No.483796

ゼロの使い魔 ~しんりゅう(神竜)になった男~ 第十二話「エコー、そして火竜」

光闇雪さん

死神のうっかりミスによって死亡した主人公。
その上司の死神からお詫びとして、『ゼロの使い魔』の世界に転生させてもらえることに・・・・・・。

第十二話、始まります。

2012-09-14 17:45:37 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:8299   閲覧ユーザー数:7858

※数十分前

 

俺はエコーという獣の()、メロディとともに、エコーの住処(すみか)に“ルーラ”で飛んだ。

 

「・・・・・・着いたぞメロディ」

 

飛んだ先は森の中だった。

遥か先に町が見える。

町並みはトリステインではない感じなので、ここはトリステイン以外の国なのだろう。

 

「ここで間違いないか?」

「は、はい! 間違いありません!」

 

地上に降りた俺は、(たてがみ)にしがみついていたメロディに声をかける。

メロディは辺りを見回して、力強く頷き飛び降りた。

俺は『そうか』と呟いて、メロディを離れさせた。

そして、“ドラゴラム”の呪文を唱え人間の姿になった。

 

竜の姿よりこっちの方が小回りがきくからな。

それに口は悪くなるが、学園の小僧小娘どももいないしな。

 

「さてメロディ、案内をたの(はわわっ!?)ん?」

 

メロディに案内を頼もうとした時、背後から叫び声が聞こえてきた。

振り向くと、そこにはメロディより小さいエコーらしき動物が固まっていた。

 

これは竜から人間になったのに驚いているのか、ただ単に人間がいたのに驚いているのか、二つに一つだな。

って、それは当たり前か。はははは。

 

「ドーラ!」

「え? あっ! お姉ちゃん!」

 

どうでもいいことを考えていたら、固まっていたエコーの子にメロディが気付きその名を叫んだ。

その声に我に返ったエコーの子がメロディに飛びつく。

 

「お姉ちゃん! お姉ちゃん! お姉ちゃん! お姉ちゃん!」

「元気そうだねドーラ」

 

俺を尻目に喜び合う二匹(ふたり)

 

というかメロディ。父親のことを忘れてないか?

まぁ、仕方がないか。

それに父親たちの救出は急を要することではない可能性が高いからな。

 

「ところでドーラ。どうしてここに来たの?」

「あぁ!! そうだった! お、お母さんに毒消し草をもっていかないと!!」

「え!? 姉さんがどうかしたの!?」

 

数十秒後、メロディの言葉で事態が動き出した。

聞き耳を立て話を聞いてみると、どうやらこの子の母親が毒草のトゲで怪我をしてしまったらしい。

詳しく説明するとだな。

この子の母親が、崖から落ちそうになった妹を助けようとして、誤って毒草のトゲに触れてしまった。

妹はなんとか助けられたようだが、全身に毒が回りだして動けなくなってしまったらしい。

 

「た、大変じゃないの! 急いで向かわないと! 行くよドーラ!」

「待ってお姉ちゃん!」

 

メロディは俺の存在も完全に忘れて、ドーラという子と奥に走っていってしまった。

 

「やれやれ・・・・・・」

 

俺は肩をすくめると、メロディ達が走っていった先に向かった。

 

*****

 

少し歩いた先にエコーの住処らしい岩場あった。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

さっきからこちらを見つめる気配がするものの、姿は見えない。

おそらく人間の姿をしている俺を警戒しているのだろう。

 

それは仕方がないのだが、このままだとマズい。

早々にメロディに説明してもらわないとな。

 

俺は息を大きく吸うと、“なかまを呼ぶ”を発動させた。

 

「メロディ~!」

『は、はい~!?』

 

名を呼ばれたメロディが慌ててやってくるのが見えた。

俺が発動させた“なかまを呼ぶ”は、直径500m以内にいる、俺が知っている対象者を呼びつけられる特技だ。

 

「す、すいません神竜さま! おいてきぼりにして!」

「そのことは構わない。一大事だったんだからな。して、君の仲間に私を紹介してくれるかな?」

「は、はい!」

 

メロディは力強く頷いて、皆に懇切丁寧に説明していく。

その説明で、隠れていたエコー達がおずおずと出てきた。

 

どうやら一応は味方であると分かってくれたらしい。

ちなみに説明の内容については、尾ひれや背びれがついて、非常に恥ずかしかったため割愛させてもらう。

 

「神竜さま。ようこそいらっしゃいました。私はメロディの母親、リズムと申しまして、今は(おさ)の代理を務めさせていただいております。この度は、我らの大事をお助けいただくとのこと。大変(リズムとやら、そこまでだ)あ、はい」

 

その中から一匹(ひとり)のエコーが一歩前に進み出て、自己紹介とお礼の言葉を述べていく。

俺は長くなるとふんで言葉を遮る。

そして、気になっていたドーラという娘の母親について訊ねるため、メロディに向き直った。

 

「メロディ。ドーラという娘の母親の容体はどうだい?」

「それが・・・・・・、毒消し草で身体の毒は消えたようなんですが、マヒが酷くて・・・・・・、一生残るかもしれません」

「そうか・・・・・・。よし。俺が見てみよう。もしかしたら治せるかもしれん」

 

俺は、うつむくメロディに優しく話しかけた。

 

“ダモーレ”で詳しく状態を調べないといけないが、おそらく大丈夫だろう。

 

「案内をしてくれないかい?」

「は、はい! こちらです!」

 

メロディは頷いて、来た道を戻っていく。

俺はメロディの母親、リズムとともにその後を追った。

そして、メロディが止まった岩場の穴を覗きこむと、そこに落ち葉のベットで横たわっているエコーがいた。

俺は落ちないように身体を支えながら、そのエコーに手をかざした。

 

〔ダモーレ〕

 

“ダモーレ”の呪文で、表示されたステータスを見つめる。

 

 【名前】  表示OFF(種族:エコー)

 【最大HP】表示OFF

 【最大MP】表示OFF

 【攻撃力】 表示OFF

 【守備力】 表示OFF

 【素早さ】 表示OFF

 【賢さ】  表示OFF

 【状態】

   マヒ(毒によりHPが著しく減少しているが、命に別状なし)

 

よし。これならば俺でもなんとかなるな。

 

俺は一呼吸すると、マヒを取り除くため“キアリク”の呪文を唱えようとした。

 

「大変よ!! また火竜兄弟(ファイアドラゴンブラザーズ)がやってきたわ!!」

『『『『えぇ!?』』』』

 

その時、慌ててやってきた一匹のエコーの言葉で、周りが騒然となった。

俺は詠唱を止めて、メロディ達を見つめた。

皆の話によると、どうやら火竜兄弟なる火竜の幼生二頭(ふたり)が自らの力を誇示するためだけに森まで降りてきたようだ。

幼生と言っても、相手は竜族だ。

森の獣たちは逃げることしかできない。

それが面白いようで、最近は降りてくる回数が増えているらしい。

 

はぁ・・・・・・、ゲスだな。

 

「皆。子ども達を連れていつもの場所まで逃げなさい」

『『『『『ええ!』』』』』

「メロディもドーラを連れて逃げなさい。場所は分かってるわね?」

「う、うん! ドーラ!」

「やだ! お母さんと一緒にいるの!」

「大丈夫よドーラ。ハミィは私がなんとしても連れていくから」

「やだ!!」

 

リズムの指示で逃げ出していくエコー達。

そんな中、動けない母親を置いていけないと駄々を捏ねるドーラ。

困り果てる二匹を一瞥した俺は無言で立ちあがると、空に向かって指笛をふいた。

 

「「シェンさま!!」」

 

数秒後、アマテラスとツクヨミが現れた。

俺は二匹に事情を説明し、動けないエコーをアマテラスの背に乗せると、落ちないように固定していく。

 

「アマテラス。ツクヨミ。リズム達をよろしく頼む」

「「はい!」」

 

二匹は返事をして、リズム達を乗せ森の奥に向かっていった。

それを見送った俺は火竜が現れた場所に向かった。

 

「ゲスども。それ相応の報いを受けてもらうぞ。一生悪さができないようにしてやるからな」


 
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