第百七技 お昼寝
キリトSide
アスナとの
未だにアスナは帰ってこない。心配ではあるが、嫌な予感や不安が一切無いので大丈夫なはずだ。
「なにをやってるんだろうな……俺は…」
待っているのではなくアスナを探しにいけばいいのだ。幸い居場所はすぐに分かる。
ただ、何故だか待っていた方がいいという気がする。
アスナに会えば見てはいけないものを見そうな予感がする(アスナの自己嫌悪による呪詛の言葉を連呼する姿です)。
「そういえば……あの後だったんだよな。『圏内事件』が起こったのは…」
俺はアスナとの決闘後に遭遇して解決した『圏内事件』のことを思い出した。
~約半年前(アスナとの決闘終了後)~
今日の俺の目的はただ一つ、現在の最前線である第59層『ダナク』の広場にある芝生だ。
簡単に言おう。今日はアインクラッドで最高の季節と気象設定になっている。
こんな日は日頃から迷宮に入って疲れた心身を休めるのに最適だ。
というよりこんな日に迷宮に入るのはもったいない。
そういうわけで広場の芝生についた俺は早速寝転がった。
しばらくの間、そうやって眠っていると……、
「あの!」
大きな声で呼びかけられた。折角良い気持ちで寝ていたのに。
起きて振り向いてみるとそこにいたのは血盟騎士団副団長の……アスナ、だったか?
少し後ろの方には他の騎士団の者達もいるが、何故か俺を見て震えている。何故だ……?
「こんなところで寝ている暇があったら、迷宮に入って攻略を進めてください!」
「断る……」
「なっ!?」
迷宮攻略を進めるように言う彼女に俺はあっさりと断った。
なんで最高の天候の日に迷宮なんかに潜らなければならないんだ。絶対にお断りだ。
「今日はアインクラッドで最高の季節、最高の気象設定だからな。迷宮に潜るのはもったいない」
俺とてずっとここで寝ているつもりはない。体を休めたら迷宮にはいくつもりだ。
大体、昨日までずっと迷宮内のマッピングをしたりして潜ったままだったのだ。
少しぐらい休んでもバチは当たらないはず。
そこでふと俺は彼女の顔を見てみたが、随分と酷い顔をしていた。まるで何日も寝ていない様子だ。
「酷い顔してるぞ。お前も寝ていったらどうだ?」
俺の言葉に彼女は驚いた表情を浮かべて、すぐに俺の方を見つめた。
「……みなさんは先に行ってください」
彼女の言葉に騎士団のメンバーは少し戸惑ったものの、俺を見て一礼してから迷宮区へと向かって行った。
そして彼女は俺の隣に来て芝生の上に寝転がった。
するとすぐに眠気が襲ってきたのか、今にでも眠りそうになっている。俺はその様子に苦笑する。
「(クスッ)ついててやるから、寝ておけ…」
「(コクッ)………」
彼女は頷くとすぐに眠ってしまった。やはりほとんど寝ていなかったようだな。
もしかしたら彼女はこの世界に来てから碌に休んでいなかったのかもしれない。
聞いたことがある話だが、彼女はこのSAOの女性プレイヤーの中でも五指に入る程の美人らしい。
たしかに今隣で心地よさそうに眠っている彼女の美しさは見事なものだ。
けれど、そんなことなど彼女にとってはどうでもいい事のはずだ。
誰も彼女の本音を、本質をみてはいない。誰も彼女の苦しみに気付いてなどいない。
なら俺はこの少女になにをしてやれるのだろう…。
そこで俺は何故こんなにも彼女のことを考えているのかと思い、理解した。
「そうか…俺は君に……」
俺は彼女が、アスナが好きなのか…。今までのは愛しさ余って憎さ百倍というところか。
我ながら子供のようだ……まだ子供か。まぁ、気付けばこちらのものだ。
「でも俺には資格がないか……」
そうだ、俺には愛する資格も愛される資格もない。俺は『狩人』だからな。
しかしそんな考えとは裏腹に、心の中にある想いはどうやら大きいようだ。せめて……、
「距離ぐらいは…縮めたいよな……」
それくらいならば許されることを願いたいものだ。
俺は木陰で眠る姫騎士様が起きるまで近くで待っていることにした。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
はい、長編「圏内事件編」の始まりです。
原作と違い本作のキリトは鋭く賢い人ですので、アスナよりも先に考えが至ります。
基本は原作沿いになりますけどw
それでは、また・・・。
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第百七話です。
長編スタートの始まりになります。
どうぞ・・・。