまえ」

 

 人影は足元に魔法陣を展開させる。姿が徐々に消えて行く。転移用の魔法陣だ。

 

 「さて、久方ぶりに目覚めたのだ。この世界に私の欲を満たせるだけの何かはあるのかな?」

 

 そう言い残し人影の姿は魔法陣と共に消え去った。

 後に残ったのはただただ静寂な空間と、真っ二つに斬り捨てられたかつて最高評議会と呼ばれた者達の脳味噌だけであった………。

 

 

 

 ~~第三者視点終了~~

 

 今日は夏休みの最終日。

 

 「……なあ、クロノ」

 

 「何だ?」

 

 「何で俺達、本局(・・)に呼ばれたんだ?」

 

 現在俺達はクロノに連れられて管理局の本局内を歩いている。

 

 「ああ、実は君達に会いたいって言う人がいてな」

 

 そう答えるクロノに俺達は首を傾げる。ちなみに俺が呼称を『俺達』、クロノが『君達』と言ってるのは案内役のクロノを除いても複数人いるからだ。

 

 「僕は夏休みの最終日ぐらいゆっくり家で過ごしたかったんだけどな」

 

 一人は親友である大槻亮太。そして…

 

 「「チッ…。何でオリ主の俺様がモブ共と一緒にいなきゃならねえんだよ?(夏休みはほとんど補習でなのは達と会う機会もほとんど無かったしよ)」」

 

 相変わらずシンクロ率抜群な銀髪コンビ…西条と吉満だった。

 

 「会いたいって…俺と亮太は局員ですらないのにか?」

 

 「その事についてはこれから会う人に聞いてくれ。ただ…」

 

 「ただ?」

 

 「その人の階級は本局の少将でな。出来るだけ粗相の無い様にしてくれ。特にそっちの二人は」

 

 クロノは西条と吉満の方を見て言う。

 

 「何でテメエの言う事守らなきゃいけねえんだよ(なのは達の頼みなら何でも聞いてやるんだがな)」

 

 「そもそも用があるならソッチから来いっつーんだよ(俺から会いに行くのはなのは達だけで充分なんだよ)」

 

 凄え上から目線だなコイツ等。

 

 「…なら君達の好きにすればいいさ。その代わり管理局員としての資格を剥奪され局員を辞めさせられる事になっても一切文句は言わない事だ」

 

 「「チッ」」

 

 舌打ちすんなよ。

 …それにしても本局の少将ねえ。一体どんな人だろうか?

 しばらく本局の廊下を歩いて一つの扉の前に立ち止まる。

 

 「クロノ・ハラオウンです鳴海少将。例の四人を連れてきました」

 

 扉をノックした後、部屋の中にいるであろう人物に声を掛ける。

 

 「ああ、すまないなハラオウン執務官。彼等を部屋に入れてくれたまえ」

 

 「はい。……という訳だ」

 

 「???クロノは一緒じゃないのか?」

 

 「僕は君達をここまで連れて来る事だけだったからね。もし用が済んだなら1階のロビーまで来てくれ。僕はそこで待っているから」

 

 クロノは俺達に背を向け、来た道を引き返して行く。

 俺達だけをご指名ねえ…。そもそも『鳴海少将』なんて人物は原作には出てこなかったし、名前からすると地球出身どころか日本人っぽいし、完全なイレギュラーって事か?

 …気にしても仕方ないか。とっとと会って用件を済ませてしまおう。

 

 「「失礼します」」

 

 俺と亮太が先に入り、続いて西条と吉満が部屋に入ってくる。

 そして部屋に居た、俺達を呼んだ人物を見て俺達は固まった。

 

 「よく来てくれたね。私が鳴海(なるみ)(さとし)、本局の少将を務めさせてもらっている者だ」

 

 鳴海少将が自己紹介してくれるが俺達はただ驚いた表情を浮かべたまま聞く事しか出来なかった。

 この人の容姿は前世で読んだ漫画、『魔法先生ネギま!』の主人公ネギの父親である『ナギ・スプリングフィールド』に瓜二つだからだ。違いと言えば口調と髪、瞳の色が日本人らしく黒色ってところぐらいか。

 ……これって偶然なのか?

 

 「どうしたんだい?緊張する事はないよ。そこのソファーにでも掛けてくれたまえ」

 

 その言葉でハッとした俺達はとりあえずソファーに座る。

 

 「さて、私が君達を呼んだのは理由が二つ程あってね。一つはこの世界に存在する私以外の転生者達(・・・・・・・・)がどんな者達か一目見ておきたかったのだよ」

 

 …ヲイ、今この人何て言った?

 俺の聞き間違いじゃなければ『転生者』という単語が聞こえたぞ。しかも『私以外』とも言っていた。なら、この人も俺達と同じ…

 

 「「テメエも転生者か!!」」

 

 俺が聞こうとする前に先程の言葉に反応した西条、吉満。

 

 「ああ、この世界に最初に転生した者だ。しかも第97管理外世界、地球出身だよ。つまり君達の先輩という事だね」

 

 「テメエさっき『私以外の転生者達』とか言いやがったな!?」

 

 「ならこのモブ達も転生者って事か!?」

 

 あ、バレた。

 俺達を指差しながら転生者の先輩だという鳴海少将に聞く西条。というか相手は年上なんだから敬語使えよ。

 

 「そうだ。この部屋に居る者は全員転生者だよ」

 

 鳴海少将が俺達の代わりに西条の言葉を肯定する。

 

 「そうか…そういう事か。道理でモブのクセに俺のなのは達に近付く訳だ」

 

 「テメエ等もハーレム狙いのモブ転生者って事か!」

 

 「…お前等と一緒にすんな」

 

 「全くだね。僕はアイシスちゃん一筋だっていうのに」

 

 『オリ主=ハーレム』なんていう式を勝手に立てないで貰いたい。

 

 「「何言ってやがるモブ!アイシスも将来は俺の女に『ピュンッ』…」」

 

 西条と吉満が何か言い終える前に亮太がマジレーザーをぶっ放して二人を沈黙させた。

 

 「ははは、何を言ってるのかな君達は?少しは身の程を弁えなよ」

 

 「ふむ。一悶着があるかもと思って結界を張っておいて正解だったね」

 

 目が笑っていない亮太と冷静に自分の行為が正しかったと評価している鳴海少将。

 『確かに結界張ってる。これは防音と人払いも兼ねてるな』と結界の分析をする俺。誰も銀髪コンビの心配してる者はこの部屋に居なかった………。

 

 

 

 亮太の制裁を受けた銀髪コンビを放置して俺と亮太は改めて鳴海少将と向き合う。

 

 「それで鳴海少将でしたよね?少将がこの世界に転生したのはいつなんですか?」

 

 「私がこの世界に転生してきたのは26年前だよ。管理局に勤め始めてもう15年になるかな」

 

 26年前…という事は原作主人公のなのはが生まれる15年前にこの世界に来て11歳で管理局員になったのか。

 

 「少将は原作介入しようとは思わなかったのですか?」

 

 亮太が質問する。

 

 「私は『リリカルなのは』の原作知識を一切持っていないからね」

 

 少将はどうやら前世でリリカルなのはを見た事が無いらしい。

 

 「あれ?でも転生する際にデバイス貰ってますよね?デバイスには原作知識が入ってる筈なんですけど…」

 

 「普通はそうらしいけどね。私は神様に頼んでデバイスに原作知識を入れない様にしてもらったんだ。自分から進んで関わる気は無かったんでね。もし自分でも気付かない内に関わっていたならその時はその時さ」

 

 どうやらこの人も自分からは不介入派の転生者だった様だ。

 

 「ちなみに私の願いは『ナギ・スプリングフィールドの容姿で髪と瞳の色は黒』『『ネギま!』作品内の全ての魔法・技が使用可能』『身体能力・魔力をナギと同レベル』で、レアスキルは『神楽坂明日菜の『魔力完全無効化能力(マジック・キャンセラー)』』だね」

 

 つまり作品内の魔法・技が全て使え、魔力を無効化出来るナギか。

 ……結構なチートですな。魔力無効化とか魔導師泣かせにも程がある。俺の唯我独尊(オンリーワンフラワー)も人の事は言えないが。

 

 「…折角教えて貰ったから自己紹介ついでに俺も言った方が公平ですよね。俺は長谷川勇紀といいます。俺の願いは『『そらのおとしもの』のイカロス、ニンフ、アストレアの武装を魔法として使用出来る』『『Hyper→Highspeed→Genius』の能力(ギフト)を全てレアスキル扱いで所持。訓練によりギフトの強化可能』『シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリを助けてほしい』ですね。3つ目の願いは神様が勝手に四人を人間にしたりもしましたけど。それとレアスキルは『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』です。王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の中身は一応、原作の英雄王と同じ中身…を頼んだはずなんですけど何故か原典以外の宝具もあります」

 

 「僕は大槻亮太です。願いは『見聞色、武装色、覇王色の覇気を使用可能』『『指銃』『嵐脚』『剃』『月歩』『鉄塊』『紙絵』の『六式』を使用可能』『僕自身の成長の限界を無しに』です。レアスキルは『自然(ロギア)系・(ピカピカ)』です」

 

 俺も亮太も自己紹介がてら転生の際の願いとレアスキルを鳴海少将に教える。てか亮太の願いを知ったのは今が初めてだったりする。覇気や六式も使え、成長限界無しとか。魔法やレアスキル、宝具を使わない純粋な戦闘なら絶対俺より強いな。

 

 「別に君達の願いやレアスキルまで言わなくても良かったのだが」

 

 苦笑しながら鳴海少将は言う。

 

 「しかし原作知識も無く管理外世界である地球に転生した少将がどういった経緯で管理局員に?何かきっかけでもあったのですか?」

 

 「私の両親が元管理局員だったのだよ。そして私が成長するにつれて魔力も大きくなっていったのでね。ある時に両親が管理局に私を入局させたという訳さ。その両親は今、管理局を退職して地球でノンビリ過ごしているがね」

 

 両親が元管理局員か。なら原作知識も無く管理外世界出身の転生者が局員になれるのも不思議じゃないか。

 

 「そう言えば僕達を呼んだ理由は二つあるんですよね?一つは少将が個人的に会いたかったというのは分かったのですが、あと一つの理由は何ですか?」

 

 「実は君達に言いたい事があると神様に言われてね」

 

 「「神様に?」」

 

 俺と亮太は声を揃えて聞き返す。

 

 「うん。少し待ってくれたまえ。今神様に連絡を取るから」

 

 そう言って少将の意識が俺達から離れたのが何となく分かる。どうやら念話みたいな手段で神様に連絡してるっぽい。

 

 「「うう…ここは?」」

 

 ちょうどそんな時に銀髪コンビが目を覚ました。意外に早く目覚めたな。

 

 「そこの二人も目が覚めたかい?丁度良かった」

 

 起き上がった二人にも少将はここに呼んだもう一つの理由…『神様が何やら言いたい事があるらしい』と話す。

 そう言うと同時に空間にディスプレイが現れ、画面には俺達の見知った姿でありこの世界に転生させてくれた神様が映っていた。

 

 『やあやあ転生者の諸君。元気に過ごしているかな?』

 

 ニコニコと笑顔で俺達に話し掛けてくる神様。

 

 「あー、お久しぶりです」

 

 「僕達は元気ですよ」

 

 「何の用だよ?」

 

 「つまんねえ事だったらブン殴るぞ」

 

 俺と亮太は普通に返すが西条、吉満は神様に対しても偉そうな態度で接する。

 

 『勇紀に亮太は礼儀正しくて結構。貴志に英伸、君達は相変わらずだな。少しは礼儀を学びなさい』

 

 神様、あの二人に注意しても多分直る事は無いと思うぞ。

 

 「んな事ぁどうでもいいんだよ。さっさと用件を言え用件を」

 

 「わざわざ時間を割いてやってんだ。感謝しろ」

 

 『…はあ、もういいよ。君達には何言っても無理そうだな』

 

 諦めちゃったよ。神様でもお手上げって事か。

 

 『とはいえ、用件を早く伝えておくのには賛成だ。とりあえず君達がいる世界にまた二人、転生者を送ったので仲良くしてあげてね』

 

 「「「「は?」」」」

 

 俺達四人の声が重なった。鳴海少将は特に反応せず聞いているだけ。

 

 『時期は君達の2学期が始まる明日から。勇紀、亮太の通う海小に一人と貴志、英伸の通う聖祥に一人転校してくるから』

 

 「いやいやいや!!また転生者が来るって何で!?まさかまたうっかりで殺したとかじゃないですよね!?」

 

 『……………………』(サッ)

 

 視線逸らしやがった!!この人何回うっかりミスして人の人生終わらせたら気が済むんだ?

 

 『い、いいじゃないか!願いを叶えたりしてチートな能力(チカラ)をプレゼントしてるんだから!!』

 

 俺の心を読んだ上に逆ギレかよ!何でもかんでもプレゼントすりゃいいってもんじゃないだろが!

 

 『こ、これで用件は伝えたからね!それじゃ!!』

 

 ディスプレイが消えた。神様め、逃げやがったな。

 

 「まあ、そういう訳だから明日に来るらしい転生者達とも仲良くしてあげてくれたまえ」

 

 そう言って鳴海少将が締め括る。これ以上はもうここに居ても意味無いな。亮太も俺と同じ事を思ったのだろう。スッと立ち上がって扉の前に向かい、俺もその後を追いかける。

 

 「「じゃあ失礼しました」」

 

 部屋を出る前に頭を下げて挨拶する。

 

 「ここへは気軽に来てくれて構わないよ。同じ転生者同士だ。出来れば今後も仲良くしたいと私は思っているからね」

 

 「「ありがとうございます」」

 

 そう言って俺と亮太は退室する。その少し後ろを銀髪コンビが着いて来る。廊下を歩き、クロノが待っている1階のロビーに向かう。

 ロビーに着くと同時にクロノも俺達の存在に気が付いた。

 

 「もう済んだのかい?」

 

 俺と亮太は同時に頷く。これで本局に居る理由も無いので転送ポートに行き、地球へ転送してもらう。

 転送先は月村邸の庭だ。普段の時間帯で人気の無い所なんて海鳴にはあまり無いからな。魔導師の事やら管理局の事を知っているアリサかすずかの家の庭に転送してもらうのが他人に見られる心配が無いからな。バニングス家と月村家の皆さんは魔導師の存在知ってるらしいし(バニングス家で住み込みで働く執事さん、メイドさん含む)。……ホント、魔導師の存在バレ過ぎじゃね?執事さんやメイドさんには周囲に言いふらさない様にと口止めしていて皆さんちゃんと守ってくれてるらしいからいいけどさ。

 

 「「すずかー!お前に会いに来たぜー」」

 

 銀髪コンビは月村邸の方に行き、玄関の前で声を上げてすずかの名前を呼んでいる…が、当のすずかは居なかったりする。あらかじめ俺が『自宅に籠もってると銀髪コンビに絡まれるかも』と警告しといたからな。今は誰かの家に避難しに行ってるだろう。

 とりあえず俺と亮太はあの二人を放置して月村邸の門を抜ける(後でエイミイさんにでも連絡してあの二人を転移しといて貰おう)。

 

 「しかしまた来るんだね。新しい転生者が二人も」

 

 「頭痛の種になりそうだな」

 

 「そうかい?」

 

 「何となくだけどな。二人の内どっちか、もしくは二人共西条、吉満に続く自称オリ主君が来そうな予感がするんだよ。しかも銀髪、イケメン、オッドアイの三拍子そろえて」

 

 「……だ、大丈夫じゃないかな?真面目な転生者が来ると思うけど」

 

 「俺だってそう願いたいけど…」

 

 「『三度目の正直』っていう言葉もあるんだし、きっと大丈夫だよ」

 

 「『二度ある事は三度ある』と言う言葉も存在するけどな」

 

 「「……………………」」

 

 しばらく沈黙が続く。

 

 「…とりあえず期待はしとこうよ。するだけならタダだし」

 

 「…そうだな」

 

 その後亮太と別れるまで俺達は一言も発する事は無かった。

 どうか次の転生者は二人共亮太や鳴海少将みたいなまともな転生者でありますように………。

 

 

 

 翌日……。

 今日から2学期が始まり俺達は学校に登校。教室の席に座って他のクラスメイトとの雑談に興じていた。

 

 キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン…

 

 予鈴が鳴ったので皆席に着く。本鈴が鳴る少し前に担任(ロリコン)が教室に入ってきた。物凄い笑顔で。

 

 「全員席に着いてるな~♪愛しい天使(リトル・レディ)達は皆元気そうで何よりだ♪野郎共はどうでもいいがな」

 

 …相変わらずな人だ。

 

 「今から2学期の始業式だ。全員廊下に並べ~。このクソ暑い中あの校長(ハゲ)の戯言を聞きに行くぞ~」

 

 校長はハゲてないぞ。むしろモサモサだ。 

 皆教室を出て廊下に並び、体育館の方へ移動する。

 

 「ねえねえユウ。今日の先生凄い笑顔だったけど何かあったのかな?」

 

 「嬉しい事でもあったんだろ」

 

 「嬉しい事かあ。何だろうね?」

 

 「さあな」

 

 レヴィと会話しながら体育館へ向かうが俺としては何となく予想出来る。多分今日からこの学校に通う転生者の事だろう。おそらく俺達のクラス、しかも女子に違いないな。そうじゃなきゃ亮太が転校してきた時の様な態度になる筈だし。

 体育館に到着し校長の話に耳を傾ける。といっても5分程で話が終わりさっさと教室に戻る事になる。ウチの学校の校長は話が短くて助かる。前世では10~20分は喋る奴ばっかだったからな。

 

 「さて、今日はお前等に新しいクラスメイトを紹介する♪」

 

 教室に戻って担任(ロリコン)が発する第一声。教室がざわめき出す。

 

 「しかも女子だ!このクラスに天使が一人増える事になる!!」

 

 「「「「「「「「「「おっしゃああああああっっっっっっ!!!」」」」」」」」」」

 

 クラス中の男子達(俺と亮太は除く)から大歓声が沸く。

 

 「愛しい天使(リトル・レディ)達は彼女と仲良くする様に。男共は手を出さない様に。特に小僧と坊主!!」

 

 担任(ロリコン)が俺と亮太の方を睨みながら声を上げる(亮太は坊主と呼ばれている)。

 

 「貴様等はすぐに手を出す女癖の悪さが目立つからな。手を出したら即断罪だ覚えておけ!!」

 

 「「「「「「「「「「そうだそうだ!!」」」」」」」」」」

 

 「「女癖悪いとか人聞きの悪い事言うな!(言わないで下さい!)」」

 

 担任(ロリコン)の言葉を俺と亮太は否定する。とんでもない事言う人だ。

 

 「…まあいい。いつまでも天使(レディ)を廊下で待たせておくのも忍びないからな。入ってきなさい」

 

 担任(ロリコン)の言葉の後に扉を開け、一人の女の子が入ってきて教壇の前で立ち止まる。

 腰の辺りまで伸びている黒い長髪に黒い瞳の少女。桜色の艶やかな唇に眩しいくらいの白い肌。クラスの男子達は皆彼女に見とれている。

 

 「さあ天使(レディ)。自己紹介を」

 

 担任(ロリコン)の言葉にコクンと頷き黒板に自分の名前を書いていく。そして再び俺達の方に向き直って

 

 「初めまして。私の名前は滝島(たきしま)椿姫(つばき)よ。よろしくね」(ニコッ)

 

 「「「「「「「「「「!!!////////」」」」」」」」」」

 

 転校生の笑顔で男子全員の顔が真っ赤に染まる。

 

 「グハッ!」

 

 担任(ロリコン)は吐血した。あの笑顔でそこまでのダメージを受けるのか?

 

 「おお、正しく天使だ。このクラスに五人目の天使が降臨なされた」

 

 「有り難や有り難や」

 

 「俺、男に産まれてよかった」

 

 男子達が次々に転校生の少女を見ながら口にする。口を開いていない男子は俺と亮太だけだな。

 

 「……」(チラッ)

 

 ふと少女の視線がこちらに向く。その後亮太の方にも。

 …神様から俺達の事は聞いてるだろうから気付いてて当然だわな。

 それにしても彼女からは魔力を感じないな。リミッターでもかけてるのか魔力の無い転生者なのか…。

 

 ジーーー×4

 

 「《…何で俺を見てるんですかね?》」

 

 シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリが俺を見てるので念話で理由を聞いてみる。

 

 「「「「《別に何でもないです》《何でもないよ》《何でもない》」」」」

 

 …そうですか。

 

 「先生、私の席は何処なのでしょうか?」

 

 「うむ。席は準備しているが今日から新学期が始まるという事で席替えをする予定なのだよ」

 

 担任(ロリコン)ハンカチで口元を拭いながら質問に答える。

 席替えか。俺としては別にどこでもいいし。

 

 「という訳でクジは既に作ってある。出席番号順にクジを引くように」

 

 こうして席替えが始まった………。

 

 

 

 今日の行事は始業式以外には特に何も無いのでHRを終えた後、俺と亮太は校舎の屋上に来て人払いの結界を張っている。理由は担任(ロリコン)クラスの男子(バーサーカー)達に追いかけられ、ここに誰も近付かない様にするためである。全ては席替え後の席のせいだ。

 俺は教室のど真ん中の席になった。その左隣にはディアーチェ、右隣には転校生にして転生者であろう人物、滝島がいるからだ。そして滝島の更に隣が亮太だったりする。シュテルは廊下側の一番前、レヴィは前回と同じ席、ユーリは窓側の前から二番目の席だ。ディアーチェは何だか嬉しそうだったけどシュテル、レヴィ、ユーリはこっちを睨んでいた。…なんでさ?

 そして『転校生の両隣の席を俺と亮太がゲットした』というだけの事で鬼ごっこが始まった訳だ。クジの結果こうなっただけなのに理不尽極まりない。

 そこで俺と亮太は一目散に教室を飛び出した後、屋上に来て現在に至る訳だ。

 

 「それにしても転生者は女の子か」

 

 しかも昨日、神様が言ってた事を振り返ると俺や亮太みたいに赤ちゃんからの転生じゃなく、俺達と同年代からの転生みたいだし。

 

 「昨日言っていた勇紀の頭痛の種が解消されたね」

 

 「少なくとも海小(ウチ)側の転生者はな。聖祥(むこう)側の転生者はどんなのかまだ分からんし」

 

 もし聖祥に三人目の銀髪、イケメン、オッドアイな自称オリ主君が登場したらなのは達はストレスで死ぬんじゃないだろうか?

 

 「まあね。でも今日は彼女…滝島さんだっけ?話す事が出来なさそうだね」

 

 「というよりも教室で話す事も出来なさそうだ」

 

 話しかけたら即鬼ごっこになりそうだもん。

 

 「まあいずれ話す機会があるだろ。その時まで待つさ」

 

 「あら?私は今話したいと思ってるのだけど?」

 

 「「!!?」」

 

 俺と亮太以外の声が結界内に響く。バッと後ろを振り返るといつの間にか彼女はそこにいた(・・・・・・・・)

 

 「貴方達が私より先にこの世界に転生していた転生者ね」

 

 「…その通り。同い年みたいだけど一応先輩って事になるかな」

 

 「驚いたね。勇紀の張った結界内にいつの間に入ってたんだい?しかも僕達に気付かれずに」

 

 亮太の言う通りだ。いつ彼女が入ってきたのか全く気付かなかった。

 

 「それは私のレアスキルの能力(チカラ)ね」

 

 「「レアスキル…」」

 

 何だろう?

 

 「腑罪証明(アリバイブロック)はご存じ?」

 

 「……あー、『めだかボックス』か」

 

 たしか『安心院なじみ』が所有している何処にでも行けるスキルだったよな?

 

 「ひょっとして1京を超えるスキルを全部所有してるとか?」

 

 原作にも出てきていないスキルとかは見たかったりする。

 

 「そんなにスキルを貰っても全部使うなんてことは無いでしょ。死延足(デッドロック)を貰えば永遠に生き続ける事は可能でしょうけど私はそんなに生きるつもりないもの」

 

 「「確かに」」

 

 親しい人が寿命で死んでいく中、自分だけが生き続けるとか拷問にも等しい。

 

 「私の願った内容は『完成(ジ エンド)のスキルが欲しい』『カミカゼ☆エクスプローラー!のメティスを全て使用可能』『魔力ランクを最高クラスに』の3つとレアスキルが先程言った『腑罪証明(アリバイブロック)』ね。ちなみに今私の魔力を感知出来ないと思うけどリミッター付けてるのが理由よ」

 

 やっぱリミッター付けてたのか。

 

 「めだかボックスといえば大嘘憑き(オールフィクション)とか却本作り(ブックメーカー)が有った筈だけど?」

 

 前世の頃読んでいた二次小説の転生者でめだかボックスの能力を選ぶオリ主って大抵がその二つを貰うのが多かったと記憶してるんだけどな。

 

 「私、球磨川君はあまり好きなキャラじゃないから」

 

 「「成る程」」

 

 好きなキャラを基準に能力貰いましたか。

 

 「それで、もし良ければ貴方達の願い事やレアスキルも教えてくれないかしら?」

 

 「まあ、構わないけど…」

 

 そうして俺と亮太は自己紹介がてら鳴海少将の時と同じ内容を話すのだった………。

 

 

 

 あれから無事に学校を抜け出せた俺と亮太(認識阻害を使用した)、そして新しい転生者の椿姫(名前で呼んでと言われたので)の三人。途中でシュテル達と合流して(お互いに自己紹介、更に椿姫が魔導師というのも言ってある)歓迎会を行うために翠屋に向かっている訳なのだが

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ…

 

 シュテル達から俺に向けて凄いプレッシャーを感じる。

 

 「…あー、シュテルさん、レヴィさん、ディアーチェさん、ユーリさん。何故に俺を睨むのでしょうか?」

 

 「「「「別に睨んでなんかいませんよ(いないよ)(いないぞ)」」」」

 

 なら未だに俺に向けているその鋭い視線は何なのでしょうか?

 俺は溜め息を吐かざるを得ない。しかし

 

 「なあ椿姫…」

 

 ギロッ×4

 

 …後ろを歩く四人が放つプレッシャーが増したんだけど。

 

 「何かしら?」

 

 「歓迎会の場所を翠屋にするのはよさないか?また今度行けばいいわけだし今日は別の場所にしてくれ」

 

 「嫌よ。私はあそこのシュークリームが食べたいもの」

 

 …亮太の時もだったけどあそこのシュークリームには転生者を引き寄せる魔力でもあんのか?確かに美味しいんだけどね。

 

 「勇紀。諦めなよ」

 

 「(こうなればなのは達が居ない事を祈ろう。いや、なのは達は居てもいいから銀髪コンビと新しい転生者が居ない事を祈ろう)…分かったよ。諦めて行く」

 

 最悪、居た場合はその時に対策考えりゃいいだろう。

 

 「ユウキ。随分彼女と仲が良いのですね。出会ってそれ程経ってもいないのにもう名前で呼び合うぐらいに」

 

 俺の背後から声を掛けてくるシュテルさん。言葉に棘があるなあ。

 

 「名前で呼んでほしいと言ってきたのは椿姫からだし、友達になったからなあ」

 

 椿姫は亮太、鳴海少将のようなマトモな転生者だから良かった。

 

 「女誑しですね」

 

 「女誑しだね」

 

 「女誑しめ」

 

 「女誑しです」

 

 「友達になっただけでその評価は酷くないですかね!?」

 

 我が家の皆さんはどうしてこう異性と友達になる事に厳しいのか。

 

 「……ふう~ん、そういう事♪」

 

 何やら今の会話を聞き、四人の表情を見た椿姫が何やら嫌らしい笑みを浮かべ

 

 ギュッ

 

 「「「「なっ!?」」」」

 

 あろう事か俺の腕に自分の腕を絡めてきた。

 

 「…いきなり何するんだ?」

 

 ただでさえ暑いのに抱き着かれたらコイツの体温のせいで余計に暑く感じる。

 

 「気にしないで。転校してきて最初の異性の友達が出来たから少しサービスをね♪」

 

 「何がサービスだ。それに亮太も一緒にいたんだからサービスしてやるなら亮太にしてやれ」

 

 てか亮太の方に行って下さいマジで。

 

 「「「「……………………」」」」

 

 コイツが抱き着いてからシュテル達から放たれてるプレッシャーが更に膨れ上がって半端無いんだよ!

 

 「あら。確かに亮太も居たけど最初に会話したのは勇紀、貴方よ。だから正確な順番をつけるなら貴方が友達第一号ね」

 

 知らねえよ!とにかくアッチ行ってくれよ!!

 

 「これは大変な事になるね」

 

 そう思うなら冷静に観察してないで助けてくれよ亮太!!

 

 「まあサービスはこのぐらいにしてあげましょうか」

 

 するりと絡めていた腕を解く。助かった…

 

 「帰ったらO☆HA☆NA☆SHIですかね」(ボソッ)

 

 …訳では無かった。後ろでシュテルが物騒な事呟いてる。俺ヤバい!このままだとマジヤバい!

 俺は『お前のせいだぞ』という思いを込めて椿姫を睨む。理由は分からんがシュテル達の機嫌が悪くなったのは間違い無くさっきのコイツの行動のせいだと思う。当の本人は『やれやれ』といった感じで

 

 「四人共、勇紀の事許してあげなさいな」

 

 四人を宥めるのに一役買ってくれる。

 

 「…私達が不機嫌になった元凶の一端が貴女だという自覚はあるのですか?」

 

 今度は椿姫の方をシュテル達が睨む。

 

 「私がさっきやった事を羨ましいと思うなら貴方達もやれば?幸いな事に勇紀の腕は二本あるんだから二人それぞれが片腕に抱き着けばいいじゃない」(ボソボソ)

 

 「「「「む……」」」」

 

 椿姫が何か小声で囁いて鋭かった視線が若干柔らかくなった。

 

 「だが、それでは二人しか役得がないではないか」(ボソボソ)

 

 「翠屋に着くまで二人、翠屋から家に帰るまで残りの二人が腕を組んで歩けば公平でしょ?」(ボソボソ)

 

 「「「「!!!」」」」

 

 「だから今回はもう許してあげなさいな」(ボソボソ)

 

 「元凶の元である貴女に言われるのは少々納得出来ませんがそれは良い案ですね。確かに皆が平等に勇紀と腕を組める」(ボソボソ)

 

 「そういう事♪私も『少し彼をからかうためにやり過ぎたかな』とは思ったり思ってなかったり」(ボソボソ)

 

 「どっちなのだ貴様は」(ボソボソ)

 

 「まあ少なくとも彼に対して貴方達みたいに恋愛感情は持ってないからその点は安心して。それより早くしないとこのまま翠屋に着いてしまったら帰りの二人しか腕を組めなくなるわよ」(ボソボソ)

 

 「それは困るよ。僕はユウと腕を組みたい!!」(ボソボソ)

 

 「私もです。シュテル、ディアーチェ。早く順番を決めましょう」(ボソボソ)

 

 …さっきから何をヒソヒソと話してるんだ?

 あ、何か四人がジャンケンし出した。……何で?

 

 

 

 それから翠屋に着くまで俺は左腕をシュテル、右腕をレヴィの二人に抱き着かれ、腕を絡められたまま歩いていた。さっきのジャンケンの意味を今更ながらに理解した。

 …まあO☆HA☆NA☆SHIを回避出来るならこれぐらいは喜んで引き受けるさ。…暑いけど。

 

 「「////////」」

 

 二人も暑いだろうに何故こんな事したがるんだ?顔を赤くしてまで。熱中症になるよ。

 

 「二人共、翠屋に着いたのでとりあえず腕を離して貰えますか?」

 

 このままだと入り口の扉を開けられん。

 

 「他の人が開ければいいと思います」

 

 「そうだね」

 

 …どうやら中に入るまで離してくれないようだ。

 

 「じゃあ僕が開けてあげるから先に入りなよ」

 

 亮太が扉を開けてくれるので俺はシュテル、レヴィと腕を組んだまま店内に入る。そんな俺達に続いてディアーチェ、ユーリ、亮太、椿姫も店内に。

 店内に入るも店員さんが誰もいない。そして奥に居る唯一のお客さん。

 …………なのは達だ。苦い表情を浮かべてるが。

 …この状況って亮太の歓迎会と全く同じ状況だ。まさかとは思うが。

 なのは達の周囲をよく見ると……………………居たよ。相変わらずの銀髪コンビに

 

 

 

 

 

 銀髪、オッドアイな女の子(・・・)が居た。

 

 ……………………

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 「「今度は女の子かよ!?(女の子なのかい!?)」」

 

 俺と亮太は同時に叫んでいた。シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリは俺と亮太がいきなり大声を上げた事に驚き、椿姫は無言でなのは達の方を見ている。なのは達も俺と亮太の声に反応してこちらを見る。

 …いや待て。まだあの新顔の転生者が銀髪コンビと同じ性格とは限らない。容姿だけあんな感じで中身はマトモな人物だという可能性は十分にあるんだ。何より女の子だしな。なのは達は銀髪コンビがいるからあんな表情を浮かべていただけかもしれない。というかそうであってほしい。あの性格が常時三人はキツ過ぎる(吉満が王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)使えばその数は更に二百人増える事になるが)。

 とりあえず距離を置こう。銀髪コンビは面倒臭い。そう言ってなのは達と反対側の席に俺達は移動するが

 

 「「ちょっと待てやモブ!!何俺のシュテル達に手ぇ出してんだゴラア!!」」

 

 やはり見逃してはくれなかった。

 

 「…シュテル、レヴィ。とりあえず離れてくれ」

 

 ただでさえ面倒な状況だ。下手にアイツ等刺激して余計に面倒な事はしたくない。

 

 「ユウキ、怖いです///」(ギュッ)

 

 「アイツ等に変な事されちゃう。ユウ助けて///」(ギュッ)

 

 余計に抱き着いてきた!?

 

 「「何してんだモブ!!シュテル達が嫌がってるじゃねえか!!早く離れねえとブッ殺すぞ!!」

 

 神経逆撫でしてるよシュテルさん、レヴィさん。

 

 「二人共!離れぬか!!」

 

 「そうですよ。もう翠屋に着いたじゃないですか!!」

 

 ディアーチェとユーリが強引に引き剥がしてくれる。おかげで俺の両腕は解放された。

 

 「(はあ~…)二人共、離れたぞ。これで満足か?」

 

 「けっ!分かりゃいいんだよモブが。身の程を弁えておけ」

 

 「シュテル、レヴィ大丈夫か?今俺が助けてやるからな」(ニコッ)

 

 敵意剥き出しで西条、吉満の二人が凄んでるがコイツ等の実力は知ってる分、正直怖くも何ともないしな。

 

 「なあ勇紀君、何で二人と腕組んでたんかな?」

 

 「そうだね、詳しく教えてよ勇紀」

 

 口を開いたと思ったら凄く不機嫌そうなはやてとフェイト。アリシアとすずかも同じように俺を睨む。だから何で俺が睨まれなきゃならんのさ?

 

 「ほほう、あの四人も…」

 

 椿姫も何か面白いものでも見つけたかの様にニヤリとしてるし。

 …また俺が巻き込まれる気がしてならんのだが。

 

 「まあ後でな。今日は海小(ウチ)の転校生の歓迎会しにきたんだよ」

 

 そう言って椿姫を紹介し、聖祥組のメンバーとお互いに自己紹介し合ったた後、俺達は開いているテーブル席に着くがなのは達も移動してきてこっちに来る。そしその後を追いかけてこちらに来る銀髪コンビと新顔の転生者さん。

 

 「えっと…そちらの子は?」

 

 亮太が早速新顔の子についてなのは達に聞く。

 

 「アンタ達の所と同じで今日から聖祥(ウチ)に転校してきた子よ。そこの馬鹿二人と一緒で勝手に着いてきたの」

 

 ハア~と溜め息を吐くアリサ。あれ、新顔の子は歓迎されてないのか?当の本人はさっきからシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリをいやらしい目で舐め回す様に、椿姫に関しては様子を窺う様な感じで見て、俺と亮太に関しては視線を合わせようともせずガン無視だ。銀髪コンビは椿姫を見ている。昨日神様が言ってたんだし、椿姫が転生者だとは気付いてるだろうな。シュテル達はその視線を受けて不愉快そうな表情を浮かべた。

 …この新顔の転生者の性格を何となく理解した。つまりは…

 

 「うふふ。初めましてシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、それに椿姫だったかしら?私は『(あかつき)(みお)って言うの。これからよろしくね」(ニコッ)

 

 …間違い無い。自称オリ主系の転生者だ。しかも性別が女性である事、シュテル達をいやらしい目で見ていた事から百合系ハーレムでも目指すタイプか。俺の嫌な予感が完全じゃないとはいえ当たっていたよ。

 

 「ハア~…性別が変わっただけでまたこの手の人間ですか」

 

 「小鴉、貴様の学校には碌な奴が転校して来ぬようだな」

 

 「皆大変だね」

 

 「私達は勇紀と同じ海小で本当に良かったです」

 

 「私はソッチ系の人間じゃないからよろしくしたくは無いわね」

 

 シュテルが溜め息を吐き、ディアーチェ、レヴィは同情し、ユーリは聖祥に通っていない事に安堵し、椿姫はハッキリと『仲良くしたくない』と言う。

 

 「「おい暁!!俺のシュテルにレヴィにディアーチェにユーリに椿姫が嫌がってるじゃねえか!!」」

 

 銀髪コンビが早速暁という転生者に食って掛かる。珍しいな。コイツ等が女の子に食って掛かるなんて。転生者を警戒してるなら椿姫にも敵意を向けそうなもんだけどそんな感じは無いし…。

 もしかしてアレか?『同族嫌悪』って事か?なら納得出来るな。

 あと、椿姫を早速『俺の』扱いですか。椿姫の方を見ると『勝手な事言ってくれるじゃない!』って感じで僅かに怒気を放ち始める。

 

 「黙りなさい踏み台の豚共!そもそもなのは達に嫌われている事にも気付かない時点でもう踏み台だと確定してるようなもんでしょう!オリ主は私だといい加減気付きなさいな」

 

 「「んだとオラアッ!!」」

 

 ガタッと音を立て椅子から荒々しく立ち上がる銀髪コンビ。とりあえず俺は傍観に徹しよう。潰し合うならお前等だけで勝手にやってくれ。

 

 「おや勇紀君達かい?いらっしゃい」

 

 カウンターの奥から士郎さんが現れた。

 

 「君達もお昼を食べにきたのかい?」

 

 「いえ、俺達は新しく転校してきた子の歓迎会をしようと思って…。お昼を食べるつもりでは無かったんです」

 

 家でメガーヌさんが昼食を作ってくれるだろうからな。ルーテシアも待ってるし軽く食べたらお土産にシュークリームでも買ってさっさと帰る予定だ。

 

 「そうか。じゃあ新しい子って言うのはその子の事かい?」

 

 士郎さんが椿姫を見て椿姫も立ち上がって挨拶する。

 

 「初めまして。滝島椿姫と言います」(ニコッ)

 

 「(ドキッ!)あ…ああ。僕は高町士郎。そこにいるなのはの父親だよ。よろしく//」

 

 …士郎さんの頬が若干赤いのは気のせいか?

 

 「???どうかしましたか?」

 

 「い、いや!何でもないよ!今すぐシュークリームを用意するから少し待っててくれ//」

 

 そそくさと士郎さんがカウンターの奥に消える。…俺達何も注文してないのに。

 

 「良い笑顔だな椿姫。流石俺の嫁だぜ。士郎なんかに向けたのは気に入らんがな」

 

 「何言ってやがる西条!コイツは俺の女なんだ!寝言ほざいてんじゃねえ!!」

 

 「五月蠅いわよ豚共!私の椿姫に汚らわしい声を聞かせないで頂戴!」

 

 …何つーか自己中ここに極まれりというか。椿姫の意思を無視して平気で言えるコイツ等って…。

 

 「椿姫ちゃんも大変なの」

 

 「なのは、あの三人にとっては貴女も私と同じ扱いだろうから自分だけ無関係って訳じゃないわよ」

 

 俺達の視線の先には口論が段々ヒートアップしてる銀髪コンビと暁……もう銀髪トリオでいいや。

 誰か奴らを止めてくれと俺は切に願うのだった………。

 


 
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