まえがき コメントありがとうございます。およそ二ヶ月ぶりの本編です。今回で第参節は終了です。拠点で一気に仲間の増えた一刀たち蜀勢。新しい仲間たちとの活躍をお楽しみください。それではごゆっくりしていってください。
黄巾党討伐を迎えた一刀たちは月たちとともに謁見の間に集まっていた。
「今回討伐に向かうのは俺たちの陣営と卑弥呼、恋、ねねというふうに決まったけど、異論はない?」
そう尋ねると華陀が挙手した。まぁこう来ることは大体予想できたことだからね。
「俺も力になれるが思うんだが、なぜ俺が外されているのか理由を聞きたい。」
「華陀には洛陽の市に体調を崩している人たちがいないかの調査と、もしいた場合の治療を頼みたい。やっぱり医療が市まで届いていないことが多いからね。」
「私の部隊を預けますから補佐に使ってください。部隊の指揮は蒼さんに頼んでいます。」
「そういうわけだから、今回は悪いけど頼まれてくれないか?」
「そういう理由なら断るわけにはいかないな。病魔を取り除くことが俺の仕事だ。しかし、清羅の部隊を借りてもいいのか?少しでも兵は多いほうが良いと思うのだが。」
「ちょっと前なら清羅の部隊も連れて行くところだったけど、卑弥呼がいるからね。」
「儂がおるのじゃ。ダーリンは安心して治療に専念すると良い。」
「他に異論はない?」
うん。異論はないようだね。これでようやく出発できる。
「皆さん、くれぐれも無理のない様にお願いします。私は何もお役には立てませんが、ここで皆さんの無事を祈っています。」
「大丈夫だよ。皆強いもん!私も見守ることしか出来ないけど・・・。」
二人ともまたそんなこと考えてたのか。俺は桃香と月に傍によるように言った。
「良い?俺たちは二人が見守ってくれてるから戦えるんだよ。」
「ご主人様・・・。」
「一刀さん・・・。」
「だからさ、二人が何も出来ないなんてことはないんだ。二人には二人にしか出来ないことがあるから。」
「せやで。うちかてそんなこと言うなら槍を振るうことしかできひん。誰にだって得手不得手があるんや。」
「そうだね。じゃあ私も頑張って皆のこと見守る!」
「はい。私もちょっと元気が出てきました。それでは私の出来ることに専念します。」
俺たちはそれから洛陽を後にして洛陽と南陽の国境付近へと兵を進めることにした。
・・・。
「流琉、やっぱり緊張してるでしょ?」
「そ、そんなことありませんよ?なんせ、兄様と一緒なのですから!」
「うーん、それならいいんだけど。きついときはすぐに言いなよ?」
「皆さん頑張られているのです。私だけ甘えるわけにはいきません!」
「そっか・・・。一緒に頑張ろうな。」
「はい!」
本当は緊張していたのですが、兄様とこうしてお話しただけでそれもどこかに飛んで行っちゃいました。うん、私もお役にたてるように頑張ろう!
「恋ちゃん、ねねちゃんと二人だけだけど良かったの?」
「大丈夫。恋、強いから。」
「そうですぞ!恋殿は最強なのです。黄巾党ごときに負ける理由がないのです。」
「あはは。それは頼もしいね。」
「星、どっちがたくさん敵をぶっ飛ばせるか勝負なのだ!」
「ほう、それはいいな。良かろう、その勝負乗った。」
「こら二人とも!これは鍛錬じゃないんだぞ!気を緩めるな!」
「う~、愛紗が怒ったのだ~。」
「愛紗は主が流琉とばかり喋っているから気が立っているのだ。ここは甘んじて怒られておけ。」
「べ、別にご主人様が話してくれないとかそのような理由ではない!というか私は星にも言ってるんだ!何を他人事のように・・・。」
「そうかりかりするな。短気な女はご主人様に愛想つかされるぞ?」
「誰のせいで怒っていると思ってるんだ・・・。」
賑やかな雰囲気も、それから五里ほど進み、黄巾党を目撃したと伝令が来た途端に緊張感が一気に高まった。
「伝令!ここから二里先に黄巾党と思われる集団を見つけました!」
「分かった。もう下がっていいよ。」
「失礼します。」
二里先か、結構近いな。伝令さんが隊列に戻ると皆を呼び近くに集まってもらった。
「それじゃあ各自、配置について戦闘準備を始めて。指示はそれぞれ軍師に一任する。これに何か異論がある人いる?」
「異議なし!」
「よし!じゃあ皆、武運を!!!」
「武運を!!!」
・・・。
「お姉ちゃん、お腹空いたよ~。」
「天和姉さん、もう少しで洛陽に着くからもう少し我慢して。」
「は~い。」
「それにしてもこんなにすんなり行けちゃうなんて結構余裕ね。ちぃたちってやっぱり最強♪」
「地和姉さん、あまり油断しない方がいいわ。」
けど、ここまで来たらもう一歩だわ。洛陽を拠点に出来れば私の活動の範囲をもっと広げられる。ここは慎重に・・・。
「申し上げます!」
ん?伝令が一人こちらに近寄ってきた。何かしら?
「二里先からこちらにいくつかの部隊が近づいてきます!」
「え!?」
いくつかの部隊・・・。いえ、落ち着くのよ。こちらには三万の兵がいるのよ。負けるはずがないわ。
「牙門旗の旗印は?」
「中央に劉、関、十!左方に張、趙、韓!右方に・・・呂!深紅の呂旗です!」
・・・。
「董卓軍所属、第一師団師団長。目的、北上してくる黄巾党の殲滅。」
「天公将軍様!お下がりください!」
「わ、分かったわ。姉さん、下がるわよ!急いで!」
「う、うん!」
「お前ら!三姉妹方をお守りするぞ!命に代えても!」
「おうっ!!!」
こんなの予想外だわ。何でこんなところにあの呂布が・・・。しかも呂布だけでなく他の諸侯まで。洛陽にこんな部隊がいるなんて報告は無かったのに!
「ねね、下がれ。」
「はいです!恋殿、ご武運をっ!」
「・・・(コクッ)」
くそっ!なんて威圧だ・・・。まともに近づきたくもねぇ。だが、張角様たちをお守りしなければ!!
「し、死ねええええええっ!」
「お前が死ね」
目の前で仲間の体が真っ二つになって死んでいく。
「よくも仲間を!うおおおおおっ!」
「遅すぎる・・・。」
恋は苦もなく賊の首を狩りとっていく。地は賊の血によって染められていった。
「一匹ずつは面倒だ、まとめてかかってこい。」
「くっ・・・なめやがって!」
「行くぞ!黄天の世のためにっ!」
「蒼天すでに死す!黄天まさに立つべし!」
「・・・蒼天は死なず・・・しかして駆けるは羽虫にあらず・・・蒼天は龍が駆ける場所。だから・・・・・・・羽虫は死ね。」
・・・
呂布のやつ、最初から飛ばしておるな。儂も負けておれんぞ!
「ほれほれ、儂に敵うおのこはおらぬのか?」
「うっ・・・おい、お前が先に行け!」
「嫌だ!あんなバケモノ誰が相手にするか!」
「誰が顔を見るだけで三日三晩うなされて夢に出てきそうな顔のバケモノじゃと!?」
「そこまで言ってねぇぇえええええええ!」
「来ぬならこちらから行くぞ!はぁぁぁぁぁぁぁぁあああんんん!」
「ぎゃああああああああぁぁぁ!!!」
卑弥呼が相手をするたびにその兵たちが泣き叫びながら吹き飛んでいく。味方ながらおぞましいやつだ・・・。
「愛紗~、鈴々たちいなくてもあいつだけでやっていけそうなのだ・・・。」
「き、気のせいだ。私たちも敵の殲滅に向かうぞ!」
「合点承知なのだ!」
「ふむ。とはいっても、あらかた片づけられてしまったがな。」
「・・・。」
・・・
「二人とも飛ばしてるな~。」
俺は流琉と敵を薙ぎ倒しているんだが、それよりも二人の方が倒している数が多い。少し見るだけで分かる。恋は俺と鍛錬していた時より殺気が凄まじい。あれに対峙したら俺から向かっていくのは難しいだろうな。卑弥呼は・・・、なんか対峙してる兵が可愛そうに思えるくらい叫んでいる。ご愁傷様。
「兄様、こちらもあらかた終わりました!」
「うん、お疲れ様。」
「兄様もお疲れ様です。」
俺たちはとりあえず右陣、左陣を本陣に集まるとこれからどうするか対策を練ることにした。
・・・
「ふぅ、流石にここまで来たら追ってはこないわよね。」
「お姉ちゃん疲れたよ~。」
「そうね。けど、ここで失った兵は少なくないわ。」
また兵を集めるとこから始めようかしら・・・。けど、各地に残している部隊はまだまだあるから一時は大丈夫ね。
「あらん、丁度いいところで人を発見~。ちょ~っと聞きたいことがあるんだけど・・・。」
・・・え?さっきいたやつの仲間かしら?いや、そんなことより・・・気持ち悪い!
「・・・。」
「どうして固まっちゃってるのかしら?私の美貌に圧倒されて言葉が出てこないのね。私ったら罪な女♪」
「・・・な、なんなのよこのバケモノは!!突然現れてビックリしちゃったじゃない!!」
「だぁぁれがビックリ仰天が一周回って、元に戻って二度ビックリですってぇぇ!」
「きゃぁぁぁあああああ!!!!」
・・・
「え!?何、悲鳴!?」
「南方の森の方からです。」
「俺、ちょっと行ってくる!」
俺は一目散に森へ駆けだした。
「ご主人様、お待ちください!私も行きます!桃香様たちはここで待っていてください。」
・・・
「口を挟む間もなく行っちゃった・・・。」
「愛紗は主と桃香様一筋ですからな。頭より先に体が動いたとみるべきでしょう。」
「恋も、行きたかった。」
むっ!この気はまさしくあやつのものじゃ!これは儂も行かねばならぬの。
「熊さ~ん、どこに行くんですか~?」
「儂の旧友の気配がするのじゃ!儂も北郷一刀の後を追う!」
「行ってらっしゃ~い!」
卑弥呼さんの旧友・・・。その人も卑弥呼さんみたいな恰好なのかな?待たされている者たちの不安は募る一方であった。
・・・
俺は愛紗たちと合流後、森に入り先ほどの悲鳴が聞こえた場所へ向かった。
「しかし、先ほどの悲鳴はなんだったのでしょう?・・・も、もしや妖の類とでも遭遇したのでしょうか?」
愛紗の顔がどんどん青ざめていく。相変わらず怖いものが苦手なんだな~。そういうとこも可愛いんだけどね。
「大丈夫だよ。もしそうだったとしても俺がついてるしね。卑弥呼もいるし。」
「ふん、妖なぞ儂の漢女の力で蹴散らしてくれるわ!ガハハハハ!」
「漢女道って奥が深いんだな。見た目はあれにしても習得しておくには損はないかも。」
「いや、ご主人様・・・それはお止め下さい・・・。」
「なんじゃ、美桜殿に教わらなかったのか?漢女道の源流、始祖はあの方じゃぞ?」
「・・・は?」
「女でありながらあの豪胆さ、戦のときの無慈悲なほどの力、指揮の采配、年齢を重ねても色褪せぬ美貌、どれをとっても完璧じゃった。」
「ちょっと待って。お婆ちゃんはもしかして『現代』の人じゃなかったり・・・。」
「うむ、そうじゃな。今のお主と同じような体験を影刀殿もして美桜殿と知り合ったのじゃ。」
俺の生まれる前にそんなことがあったのか・・・。じゃあお婆ちゃんも歴史上の人とか・・・十分にありえるぞ。
・・・
「くしゅん!」
「お母さま、風邪でも引いたのですか?」
「こやつが風邪など引くはずなかろう。一刀か漢女の連中が噂でもしておるのじゃな。」
「まぁ、失礼しちゃうわ!私だって風邪くらい・・・。」
「儂はお前と出会って60年、一度も体調を崩しておるところを見たことないのじゃが?」
「・・・そうね、ないわ。」
「母さんは一刀が風邪で寝込んだ時に三日三晩、隣で看病しててもけろっとしてたからね。」
「あら、あなたたちだって風邪など引いているところ、私は見たことないのだけど?」
「ないな。」
「ないですね。」
「同じくありませんね。」
北郷家の体の丈夫さは折り紙つきのようだ。
・・・
俺たちは先へ進むと奇妙な光景に遭遇した。にじりにじりと近づくオカマにそれからじりじりと一歩ずつ下がっていく女の子たち三人。どう見ても遊んでるようには見えないし・・・。助けた方がいいよな。
「ほう、ついにおなごにも手を出すようになったか、貂蝉。」
「あら、どこか懐かしい声が聞こえるじゃな~い。その声は・・・卑弥呼!」
「苦労して倭から来てみれば・・・漢女道の神髄を忘れたか。」
「手を出していいのは可愛いおのこだけ♪忘れるわけないじゃな~い。」
・・・聞き間違いだよな?いや、絶対そうだ。あの貂蝉さんじゃないよな。どこでどう間違えてもあれにはならないはず・・・。
「助けてください!このバケモノが突然現れて・・・。」
「何よ!一匹増えたじゃない!」
「と、とりあえず大丈夫だから。危害は加えられないから安心して?」
「あ、ありがと~。お姉ちゃん、驚きすぎて腰抜かしちゃったよ~。」
ありゃりゃ、立てなくなっちゃったのか。まぁ、突然こんなのが現れたら腰抜かすのも仕方ないのかな。
「ご主人様、とりあえず問題は解決したようなので私は桃香様たちに報告してきます。」
「うん、お願い。」
愛紗は駆け足で森を抜けて行った。
「ん?そ、の、こ、え、は、・・・ご主人様じゃな~い、会いたかったわ~ん!!」
貂蝉が腰をくねらせながら俺のことをご主人様と呼んでくる。正直すごく怖い。これなら本気の恋と対峙した方が幾分かましに思えるくらいに。
「そ、その、会った覚えがないのですが・・・。」
「あらん、や~ね~、貂蝉ちゃんよ?忘れちゃったのかしら~?」
「いえ、貂蝉さんは知ってるのですがあなたのことは知りません。」
「その貂蝉さんであってるわよん♪」
「・・・。一体、何がどうなってるのさ・・・。」
その一刀のぼやきは誰かに聞かれるわけでもなく空気に霧散していった。
・・・
「あ、愛紗ちゃん戻ってきたよ。おかえり~。」
「ただいま戻りました。問題は解決したのですが・・・。」
「何かあったの?」
これは行っても良いのだろうか・・・。いや、今のうちに言っておいた方がのちの衝撃は和らぐだろうから言っておこう。
「そのですね、・・・卑弥呼と同系統の者が出現しました。」
「さっき熊さんが言っていた旧友の方ですね。どんな方なんですか?」
「禿で三つ編みのお下げで桃色の下着を着けている色黒大男です・・・。」
「・・・卑弥呼よりバケモノ化していると思うのは私だけか?」
「だぁれが卑弥呼より筋肉隆々であら不思議、カエルも見るだけで逃げていくほどバケモノ面ですってぇ~!」
「きゃああぁぁぁ!!」
「はわわ~~~!!」
「あわわ!!!」
・・・
星、朱里、雛里が飛び退いて俺の背後まで逃げてきた・・・。というか、俺も今戻ってきたばかりなのによく気付いたね。
「貂蝉、戻ってきたばかりなのにいきなり背後に現れたら驚くでしょ。」
「いやね~、軽いスキンシップじゃない。固いことは気にしないの♪」
「すきんしっぷ?」
「あ~、なんていうのかな?仲の良い人同士の触れ合いみたいなものだよ。」
「わ、私はこのような者と知り合った覚えはありませぬ・・・。」
「そうね、覚えてなくてもおかしくないわ。あの頃は私も若かったもの・・・。」
「そ、そうか。」
いつ会ったんだろう?星のことだしこの手の類は覚えてそうだけど・・・。まぁ貂蝉のことだし色々とあるんだろうな。深くは詮索しない。
「あれ?そういえば卑弥呼さんは?」
「あぁ、卑弥呼は森で会った女の子たちを冀州まで送りに行ったよ。」
「あそこは黄巾党の本陣がありますよ。行かせて大丈夫なのですか?」
「大丈夫だよ。行くときも儂に任せろ。って言っていたし。なによりあの卑弥呼だからね。ちょっとやそっとじゃやられないよ。」
「・・・それもそうですね。」
「それと、貂蝉もこれから俺たちの仲間になってくれるって。」
「えええええぇぇぇ!?」
「戦力的には大幅に向上すると思うよ。」
「ご主人様のためならたとえ火の中水の中、お尻の中にだってイケちゃうわよ~ん!」
「いや、最後のは遠慮しとくよ・・・。」
一瞬にして冷や汗が噴き出してきた。俺、一人で寝るのがちょっと怖くなってきた・・・。
「と、とりあえず、桃香の意見を聞かせてくれないか?俺の独断じゃ皆も納得しないだろうから。」
「私はご主人様が良いって言うなら全然良いよ。ご主人様が認めた人なら信頼できるからね。これからよろしくお願いします、貂蝉さん。私は劉備、字は玄徳。真名は桃香です。」
「都の踊り子、貂蝉よん~。腰とお尻のサイズは秘密☆」
「いや、むしろ言わなくていいから・・・。」
俺たちは互いに真名を預けあいながら討伐の終了を報告するために洛陽へ足を向けた。
・・・
「華琳様、黄巾党本陣と思われる一団を発見したと報告を受けました。」
「よし、では隊を編成し討伐に向かわせろ!」
「御意。」
後はここの本陣を叩くだけね。ったく、劉備たちは何をしているのかしら?三万の黄巾党を相手にするのはまだ無理があったのかしら・・・。
「か、華琳様~!」
「何?」
「ば、バケモノが黄巾党の本陣を圧倒しています!!」
「・・・はあああ!!!???どういう状況か説明しなさい!」
「そ、それが、怪しい恰好をした大男が突然現れて黄巾党の兵を襲っているようです。こちらの兵も突然のことに混乱しています。」
バケモノ?いや、この程度の問題で動揺していては覇王を名乗る資格なんてないわ!
「相手が動揺しているうちにそれに乗じて兵を進軍させなさい!誰かある!」
「ここに。」
「秋蘭にもこのことを知らせなさい!大至急よ!」
「御意!」
・・・
「なんじゃなんじゃ!骨のあるおのこはおらぬのか!」
「く、来るなー!」
「き、キモい!」
「おい!隊列を乱すな!」
私たち、助けてもらったのはいいんだけどうちの兵がどんどん減らされていく・・・。どうしよう・・・今さら名を名乗るわけにもいかないし・・・。
「人和、どうするのよ!このままじゃ私たちの兵たちが減っていくだけじゃない!」
「今考えてる!ちょっと待って!」
ここから動けばあのオカマに怪しまれる。けど動かないとうちの兵が減っていく・・・。どうすれば・・・。
「あなたたち、張三姉妹ね?」
「え!?」
突然現れたのは、陳留の長、曹操孟徳。私たち、絶対絶命!
・・・
俺たちは貂蝉を仲間に加えた状態で洛陽に戻ってきたんだが、想定通りと言った方が良いのか、市の人々から注目の的になっている。戦い終わった後で若干ボロボロなのもあるかもしれないが、ほとんどの原因がこれ。
「あらん~、皆私のこと見てるわ。私に見惚れているのね。恥ずかしいわん。」
・・・一度貂蝉の頭の中を見てみたいよ。どんな思考回路を持っていたらそんなにポジティブに考えることが出来るのだろうか。ひとまず城に行って月と詠に報告だな。
「ただいま戻りました。」
「あ、皆さん、お帰りなさ・・・ひっ!」
「な、なんか増えとる・・・。」
「あんたたち、次は何を拾ってきたのよ・・・。」
「拾ってきたって・・・犬とか猫じゃないんだから。」
「熊さんの旧友の貂蝉さんです。良い方ですよ。お話も面白いし、兄様のことをお慕いしてるみたいですから。」
「ご主人様のためならたとえ」
「それはもういいから。」
「そ、そうですか。はじめまして。私は洛陽太守、董卓仲頴です。」
とりあえず皆が集まったときに改めて貂蝉を紹介しよう。『こっち』に来る前からの知り合いだけど俺も知らないことが多いからな。機会があればいろいろと聞いてみたいことがあるからね。
「お部屋が今のところ余っていないので卑弥呼さんと同じ部屋になるのですがいいですか?」
「いいわよん。本当ならご主人様と相部屋がいいんだけど。」
「ごめん、遠慮させてもらうよ。」
そんなことになるくらいなら外で野宿したほうがましだ・・・。
「それより、戻ってきたんだから報告してもらえない?」
「そうだね。朱里、お願いできる?」
「分かりました。敵兵、黄巾党三万、殲滅完了しました。主格の人物は見当たりませんでしたが・・・。」
「そう・・・。まぁ、とりあえずはお疲れ様。今日はゆっくり休んでちょうだい。」
「そうさせてもらうよ~。私もへとへと。ちょっとお部屋で一眠りしてくるね。」
「はい。夕飯の時間には起こしに来ますね。」
「お願いね~。ご主人様も一緒に寝る?」
「!!桃香さん、抜け駆けはずるいですよ~!」
桃香が俺に悪戯っぽく言ってくる。うーん、いつもならお断りするところだけど今は俺も疲れがたまってるからな。ここは桃香の提案に甘えさせてもらおう。
「じゃあ俺も一緒に寝させてもらおうかな。」
「え!?ホント?」
「先に聞いてきてそれはないよ・・・。」
「だ、だっていつもこういうこと聞くとご主人様、頷いてくれないんだもん。」
「今日は俺も疲れてるし、かといって空いてる部屋ないでしょ?俺の部屋、日替わりだし。」
「それもそうだね~。じゃあ月ちゃん、後で起こしてね~。」
「う~、私も一緒に添い寝してもらいたいです・・・。」
・・・
俺と桃香は月の部屋の寝台で横になっていた。疲れてたからすぐ眠れると思ったらそうでもなかった。やっぱり夜に寝る方が性に合ってるみたい。
「ご主人様、眠らないの?」
「なんか横になったら目が冴えちゃった。そういう桃香も眠かったんじゃないの?」
「私もご主人様と同じ。ご主人様が隣にいてくれるからかな?」
「くすっ。なら俺はお邪魔だったかな?」
「そんなことないよ。ご主人様と一緒に入れて嬉しいもん♪」
「俺も桃香とこうしていれて嬉しいよ。」
「なんかこのまま寝ちゃうの、もったいなくなっちゃった。」
「じゃあ何かする?」
「じゃあ~、・・・何かない?」
「それじゃあしりとりとかどう?」
「しりとり?」
「俺が言った言葉の最後の文字から始まる言葉を言って、それを次の人・・・つまり俺ね。で桃香が言った言葉の最後の文字を言ってそれを繰り返すっていう遊びだよ。最後に『ん』が付いた言葉を言った方が負けね。」
「分かった!」
俺たちは寝るのを忘れてしりとりに没頭していった。それにしても、カタカナとか英語なしでしりとりって難しいな。予想以上に苦戦を強いられたよ・・・。
・・・
俺たちはその夜、貂蝉との親睦会とお疲れ会を兼ねて宴をすることになったんだけど、朱里と雛里は疲れたみたいで俺の膝の上ですぐに寝ちゃった。今、俺は飲み物を持って壁にもたれかかっている。二人とも、お疲れ様。二人の頭を撫でたら擽ったそうに身をよじった。
「ご主人様、お隣よろしいですか?」
「ん?清羅か。どうぞ。」
「失礼します。」
「清羅は宴、楽しんでる?」
「はい。さっきまで星ちゃんや霞ちゃんと吞み比べしてました。」
あの二人と吞み比べ・・・。俺もこの前あれに付き合ったけど結構きついものがあった。というか、あの二人は全然ペースが落ちないんだよな。あのペースでよくあれだけの量を呑めるもんだ・・・。
「清羅ってお酒に強いんだね。」
「他の人より少し強いだけですよ。それに、私から見ればご主人様も十分にお強い方だと思うのですが。」
「向こうにいたころにさ、たまに母さんや父さんと晩酌してたからかな。結構強いのもあったし。」
「今度、二人でのんびり呑みませんか?私がお酌しますよ。」
「いいね。楽しみにしてるよ。」
「はい♪」
・・・
宴も終わり今日は桃香と共に月の部屋にお邪魔することになった。ついでに言うと流琉は霞のお部屋になった。宴の時に馬が合ったらしい。それとついでに華佗なんだが、貂蝉が相部屋になったことにも有無を言わず了承してくれた。よく耐えれるよな・・・。
「さ、流石にこの寝台に三人は無理があるね。」
「すみません。もう少し私の体が大きければもっと大きな寝台を準備できるんですが・・・。」
「そんなことないよ~。こうやってご主人様にくっつけるしね~♪」
「俺もなんだかんだ役得だから細かいことは気にしないでいいよ。」
「そ、そうですか。」
俺は二人の間に挟まれてるんだが、寝台のサイズのせいで密着度が増してるんだよな~。最近この状況が多々あってる気がする・・・。
「今日はお二人ともお疲れ様でした。」
「月も待っててくれてありがとうね。お陰で俺も安心して戦うことが出来たよ。」
「ご主人様大活躍だったんだから!」
俺より卑弥呼と恋の方が活躍してた気がするんだけどね、俺的には。
「そろそろ俺も寝ようかな。なんだかんだでお昼は寝てなかったからね。」
「そうですか、おやすみなさい。」
「おやすみ~。」
「うん、おやすみ・・・zzz」
・・・
ご主人様、あっという間に寝ちゃった。相変わらず寝つき良いな~。
「桃香さんはいいですね、ずっと一刀さんと一緒にいられて・・・羨ましいです。」
「月ちゃん・・・。」
「私は洛陽の太守ですから。ここを離れるわけにはいきませんし、桃香さんたちにも目的・・・夢があるわけですからいずれはここを離れてしまうでしょう?」
「大丈夫だよ。離れていたってずっと会えない訳じゃないんだから。困ったときは皆でいつでも助けに来るから。」
「桃香さん・・・そうですね。ちょっと心配事が減りました。」
「うん。じゃあ私たちも寝ようか。」
「そうですね。おやすみなさい。」
「おやすみ~。」
・・・
それから日が経ち、卑弥呼が洛陽に戻ってきたのはそれから一週間後のことだった。そこで黄巾党が壊滅したことを聞かされ、俺たちは黄巾党を殲滅した功績から平原という街で相に任命されたということを知らされた。その翌日、俺たちは洛陽を出発する準備を終え、門の前まで来ていた。
「皆さん、これまでお世話になりました。」
「それを言うのは俺たちの方だよ。きっとまた来るから。」
「また宴を開いて騒ごうや。約束やで!」
「呑み仲間が減って残念だ。」
「とりあえず、あんたたちは平原まで無事に辿りつきなさいよ。」
「もちろん!詠ちゃんも元気でね?」
「ふん!桃香もね。」
本日の気候は快晴。少しの寂しさを残しながらも俺たちは月たちに見送られながら平原に向けて出発した。
あとがき 読んでくださりありがとうございます。第参節終了しました。洛陽を離れて平原へと移動を開始した一刀たちですが、月たちと別れるのは惜しいものです。貂蝉も加入したところで漢女二人、カオス度マックスになってしまいました。どうしよう・・・。まぁ、いいか♪ それでは次回 第四節 平原の相へ、新たな戦いの兆し でお会いしましょう。
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何でもござれの一刀が蜀√から桃香たちと共に大陸の平和に向けて頑張っていく笑いあり涙あり、恋もバトルもあるよSSです。