疾風Side
俺たちが京都に来て二十年が経った。その間は神鳴流に来た依頼を受けたり、召喚された鬼達と酒飲み友達になったりした
懐かしいな。あいつ今は何してるんだ?『鬼の総大将なんて似あわねえ』っつってたけど…。まあその話はおいおいして行こう
俺は今、泰春に呼び出されて彼の部屋に向かっている。なんでも相当面倒な依頼が来たらしく、俺に任せたいらしい
面倒な依頼ねえ?なんだろうか
「泰春?疾風だ。来たぞ」
「ああ。入ってくれ」
手短に来た事を告げ、障子を開ける
その部屋の中には歳をとり、身体こそ老いたものの熟練した気を放っている青山泰春その人だった
「…お前、いい加減その気を放つ癖やめろよ。若い奴らが怯えて俺に相談に来るんだぞ?」
「うん?すまないね。コレはコレで役に立つんだ。暗殺者を見つけたりね」
「まあ、その話は後でいい。何なんだ?『面倒な依頼』ってのは」
「…うん。君は『麻帆良』と言う土地を知っているかい?」
「ああ、勿論だ。あの馬鹿でかい樹があるところだろ?」
それ以外にも、原作の舞台って意味でも覚えてるがな
「そう。その麻帆良の地主の娘からの依頼でね。『父上が死んだ後から、母上の様子がおかしい。妖怪にとり憑かれたのかもしれない』って言う依頼なんだ」
「…そんなん、ほっとけよ。愛していた夫が死んで、一時的に自暴自棄になっているだけだろ?」
「そう。普通なら、関西呪術協会もこの程度の依頼では動かない」
ん?
「おい、普通ならってどういうことだ?」
「―――麻帆良一帯の妖怪がらみの事件が明らかに増えているんだ。やれ『赤ん坊を食い殺された』だの、やれ『神隠しだ』だの…。そしてそれが頻発するようになった時期と、地主の妻がおかしくなった時期が一致しているんだ。」
「その妻も、頻発する妖怪事件の一つじゃないのか?」
「私もそう考えた。だがね、不思議とその妖怪事件に『とり憑かれた』という物は無いんだ。ほとんどが神隠し、若しくは食われたという事件なんだよ」
「だから、俺が言って調査して来いと?」
「ああ。私がいけたらいいんだが…生憎と、呪術協会から呼び出しをくらっていてね」
呪術協会も融通が利かないな…
「わかった。調査に向かう。期間は?」
「とりあえず、原因が分かるまで」
「了解。原因がその妻だった場合は?」
「―――最悪の場合は、斬ってくれ」
「…了解」
★
さて、麻帆良に来たはいいが…
「―――町の雰囲気が死んでおるの…。そこら中に人が倒れておる」
「おまけに、瘴気まで発生してやがる…。どうなってんだ?」
そう、町に生気が無いのだ。住民の目は死に、作物は枯れている。おまけに瘴気が発生しており、そこら中で人が倒れていたり、酷いものになると腐った犬の死体が放置されている。
「これも、妖怪の仕業かの?」
「馬鹿いえ。瘴気を発生させるなんて、ただの妖怪には無理だ。お前レベルか、それとも悪神かだよ」
こりゃ、相当きつい仕事になりそうだな…
原因が本当に地主の妻だったとして『呪術協会から依頼を受けてやってきた』とするとあまりにも危険なため、俺たちは旅の商人を装って接触する事にした
もちろん変化の術で姿も変えている。俺は今、シノくんの姿を。クラマはヒナタちゃんの姿を借りている
接触するに当たって必要だった理由は『この町の状況を打開できる可能性がある道具があります』と町の人に言ったら、あれよあれよというまに連れてこられた
「遠くからご苦労様です。私は麻帆良の地主代理をしております『
出迎えてくれたのは病的なほどに白い肌を持つ、黒髪の和風美人だった
楠根さんが手を差し出してきたので、握手をする。…なぜか以上に冷たかったが
なるほど。確かに何者かに憑かれてるが…何の妖怪かまでは分からないな
楠根さんの後ろには、おそらく娘であろう少女が控えている。妙に無表情だな?
「コレはどうもご丁寧に。私は商人の『
風見手華とは『なみかぜはやて』を並び替えてそれっぽくした物。一応神鳴流剣士として、それなりに人相と名前は知れ渡っているためだ
っていうか裏の世界で動いてるのに表で知れ渡ってるってどういう事!?
「はじめまして。風見クラマです」
「あらまあ、可愛らしい。…ほら、あなたも挨拶しなさい」
「…はい」
楠根さんの後ろにいた少女が前へ進み出て、挨拶をする
「
久慈奈ちゃんとも握手をする。今度は、手に紙を忍ばせて
「っ!?…では、屋敷の中をご案内いたします」
「私は召使たちに宴会を開かせることを伝えてきますので、これにて」
久慈奈ちゃんは一瞬驚いたようだったが、すぐに無表情に戻り事務的に言葉を告げた
楠根さんは対照的に笑顔を浮かべて去っていった
★
「…最後にここがあなた達の寝室です。それでは後ほど宴会の準備が整いましたら、お呼びしますので」
「色々ありがとうね久慈奈ちゃん。…一つ聞いてもいいかな?」
「…なんでしょう?」
「君のお母さん。いつもあんな風なの?」
「いいえ。言いにくいのですが…父上がアヤカシに食い殺され、その亡骸を見た後に突然…」
「性格が豹変した、と。ありがとう…ッ!?」
ふと嫌な感じがして、その方向を睨んでしまった。まるで、背中を舐められるような嫌な感じが…
「ど、どうしたんですか手華さん?」
「いやちょっと妙な気配を感じてね」
気のせい、か?いや、警戒する事に損は無い。一応、影分身を鼠か何かに変化させて周りを偵察させよう
あれから数十分後。久慈奈ちゃんが俺たちを呼びに来た
「手華さん。クラマさん。宴会の準備が整いましたので、大広間へご案内いたします」
「む、夕飯か?待ちくたびれたの」
「クラマ。はしたないよ」
まったく、よだれ垂らして…
???Side
「…うまそうな鼠だな。宴会の前に、腹ごしらえと行くか」
ぐちゅべきべちゃばきゃ………ごっくん
「…何だこの鼠は。まったく喰った気がしないじゃないか」
まあいい。どうせこの屋敷のモノは全員―――
「―――喰い殺すんだからな」
鼠一匹残らずな。くくく…
え~っと…最後の奴なんこっちゃですね
一応、この妖怪の正体は決めているんですが…読者様方に納得いただけるかどうかは分かりません
とりあえずは、次回をお待ちくださいということで…
ps.あ、正体分かった方がいらっしゃっても言わないでくださいね?
まあ、この段階で分かる方は…結構いるかもしれません
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第八話です。遅れてすいません