あのレーディング・ゲームが終了し現在俺達はフェニックス主催の結婚式場にいた。
そこには大勢の悪魔がおり、焼き鳥野郎の眷属悪魔も控えていた。かく言う俺達グレモリー眷属達も会場にお呼ばれていて、イッセーとアーシアを除く眷属達が勢ぞろいだ。
「シー君。機嫌が悪いのは分かっているけど、もう少し抑えましょ?」
「ウルセェ」
豪華な和服に身を包んだ朱乃がこっちを覗き込みながら言うが俺は意に介さず煙草に火をつけた(因みにこれで十本目だ)。
「静雄君、ここはかなり上級階級の悪魔たちがいるんだから殺気を抑えて。さっきからだだ漏れだよ?」
「別にこれ位何時も通りだ」
白のタキシードを着た祐斗の言うとおり周りの貴族悪魔たちは此方とかなり距離を取っているが、そんな事に興味は無い。
「静雄先輩、顔が怖いです」
「普段通りだ」
ドレスを着た小猫が服の裾をひっぱりながら言うがそんな事どうでもいい。
「そもそも俺はここに来るつもりはなかったんだ。なのにテメェが無理やり連れてきたんだろうが」
俺に睨みつけられた朱乃は苦笑で返した。
そう、今回の婚約パーティーに俺は行くつもりは更々なかった。が、朱乃に強制的にスーツを着せられ無理やり連れてこられたのだ。
まぁ、どうせこいつ等の考えている事は分かっている。
「まあいい。どうせイッセーが来るまでの辛抱だからな・・・」
俺がそういいながら煙草を吸いこむと、待ち望んだ声が聞こえてきた。
「部長ぉぉぉぉっ!!」
イッセーの声が会場全体に響き渡った。
「やっと来たか・・・・」
イッセーを見ながら呟くと、朱乃達に目配せをした。朱乃達もわかっているのか無言で頷いた。
「ここにいる上級悪魔のみなさん!それに部長のお兄さんの魔王さま!俺は駒王学園オカルト研究部の兵藤一誠です!部長のリアス・グレモリーさまを連れ戻しに来ました!」
がやがやと騒がしくなる会場の中をイッセーはお構いなしに歩きだした。
「おい、貴様!ここがどこだと――――」
衛兵がイッセーを止めようとした瞬間、俺達は一斉に飛び出した。
「イッセー君、ここは僕達に任せて!」
「・・・・遅いです」
「あらあら、やっと来たんですね」
「遅いんだよ、この馬鹿」
俺達はそれぞれイッセーにいいながら衛兵を蹴散らした。
「部長――――リアス・グレモリーの処女は俺のもんだ!」
「―――――ッ!!」
イッセーの言葉に焼き鳥の顔が形容しがたい表情になった。
「クククッ、中々言うじゃねぇか」
「うふふ、それでこそイッセー君ですわ」
見事に言い切ったイッセーに俺と朱乃は衛兵を蹴散らしながら密かに笑った。
「私が用意した余興ですよ」
突然のことで困惑している上級悪魔たちの奥から一人の人物が現れた。
「お兄さま」
リアスに兄と言われた紅髪の人物こそリアスの兄にして現魔王『サーゼクス・ルシファー』だ。
「ドラゴンの力が見たくて、ついグレイフィアに頼んでしまいましてね」
「さ、サーゼクス様!そ、そのような勝手は!」
魔王さんの言葉に中年の上級悪魔が慌てふためいた。
「いいではないですか。この間の『レーディング・ゲーム』、実に楽しかった。しかしながら、ゲーム経験の無い妹が、フェニックス家の才児であるライザーくんと戦うには少々分が悪かったかなっと」
「・・・サーゼクス様は、この間の戦いが消せぬと?」
「いえいえ、そのようなことは。魔王の私があれこれ言ったら、旧家の顔が立ちますまい。上級悪魔同士の交流は大切なものですからね」
食えない人だと俺は思いながら、俺は魔王さん達の会話を聞いていた。
「では、サーゼクス。お主はどうしたいのかな?」
あの紅髪の中年は男は・・・リアスの親父さんだったっけか?
「父上。私は可愛い妹の婚約パーティーは派手にやりたいと思うのですよ。ドラゴン対フェニックス。最高の催しだと思いませんか?伝説の生物同士で会場を盛り上げる。これに勝る演出は無いでしょう?」
魔王さんの一言で全員が黙り込んだ。そして魔王さんはイッセーの方に向き直ると、
「ドラゴン使いくんお許しは出たよ。ライザー、リアスと私の前でその力今一度見せてくれるかな?」
「いいでしょう。サーゼクス様に頼まれたのなら断れるわけにもいかない。このライザー、身を固める前の最後の炎をお見せしましょう!」
ライザーのやる気の満ちた答えに満足すると魔王さんはイッセーに訊いてきた。
「ドラゴン使いくん、キミが勝った場合の代価は何がいい?」
「サーゼクス様!?」
「なんということを!?」
魔王さんの言葉に身内から非難の声が上がるが、
「悪魔なのですから、何かをさせる以上はこちらも相応のものを払わねばならないでしょう。さあ、キミ。何でもあげるよ。爵位かい?それとも絶世の美女かな?」
そんな声など気にせずに魔王さんはイッセーに問いかけた。
そしてそれはイッセーにとって最高の申し出だ。
「リアス・グレモリーさまを返してください」
「ククッ・・・」
イッセーの迷いの無い言葉に俺は知らず知らずに笑みがこぼれた。
「わかった。キミが勝ったらリアスを連れていけばいい」
「ありがとうございます!」
会場の奥に消えていく魔王さんにイッセーは頭を深く下げて見送っていった。
「・・・・さてっと・・・」
一連のやり取りを見た俺は会場から出て帰ろうとしていた。
その際、朱乃が何か言おうとしていたが言われる前にさっさと会場を後にした。
「どこへ行こうと言うんだい?」
不意に後ろから声をかけられた。
振り返らずとも背中越しから伝わる威圧感で簡単にわかる。
「別に家に帰るだけっすよ。魔王さん」
応えながら振り返ると紅髪の魔王ことサーゼクス・ルシファーが立っていた。珍しくメイドのグレイフィアは傍に控えていなかった。
「これからリアスの兵士(ポーン)とライザーの試合が始まるのだがキミは見ないのかい?」
「生憎と結果の見えた試合に興味は無いんっす」
「ほう?それはライザーが勝つという意味かい?それともリアスの兵士(ポーン)が勝つという事かい?」
「決まってんでしょ、ンな事は」
魔王さんの問いに俺は笑みを強くしながら答えた。
それだけで魔王さんは察したのか苦笑しながら肩をすくめた。
「大体アンタだろ?イッセーを嗾けたのは?」
「ほう?どうして私だと?」
よくもまぁぬけぬけと・・・。昔っからこの人は苦手だ。まるで此方の全てが分かってる様なそんな感じがしてつい身構えてしまう。
「大方グレイフィアを使って転移魔法陣をイッセーに渡したんだろ?随分と博打が好き見てぇだな、いくら赤龍帝を持っていても魔力がガキ以下の兵士(ポーン)がフェニックスに勝てるわけがねぇ」
「フフッ確かにそうだろう。だが不思議と彼は何かやってくれるんじゃないかと思うのだよ。キミとてそう思っているのだろう?」
「さあ、どうですかね?」
そう言って俺は魔王さんに背を向けて歩き出した。もう会場の準備も出来ているはずだろうからな・・・。
「静雄君。もう一度リアスの力になる気はないのかい?」
その問いに俺は足を止めて、
「・・・・そいつはこれからのアイツ次第っすね」
そういうと今度こそ俺は会場を後にした。
そうして俺はオカルト研究部に着くと満漢全席を作り(もちろん手作り)、リアスがいつも座っている机に置き手紙を置いて部室を後にした。
後に部室に帰って来たリアスとイッセーは部室のテーブルを覆い尽くす料理に驚き、リアスは自分のテーブルに置いてある置き手紙に目を通した。
『御破談、おめでとさん。これは破断祝いだ』
それ以来、静雄が部室に顔を出す事は無かった・・・・・・
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お久しぶりです。
長らくお待たせしました。
それと連絡事項でD×Dとサイバスターをハーメルンさまの方へ移転しようと思います。