(次の日・早朝・三島宿の温泉宿『ゆけむり屋』)
トリン:トリーーーン!
レン:ふぁぁぁぁ・・・・眠い・・・・
リン:シャキっとしなさい! またどこからヘリが来るかも知れないし!
学歩:しかし、レンが昨晩助言してくれた通り、あの連中、深夜の奇襲はかけてこなかったな
升太:ほんと、助かった。それが一番怖いからな
レン:はい。ヘリコプターが夜間飛ぶためには、地上からの誘導光が必要なんです。この時代には当然、そんなものないですから、例えあいつらのヘリでも、夜間飛べないんです
リンはトリンにまたがっているメンツをキョロキョロ見回し、おかしい事に気づいた。
リン:あの~、メイコさんと海斗さんはどうしたんですか?
学歩:ああ、彼らはこの近くにある“忍びの里”に寄ってから、我らの後を追うことにするそうだ。なにやら“新武器”を開発するらしい。案はすでに“教えて貰った”そうだから、それほど時間はかからないとか。落ち合う場所は次の宿場町“遠江国の掛川宿”だ
リン:えっと掛川宿・・・・え!? それってここからかなり遠くないですか!?
学歩:うむ。だからミクに頼んで、トリンの速度を10倍にしてもらった。飛ぶような速度で“掛川宿“を目指す
升太:実は意味があって、ちょっと無茶な予定を立てたんだ。1つは伏見城までの旅路を長くしたくない事。もう1つは、
レン:ヘリに追いつかれないためですね
学歩:そう。あのカラクリは驚異だ。しかし、こちらとて陰陽術を使える。出来るだけあのカラクリと遭遇する事は避けたいのだ
リン:それで、こんな早朝に出発するんですね
レン:確かに、まだこれだけ暗かったら、ヘリは飛べないしな
ミキ:とにかく次の掛川宿まで頑張って移動します。到着したら海斗達へミクの陰陽術で伝える事にします
レン:解りました
学歩:では出発しよう!
こうしてまだ朝日も出ていない早朝に、7匹のトリンが猛スピードで三島宿を出発したのだった。
(朝・古寺の近くの宿)
グーグー
役小角:・・・・・ネル様、ハク様、てと様、起きて下さい
ネル:う・・・・うーん、えーーーーーっと、あ、エンちゃんおはよう
役小角:エ、エンちゃんですか?
ハク:そ。役小角(えんのおづの)だから、エンちゃん、可愛いでしょ?
てと:(*^-^*)
役小角:は、はぁ
ネル:まぁ、君が誕生した時間が夜だったから、すぐにヘリを飛ばせないし、宿に泊まったんだけど、エンちゃん、寝なかったの?
役小角:我々の睡眠時間というかアイドリング時間は短いんです。早朝再起動して、ヘリの水晶玉で奴らの位置を確認していたのですが、いっこうにネル様達が起きないので、こちらに戻ってきたのです
ネル:あー、ごめんね。すぐ朝飯食べて、出発しようか
役小角:宿の人に人数分の“おにぎり”を作ってもらいました。すぐに出発しましょう
ネル:冷や飯か・・・まぁいいや。で、奴らの今の位置は?
役小角:早朝、移動しました。かなりの速度です。我々の事を警戒しているのでしょう。先ほどの時点で“駿河国の吉原宿”を通過しました
ハク:確かに凄い速度ですね。陰陽術で速くしたみたいね
ネル:まぁいい。こちらのヘリの移動速度をなめて貰っては困る。さて、この状況で“お互い夕方到着”なら、接触地点は・・・・掛川の“十九首塚”の近くか
役小角:おお! 将門様の霊力にも手助けしてもらえます!
ハク:地理的に言っても、こちらに有利です
ネル:んじゃ、出発するか!
ハク:はい!
てと:(≧▽≦)ノ
こうして秀吉軍の4人は、おにぎりを食べながら、ヘリで出発したのだった。
***
(早朝・三島宿の近くの忍者の里)
忍者の里には、学歩が言っていた通り、海斗とメイコが到着しており、里の頭領に掛け合っていた。
頭領:うーむ、この武器の製作か・・・
海斗:基本は陰陽術と忍術を合わせた武器だと思ってください
メイコ:出来るでしょうか?
頭領:うむ、解った。我々にとっても“秀吉”は驚異だ。やってみよう。“その弾”を作れば、他は従来の物が使えるだろう
海斗:有り難うございます
頭領:早急に作るが、卯の上刻(約午前7時)まで待ってくれ
メイコ:解りました
こうして、忍者達も新武器の製造に取りかかったのだった。
(午後3時頃・遠江国・掛川宿の温泉宿『平屋(たいらや)』)
レン達一行は、急いだ甲斐あって、早めの時間にかなり離れた位置にある宿場町の“掛川宿”までたどり着いた。早速ミクの水晶玉と陰陽術を使って、移動中だと思われる海斗達に連絡を取った。ミクが呪文を唱えると水晶玉に、トリンにしがみついている海斗が映った。
ミク:海斗さん、大丈夫ですか?
映っている海斗:お、おう、大丈夫だ。しかし、このトリン、速いね
ミク:お二人のトリンは私たちより更に3倍速くしてあるミク。一応目印として、トリンの頭の装飾品の他に赤いツノを付け加えておきましたミク
映っている海斗:お、お、おう、あるわ、赤いツノが。とにかく掛川宿まで急いで向かっている、どこで落ち合うか?
ミク:掛川宿の温泉宿『平屋』でとりあえず休憩してるミク。今のところヘリとは遭遇してないミク
映っている海斗:わかった。急いで合流する。ちょっと待っていてくれ
ミク:了解ミ
スタン!
学歩:む! 矢文!
升太:あいつらか! どこにいる!
映っている海斗:おい! 大丈夫か!?
ミク:大丈夫ミク。とりあえず通信を切ります
プツン
ミク:申し訳ないミク。水晶玉の通信に精神を集中していたから、周りの警戒を怠ってましたミク。今、周囲の霊力を調べたら、ここから去っていく私たち以外の強い霊力を感じたミク。おそらく彼らの一人が、近くにいたミクね
レン:暗殺しないで矢文を打ち込むなんて、随分向こうは余裕ですね
リン:この時代だから、古風なわけではないと思うけど、十分用心しないとだめね
ミキ:で、なんて書いてあったの?
学歩:う、うむ
パラッ
学歩は矢文の文を広げて中身を読んだ。
家康陣よ、十九首塚で待っている。
来なければ、私の主のカラクリと、私の僕(しもべ)“鬼”達を召還して、掛川を襲う。
今からすぐに約束の場所へ迎え。
私は結構気が短いので、そのつもりで。
役小角より
***
学歩:役小角・・・・向こうは助っ人まで雇ったらしいな
レン:授業で習いました。確か平安時代の“召還師”ですよね。鬼を使役した人物って
升太:うむ。また“すでに死んでいるはずの人物”を復活させたか・・。門番を含め、問題対象がまた増えたな
ミキ:ヘリと役小角・・・・強敵2つと対決するわけね
学歩:とにかく、ここを襲わせる訳にはいかないし、時間もない。おそらく向こうの“ヘリが動ける時間”までしか待たないだろう
リン:急ぎましょう! ミクさん、道案内、頼みます
ミク:わかったミク! でもその前に海斗さん達に連絡して、十九首塚、で落ち合うよう伝えるミク
こうしてミクの連絡が終わってからすぐに、レン一行は、対決の場所“十九首塚”まで急いで向かったのだった。
(午後3時15分頃・十九首塚)
バラバラバラバラ・・・・
役小角:来たか・・・・・
到着した家康チームがトリンを降りて、服をなびかせて待っていた役小角と、正面に向かい合った。役小角の方には、矢文で言っていたような“鬼”は一匹もいなかった。
学歩:ヘリはともかく、本当に平安の召還師“役小角”まで復活しているとはな
升太:それより、矢文で自慢していた“鬼”とか、いないようだが、あれはまさかハッタリだったのか?
役小角:私は自分の部下まで待たせて疲れさせるような失策はしない。鬼達はこれから召還する、安心しろ
レン:く・・・・こいつ、強いし頭もいいぞ・・・・
ミク:悪いことを付け加えるようで恐縮だけど、ヘリの中の3人の霊力を全部足しても、あの役小角と同じにならないミク。ものすごい霊力ミク
リン:私も、何となくだけどわかる・・・。あの人、普通じゃない
学歩:あれと同じ感じなのが、伏見城の門番3人だ。昨日の会議でも出たとおり、ヤツもレンの武器以外、通用しないだろう
レン:わかりました。やい! 役小角! お前の相手は俺だ! いいな!
役小角:ほぉ、巫女服を着ている片割れは“男児”なのか。面白い、相手になってやろうではないか
レン:挑戦を受けていただき、光栄だ。出ろ! ビームセーバー!
ビーーーン!
レンは天叢雲剣の輝く刃を作った。
役小角:ほぉ、天叢雲剣の継承者がいたとはな。ということは、あの三種の神器、すべてがそちらにあるということか。ならばこちらも全力でいかないと失礼だな
ブン!
役小角は右手を高々と振り上げると、召還呪文を唱え、最後に叫んだ。
役小角:召還! 百鬼!
ゴゴゴゴゴゴーーーン!
役小角陣営の周りの土の中から、“餓鬼”と思われる一角の赤い鬼達が100体出現し、家康チーム達を睨み付けた。
役小角:召還! 牛頭鬼(ゴズキ)! 馬頭鬼(メズキ)!
オオオオオーン!
今度は役小角の前の土から、牛の頭を持った大きめの鬼と、馬の頭を持った大きめの鬼が出現した。
ゴズキ:いよ~、俺は指揮鬼のゴズキだ! 宜しくな!
メズキ:同じく、指揮鬼のメズキである、お相手つかまつる
役小角:さーて、こちらの軍勢はこんなもんだ。そして、その巫女服の男児、
レン:俺はレンだ!
役小角:これは失礼。ではレン、お前の相手は私自身が受けようぞ。出ろ! タケミカヅチ!
その言葉に呼応するように、役小角の左手の先から、レンと同じような“光の刃”が出現した。
役小角:“出し入れ自由の刃を持つ剣“は、なにも” 天叢雲剣“だけとは限らぬぞ?
レン:くっ・・・・
役小角:では、始めるとしようか。ネル様、いいですかな?
ヘリのスピーカーから声が聞こえてきた。
ネルの声:は、はい、宜しいでございます
ハクの声:敵でなくてよかった・・・・
役小角:では・・・。全軍、突撃!!!!!!!
餓鬼達:うぉおおおおおおおお!!!!!
ネル:ヘリは後方支援する!
その声に反応して、100匹の餓鬼達が、ゴズキとメズキを先頭に、学歩達へ突撃していった。ヘリは後ろにホバリングしていき、第4の武器“霊力バルカン”の準備をしていた。
レン:役小角は俺と勝負すると言いました。100匹で大変だと思いますが、みなさんは、あの相手をお願いできますか?
学歩:任せるがいい。伏見城門番戦でも同じように怪物達と戦っていたのだ。安心しろ。それとリンは陰陽術で後方支援してもらう。リン、よいか?
リン:は、はい。後方から陰陽術で援護しますので、前衛をお願いします
升太:忍の二人がまだ到着しないが、とにかく暴れさせてもらうぞ! いいか! ミキ! テト!
ジャキ!
すでにミキもテトもそれぞれの武器“アホ毛の刃”と“死神の鎌”を取りだして、準備していた。
ミク:私も後方支援で、リンさんと一緒に“防護壁”の中で応援するミク
学歩:よし! では、前衛、突撃!!!!!
レン:おりゃあ!!!!!
升太:おおおおおおおお!!!!!!
ミキ:いっくぞー!!!!
テト:(`・ω・´)
遂に、両陣営の戦の火蓋が斬って落とされたのだった!
学歩:おりゃ!!! ザコどもは邪魔だ!。霊光剣・吹雪の舞い!!!!!!
シャキン! シャキン! シャキン!
餓鬼達:うぉおおお・・・・・
学歩の周りに取り付いていた餓鬼5体が、学歩が素早く斬りつけた剣の周りに起こった陰陽術の“かまいたち“に切り刻まれて、次々倒れ、土に消えていった。
学歩:斬れる相手なら、我らは負けぬぞ!?
ガガガガガガ!!!!
学歩:なんと! ふん!
学歩はバック転して、ヘリからの後方支援である霊力バルカンを素早くかわしたのだった。
学歩:ちぃ! 今回は後方支援にまわったか! だが、アレくらいは回避できるぞ!
ネル:ちぇ! あいつ、結構強いな。だが、これだけ“散開”されちゃうと、全員いっぺんに後方支援する訳にはいかないしな・・・。バルカンじゃだめか。えっと、第5の武器は・・・“霊力フレイム弾“、つまり”火炎弾“か・・・・。ふふ、いいだろう。”多少の犠牲“はやむ得まい。エネルギー充填開始!
***
升太:おらおら! 邪魔だ! 狙うは指揮官二人だ! 火山掌!
バゴーン! バゴーン!
餓鬼達:うぎゃあああ!!!
升太の陰陽術のオーラを纏って強化されたパンチが、周りを取り囲む餓鬼達を容赦なく葬り去っていった。
餓鬼:ぎぃいいいい!!!!
升太:えーい、次から次へと!
スパンスパンスパン!!!!!
升太の後方からのかまいたちの様な斬撃刃2つが、升太を押さえ込もうとした餓鬼にクリーンヒットしたのだった。
餓鬼:ぎょへーーーーー!!!!
後ろにいたのは、アホ毛刃を構えたミキと、死神の鎌を持ったテトだった。
ミキ:霊光斬撃刃の味はどうかしら?
テト:ヽ(*`Д´)ノ
升太:すまんな、ミキ、テト。何せ数が数だ。俺は突っ込んでいくから、後ろを頼むぞ!
ミキ:了解!
ネル:よーーーし、霊力が貯まったぞ!。ふふ、餓鬼達、悪いけど、成功のため、数匹か死んで貰うよ! 目標地点、学歩の周囲。霊力フレイム弾、砲身用意!!!!!
ガーーーー、ジャキン!!
またもや、ヘリの下部の半球体の先から砲身が飛び出し、砲身の先に火炎の渦が現れた!
その様子を、同じ後方支援で見ていたミクがリンに合図した!
ミク:リンちゃん、まずいミク! あのヘリ、学歩さんの周囲を狙っている! しかも餓鬼を犠牲してもいいくらいの火力ミク!
リン:何て奴! 属性は?
ミク:火炎ミク!
リン:なら・・・・・・・
リンはお祓い棒を前にかざし、術を唱え始めた。
ミク:学歩さん達! その場にしゃがんで!
リン:氷結術・・・・・“霊光冷気壁”!!!!!
ネル:発射!!!!!
ギューーーーーン、バシューーーーーン!!!!!
巨大な火炎の弾が、学歩の方へ真っ直ぐに飛んでいった!
学歩、升太、ミキ:な!
餓鬼達:ぐぎ?
弾が着弾する少し前に、学歩の周りに“冷気の壁”が現れ、学歩達を包み込んだ。
ドゴオオオオオオン!!!!
餓鬼達:むぎゃーーーーー・・・・・・・
周囲の餓鬼達十数匹が、着弾して広がった火炎に飲み込まれ、消し炭にされてしまった。
学歩:うお・・・・・・・お? ぶ、無事なのか?
火炎と、そしてリンの作った冷気の壁が、双方消滅し、学歩達だけが無事、生き残った。
学歩:あ、危なかった。ミク、リン、かたじけない!
升太:すまぬ!
ミキ:ありがとう!
テト:ヾ(*´∀`)ノ
ミク:ヘリがやばいから、気を付けてミク!
リン:こっちも壁は連発できないからねー!
役小角:・・・・・・
レン:・・・・・・
ジャキ!
レンは餓鬼達を斬り倒しながら、役小角は餓鬼達とは離れ、二人は少し違う場所で剣を構えて対峙していた。
役小角:神器“天叢雲剣”の継承者よ、良く聞け。我は召還師にして、召還魔剣“タケミカヅチ”の使い手だ。お前がどの程度の剣の使い手なのか、その構えを見ただけでわかる。スキだらけだ
レン:・・・・何故、さっさと斬り捨てない
役小角:もったいないからだ。あわよくば味方に、とか、そういうことでは勿論ない。お前はせっかく良質の潜在能力を持っていながら、経験不足が祟って、剣と盾に守られているような状態だ
レン:なら、覚醒しない今のうちに倒して置いた方がいいのでは?
役小角:この乱世の世でも、強い者と闘える事を“武運”とする“猛者”は実は多く存在する。しかし現実もこれからの未来も、そのような者は世に潰され、生き残った者は“知略戦”におぼれて、“銃撃”におぼれ、そのような崇高な考えは潰されていった。知略では勝てない相手が出てきた時、その“弱さ“が露呈し、丸め込まれるか、壊滅寸前まで追い込まれた
レン:? 何を言っているんだ!?
役小角:その潜在能力、気に入った。私はお前をここで鍛えてやる。我を越えられれば、相当の力が身につくだろう。だが、容赦はしない。ここで我が剣に葬り去られれば、それまでの者と判断する
レン:どっちにしたって、お前を倒さないとならない。唯一斬れる、この“天叢雲剣”で!
役小角:来るがいい、未来からの客人よ!
レン:! なんでそれを知っている!
役小角:来ないのなら、我から仕掛けさせて貰う!
役小角は、左手に持った光の剣を両手で構えた状態で、装束を翻して、レンの方へ突っ込んでいった!
レン:う、うぉおおおおお!!!!
レンも不器用ながら、同じ構えを取って、役小角に突っ込んでいった!
ガキン!! ギリギリギリ・・・・
二人の光の刃が鍔迫り合いを起こし、接触点がスパークを起こしていた。点から四散する光の粒!
役小角:ほぉ、とりあえずここまでは出来るか。だが、その後の流れ、わかるか?
役小角は剣の刃を下に流すように落とし、体も横に流れる様にレンの刃を紙一枚で交わして、レンの背後に回った。
レン:!
役小角:ここまでか。ではさらばだ
役小角は問答無用でタケミカヅチの刃をレンの背中に向けて、突き刺そうとした。しかし、レンは本能的に“右手の盾”をタケミカヅチの刃の軌道上に置き、防御したのだった。丸く青白い光が右手を包んだ。
役小角は瞬時にタケミカヅチの剣を引っ込め、足で地面を蹴って、レンと距離を取った。
レン:はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・
役小角:ほぉ、“潜在能力”のカケラは出てきたようだな。“生への執着心”、これは戦でもっとも大事なものだ。戦闘で使う“武力、知力”は知略戦とは違う。猛者はその戦の知力を鍛え上げていき、強くなる
レン:はぁ・・はぁ・・それはどーも・・・
役小角:では、次の段階、乱舞戦ではどう出るかな?
役小角は今度は前に十字の軌跡を作るように剣を振り回して、レンに斬りこんでいった!
レン:やられて・・・たまるかよ!
レンは横一文字に剣の刃を置き、激しい斬撃を剣で受け止めて、ジリジリと役小角へ近寄っていった。
役小角:ほぉ、“間合いを詰める”、この段階でも能力を覚醒出来たか。遠間ではやられる一方だからな
役小角は斬撃をやめて、バックステップしてレンと間合いをとった。
レン:はぁ・・はぁ・・何なんだよ・・おまえ・・俺が疲れるまで待って、トドメかよ・・
役小角:そうなったら、お前はそこまでの人間だ。さて、次はどうするかな・・・・
キャアアアアアア!
そのときだった。ミクとリンが入っている防御壁の方から悲鳴が聞こえてきた。なんと、メズキだけを餓鬼の集団の後ろに配置して、別ルートで、ゴズキが後衛のリンとミクを襲っていたのだった。
升太:しまった! メズキと立っている“ゴズキ”は“クグツ”か!
ゴズキ:さーて、ねーちゃん達、後衛の壁に隠れてないで、俺のお相手してくれよ、へへへ!
ガキガキガキ!
凄まじい腕の握力で握られ、ドーム状の壁にはヒビが入り、今にも崩れかけていた。
リン:きゃああああ!!!! レーーーーーン!!!!!
ドクンッ!!!!
そのとき、レンに明らかに今までとは違う変化が現れた!。目が赤く光り、髪の毛が、怒髪というのだろう“逆立ち”を起こし、更に右手のビームシールドが体全体に展開して、まるで体全部を包み込むバリアーの様になった。
レン:リンニ、サワルンジャネー!!!!!!!!
バシュ!!!!
レンは役小角との対峙を瞬時にやめて、リンのいる方へ、高速で突っ込んでいった。役小角はあえて追わなかった。
役小角:これがレンの“真の覚醒“か。しかしゴズキめ。女好きの性格が我の命令をも踏みつけてしまったか。私の召還師の腕もまだまだだな。さて、覚醒レンのお手並みを拝見するとしようか
レン:リン、マッテロ!
餓鬼達:キャシャー
レン:ザコガ、ジャマダ!
ブンッ!
餓鬼達:キシャ・・
レンは剣を前で横一文字に振りかざし、自分の移動線上の餓鬼達をなぎ倒していった。そして半ばミク達のバリアーに手を突っ込んでいる状態のゴズキの目の前で立ち止まった。
ゴズキ:ああん? なんだこのガキ。ひねり潰してやるわ
ゴズキは突っ込んでいない方の手をレンの方へ向け、一気に掴みかかろうとした。
ジュッ!
掴もうとしたゴズキの手は、レンのバリアーにより次々と消えていき、肘から先が消滅してしまった。
ゴズキ:うも?
レン:リン、ミク、メヲツムッテロ。キョウハ、スキヤキダ!!
バシュバシュバシュバシュバシュ!!!!!!
レンは軌跡が見えない無数の斬撃で、ゴズキをバラバラに斬り刻んでしまった!
レン:コゲメヲイレテヤルゼ
レンはその肉片に近づき、バリアーを使って、全てを消滅させてしまった。
シューーーン・・・・
レンの異常状態は消え、前のレンに戻った。
レン:う・・・・えっと、リン姉、ミクさん、もういいよ
リン:ひ・・・う・・うわーーん! ありがとう、レーーン!!!
ミク:助かったミク。しかし、今の力は・・・
レン:なんかわからないんだけど、リン姉の悲鳴を聞いた瞬間に、体の奥から力が溢れて、あんな風になったんだ
役小角:それは、お前の“潜在能力”の1つだ。嬉しいぞ、この世の若人にまだ“猛者”がいたとはな!
***
メズキ:ヒヒーーーーン!!!
メズキや残りの餓鬼達も、升太達と学歩によって倒され、残ったのは、役小角とヘリだけになった。
学歩:はぁはぁ・・・・こっちは終わったぞ・・・・
升太:なんとか、こっちは片づいた。はぁはぁ・・残りは召還師本体とヘリか
ミキ:ふぅ・・・さすがに数あったわね
テト:( ̄▽ ̄;)
レン:役小角、そしてヘリの3人、残りはお前達だけだ。それとも、更に召還でもするのか?
ネル:くぅ~・・・・まさかこんな事態になるとは・・・・
ハク:予想以上に向こう側、強かったね
てと:(;´∀`)
ネルは役小角にスピーカー越しで話しかけた。
ネル:エンちゃん、一度引くかい?
役小角:・・・・・この戦、我らの負けだ。逃げるならお前達だけ逃げろ
ハク:え!?
役小角:・・・・この“猛者”を消すのは、もったいない。リンとレン、お前らはこの次元の人間ではないな?
レン:ああ、リンと一緒に別の次元の未来から連れてこられた
役小角:そうか。やはり“別の次元”か。なら、“この時代の未来”をまだ知らないわけだ
リン:? あなた何言ってるの?
役小角:俺の正体は、この時代の未来で作られた“変身ロボット”だ。私は“役小角の姿”に変身したが、私と同じロボは、対象が死んでいるなら、誰にでも変身できる。これが俺の“識別用ドッグタグ”だ
役小角は服に手を入れて、中から楕円形の金属板を取り出し、レンの方に放り投げた。
カラン
レンはそれを拾い上げ、彫られていた文字を読んでみた。
レン:強化アルミ製かな? それにこれ、俺達の時代の文字と同じだ。えっと・・・「Type:Prima」・・・
リン:貴方、どうするつもりなの? 手の内を証して・・・
役小角:今のマスターでは今の私を強制的に攻撃モードに切り替えるでしょう。私はもう闘わない、自分でそう決めた。だから、ここで機動を停止する
レン:役小角・・・・
役小角:レン、お前のような“強き者”が時代を引っ張る事は、国にとって“大事な事”なのだ。私は信長側としてこの世に誕生したが、お前と闘ってよく解った。“あの信長の強さ”では、俺達の時代を引っ張っていく事はできん。レンよ、珍妙な話だとは思うが、信長を倒し、時代を元に戻し、真実を知った後、出来れば、“我々の次元の未来”、そして“あの人”を救って欲しい
レン:な、何を言っているんだ!?
役小角:レン・・・お前とは、またどこかで手合わせしたいと思っている。ではな。自己機動停止処理開始
シューーーー
役小角は生まれたときとは逆に、小さい素体のロボットに戻り、そして煙を出して壊れてしまった。
レン:役小角・・・・お前、一体どっちの味方だったんだ・・・・・
グイーーーーン!
そのとき、ごく低空飛行していたヘリが後方へ旋回し、逃げようとしていた。
ネル:つき合ってられないよ! あいつの意志通り、逃げさせて貰うよ!
???:そうはいくか!
レン達の後方から、聞き慣れた声が聞こえてきた。海斗とメイコだった!
メイコ:やっと到着したよ! ヘリは逃がさないよ!
ネル:は! それが出来ない事は、骨身にしみているはずだぞ!?
海斗:残念だな、今回は新武器があるんだよ!
メイコと海斗は後ろに隠していた“大筒”を二人で構えて、砲身をヘリに向けた。
ネル:は! この時代の武器なんぞ、受け付けないわ!
海斗:別に壊すとは言ってないぞ
メイコ:逃がさないって言ったのよ!
ジジジジジ・・・パッ!
メイコ:陰陽忍術“ツチグモ弾”発射!
ドン!!!
大筒から飛び出していったのは、普通の大筒砲弾だった。が、ヘリの近くで爆発したそれは、千変万化した。
メイコ:そのヘリ、頂くよ!
パアアアア!!!!
なんと弾丸が爆発した後に出てきたのは、大型の“錘付きネット”だった! その網は陰陽術で強化されているのか丈夫だった。ヘリが海斗達に向かって横向きになっていたため、容易に“後部回転翼”に絡まり、それを停止させてしまった。
レン:なるほど! 昨日の作戦会議で出た話題、武器にしてみたんだ!
グルグルグル!!!! ギュンギュンギュン!!!
ネル:ウギャア! 離脱不能だ!
ハク:とにかく落下だけは阻止して!
てと:(@△@)
ネル:仕方ない! 不時着プログラム開始。とにかく“足”を地面に付ける!
ギュンギュンギュン・・・・・
ヘリコプターはなんとか接地アームを地面に付けて、とりあえず着地した。こうして、遂に“難攻不落の強敵”を攻略したのだった。
***
ネル:ちゃんと捕虜の扱いをして欲しいものだな
ハク:ちゃんと三食お願いしますね
てと:(´・ω・`)
ヘリの3人は、海斗とメイコによって紐で縛られ、レン達と同行することになり、ヘリはとりあえず着地した所に置く事になった。
そして一行は、激戦の疲れを癒すため、宿に戻ることになった。レンは壊れて動かなくなった機械人形を少し眺めてから、皆に合流したのだった。
(続く)
CAST
巫女・鏡音リン:鏡音リン
巫女(?)・鏡音レン:鏡音レン
巫女・初音御貢(ミク):初音ミク
拳の升太:墓火炉 升太
アホ毛のミキ:miki
人形のテト:重音テト
懐刀の侍・神威学歩:神威がくぽ
忍者・海斗:KAITO
くノ一・女威虎(メイコ):MEIKO
めぐみ:???
カラクリのネル:亞北ネル
深酒のハク:弱音ハク
人形の“てと”:重音テト
陰陽師“役小角(えんのおづの)”:Prima
番頭、etc…:エキストラの皆さん
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○ボーカロイド小説シリーズ第9作目の” 戦国慕歌路絵巻 風雲!鏡音伝“シリーズの第5話です。
○巫女の鏡音姉弟(?)が主役の擬似タイムスリップジュブナイルです♪
○メインは和風の妖怪とか陰陽師とか出てくる、バトル物でもあります。
☆ヘリ&役小角戦です。数的には今までで一番不利だったのですが、リンレン以外のメンツは予想以上に強かったのです。
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