第百十四技 聖竜連合
キリトSide
『始まりの街』に転移した俺とアスナ。始まりの街はただただ暗く、重苦しい空気が広まっていた。
ゲーム開始時とはまったく違うものだった。
夜の帳が降りたこの街に流れるのは、NPCの楽団による鬱々とした旋律だけ。
プレイヤーの姿は見当たらず、目にするとしても『アインクラッド解放軍』の見回りくらいだ。
彼らは俺とアスナを見つけると警察官の如き勢いで迫ってくるのだが、
俺が軽く『覇気』と『殺気』をぶつけるとたちまち退散した。
ちなみにアスナには分からないようにしていたので、彼女はよく分かっていないようだった。
しばらくして『黒鉄宮』にある『生命の碑』に到着した。
「『Grimlock』は………あった。生きているな…」
生命の碑のGの欄からグリムロックの名を捜しだし確認する。そこでアスナからも声が上がった。
「カインズさんの名前は消失していたわ。時間も死因も間違いなかった…」
「そうか……。今日はここまでにしよう。グリムロックの捜索は明日にでも」
「わかったわ」
俺達は明日の早朝に再び57層の転移門広場に集まることを決めて、アスナはギルドホームのある層に帰っていった。
俺もメインの宿がある48層に転移した。
転移で広場に着いた俺を、七人ほどのプレイヤーが待っていた。
そこにいたのはギルド『聖竜連合』のプレイヤー達だった。その中の一人に見覚えがあり、俺は口を開いた。
「こんばんは、シュミットさん」
彼は聖竜連合のDF部隊隊長を務めている人だ。
何度か聖竜連合のリーダーであるウェルガーさんと共に会ったことがある。
過激派な者達がいる聖竜連合の中でも、彼はウェルガーさんと同じで俺に対しては特に嫌悪感を抱いていないのだ。
屈強そうな体付きをしたシュミットが俺に話しかけてきた。
「アンタに聞きたいことがあって待っていたんだ……キリトさん…。夕方、57層でのPK騒動のことなんだが…」
なるほど。彼も話を聞き及んだわけか。だが俺に直接聞く必要があるものなのか?
俺は彼の話を聞くために視線で先を促した。
「
「……ウィナー表示を見たものはいない。だが、あの衆人の中で見落とす可能性は低いから決闘の線は薄い。
今のところは未知のPK技と推測している」
俺の言葉に連合兵たちに微かな不安の様子が見て取れる。未知のPK技であればそうなるのも仕方が無い。
「やられたプレイヤー……カインズという名前で間違いないのか…?」
「事件の目撃者である友人から確認済みだ。先ほど黒鉄宮で時刻と死因も確認した」
そこでシュミットの表情に微かに変化があり、俺はそれに気づいた。
「なにか知ってるのか?」
「……アンタには関係ない」
どうやら何か訳ありみたいだが、あまり触れない方がよさそうだ。
「分かった、これ以上は聞かない。だが場合によっては無理にでも聞き出す。
今回の一件……もし
それなりの対処を考えないといけないからな…」
「……………」
彼は沈黙を続けたままだが、俺の言が正論と思ったのか頷いた。
「それとウェルガーさんにも警戒を強めるように言っといてもらえるか?」
「……分かった、遅くにすまなかった。みんな、戻ろう…」
「最後に一つだけ……」
立ち止まって振り向いた彼に、俺は先ほどの彼の反応からもう一つの名前を上げた。
「グリムロック」
「っ!?」
驚愕の表情を浮かべたシュミット。今の反応でわかった。
彼は被害者のカインズ氏、武器の製作者のグリムロック、被害者の友人であるヨルコさんと関係があるのだろう。
「シュミットさん。アンタに何があるのかは知らないが、気を付けた方がいい」
俺の忠告に彼は表情を厳しくしてから、連合兵達を連れて戻っていった。
今回の一件、簡単には済みそうにないな……。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
キリトと友好的なシュミット、原作とは違って凶器の槍は渡しませんでした。
細々としたところは原作とは違うので、そこらへんを楽しめていただけると幸いです。
それでは・・・。
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第百十四話です。
始まりの街に行ったキリトとアスナ、そのあとは・・・・・・。
どうぞ・・・。