第五十八技 朝露の少女
キリトSide
「大丈夫か、しっかりしろ!?」
俺は近づいて少女に呼びかけるが反応がない。
どうやら意識を失っているだけのようだ。
「キリトくん、その子の容態は?」
「意識を失ってるだけだ…。ただ、様子がおかしすぎる……」
「えっ?」
俺の言葉にアスナはよくわからないといった表情をしている。
「この子、カーソルが出ていないんだ…」
「ぁ、ホントだ…」
それだけでもかなり大変な状況のはずなのだが…。
「バグ、なのかな?」
「わからない。その可能性もあるが、いまはこの子を家に運ぼう」
バグの可能性は十分にありえるが、今の状況を解決しないといけないので、
俺がアスナに提案すると彼女は頷いた。
俺は女の子を背負うとアスナと共に家へとむかった。
女の子を家に運び込みベッドに寝かせた。
「精神的なものなのかもしれないな…」
俺は静かにそう呟いた。
外見的には7、8歳といったところだ。精神の方でなにかがあってもおかしくはない。
「俺が見てきたなかでも、群を抜いてこの子は最年少だ…」
「わたしも…。シリカちゃんぐらいが一番最年少だったと思う…」
しかもゲーム開始時を考えるとその時は5、6歳だったと思われる。
「あとの事は明日考えよう…」
「うん……」
俺とアスナは隣のベッドで女の子が眠っているので、同じベッドで眠った。
―――~~~♪~~~~~♪
歌が聞こえる…。
いや、歌というよりはハミングというものだと思う。
この声はアスナじゃない。それじゃ、この声は……。
「んっ…、あさ、か…」
いつもより早い目覚めである。
アスナの目覚ましアラームも鳴っていない。
隣をみればアスナがまだ眠っている。すると……、
―――~~~~~♪~~~♪
あのハミングが聞こえてきた。
体を起こして隣のベッドで眠る女の子をみてみるとまだ眠っていた。
しかし、その口は動いてハミングを奏でている。
「アスナ、起きろ!」
「んぅ~、まだ眠いよ~」
と言って掛布団を被ってしまった。
駄々をこねるなよ、こういう時は強行策に出るに限る。
―――バサアッ!
「んん…。まぶしいよ~、キリんむっ!?」
俺は布団をはぎ取るとアスナの唇を奪った。
アスナはジタバタと暴れているが、俺が抵抗できないように手を抑える。
そして、抵抗が少なくなったところでやめてあげた。
「おはよう、アスナ…」
「お、おはようございます…/////////」
ようやくお姫様のお目覚めだ、これで本題に入れる。
―――~~~♪~~~♪
「あれ、この歌は?」
「そのために起こしたんだよ…。隣を見てみろ」
「えっ? うそ……」
驚くのも無理はない。
眠っているはずの少女が歌っているのだから。
「どうしよう?」
「とりあえず起こしてみよう」
「うん…。ねぇ、起きて…」
アスナが女の子を軽くゆすって起こそうとする。
「ぅ……ん……。だ…りぇ…」
女の子が目を覚ましてたずねてきた。俺はそれに答える。
「俺はキリト。こっちはアスナだよ…」
「キ……ト…、ア…ゥ……ナ…?」
喋り方がかなり舌っ足らずになっている。これは明らかに問題があるようだ。
俺はせめて動揺を悟られないように振る舞おうとするが、言葉を喋る事ができない。
「あなたのお名前…。教えてくれるかな?」
俺の状態を見かねたアスナがかわりに聞いてくれた。
「な……ま…え…。ユ…イ……」
「ユイちゃんだね」
女の子の名前は『ユイ』というらしい。
いまはこの子と接する事が大事だ。
「俺の名前、キリトっていえるかな?」
「キ……ィ…ト…」
「(クスッ)難しそうだから、好きな呼び方でいいよ」
大分舌っ足らずなので言い難いのだろう。
ユイは可愛らしい思案顔をしている。そして…、
「パパ!」
……驚いた。そう呼ばれるとは思わなかったからな。
せめてお兄ちゃんとかでくると思っていた。
「アゥナは、ママ!」
「あ……うん、そうだよ…。ママだよ、ユイちゃん!」
そう言われたアスナはユイを抱き締めた。
その様はまるで本当の母子であるようだった。
そのあとユイと少し話をしてから、ユイはパンと温めたミルクを口にしてから再び眠りについた。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
はい、女の子はユイちゃんでした。
というわけで『朝露の少女編』にはいります。
原作とは少しだけ違った展開になりますので、楽しんでいただければ幸いです。
それでは・・・。
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第五十八話です。
今回は上手く書けているか、かなり不安です・・・。
それでは・・・。