No.502298

【デジナミハロウィン】ハロウィン騒動ふたたび【小月暁夜】

七月一夜さん

ハッピーハロウィン!

ちょっとフライング気味ですが、今年もハロウィンの準備は……何とか間に合ったみたいです。

ご無沙汰してばかりですみません・・・。

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2012-10-30 23:32:26 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:586   閲覧ユーザー数:567

 

「いい加減に目を覚まさんかい、この阿呆!」

 

「っ!?!?

 何だ何が起こったバグか?トラブルか?今何時だ?

 ここはリアルか?デジナミ内か?」

 

 相棒の怒鳴り声で飛び起きた俺は、辺りを見回して首をかしげた。

 枕元にデジヴァイスが置いてある。

 先ほどの相棒の声はここから聞こえてきたものらしい。

 

 ……枕元?

 

 ここは見覚えのある仮眠室。

 俺も時々お世話になっている場所ではあるが、

 いつの間に移動したんだ。

 何だか身体の節々が痛い気がするけど、何でだ。

 というか、俺はデバッグをしていたんじゃなかったか。

 何でここで目が覚めるんだ?

 

 まだ寝起きで回らない頭を整理するために、

 枕元に置いてあったデジヴァイスを操作する。

 

 緊急呼び出しの場合、ここにメッセージが表示されるのだが、

 今のところそれは無いようだ。

 

 デジヴァイスは、機能拡張すれば時計や簡単なカレンダーとして使うことも出来る。

 何を忘れてもこれだけは忘れないと核心しているから、俺は重要事項、

 例えば仕事のスケジュールなどはここから見えるようにしている。

 

 一番最近の仕事の進捗を確認して、ほっと一息。

 

 直前に修正したPGの進捗は100%、つまり完了したということだ。

 三谷さんに手伝ってもらったから、何とか間に合った……んだろう。

 前後の記憶が飛んでいるので、定かでは無いんだが。

 

「いつまで惚けておるつもりじゃ、早う準備をせんか!

 今日が何日か忘れたのか!?」

 

 再び相棒に怒鳴られて、耳を押さえながら

 デジヴァイスを時計モードにする。

 

 『10月31日 AM10:59』

 

 表示された時間と日付を眺める。随分寝坊したな。

 嫌違う。何か大事なところを見落として……今日は31日?って、31日!?

 

「遅刻じゃないか、何で起こしてくれなかったんだ、ギル!」

 

「じゃから早うせいと言ったのじゃ」

 

 ジト目でこちらを睨む相棒の機嫌はすごぶる悪い、ようだ。

 俺はあわてて仮眠室を飛び出して、仕事場へ向かう。

 今日は俺の活動拠点、クレセントゾーンで開催するイベントの日だ。

 

 そう、俺が企画した、ハロウィンパーティーの。

 

 

「あ、おはよう暁良。もう大丈夫?」

「おはようございます、間宮さん。

 遅れてすいませんでした」

 

 少し心配そうに声を掛けて来た創佑に、仕事モードで返事をする。

 一応上司だし、ここは仕事場で他のGMも沢山いる。

 仕事時間内の公私混合は良くない、と俺は思っているからだ。

 

 ……そう、仕事時間内は。

 ハロウィンイベントのメインイベント、パーティーの開催は夜なので、

 俺含め、多くのGMの勤務時間が変則シフトで夜中心になっている。

 そのために、個人的な作業は仕事時間外、つまり今のうちにやっておく必要がある。

 

 PCを起動しつつ、視線を入り口に向けると、

 休憩中らしい星也さんがコーヒー片手に部屋に入ってきた。

 

「三谷さん、昨日はお手伝いありがとうございました。」

 

 俺一人でデバッグしていたら、きっと今日には間に合わなかっただろう確信がある。

 なにしろ俺はプログラムが得意ではないからだ。

 

「例なら不要だ。後輩の手伝いも仕事の内だからな。

 ……それよりも、お前たちの着る服は準備ができているのか?」

「あ、俺も気になる。

 暁良のことだから、去年みたいにすっごいゴージャスな服とか準備してるのかな??」

 

 星也さんと創佑の言葉に、去年のことを思い出す。

 確かに去年は電極が大量に付いた服を悪ふざけで作った。

 けれど、あれは先取りクリスマスツリーのコスチュームだったから、

 別にゴージャスではなかったはず。多分。

 

 今年もそっち系で行こうと思っていた、けど。

 

「残念ながら、今年は無しです。

 仕様変更やバグ修正で、作成する時間が無かったですから」

 

「え~、折角楽しみにしてたのに……残念」

 

 心底残念そうな創佑に、俺だって時間が合ったら作りたかったさ、と心の中で呟く。

 今からでも作るだけなら出来なくも無いが、それが原因で他の所に不具合が発生したら意味が無い。

 去年もテストと実装で3日かかったのだから、今年はもう無理だから地味に楽しむさ、と思っていた。

 

 ……この瞬間まで。

 

「なるほど、それでは問題無いな、間宮くん」

「そうだね、俺はやっぱり暁良が適任だと思うよ」

 

 頷き合って何か納得している様子の二人を横目に、

 俺は立ち上がったPCでメールを一通作成した。

 1ヶ月前に作成していたコードを添付し、手早く送信。

 これで俺のやりたかったことは全部完了だ。

 

 新しく来たメッセージを一つずつ確認して、

 一番下に表示されたメッセージに目を見張る。

 創佑からのメッセージに、添付されたファイルの作成者は星也さん。

 

「間宮さん、三谷さん、これは……」

「暁良が忙しそうだったから、三谷さんに頼んで前から準備してもらってたんだ」

 

 表示されていたメッセージには、【極秘イベント情報★吸血鬼出現!】とタイトルが記載されていた。

 内容としては、パーティー中にサプライズイベントとして、ヴァンデモンやピコデビモン達による妨害を行う。

 そいつらは親玉を倒せば消える、というものだった。

 親玉を倒した場合、参加した全てのプレイヤーに限定プレゼントを進呈。

 ただし、親玉は善良なデジモンを人質に取って逃走する、といういわゆる鬼ごっこもどきな要素も入るイベントらしい。

 

 そして、添付されていたファイルを開くと、衣装データが展開される。

 

「お前が既に衣装を準備していれば、俺がそれを使う予定だったが……お前の方が適任だろう。

 頑張れよ」

 

 さわやかに伝えられたその言葉に、俺は絶句するしかなかった。

 ……ああ、妹の可愛いコスプレ姿を堪能するつもりだったのに。

 

 

 

「レディースアンドジェントルマン!

 善良な参加者の諸君、今宵は楽しいパーティーというのに、

 私に声を掛けないとはどういうことかね?」

 

 時刻はパーティーの真っ最中。

 突如として会場の電気が全て切られ、辺りが騒然とする中朗々と声が響いた。

 私はりゅーちゃんのてをしっかり握って、声の聞こえた方向を見る。

 

 スポットライトの当てられたその場には、ヴァンデモンを筆頭に、様々なデジモンたち。

 そしてその中心には。

 

「あれは兄さん?

 パーティー中なのに、また人様にご迷惑を……」

 

「私は人が楽しくしているのが大嫌いだ。

 このパーティーは私が乗っ取った。

 このデジモンの命が惜しければ、皆家に帰るが良い!」

 

 高らかに笑い声を響かせるその声に、ふつふつと怒りがこみ上げる。

 折角みんな楽しんでいたのに。よりにもよってこんな時に!

 しかも、腕の中には小さなデジモンが抱えられている。

 

「りゅーちゃん、兄さんが抱えている子が誰なのか解る?」

「あれは……ギギモンであります!

 どうやら、パタモンの格好をしているようであります!

 何か食べている様でありますが、あんな高いところにいては危ないであります」

 

 ぷちっと音を立てて、私のなかで何かが切れる音がした。

 私に迷惑を掛けるくらいならともかくとして、今日は沢山人が集まるお祭りの日。

 それに加えて……。

 

「小さい子を捕まえていじめるなんて、最っ低!

 今日こそは捕まえて、皆さんに謝らせないと。

 いくよ、りゅーちゃん!」

 

「了解であります!」

 

 私は兄さんを捕まえるべく、りゅーちゃんを抱き上げて地面を蹴った。

 待ってなさい、兄さん。今日こそは捕まえてやるんだから!

 

 

 

 ○月×日 ギルの回想録より抜粋

 

 デバッグ後に倒れたアキラは、仮眠室で目覚めたのじゃが、

 今日が何の日かすっかり忘れておったらしい。

 パートナーとして情け無い……。

 

 その後、仕事部屋で創佑と星也から衣装を受け取り、頭を抱えておった。

 その結果、その数時間後、ハロウィンの宴の真っ最中に乱入することになり、

 いつものように妹御から逃げ回っておったわ。

 まあ、一般参加者からも追い掛け回されるのは普段と違ったがのう。

 

 そうそう、ハロウィンの衣装じゃが、アキラは吸血鬼。

 わしは……気が進まんかったが、パタモンの着ぐるみじゃった。

 

 何故その衣装で納得したかじゃと?

 そんな理由、天竜亭のあんぱん10個で手を打ったからに決まっておるじゃろう。

 


 
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