久しぶりの予定のない非番の日はこんな一言で始まった。
霞
「けーいしっ!聞いとるで、今日非番なんやろ?」
桂枝
「おはようございます霞さん。ええ、非番ですが何かありましたか?」
霞
「ふふーん。あのな桂枝・・・この前の約束覚えとるか?」
この前の約束・・・思いつくのが一つしかないがもしかして・・・
桂枝
「・・・無形での模擬戦ですか?」
袁紹との戦い前に約束してたやつだ。
霞
「そうや、真桜から聞いとるで!なんやえらいクセのある武器作ったんやって?」
桂枝
「ええ、クセというかなんというか・・・」
クセどころじゃない。あれから延々と訓練してても未だに完成と言えるか怪しいシロモノだ。誰だあんなの頼んだ奴は。
霞
「おもしろそうや!というわけで桂枝!今日の午後からウチと試合するで!」
もう戦いたくて戦いたくてしかたなさそうな霞さん。尻尾があったら振ってるんじゃないかと思うくらい。
桂枝
「・・・わかりました。どこまでできるかわかりませんがお相手をさせて頂きます。」
霞
「おっしゃ決まりや!すぐに部隊の指示を終わらせてくるさかい。昼食べたらやるで!」
楽しみにしとるからなーといって霞さんは部隊の方へとかけていった。
桂枝
「・・・さて、せめて李典には声をかけるのが筋だろうな。」
開発者に見せないわけにも行かないだろうと思い私は彼女の開発室へと向かっていった・・・
~一刀side~
一刀
「うわっ。結構いるなぁ」
楽進
「ですね・・・いったい何をはじめる気なんでしょうか真桜は」
昼の中庭。本来ならばせいぜい5~6人が通行のために通るこの場所に軍師達や武将といったメンツがかなりそろっている。
李典
「隊長!ウチの最新作のお披露目があるから昼に調練場に来たってやっ!」
俺は真桜にこう言われたからきたんだが・・・こんなに集めて何をやるんだ?
風
「おやー。お兄さんじゃないですかー。」
華琳
「一刀、あなたも見に来たの?」
桂花
「げっ。何しに来たのよ。さっさとどっか行きなさい。妊娠しちゃうでしょうが。」
一刀
「華琳、いったい何が始まるんだ?」
桂花
「ちょっと!無視しないでよ!」
華琳
「はいはい桂花は落ち着いて・・・それで、あなたは聞いてないの?霞と桂枝が試合するのよ。今から。」
一刀
「霞と桂枝が・・・?」
桂枝が人前で戦うなんて珍しいこともあるもんだ。いっつも早朝に一人訓練をしているっていう話なのに。
話なのにというのは俺は一回も見たことがないからだ。ほぼ日の出と同時に起きてやっているので基本俺は起きていない。
風
「その様子だと本当にしらないようですねー。じゃあお兄さんはどうしてここにきたんですか?」
一刀
「俺は真桜が新作のお披露目があるからってココに呼ばれたんだけど。」
華琳
「・・・ああ。そういうこと。ならココであってるわよ。」
一刀
「え?それってどういう・・・」
桂枝
「・・・なんだこれ。なんでこんなに人がいるんだ?」
桂花
「桂枝。来たわね。」
後ろから話題の人が現れた。その雰囲気はいつもどおりなのだが・・・
一刀
「・・・なんだか珍しい格好してるな。」
外見がいつもの一般兵士の鎧でなく黒いネコ耳フード付き外套を着ていた。
桂枝
「ああ。まだ鎧着ながら完全な動きができるほど完成しきってないんだ。次の戦までには間に合わせる予定なんだけだが・・・」
桂花
「そのままでもいいじゃない。それなら戦場で桂枝がどこにいるかすごくわかりやすいわよ。」
桂枝
「・・・
・・・相変わらずかぶらないネコミミフードについては突っ込まないでいてやるのが優しさってやつなんだろう。
若干ゆったりとしたその服とは対象に手甲だけはしっかりとした作りをしている。
そして内側から何か着こんでいる。あれは・・・
一刀
「鎖帷子か?それ。」
桂枝
「ああ、お前に聞いた話から再現した。結構使いやすくて助かってるよ。
--------------コレなら普段から内側に着込んでいても問題はないし」
そう、外見もそうだが手に持っているものも明らかに別物だ。
いつもは普通の剣をもっているなりやりを持っているなりとにかく武器が適当なのがこいつの特徴の一つだ。
だがいま桂枝がもっているのはどこかのロボットアニメでナギナタと呼ばれていたような二刀一刃型の武器。
中心にあるとって部分には両手がギリギリ入れるようなスペースしかない。
剣の部分は中華刀らしく横に広く丸い印象を受ける形をしている。
横は広めにとってあるようでらに2つともにまるで他に持てるような感じの部分がついている。正直すごく使いづらそうだ。
一刀
「その武器は何?」
桂枝
「ああ、一応俺の専用武器「無形」だ。すごく使いづらいが・・・まぁどう使うかはこれから見て勝手に判断してくれ。ところで・・・なんだこの人だかり?」
華琳
「みんなあなたを待ってるのよ。桂枝。」
華琳が話しに入ってきた。
桂枝
「華琳さま。コレは一体どういうことですか?」
華琳
「あなたが私に言ったんでしょう?「霞と試合をするから中庭を午後から使わせてもらいたい」って」
桂枝
「ええ、流石に許可は取らないといけませんからね・・・風は?」
風
「いざという時実力がわからないと軍師としては策のたてようがありませんからねー。」
桂枝
「・・・なるほど。で、お前達はどうしてここに?」
一刀
「俺達は真桜に最新作のお披露目があるからって呼ばれたんだが・・・」
于禁
「ねー真桜ちゃん。ここで何を見せてくれるのー?」
李典
「それは見てからのお楽しみや・・・おっ!ぎょーさんきとるなぁ!」
夏侯惇
「なぁ真桜。ココで何をやる気なんだ?」
夏候淵
「中庭?今日はここで霞と荀攸が試合をすると聞いていたのだが・・・」
・・・元凶がさらに人を引き連れやってきた。
桂枝
「・・・李典。どういうことだ?」
桂枝が珍しく殺気をまとって真桜を睨んでいる。・・・普段感じないからよけいに怖い。
李典
「い・・・いやな。無形はウチにとっても丹誠込めて作り上げた大切な武器やさかい。ぜひともいろんな人に見てほしいなーって・・・」
真桜もそれを察知したんだろう。目を泳がせながら答える。
桂枝
「・・・はぁ。まぁ集まったものは仕方ない。・・・次こういうことがあったら予算半分に削るから覚えておけよ?」
李典
「は・・・はい!わかりましたぁ!」
ピシっと敬礼体勢をとる真桜。それで手打ちとしたのか殺気は消えていた。
霞
「おわったっー!待たせたな桂枝・・・ってうおっ!めっちゃ人おるやん!」
いつもの偃月刀をもって霞がやって来た。霞も知らなかったようで驚いている。
桂枝
「どうも霞さん。どうやら李典が集めてしまったみたいなんですよ。まぁ霞さんなら気にしないとは思うんですがね」
霞
「おっ!それがいうてた新しい武器か。たしかにけったいな形やなー。ん?観客?ええてええて、多くいたほうが盛り上がるさかい。」
カラカラと笑い飛ばす霞。でしょうね・・・と苦笑をしつつ中庭中心に足を向ける二人。
そしてお互いにある程度の距離を持ち向きあった。
霞
「・・・そういや防具もいつもと違うんやなぁ。ええんか?」
桂枝
「ええ、防御力は正直結構落ちるんですが・・・まぁどうせ直撃したら一発ですし。これで弱くなるってことはないですよ」
霞
「ならええ。審判はせやな・・・丁度人もいっぱいおるし・・・秋蘭。頼んでええか?」
夏候淵
「ああ、構わないぞ」
そういって秋蘭が彼らの間に入る。
霞
「せや、せっかくやし・・・なんか賭けんか?」
桂枝
「ええ、構いませんよ。そちらは何を?」
霞
「ウチがかったら桂枝になんでも言うこと一個聞いてもらう!」
桂枝
「・・・それはまた怖い」
なんでもの範囲が全く読め無いのがこの人だ。楽しければなんでもいいと思ってるこの人だからこそその時の気分次第だから怖い。
霞
「・・・そっちは何賭けるんや?」
・・・そうか。こっちが勝ったら何かしてもらわなければ賭けにならないか。
こちらから賭けるもの・・・どうしようかな。正直霞さんが何を求めてるか気になったから応じただけだったし・・・
桂枝
「そうですねぇ・・・では私が勝ったら今日の晩に作る天の国の料理の味見役にでもなってもらいましょうか。」
ちょうどいいからつまみの味見でもしてもらうことにしよう。私も食べたことのないものだから正直不安があるし賭けるにしては上々かな。
霞
「なんやのそれ。ウチにとっては得しかあらへんやん。」
桂枝
「さぁてね。なにせ初めて作るものですので。・・・そろそろ、始めましょうか?」
霞
「・・・せやな。」
霞はいつもどおりの構えを、桂枝は剣についている方の取っ手を片手にもちゆっくりと構えた。
お互いに気を張っているのがよくわかる。しかしその表情は笑っており緊張はしていないみたいだ。
秋蘭
「準備はできたようだな・・・では・・・・はじめっ!」
秋蘭による開始の合図。それと同時に桂枝は掴んでいた剣を持ち直し。
桂枝
「ふんっ!」
霞めがけておもいっきりぶん投げた。
霞
「はぁっ!?」
勢いよく回転しながら襲い掛かるそれを何とか避ける霞。さすがに驚きを隠せていないようだ。
霞
「なんやなんやっ!?今投げたけどもしかしてもうあの武器つかわんのかいな!?」
たいする桂枝はいつもどおりの落ち着いた表情。そのまま右足に体重をかけて・・・
桂枝
「さて・・・それはどうですかねっ!」
間合いを詰めにかかる。素手で殴りかかってくるとふんだのか霞はそれを受けにかかろうと改めて構える。
楽進
「本気ですか?霞さんに素手で挑むなんて・・・」
凪もあれで武器の出番は終わりだと思っているようだ。しかし俺にはわかる。そう、お約束っていうやつだ。
一刀
「いや・・・あの手の回転がかかったものはな・・・
ーーーーーーーーーーーー大抵戻ってくるんだよ。」
くるりと空中で進行方向を変える無形。そのまま霞に後ろから襲いかかろうとする。
霞
「んなっ!?」
音で気づいたのか慌ててしゃがんで回避する。予定通りと言わんばかりに桂枝の元へと帰ってくる無形。
そのまま片手でキャッチ。中間にある取ってを持ちなおも距離と詰めにかかり・・・
桂枝
「さて・・・行きますよ!」
そのまま偃月刀の内側に入った桂枝による連撃が始まった。
霞
「ちぃ!」
霞もすぐさま偃月刀を短く持ち抗戦に入る。そのまま十合ほどうちあったところで霞の偃月刀のスピードが変化する。
霞
「そらそらいくでーっ!前にみたいに防いでるだけでなんとかなると思うなや!」
まるで暴風のような連撃。先ほどまでの桂枝のスピードでは防いでるのがやっとだろう。
桂枝
「ええ・・・そのためのこいつですよっ!」
そういうと上から来る一撃を片手で受け止める。そして・・・
霞
「分かれた!?」
受け止めていない逆の刃を真ん中から分割し双剣へと武器を変化させた。
桂枝
「これなら・・・どうですっ!」
両の手にもった剣をフルに使い霞の連撃を受け切り始める桂枝。
霞
「ちぃっ!」
近距離に来られていること、見慣れているせいかほとんど片手で受け切られていることもあいまりもう片方の剣の対応に霞がついていけなくなり始めた。
一刀
「別れるのかアレ!?」
李典
「せや、元々の開発の主題が「一個の武器で無数の武器」ことやからな。あれ一個でたいていの距離には対応するで。
・・・流石に投げるって聞いた時には耳を疑ったんやけどな。」
やっぱり投げるまでは想定外か。しばらく続いた攻防だが先に仕掛けたのは霞。
霞
「そろそろ・・・離れんかいっ!」
一度後ろに飛んだ後前に重心を乗せた真っ直ぐな突きを繰り出す。桂枝は依然平静としており
桂枝
「そこっ!」
一刀
「!?」
霞の武器についている龍の部分・・・それに武器を上手に引っ掛け反動を利用し大きく距離を開けた。
~一刀side out~
うまく攻撃を利用したあの後退方法。それを霞は一度みたことがあった。
霞
「・・・あれはまぐれやなかったんやな。」
それは桂枝との初めての試合のとき。武器は違えど全く同じ方法を使って距離を開けられた。
桂枝
「ええ。アレくらいしかあの時はできませんでしたけどね。」
ガチンと音を鳴らして無形を元の形にもどしながら答える桂枝。その表情には若干の疲れ。
氣を集中させないともっていかれるため本来しなくてもいい読み合いを強いられている桂枝のほうが疲れが早いのは当然のことだ。
霞
(今度はどう来る?またアレを投げる?それともそのまま突っ込んで?・・・アカン。一歩でも遅れたらそのまま持ってかれるで)
だが霞とて油断は決してできない。対応が遅れれば、完全に裏を書かれたらその瞬間に勝敗は決するだろう。
そしてたとえ力尽きようと必ず勝ち筋を作りだし一瞬で戦況をひっくりかえしてくる。桂枝とはそういう男だと霞は思っている。
そんな相手を前に彼女に芽生える感情はただひとつーーーーーーーーー
霞
「ククッ・・・ククク・・・アッハッハッハッハッハ!楽しい!楽しいなぁ桂枝!こんなおもろい相手初めてやで!」
ーーーーーーーー圧倒的な歓喜。
夏侯惇との勝負では単純な力と速さのぶつかり合いを楽しむことができる。楽進との勝負では確実に成長していく後輩を育てるような楽しみがある。
だが彼との勝負ではそのどちらでもない。己の力と頭脳を駆使する読み合いとぶつかり合いだ。
夏候淵と戦うときに近い感覚だ。しかし彼女は弓使い、近づけてしまえばそれ以上の行動に発展することは皆無だ。
だが彼は違う。弓も状況によっては使うだろう。近づいてもどこまで来るのか、何を使うのか、何をしてくるのかまで様々な角度からの読み合いが発生する。
知勇共に優れた戦い好きの彼女にとってまさに「すべてを尽くして戦う相手」に今桂枝はなったのだ。
桂枝
「・・・楽しんでもらえて何よりですよ。」
桂枝は皮肉交じりにそう返しつつも戦況が一変したことを悟る。
桂枝
(さて・・・ここからが本番か)
先程までとは気の量がまるで違う霞をみてそう感じた。
今まで「徐栄」の延長線として霞は桂枝と戦っていた。なのでどこかに遊びがあったのだ。
だが今は違う。彼女は桂枝を一人の武人として、自分が全力を出すにふさわしい相手としてこちらをみている。
それゆえの歓喜の瞳、目の覚めるような鋭い目の奥は燃え上がるような情念を見せている。
桂枝
(・・・こうなる前に決着を付けたかったと言うのは未練だろうな)
桂枝はただでさえ薄い勝ち筋が更に薄くなったこの状況をみてそう思った。
彼自身もわかっている。本当に決着をさっさとつけたかったのならならば投擲、分離をここまで見せなければよかったのだと。
あの2つの行動は出す機会さえまちがえなければ確実に一本をとることのできる・・・それほどの切り札だった。
なのであえて初手に、それほどの必要のないときにわざわざ見せたのか。
桂枝
(・・・ようするに私も武人だったのかもな。)
それはきっと霞との戦いの決着をそんな一発技で終わらせたくないと。もっと楽しみたいと思うそれだったのかもしれない。
だが今はそんなことを考えている余裕は彼にはない。
彼は偃月刀部分の取っ手を両手で持つ。それにより無形は長柄の偃月刀へとその仕事を変化させる。
桂枝
「さて・・・では、行きますよ?霞さん」
彼は右足を踏み出し前傾姿勢になる。
霞
「おうっ!来いや桂枝!こっからが本番やで!」
その声とともにかれは一気に霞へと詰め寄った。
~一刀side~
もう何合目になるだろう剣戟。彼は霞と同じ長柄の射程において彼女と互角に切り結んでいる。
それは単純な「距離」の差。彼女が薙ぎを中心にする攻撃に対して彼がとっているのは突きの動作。直線と円状の動きの距離の差が彼女と彼を同じ領域に並ばせる。
楽進
「・・・いいなぁ。」
唐突に楽進がポツリとそう呟いた。隣でその剣戟に見とれていた一刀がその言葉で我に返る・・・がその視線は依然戦いに向いたたままだ。
一刀
「・・・なにがいいんだ?凪」
彼自身でも理解しているだろう。そのつぶやきの理由を。何故なら彼も同じ心境にあったから。同じ感想を持ったから。
楽進
「だって霞さまと荀攸さん。
ーーーーーーーーーあんなにも楽しそう」
そう、それは憧れ。自分と同じ領域にいる人間が全力をださないと入れない領域。
一刀
「ああ・・そうだな。」
彼はいつかに霞が言っていた言葉を思い出す。
霞
「ウチはな・・・強い奴と戦いたいんや。強い奴との戦うと、剣を交えるとその人間と語らうよりよっぽどそいつのことがよう分かる。だからウチは・・・強い奴と戦うんが大好きなんや。」
今まさしく彼と彼女はあの剣戟のなかで存分に語らっているのだろう。己のモノすべてをかけて。
だからこそ羨ましい。北郷一刀には絶対に入れない領域だから。彼にはあの二人をそれ以上に理解することはできないとわかってしまうから。
そこに少しの寂しさを感じつつ彼はこの戦いの成り行きを見守っているのだった・・・
~桂枝side~
もう何合撃ちあったのだろうか・・・行きも切れ始め手足に感覚がなくなろうとし始めている。
霞さんと私は示し合わせたかのようにお互いに距離をとりはじめた。
霞
「さて・・・楽しい時間やったがこのままでもらちがあかへんよな。
ーーーーーーーーーそろそろ決着、つけよか?」
そういって闘気を更に充実させる。まさしく次の一撃を決め手とすると、自身の全力を今からぶつけると宣言されているかのようだ。
桂枝
「ええ、そうしましょうか。・・・名残惜しいですがね。」
そういい私も氣を足に集中。彼女の神速に応えようと天の国のある技を再現するため構えを取る。
一刀
「え?あれって・・・まさか!」
北郷は驚いている様子だが他のやつにはわからないだろう。当然だ。私ですらこんな構えを取るのはこの技を出す時以外他になし。
霞
「・・・変わった構えやな」
今の私の構え・・・足を広げ剣を長柄に持ち剣を肩よりも上げて刃先を正面に落とすものだ。霞さんが突撃体勢をとっているのに対して私は迎撃体勢を取ることにした。
桂枝
「ええ、自分でもそう思いますよ。でもいまの私だとコレ以外にないんですよ。
ーーーーーーーーーーあなたの神速に並び立つと思われる技がね。」
それはつまり・・・彼女の間合いに合わせるということ。彼女の神速に真っ向から受けて立つ。その意思表示だった。
これほどの試合の最後の一撃だ。相手が霞さんとなればその速度に応じずしてなんとする。
霞
「・・・ほんまにええ男やなぁ。お前は」
霞さんは笑顔を浮かべつつ前傾姿勢を取る。その猫のようにしなやかな動きはおそらく今の間合いを瞬き一つの間に詰めてくるだろう。
場が静寂に包まれる。この場にいるのは名だたる武人。だからこそわかるのだろう。今この瞬間、目をそらしたら決着を見逃すと。
霞
「じゃあ・・・行くで!桂枝!」
沈黙を破る霞さんの言葉。そして一気に間合いを詰めよる。
霞さんは得意とする下からのすくい上げを。それを予想していた私は上段からの振り下ろしを選択。
前回の決着時と違い今回は距離があるため高速の斬撃を防ぐことができる。問題はこの次。彼女もそれはわかっているはず。
きぃんという音とともにお互いの剣が交わる。その瞬間
桂枝
(今っ!)
弾かれた剣の勢いをそのままに足にあった氣を蹴り上げるように腕に集中。持ち上がってる剣は更に加速をしそのまま腕を軸として弧を描きながら下への振り上げへと変化した。
これは天の国の大剣豪が使ったとされる技を独自に解釈して生み出したもの。そしてその技の名はーーーーーーー
ーーーーーーーーーー燕返し
飛ぶ鳥でさえ落とすと言われるその斬撃は神速の速度をもって霞さんに襲いかかる・・・はずだったのだが。
その描かれる弧は最下点でもって片手で止められた。
桂枝
「っ!」
弧を描き剣が振り上げに入るその瞬間を止められた。この技はまだ誰にも教えていないはずなのに霞さんはまるでそう確信していたかのような動きで。
霞
「いい技やな桂枝。この一撃、もしかしたらウチより速かったかもしれん。ん?驚いている顔やな。なんでわかったかって?決まっとる。
ーーーーーーーーウチがお前を信頼していたからや。お前ならばウチを倒すため真っ向から速さで勝負してくると、かならずウチの期待に応える何かを持っとるってな。
ならば二撃目はかならず逆側から来るとそう読んどっただけや。」
桂枝
「・・・まさか期待されていたとは思いませんでしたよ。」
霞
「ははっ。言うてへんかったからな。さて桂枝。
ーーーーーーちぃとばかし痛いで?」
そういって止めている左手とは逆の右手に持った偃月刀をこちらに向け
霞
「うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
思いっきり腹部を突かれたのであった。
そのままくの字に体を曲げたまま宙を飛んでいく感覚。
なんとか両の足での着地には成功するが・・・
桂枝
「・・・無理か」
氣も体力も尽きた私にはそのまま倒れゆく自分の体を支えることは不可能だった・・・
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無形のお披露目です。正直自分でもやりすぎたかなぁとは思っています。