◆ 第26話 ぬことアースラスタッフ ◆
どうも、さっきまで昏倒していたぬこです。
いや、別にまた大怪我したとかしてたわけじゃないんですけどね。
セラスさんがね……
◆以下回想◆
ぬこですが、初っ端から最高にハイって感じのセラスさんに取っ捕まりました。
「やぁ、猫くん、いいところに来たね! ちょうど新作の薬ができたところなんだ。
これはだね、最近発見された新種の薬草や魔法生物の内臓を使い『中略』体力回復、魔力回復、身体強化、五感強化、その他諸々の効果が!
どうだい、使いたくなったろう? うんうん、素直でよろしい」
(……待って、超待って。ぬこ何も言ってないよね!? 嫌だよ! そんな怪しげな薬!
というか、前回全力で断ったじゃないですか、やだー)
「むぅ、君があんなに嫌がるから今回は趣向を変えて注射じゃなくて錠剤にしたと言うのに……
なんなら、口移しでもいいぞ? 大丈夫だ、まだ未使用だぞ? この唇は。アレだ、ふぁーすときすという奴だ」
(ごくり………はっ!? いやいや、そんな事ではぬこは騙されないよ!
そんなに試したいなら、他の局員に……でも口移しは禁止だよ!)
「君はわがままだ……」
(わがままて……)
とりあえず諦めたようなのでその場を離れようとセラスさんから目を離した事が間違いだった。
そのときのセラスさんの目はきっと光っていただろう。こうキュピーン的な。
がしっ
(ほわぁっ!? 何? 何ですか!?)
「じゃあ、行こうか猫くん。ん? 恥ずかしいのかい。大丈夫、私の部屋に行こう。二人っきりだよ?」
(誰もそんな事言ってねーです!? 離してーー!)
「ハハハ、天井のシミを数えてるうちに終わってるから大丈夫大丈夫」
(いーやー!? 犯されるぅぅぅ!!!)
そのまま連行されて行ったぬこでした。
◆回想終了◆
で、今に至ると……
あんな怪しげな薬なのにとりあえず魔力やらは回復してるんだから、逆に怖い。
えっ? 結局口移しはどうだったかって? し、してもらってねーです! してもらってなんか……ないですよ?
ま、まぁそれはそれとして! ここの部屋の主はどこに行ったのかね。
まったく、ぬこを昏倒させといて……
いつもなら椅子に座ってコーヒーを飲んでいるんだが……事後とか言うなし。
というか、そんなパターンが分かるほどセラスさんの世話(強制)になってる件について。
「ん? 何だ、起きてたのか。おはよう、気分はどうかな?」
(あぁ、セラスさん。妙に気分が良くて怖いです)
「それは重畳。どうだい? 食堂でミルクをもらってきたんだが」
(……何も入ってないよね?)
「む、入れたほうがいいのか? それなら―――」
(入れなくていいです! そのままがいいです!)
なんてやり取りをしながら、ミルクをもらう。あ、うめぇ。
そういえば、いきなり襲われて忘れてたけどひとつ頼みたい事があったんだよね。
(セラスさん、セラスさん。ちょっとお願いがあったりするんですけど)
「なんだい? 日頃からお世話になっていることだ、大抵の事は聞いてあげようじゃないか」
(強制だったんですけどね……まぁ、それはともかくお願いと言うのはですね―――)
フフフ、これでよし。セラスさんの専門外だったらしいけど、快く引き受けてくれた。
実際は他の人に頼むらしいけど……
ん? 何を頼んだかって? それは秘密です。
『なぜならその方がカッコいいからッ!!』というブラボーな理由ではなく、ただ『こんなこともあろうかと!!』って言いたいだけです。
うん、全然伏せてないけど、伏線です(メメタァ
しょうもない理由で申し訳ないです。
(じゃあ、よろしくお願いしますね?)
「任せておきたまえ。まあ、期間は相手方も忙しいから半年くらいで見積もっておいてくれ。できたらこちらから連絡するよ」
(分かりました。んじゃ、楽しみにしてますね)
本当はここまでする必要はないかもだけど、あって困るものでもないしね。
さて、お腹が空いてきたので食堂にでも行きますかね。
ぬこもミルクだけじゃあ腹は膨れないのですよっと。
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やってきました食堂!
今日も適当に猫まんま的なものでも作ってもらうことにしよう。
(おばちゃーん。今日も猫まんまお願いします)
「あいよ。ついでに魚の頭も付けてあげるよ」
(おぉ! ありがとうございます!)
(はは、いいってことよ。でも、お残しは許しまへんでぇ!!)
この人は食堂のおばちゃん。名前は知らないけど、どこぞの忍術学園にいそうなおばちゃんです。
口癖は『お残しは許しまへんでぇ』あと、唯一おばちゃんって言っても怒られないおばちゃんです。
「よし、これでいいね。さぁ、できたよ。どうするあたしが持っていこうかい?」
(むむ、それは悪いです。忙しいんでしょう?)
「でも、あんたじゃ運べないだろ?」
(それもそうですが……)
こうして話してる間もしきりに手を動かしてるおばちゃん。
腕の動きが見えねぇ、おばちゃんマジパネェっす。
仕方がないので、お願いしようとした頃で、後ろの方から声をかけられる。
「あれ? 猫さんじゃん。どしたの?こんなとこで」
「こんなとことはご挨拶じゃないか、アメリア……」
「あっ、いや、別にバカにしたわけじゃないんだよ? ここにいるのは珍しいなぁ~って思っただけだよっ!」
失言に慌てて弁解する、リアさん。
でも、珍しいってぬこだってご飯ぐらい食べますよ。
確かにこっちに来てからご主人と一緒に食べてないのは珍しいですけどね。
「……まあいいさ。あんたらのもできてるよ。ついでにこの子のも持って行ってやんな」
「えぇ~私レナ達のも持っていかなきゃいけないんだよ? 持てない~」
「何のための魔法だい? つべこべ言わずに持っていきな!」
「は~い……」
(あの、なんかすみませんね)
無理矢理押し付けられて、明らかにショボーンとしてるリアさんに声をかける。
ぬこも自分で運べればいいんだけど……こういう実用的な魔法は覚えてないのよね。
「いいよ、別に。最初から3つ運ばなきゃいけなかったし、今更ひとつお皿が増えても一緒だもん」
(というか、何でリアさんが?)
いつもならレナさんなのに……という言葉は飲み込んでおく。
レナさんの名誉のために。今更だけど。
「う~聞いてよ、猫さん! レナったら、ちょっとオパーイをモミングしたぐらいでパシリ扱いだよ!」
(なんてうらやま……けしからんことを……)
あと、その表現じゃあ全然婉曲しきれてませんから。
「あのわがままボディーを前にして私の手が轟き叫んだ。反省も後悔もしてないよ」
(してください。でも、だったら何でアズさんのも?)
「いや~ちょっとアズに『大丈夫!アズのちぃぱいも好きだよ!』って言ったらこの様だよ」
それでも後悔も反省もしない! って胸を張るリアさん。
何度も言うが、反省も後悔もしてください。振り回される、お二人のためにも。
「そうだ。ついでに猫さんも一緒に食べよ? そしてあの二人を何とかして?」
(ダメだ、この人早く何とかしないと……)
まぁ、二人を何とかするかはともかくとりあえず一緒に食べることに。
「は~い、お待たせ~ついでに猫さんも拉致ってきました!」
(拉致されてまいりました)
「つーん」
「………(……)」
レナさん自分でつーんって……。
アズさんもそれはウインドウに出す必要はないでしょうに。
そしてそのまま二人とも無言で食べ始める。
「もう、ごめんってば! 許してよ~」
「ふんだ。許してなんかあげません!」
「しょうがないな~これ分けてあげるから、ねっ?」
「うっ、そ、それは……ッ!」
そう言って食堂のおばちゃん特製のプリンを取り出すリアさん。
この特製プリンはあの超甘党のリンディさんが大絶賛したものである。
ちなみに1日3個の限定品。そして毎日リンディさんが買い占めて一般局員の口に入る事のない代物だったりする。
今日はどうしたんだろうね?リンディさん。
「ほら、アズも一緒に食べよ?」
「………(頂戴……)」
「うん。じゃあ、これね?」
「くっ、私はそんな事では、つ、釣られませんからね!」
どうやら、無駄な抵抗を始めるようです。たぶん気付いてないんだろうけど、本人はさっきからずっとプリンに釘付けである。
「そっかぁ、せっかく3人で一緒に食べようと思ったのになぁ……」
「………(甘い、おいしい)」
「あっ、アズったらずるい! 私も食べよっと」
「うぅ……卑怯者~」
本気で涙目なレナさん。
ほむ、ちょっと助け舟を出してみますか。
(いい加減観念したらどうです? 食べたいんでしょ?)
「そ、そんなことないです!」
(んじゃ、そのプリンはぬこがもらってもいいですか?)
「えっ!?」
「そうだね。レナがいらないんじゃ、余っちゃうもんね。いいよ、食べても」
(いやっほぅ!! ぬこも食べたかったんだよね!)
「だっ、ダメ~ッ!! 食べる! 食べます!」
ようやく観念するレナさん。
同時に神速でプリンを回収する。早すぎて、残像が見えた。
そしてこっちを向いてサムズアップするリアさん。
計画通りである。
「んぅ~!! おいしい! さすが艦長のお勧めですね! 独り占めしたがるのも分かります!」
(そうなのかー、ぬこも食べてみたいなぁ……)
期待の眼差しで三人を見てみる。
こう、チラッチラッて感じで。
レナさんを見る。→親の敵のような目でみられる。
リアさんを見る。→空っぽのカップを見せられる。
アズさんを見る。→「………(何か用かしら?この駄猫)」
(アズさん。ぬこにもちょっと食べさせてくれたり……)
「………(……いいわ)」
(ですよねー……っていいんですか!?)
「………(あら、いらないの?)」
(いります! 超いります!)
食べかけの猫まんまをほっぽりだしてアズさんの下に。
まさか本当にくれるとは思っていなかったです。
「………(ほら、口を開けなさい?)」
(にゃーん……ん?)
「………(ふふ、素直にあげるとでも? 間抜けだわ)」
なんというドS顔!!
この業界ではご褒美ですね、分かります。
(ひどいや! ぬこの純情を弄んだね!)
「………(しょうがないわね。ほら、膝の上に来なさい)」
仕方がないので言われるがまま、膝の上に飛び乗る。
今度はちゃんとくれるようで、ぬこの前にスプーンを差し出してくる。
(むぐむぐ。うめぇー超うめぇです)
「……(語彙が貧弱ね。お里が知れるわ)」
(むぅ、なぜにぬこはプリンを食べさせられながら罵倒されなきゃならないのですかね?)
「……(いいのよ? 別に。残りは私が食べるだけだから)」
(アズさんは意地悪です……)
そのままアズさんのされるがままにされるぬこ。完全に餌付けの体制である。
悔しい、でも……ビクンビクン。
その一方で他2名はこそこそ話していた。
「うわぁ、アズったらあんなにニコニコしてる」
「そうですねぇ、あの娘可愛いものとか大好きですしね」
「これは永久保存だね。デバイス用意して、レナ」
「貴方……自分のデバイスになにやってるんですか……」
・
・
・
・
そんな感じで、いつの間にか仲直りの3人娘といっしょに過ごしたぬこ。
プリンでお腹も満足したところで、そのまま3人と食堂から出ようとしたときに、突然後ろから殺気がががが!
「フフフ、あたしは最初に言っておいたはずなんだがねぇ」
(ひぃ! な、なんでしょうか?)
「覚えてないのかい?『お残しは許しまへんでぇ』って言ったはずだろう?」
そういえば、アズさんにプリンを食べさせてもらったまま猫まんまは放置してたような…
うん、残ってるね。テーブルの下に、ちゃんと。
「フフフ」
(あはっ、あははは。お三方助け……て?)
助けを求めようにも既に姿をくらませている3人娘。
すばらしい逃げっぷりである。
「さぁ、こっちにくるんだよ」
(ちょっ、しっぽ掴んだまま引きずらないでぇ!? いやぁーー……!!)
その後のぬこの行方は知れないそうです……。
どなたかぬこを見つけましたらアースラまで御一報ください。
◆ その頃のプリンを確保できなかったリンディさん ◆
「離しなさい! クロノっ!!」
「ダメです! 糖分の摂取は禁止って、ラフェスタ医務官に言われてるでしょう!!」
「それがどうしたって言うの! 糖分が! 私を呼んでるのよ!!」
「幻聴です! 禁断症状です!!」
「行かせなさい~」
「あぁ、もうっ! なのは! 手伝ってくれ!」
「ふえっ!?」
「いいえ、なのはさん! クロノを抑えなさい! 艦長命令です!」
「くっ、職権乱用ですよ! なのは無視していい!」
「艦長命令は絶対よ!」
「なのはさんっ!」
「なのは!」
「えと、えと、いい加減にしなさーーいッ!!」
『Divine Buster』
『アーーーッ!?』
◆ あとがき ◆
読了感謝です。
今回は幕間的なお話。2話連続でなのはの出番が少ないけど、仕方ないね!
次回でとりあえず、無印編は終了です。
では、誤字脱字等ありましたらご報告いただけるとありがたいです。
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