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「のう陳簡。少し気になったのじゃが良いかや?」
「はいなんでしょう?」
夏候惇をいなし、逃走する途中に美羽が俺に質問してくる。
「お主は水が得意 ― トライアングル? ― じゃったかの、あの雪はどうやって融かしたのじゃ?
火は扱えんとか言っておったと思うのじゃが」
「ああ、雪を融かしたのは風を吹かして暖気を運んだだけですよ。風は水ほどではありませんが、そこそこ使えますので」
俺は美羽に馬を寄せて答える。フェーン現象の解説は面倒なのでパスする。
「氷の飛針や鎌風を軍にぶつけたりはしないんですか?時々使ってましたけど」
反対側から興味を引かれた七乃も聞いてくる。
「眠らせるか、足を掬います。
私は術を使うための力がごく少なくて済む天分があるので、簡単な術を大規模に使った方が楽なのですよ」
「では、氐族の将を宙に飛ばしたり、高祚の武器を土くれにしたみたいな事は夏候将軍にはしないんですか?」
「高祚殿と元譲殿では武勇の程が違います。呪文の詠唱中に切り伏せられてしまいますよ。
氐族の将だって貴女が打ち合っている隙に術を掛けただけです。
メイジというのは元々前で戦うモノではありませんし、系統魔法というのも中々制約が多いのですよ」
正直ワルドやタバサに接近戦に持ち込まれたら勝てないだろうな。
逆に炎魔法の使い手や反射の魔法に対しては膨大な水の質量で押し切れそうだが。
少しのんびりと話をしすぎただろうか、漢水の支流に行き会い、下馬して呪文を唱えたところで騎馬の張遼が追い縋ってくる。
「追いついたで。部隊を文博(朱霊)に任せて小隊で動いて正解やったわ」
言う張遼の後ろには、これまた強そうな鉄の爪を付けているのと、大斧を持ったのがいる。本当に武将が多いな。
「いや魏の皆さんは熱心ですね。私如き小物を逃したところでどうということもないでしょうに」
もうちょっと長閑にいこうよ。
「自軍に被害なしで、敵軍数万を足止めするんを小物て言わへんわ。
大人しゅう来てもらおか。直接対決避けてるんは、タイマンはアカンからやろ。
そっちの二人は多少、出来るみたいやけど、こっちは儁乂(張郃)と公明(徐晃)もおる。逃がさへんで」
宣言すると張遼は張郃、徐晃と共に身構える。呪文を唱えたらすぐさまかかってくる様子だが、一手おそい。
「お断りします。七乃、美羽さっさと逃げますよ」
そう言うと俺たちは踵を返して川の上に馬を曳いて歩き出す。
すでに唱えてあった『水上歩行』(ウォーター・ウォーキング)の効果だ。
馬は水の上を歩くのを怯えるので『制約』(ギアス)で一時的に操ってある。
それを見てあわてて張遼達が駆け寄ってくるが、俺たちはすでに渡り難い深みの上まで達している。
「弓は持っていない様ですが、念のためです。『濃霧』(ミスト)」
渡河可能な地点を探しに馬首をかえす張遼たちを尻目に、矢よけと姿眩ましに川霧を作り出しておく。
「さあ、この調子で、さっさと逃げましょう。働き者の孟徳殿に捕まったら、扱き使われるだけです」
「お主はそれしかないのか」
「これも一本芯が通っているというんですかねー」
君たちは今更何を言っているんだ。
陳簡は当分、スクウェアに成れそうはなかった。
ミシ( ^∇^ リつ↑ ε≡ε≡ε≡┏(;゚Д゚)┛ (^.^;ξξ*゚∇゚)ξξ
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陳簡の武力は53です。
つまり三国志11準拠なら張勲、袁術より下。