◆ 第14話 温泉旅情なんてなかった ◆
どうやら、童貞三十路は魔法使いになるというのは本当だったらしい、どうもみぃです。
先日、図らずも魔法ぬこ? になったわけですが、特に何が変わったということもないようです。
別に人間になれるわけもなく、かめはめ波らしきものが放てるわけもなかった……がっでむ。
ご主人いわく、砲撃はぎゅっとしてどかーん、だそうな。できるわけがない。
それでもと思って、ユーノに結界とかバインドっていう捕縛魔法とやらを習っています。
ちなみにご主人みたく空は意外と簡単に飛べました。
ふはは、飛べないぬこはただのぬこなのだよ!
ま、それはともかく現在連休を利用してぬこは高町家、月村家そしてアリサ嬢と合同で温泉に来ているのであった。
正直温泉にぬこが行ってもいいのかと思うが、深くは考えないことにしておく。
ご主人もここ最近がんばりすぎだったと思うし、羽を休めるにはいい機会だな。
ぬこも旅館に着くまでノエルさんのひざの上で寝るとするよ!
ぬこなのにおにゃのこの膝枕とかリア充過ぎるだろう? 存分に妬むといいよ!
◆
というわけで、旅館に到着しました。膝枕気持ちよかったです。
チラチラとノエルさんをうらやましそうに見ているファリンさんの目が痛かったけど……
帰りはファリンさんにやってもらおう……
それはさておき、せっかくなので温泉に入ろうか。
ということになり恭也さん、美由希さん、忍さん、子供たちで入りに行くことに。
……無論ぬこと恭也さんは男湯に入ろうとしたのだが、約一匹いないことに気づくぬこたち。
「くっ、まさかユーノのやつ女湯に連れて行かれたのか……!」
そのようですよ恭也さん。あの淫獣がぁ!! この前の制裁で懲りていなかったようだな!
今度こそきっちり O H A N A S H I してやんよ!
ご主人に抱かれているユーノを捕捉すると即座に回収する。
(フゥハハァーーッ! この淫獣はこっちだ!)
(うわぁーーッ!?)
(ユーノ君!? みぃ君、なんで連れていっちゃうの!)
そのまま男湯へ放り込む。みっしょんこんぷりーと。
恭也さんがサムズアップしてきたので、「にゃんっ」と鳴いて答える。
ご主人がにゃーにゃーうるさいが、ぬこは後悔も反省もしない! 引かぬ! 媚びぬ! 省みぬぅ!
そして今から淫獣への尋問を開始するのだ。
(さて、何かいいわけはあるか? 淫獣。あっても貴様の逝き先は決まっているがな)
(淫獣!? 待ってよ、僕はなのはに連れて行かれてたんだよ!?)
(別に掴まれていたわけもなく、肩に乗っかってただけじゃねーか。すぐにこっちに来れただろ)
(ご、誤解だよ。僕はただ……)
(ほぅ、ご主人たちの裸なんぞ微塵も興味なんてないだと? 何だ、不能か)
(ち、違うよ! だから僕は――――)
言い訳が長いな、これだから淫獣は。温泉はゆっくり、静かにつかるのが常識だろ?
まったく、これだからゆとりは。こうして、淫獣の魔の手からご主人たちを守ったのであった。
その後、ご主人たちは旅館の探検に行くとのことでしたが、ぬこは外に散歩しに行くことにする。
別にユーノを洗ってあげようとしていたアリサ嬢の眼が怖かったとかそんなことはまったくないよ!
これは、そのぅ……そう! ちょっと外の空気が吸いたくなっただけなんだからねっ!
まぁ、外を散歩しているときに士郎さんとお母様と遭遇したところ、お二人がいちゃいちゃしてて、甘ったるい空気が流れてたので逃げました。
その空気を吸ってしまうときっと糖尿病になること請け合いであるよ。
くそう、末永くお幸せに!
そしてそのまま走り去ってたら、帰り道がわからなくなってしまった件について。
あるぇ? ぬこって方向音痴だったっけ? ご主人~どこ~(泣)
「あれ? 君はあの娘の……」
(むぁ? フェイト嬢じゃないか! 助かった! 旅館はどっちですか!?)
「えっ? あの、私たち敵同士……」
(そんなことはどうでもいいよ! 早く帰らないと、ご主人からO S H I O K Iがあるんだからね?
最近ちょっと気持ちよくなってきちゃってるんだよ? このままじゃ、変態さんだよ!)
「お仕置きって…気持ちよくなるの?」
(あんなふうになで繰り回されたら……ひぃぃ、 ぬこ耐えられないよぉ!)
「そうなんだ……」
なんか、盛大に勘違いされたような気がするぜ。
まぁ、そこらへんはアルフさんが何とかするでしょ、ぬこは基本丸投げです。
それより、旅館はどこ?
「あっ、ごめんね? 向こうにまっすぐ行けばつくよ」
まだ何も言ってないのに、指を指して道を教えてくれるフェイト嬢素敵すぐる。
(おぉ、ありがとうございます! これでお仕置きから逃れることができるぜ……別に残念とか思ってないヨ?)
「……本当にジュエルシードを取りに来たわけじゃないんだ?」
(ぬこが? ぬこに過剰な期待は損するだけですよ?)
現段階じゃあ、空飛べて念話ができるくらいだし。
「そっか、じゃあジュエルシードはもらっていくよ」
(でも、ご主人はジュエルシードのこと諦めてないからね? だから、今回は戦うことになるかもしれないです)
「……そう」
ぬこがそう言うと、フェイト嬢は少しだけ悲しそうに顔を伏せた。
(……そう悲しそうな顔をしないでくださいな。
ご主人にも譲れないものがあるのですよ、フェイト嬢と同じで。
でも、少しでいいからご主人のお話も聞いてあげてくださいね。
言葉にしないと分かり合えないこともたくさんあるのですよ)
「……うん、そうかもしれないね…でも、戦うなら手加減はしないよ?」
(そのほうがお互いにとっていいんでしょうね。
喧嘩した後の仲直り+お友達イベントは王道ですよっと。
それでは、そろそろぬこは帰ります。アルフさんによろしくです)
ふむ、ここにもジュエルシードとやらがあるとは……
ご主人の行く先々に狙ったように配置されてる気がしなくもないな。
まぁ、封印とかぬこには手に負えないから、邪魔にならない程度に手伝いますかなぁ。
実際、この前の巨大ぬこみたいな相手に何ができるかわからないんですけどね。
と、このときは考えてたわけだが。
この後部屋で、悪乗りした忍さんとお母様に酒を飲まされて昏倒するとは
夢にも思わなかったぬこであった、まる。
◆
目が覚めると朝日がまぶしい時間帯でした。
横にはファリンさんが……? え、なに? どういうことなのっ!?
ッ!! ま、ましゃか……やらかしたのか? ぬこなのに?!
「昨夜はお楽しみでしたね」
襖から少しだけ顔を覗かせたノエルさんがそんな事を仰る。
ななな何を言ってるのかわからないよっ! ノエルさん!
ぬこは忍さんたちに飲まされた後の記憶なんてないんだからね!?
「ふふ、冗談ですよ。
昨日眠ってしまわれた後にファリンが運んでそのまま一緒に寝てしまっただけですから」
ですよねー。そして、せっかく覚えた念話の必要性がまったくないですな、ノエルさんは。
でも、ユーノの話によるとリンカーコアとか言うものがないと念話は聞こえないらしいし
どちらにしろご主人たちぐらいにしか必要なかったのやも。
その後ノエルさんに飲み物を用意してもらっていると、ご主人が起きてきたようだ。
(おはようございます、ご主人)
(おはよう、みぃ君。昨日フェイトちゃんに会ってたんだね? 教えてくれればよかったのに)
(あわ、あわわ、ご主人? 目のハイライトが消えてますよ?)
(何で、言ってくれなかったのかな? かな?)
(だ、だって、なんか思いつめた顔して話を聞いてくれそうになかったんだもの!)
(私が悩んでいたときに、みぃ君はフェイトちゃんと楽しくお話してたんだ……?
私の名前はまだ呼んでくれないのに、みぃ君の名前は呼んじゃうほど仲良くなっちゃったんだ……?)
フェイト嬢は爆弾を残して行きました。ぬこの前では呼んでなかったじゃないっ!
何でよりによってご主人の前で呼んじゃうの!? そのせいでぬこは大ピンチだよ!
(フフフ、これはお仕置きだね? ディバインバスターだね?)
(ギニャーーッ!? お仕置きのランクが跳ね上がったぁ!? ゆ、ユーノ、ヘルプ!)
(ボ、ボクハ何モ聞コエナイ、見テナイ……)
(ユーノ、テメェ、コラ!? 無視すんな!)
(今夜が楽しみだねぇ、みぃ君?)
ど、どうにかして回避なくては……! ちっ、汚い花火なの。とか言われちゃう!
仕方がない、ここはフェイト嬢を利用するしかない!
(だだ、だいじょうぶですよっ! フェイト嬢はぬこの前ではご主人のことちゃんと名前で呼んでたよ!)
(へっ、ホントなの?)
(も、もちろんですともっ!フェイト嬢はちょっと恥ずかしがり屋なだけなんですよ!
本人の前じゃ呼べないんです! ぬこの前では名前呼んでくれなかったもの!)
(そう、なんだ。ふふ、そうなら早くそう言ってくれればいいのにぃ)
神回避! やったよ! ぬこ生きてる!
ん? 良心が痛まないかって? そんなもの、目の前の命の危機に比べたら屁のツッパリにもなりませんよ!
でも、これが嘘だとばれたときには……うん。フェイト嬢にあったら口裏を合わせてもらおう。
そして早急にご主人の名前を呼んでもらおう。
まぁ、こんな風に死亡フラグがいまだ折れていないぬこは将来に不安を抱えたまま
温泉旅行を終えたのである。
◆ あとがき ◆
読了感謝です。
例によってサブタイトルの変更。以前、どれだけ適当につけてたかが分かりますね……
まあ、今も似たようなものだけど。
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