土曜日の朝、竜児は思い切って9時に家を出た。
こんなに早く出たら待ち合わせの30分以上前につくことになるのだが
デートをしたことのない初心な竜児は
『ごめーん、待った?』 『ううん、今来たところ?』
とべたべたなやり取りをするのがデートの常なんだと信じていたのだ。
(やっぱ最初だしかっこいいとこ見せとかなきゃな、うん)
そう意気込む竜児の顔を見て通りがかりのおばさんが小さく悲鳴を上げていることなど
いまの竜児には些細なことなのだろう。
そして予定通り9時半には駅に着いた竜児なのだがそこにはすでに待ち人がいた。
「あっ、おはよう!竜児君も早いのね」
「え、あれ?約束は10時じゃなかったか?」
「うん、そうよ。だけどほら、初デートじゃない?楽しみで早くきすぎちゃった。」
そう言って花が咲いたような笑顔を見せる奈々子を見て、自分の幸せを実感する竜児だった。
「待たせたりしてないか?」
「ううん、早く来たって言ってもほんの10分前ぐらいだし」
「そうか、もう少し早く来ればよかったな」
「ほんと気にしないでいいってば、それに竜児だって十分早いわよ」
「だって、その方がもっと早く香椎に会えただろ?」
いいながら顔が赤くなるのを感じる竜児だったが、
待ち合わせの計画が崩れたいま、少しでもかっこつけたいので恥ずかしさは抑え込む。
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