No.485771

咲-saki-月宮編  番外編・二本場 親友

白昼夢さん

---月宮高校麻雀部での城山華南と麻雀部の仲間達の紆余曲折ありながらもインターハイ優勝を目指していく、もうひとつの美少女麻雀物語---

2012-09-18 20:35:27 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:500   閲覧ユーザー数:497

綺羅星りりあは全てを持っていた。

大して勉強をしなくても成績は常に学年上位、愛くるしい容姿、人を惹き付けるカリスマ。

彼女は人生に退屈していた。しかしある日、そんな彼女の運命を変える出来事が起こったのである。

 

『おーい、天才美少女さん、いっつも暇そうにしてるよなあー』

『…誰?』

昼休み、突然誰かに声をかけられたりりあ。

(いつも暇そうだなんて、失礼な人…)

窓の外を見ていたりりあが声の主を見る、セミロングの黒髪の、快活そうな少女がそこに居た。

『あのさあ、暇でしょ?放課後さあ、麻雀やんない?今日一人用事があるとかで面子足んなくてさあー』

『麻雀なんて、やったことないけど』

実際りりあは麻雀は一度も打ったことが無かった。だが、まるっきり麻雀に興味が無かった訳でも無かった。

幼い頃、テレビのプロの対局を見て憧れていた事があった。あれから時が経ち、忘れかけていた記憶だったのだが。

『いいよ、ルールもやる前にちょっと確認すれば大丈夫だと思うし』

了承するりりあ、黒髪の少女の顔が明るくなる。

『おーさっすが天才美少女、じゃあまたあとでなー、私外でドッジボールしてくるからっ!』

言ってすぐ去っていく黒髪の少女、少女が教室を出て行くのを見送る事もなくりりあはまた窓の外に視線を戻す。

『麻雀は、私を満たしてくれるのかしら』

4年前の今頃…りりあの中学一年、7月頃の事である。

 

番外編・二本場 親友 

 

『さあ!入って!』

黒髪の少女がそういう、りりあは返事もせずに案内された部屋に入っていく、表札には、麻雀部と書かれていた。

今日は活動していないのか、他に生徒は一人も居なかった。りりあ達4人だけである。

『ルール確認、大丈夫?』

『さっきぱらぱらっと見て、大体覚えた、大丈夫だよ』

おさげの子がそう言ってルールブックを取り出したが、りりあのその言葉を聞き、すぐさまそれをしまった。

『おっけー、じゃあ早速場決めしてやろうぜー』

 

最初の対局は、オーラスまでりりあがトップだった。

『強いなーまじで初心者かよー、実は結構やってたり?』

『打ったことはないよ、テレビのプロの対局とか、小さい頃たまに見てた程度』

黒髪の少女がそういうとりりあはそう返す、実際そうだからそうとしか言えない。

『ふーん、マジかあー、っと、張った!立直』

黒髪の少女が立直をかける。

(オーラスでしょ、私はトップだし、振り込まなければたぶん勝ち、だよね、簡単なゲーム…)

『自漠!一発きたー』

黒髪の少女が一発でツモった。

『えーっと、立直一発ツモタンヤオ平和一盃口、お、3000・6000で逆転じゃね?私、天才少女に勝っちゃったぞ』

満足気にこちらを見る黒髪の少女、満面の笑みである。

『一発とかたまたまじゃない、オーラスまではずっと私がトップだったし、次やったら私が勝つわ』

一方不満気なりりあである。

『へっへー運も実力の内ってねー、次やったら勝てるんだろ?また明日来なよ、いつでもリベンジ受けるよ!』

『分かった、また明日打ちましょう』

すっと立ち上がり、りりあは部屋を後にした。

 

翌日、また麻雀部の部室を訪れたりりあ、昨日の黒髪の少女他2人が既に待っていた。

『お!きたきた天才少女!はっやくやろー!』

『今度は負けないから』

言ってりりあは席に着く。

昨日の展開とは違い今日はりりあが最下位でオーラスを迎えた。ちなみにトップは黒髪の少女である。

(全然和了れない、しっかり効率よく打ってるハズなのに)

『あっれー?今日も私が勝っちゃいそうだぞー?』

悪戯っぽく言う黒髪の少女、無視するりりあ。

(倍満くらいじゃないと、逆転は無理だよね)

その時のりりあの手牌。

 

一二三④⑤⑥2349北北北 ドラ7

 

りりあは南家、聴牌はしているが、倍満など到底見えない、そこに北をツモってきた。

『カン』

『おっ、北カンってそんなんで逆転できるの?』

茶化す黒髪の少女を無視して、嶺上牌を引き、裏ドラをめくる、ドラ表示牌は、西だった。

『って、カンドラもろ乗りじゃん、やっるー』

『立直』

9索を切り、立直をかけるりりあ。そして…

『自漠、立直一発ツモドラ6、4000・8000で私の勝ちねっ』

嶺上から拾ってきた7索を一発で重ねて逆転した。思わず表情が緩むりりあ。

『あはは、負けたよおめでとっ、しかしオマエが笑ってる所初めて見たよ』

黒髪の少女がそう言うと、我に返ったのか顔を背けるりりあ。

『と、当然じゃない、私が勝つのは、それよりも、天才美少女とかオマエとか呼ぶのはやめてくれないかな、私、綺羅星りりあっていう可愛い名前があるの』

『あ、悪い悪い、じゃありりあって呼ぶよ、あ、私の名前は折原泉ね、泉でいいよ、こっちも呼び捨てだし』

『ふーん、泉、ね、よろしく』

『おう、よろしく!りりあは明日も来るよな、1勝1敗だし、決着つけないとねー』

 

帰り道、りりあは1人、昨日と今日の対局の事を思い出していた。

(どんなにちゃんと打っても、負けちゃったり、もうダメかと思ったら、逆転しちゃったり…なんだろう、麻雀って…楽しいかも)

1人クスクスと笑うりりあ。

『泉と決着もつけないとだしね…ちょっと、学校に行く楽しみできた、かも?』

 

あれから数日、泉達とりりあは毎日のように放課後対局をするようになった。

『今回は私の勝ちみたいだね、まあ当然だけど、私、主役だしー』

『なんだよりりあその理論、てかりりあって面白いな、最初はそんな奴とは思わなかったよ』

今日はどうやらりりあが勝ったようである。

『天才で可愛くて麻雀も強いのよ?どう考えたって主人公キャラじゃない?』

『はいはい、どうせ私はエキストラキャラですよーっと』

『あははっ、いずみん面白いねっ』

『いずみん…?あ、私の事か』

『そそっ、だってなんか泉って、響きがあんまし可愛くないんだもん、だからいずみんで、こっちの方が可愛いよっ!』

『さりげなく人の名前ディスるのやめようか、とゆうか可愛いとかやめれー!』

部室の中で追いかけっこを始めるりりあと泉、完全に打ち解けたようである。

 

『私ね、なんか変わった気がする』

今日は泉と一緒に下校するりりあ、突然ふとそんなことを呟く。

『ん?そうなのかな?』

頭に?マークを浮かべ、泉が聞き返す。

『うん…いずみんが麻雀に誘ってくれたおかげだよ、今まで私、上手く行かなかった事なんて無かったから…、でも麻雀は違った、一生懸命やっても、勝ったり負けたり、なんだかそれが楽しかった』

一歩先で立ち止まり、振り返るりりあ。

『いずみんのおかげで麻雀に出会って、変われた、こんなに笑えるようになった、ありがとっ』

そういって微笑むりりあ、そして更に続ける。

『今の私…ヘンかな?ふふっ』

『ううん…今のりりあの方が、りりあらしいよ、私はそう思う』

りりあの問いにそう返し、はにかむ泉。

『あははっ、今の方が私らしいって、意味わかんないよいずみん』

『私も、自分で言ったこと、分かってるようでイマイチ分かってない』

そういって、また笑いあう二人。

 

しばしの静寂の末、りりあは

『あ、あのさいずみん…良かったらでいいんだけど、友達に、なってくれないかな…』

『はぁ?』

泉にそう返され、素直じゃなさすぎる自分に嫌気が差しているりりあ。

『何言ってるんだよ、もう私達、友達だろ?』

『へっ』

予想外の返しに、思わず間抜けな声をあげるりりあ。

『そーゆー所、りりあらしくない、私はそう思うぞ、私の知ってるりりあは、もっと自意識過剰で自信満々でわがままだ!』

『ちょっと!』

『あははっ』

照れ隠しにりりあを茶化してダッシュする泉、どういうことなのー!と言いながら追い回すりりあ。

 

これが後に親友同士になる二人の出会いである。


 
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