No.487638

IS-インフィニット・ストラトス- きゅー組物語 10

やっとの事で十話目です。ここまでの間、拙い文章にお付き合いいただきありがとうございます。

お礼の直後にこんな事を言うのも気が引けるのですが、前回投稿した話を少し修正しました。推敲不足です、申し訳ございません。

2012-09-23 16:13:29 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1020   閲覧ユーザー数:992

「ったく、ロジーナ!やり過ぎだ!!!アルセリア、担架の準備して!!相手の子を医務室まで運ぶから手伝ってくれ!!!!」

 

たしか、9組のメンバーもこのアリーナに来てた筈だから………っと、居た!!!

 

『1年9組、セレネ・ティシェラ。1年9組、セレネ・ティシェラ。至急第3アリーナ場内まで下りて来なさい。至急第3アリーナ場内まで下りて来なさい。』

アリーナ場内放送で、観客席にいたセレネを呼び出しておく。

 

後は、防御用のシールド解除して………

 

「先生、担架準備出来ました!」

 

「よし、それじゃ行くぞ!」

 

俺たちは、場内に急いだ。

 

 

 

 

下りて行くと、そこではセレナが既に件の生徒を診ていた。

ロジーナはISを待機状態にしてつっ立っている。その表情は、何か考え込んでいる様な思いつめている様な、あまり見ない表情だった。

 

「セレナ、その子は?」

 

 

ISには、絶対防御と呼ばれる機能がある。この絶対防御はシールドエネルギーを消費する事であらゆる攻撃を防いでくれる、ISを最強の兵器たらしめる機能の一つだ。

しかし、今回の様にシールドエネルギーが切れなくとも搭乗者が戦闘不能に陥るケースも存在する。

 

「命に別条はないのですが、G-LOCを起こしてます。まぁ、後遺症の心配はまずないでしょう。念のため私も医務室へ向かいますので。」

 

G(操縦者にかかる重量加速度)によって、脳へ血液が行かなくなり視界が暗転する症状。これをブラックアウトと呼ぶ。その状態がさらに悪化すると、脳虚血により失神をおこす。それがG-LOCという訳だ。

ISは、基本的に空戦を行う兵器だ。しかも、現行のISは格闘戦(ドッグファイト)目的の物ばかり。戦闘機動によってGが発生する度に絶対防御でシールドエネルギーを消費していては、あっという間に戦闘不能に陥る。よって、命に関わるレベルのGでない限り絶対防御は発動しない様になっている。もちろんISスーツには戦闘機の耐Gスーツの様に、操縦者をこのGから守る機能も付いているのだが、これは完全ではない。今回の様なケースでの墜落事故も存在する。

 

「………春告、この学園おかしい。」

不意に、ロジーナが口を開く。

 

「………は?そりゃ、ココは特別な学校だけど、今さらどうした?」

 

「………後で話す。取りあえずコイツを医務室に運ぼう。」

 

何時ものロジーナらしくない。一体どうしたってんだ?

 

「まぁ、それもそうだ。セレナ、悪いが医務室でこの子を診てやってくれないか?」

 

「分かりました。」

 

 

 

 

 

医務室へと向かう道で、セレナが俺に質問を投げかける。

 

「そう言えば、今回の状況は春告先生でも十分に対処出来る筈の状況ですよね?何故わざわざ、私を呼んだので?」

 

「………生徒を思う気持ちが7割。」

 

「………あぁ、大人の事情が3割ですね。………はぁ、利用された様であまり気分のいい話ではありませんが、先生たちの苦労も分かっているつもりですので。」

 

「理解してくれるようで、非常に助かる。」

 

「9組生徒と先生は一蓮托生ですので。………ですので(・・・・)、ロジーナ先生の手綱はしっかり握っておいて貰えると助かります。」

 

 

………セレナを呼んだのはパフォーマンス的な意味合いもあった。

9組の教師及び生徒、つまり俺たち9組の雇い主は国連である。つまりは国連所属の人間が学院に間借りしている訳だ。もちろん、同時にIS学園の人間としても扱われるのだが、所属の比重は国連側の方が重い。そんな俺たちがIS学園所属の人間を傷つけたりする事は、IS救助隊の屋台骨を揺るがす大事件になる可能性がある。そうなれば、9組の人間が学園から追い出される可能性も出てくるのだ。今回はきちんと学園側の許可を取った上での教育的指導(業務の一環)で起こった物なのでその心配はないと思うが、不測の事態に対して細心の注意を払って対処をした事をしっかりとアピールするために、医師免許持ちのセレナを呼んだというわけだ。そう言った保身が三割。

 

ロジーナもようやく、其の事に思い至ったらしい。顔が引きつっている。

「………ヤバい?」

 

「「当たり前だ(です)!!!」」

 

 

 

 

 

十数分後、医務室のベッドの上で不良少女は目を覚ました。

 

「………ん。」

 

「………よかった、気がついたか。」

ロジーナは職員室への報告へと向かっている。今この部屋に居るのは、この少女と俺、そしてセレナの三人だ。

 

「………なんだ、あんたか。………っと。」

不良少女は体を起こそうとして、失敗する。

 

「先輩、もう少し横になっていて下さい。先生?診察しますので外で待っていて下さい。」

「了解。」

俺はセレナに促されて医務室を出た。年頃の娘の診察風景に興味は無い。

 

 

 

無いよ?

 

 

 

 

「………春告先生、生徒はどうですか?」

廊下に出ると、ばったり教頭に出くわす。

後ろには、ロジーナが非常に真剣な顔をして付いて来ている………あ、ひょっとして9組かなりヤバいの??

 

 

「今、目を覚ました所です。教頭先生………」

学園側からの見解次第では、9組解体の可能性もある訳で………訊ねる俺の表情が引きつっているのが分かる。

 

「今回の事で、学園側からそちらに何かを言うつもりは有りません。むしろ、本来なら我々が該当生徒の指導をしっかり指導すべきでした。9組のお二人には、御迷惑をお掛けしました。」

そう言って、教頭は頭を下げた。

 

「や、止めてください教頭先生!」

予想外の言葉と行動に、慌てる俺。そんな俺を余所に、教頭先生は言葉を続ける。

 

「………ISは、非常に強力な兵器です。しかし、生徒たちには其の意識が殆ど無い。命の危険が無く、非常に人気の高いスポーツ器具としてISを意識しています。この傾向は年々強くなっていて、今では教師の中にもそんな意識の持ち主が出てきている始末。」

 

「………アイツな、アタシに銃口向けて笑ってたんだぜ?ISがどんなものか、全く分かって無い。さっきアリーナで言おうとしたのも、其の事についてだ。」

 

 

 

………人間は、慣れる生き物だ。

ISの事故によって死亡する例は殆ど無い上に、兵器でありながら戦場での使用が禁止されている。そんな状況がもう十年も続いている。ISによって流れた血が少なすぎるのだ。ISが危険なものだとしっかり認識しているのは、人を殺す為の訓練も受ける各国軍人達位なのかも知れない。

 

「春告先生。貴方も今回の件で、ISが完全に安全を保証される物では無いと意識されたでしょう?そもそも、未だに全てが解明された訳ではない代物です。」

 

………人を簡単に殺せるだけの力を持った、良く分からない物。それを軽い気持ちで扱う人間。

 

 

 

うわぁ、そう思うとかなり怖い。

 

 

 

 

「先生方、先輩の診察終わりました。」

少々呆けていると、医務室のドアが開きセレナが仕事を終えた事を伝える。

「あ、ああ悪い。ありがとうな。」

「いえ、では私はこれで。」

 

そう言って、寮へと足を向けるセレナ。その表情には、緊張が張り付いていた。

 

あー、こりゃ聞かれたかな?

 

「………では、二人とも。行きましょう。」

 

「「はい。」」

 

教頭に促されて、俺たちは医務室へと足を踏み入れるのだった。

 


 
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