No.456964

ゲイム業界へようこそ!その54

おっぱいさんご来店~~!

2012-07-21 21:24:36 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3158   閲覧ユーザー数:2924

「グリーンハート様、今日の予定ですが……うむ、いつも通り聞いていませんな。」

 

 

 

「はい、イヴォワール教院長!私は現在『装甲悪鬼村正』というゲームを攻略することにとっても忙しいのです!しかも今このタイミングが一番良い場面で、数々の苦難を乗り越えた村正と主人公がやっとの思いで添い遂げるくんずほぐれづのCGが今目の前のディスプレイに……ごくん……。」

 

 

 

「……グリーンハート様の今日の糧はエロゲーでしたか。」

 

 

 

教院長はいつもより少しだけ苦い表情を顔に浮かべているように思えましたが、私は一向に気にしません。何せ今が大事な場面、ここを見ずして何を見るというのですか!やっとの思いで拝見出来る村正の褐色の裸体(はぁはぁ……)溢れんばかりの大きな乳房(じゅるり……)そして、下腹部の方へ視線をずらせばそこには桃源郷がぁっ!!

 

 

 

「た、堪らんっ!!」

 

 

 

「グリーンハート様、口元から涎がドバドバ出ています。涎を拭いて下さい。」

 

 

 

「じゅるっ!こ、こほん……、教院長さんには見苦しいところを見せてしまいましたね……ごめんなさい。」

 

 

 

「いえ、構いませんよ。いつものことですので。」

 

 

 

「うっ!!そ、それで教院長さんも私の行動を見越して、いつも通り今日のスケジュールをまとめた紙を持ってきているのですよね!それをテーブルの上に置いておいて下さい。このシーンが終わりしだい直ぐに確認しますので。」

 

 

 

「承知致しました。」

 

 

 

教院長さんを私の言葉に素直に従って、テーブルの上に資料を置くとそそくさと出入り口の扉から出て行ってしまいました。私が見る限り教院長さんはいつどんな時でも仏頂面で、私と話す時もその表情が変わることが一切ありません。一つ一つの行動も落ち着いていて、取り乱すことすら無いんです。

 

一応この協会で教院長さんは私の次に権限のある存在で、尚且つ私への信仰も強いことから問題が別段あるわけでも無いのですけど……、でも私的にはもうちょっと親しみのある態度を取ってくれてもいいんじゃないかと思うんですよね。教院長さんのあんな態度ばかり毎度見せられ、その度に若干落ち込む私の身にもなって欲しいです……。

 

 

 

……っと、話が横に逸れて自己紹介が遅れてしまいましたね。私の名前はグリーンハート、ここ雄大なる緑の大地リーンボックスを女神の一人として守護・管理している者です。リーンボックスはゲイム業界の中で最も緑が豊かで空気も澄み切っていますし、他の大陸と比べて最も住み心地の良い大陸だと私は思います。これから移住を考えている皆様には第一の候補としてリーンボックスをお勧め致しますわ。

 

 

そんな私の守護するリーンボックスですけれど、もちろん何も問題が無いとは言い切れません。過去に大陸内で絶え間なく発生していました紛争での傷跡、また現在でも各所で人々を脅かしているモンスターの存在が大陸の問題点として未だに根強く残っています。ですがその問題も私を含め協会の者や、大陸内の方々と一丸となって日々改善しつつあるのです。教院長さんが持ってきて下さった私の今日一日のスケジュールも、大半がこの大陸に益をもたらす取り組みだったりしますし。

 

 

 

「さてと……、その実際のスケジュールはと……、あれ?今日のモンスターを退治する『封印の遺跡』というエリア、つい先日も行ったばかりじゃなかったかしら?私の思い過ごしならいいのだけれど……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ちなさい、チャージショット!」

 

 

 

「キーーン!!キーーン!!」

 

 

 

「これで最後!ティコフォトン!!」

 

 

 

「キシー……。」

 

 

 

「ふぅ……これでやっとキラービー3体目ですか……、思ったよりキツイですわね。」

 

 

 

消えていくモンスターを見て私は一息着きました。『封印の遺跡・中層部』、確かに一度来たことのあるダンジョンですけど、前回とは違い今回は私一人だけ。もちろん前回よりは幾分レベルも上がっていることですし、それに実際モンスター達と戦ってみて特に問題は無いようですから文句があるわけじゃないのですけど……。

 

 

 

(やっぱり独りというのは少し心細いものです……。)

 

 

 

内心で少しぼやいてしまう女神グリンハートこと、私がいるのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、グリーンハート様の言う通り確かにこのダンジョンは先日冒険者の方と共に一度訪れていますね。」

 

 

 

「でしたら何故今回また教院長さんはこのダンジョンをお選びになったのですか?道理で考えればまだ私が訪れていないダンジョンに向かうべきだと思うのですが。」

 

 

 

今日のスケジュールの紙を見て疑問を抱いた私はすぐに教院長さんの元へ伺い、質問致しました。さすがの私もモンスターの減ったダンジョンに二度訪れて、無駄骨に終わったなんてことしたくありませんし。

 

私の質問に対して、教院長さんはいつも通りの仏頂面で答えてくれました。

 

 

 

「確かにグリーンハート様の言う通りそれが通常であれば道理となるでしょう。しかし、今回は異常が起こってしまったので道理のままではいけないのです。」

 

 

 

教院長さんの説明を一言にまとめてしまえば、一度訪れた封印の遺跡でモンスターが前と同等かそれ以上に大量発生したとのことで、再びそのダンジョンに訪れてモンスターを討伐、そして大量発生の原因の調査あわよくば原因の排除を行うことが今回私のお仕事というわけなのです。確かに教院長さんの話が正しいのであれば、それは捨て置けない状況、早急に対処すべき問題です。それは理解したのですが……。

 

 

「そんな重要な案件に対して、何故今回私は単独でダンジョンへ向かわなければならないのでしょうか?確かに私は以前よりレベルが上がっているため、前回より上手くモンスター達を討伐出来ると思っていますが、それでも謎の大量発生ということでしたらせめて前回と同様の人数とは言いませんが一人か二人かのサポート役がいてもよろしいのではないでしょうか?」

 

 

「はい、私もグリーンハート様と同じことをスケジュールの紙をお渡ししてから気付きまして、遅ればせながら修正案を今この場でご報告します。」

 

 

 

私の疑問を教院長さんが修正案という形で解決してくれたのは良かったのですが……

 

 

 

 

「冒険者を一人派遣、またその冒険者とはダンジョン内で合流、ですか……。」

 

 

 

なんとも曖昧で中途半端……、それが修正案の限界だったのでしょうか、イヴォワール教院長?確かに人員を削減するのは大事なことですが、それでも私はこの大陸を守護する女神グリーンハートなのですよ?その女神に対してもう少し融通を利かせてくれても罰は当たらないはずですのに……。

 

 

 

(やっぱり私、嫌われているのでしょうか……?)

 

 

 

未冒険者さんと遭遇出来ずに、一人寂しく気を落ち込ませている私でした。まさかそれが致命的となる油断に繋がるとは知らずに……。

 

 

 

「ガウッ!!」

 

 

「っ!!」

 

 

 

突如として後ろから強烈な衝撃が私を襲います。その衝撃にとって私は一コマ空へ浮いた後、重力を伴って地面へ身体全体を強く叩きつけれました。

 

 

地面に投げ出された私は咄嗟の衝撃に動揺しながらも衝撃があった後方へと顔を向けます。

 

 

 

(フェンリル!それも3体もいるなんて……!!)

 

 

 

そこには鋭く獰猛な牙を顎に持った狼、『フェンリル』というモンスターが不運にも3体が立ち並んでいました。その3体全てのフェンリルは私へ鋭い眼光を向けており、それは私を標的にしているという事実を嫌でも痛感していまいます。

 

 

 

(私の武器は……、っ!?運がないですわね……。)

 

 

 

フェンリルの体当たりによって私が武器を手放してしまったのですが、その手放した場所がどうにも私にとって分が悪過ぎるのです。私から見てフェンリルの左辺2メートル辺りに私の愛用する槍、バイクが無造作に投げ出されていました。1対3の戦闘の中で、3のモンスターを牽制しながら1の私が武器を回収する、それがどれだけ難しいことか。もちろん武器がなかったとしても他に攻撃手段が無いわけではありませんが、現在のような複数のモンスターを相手取っている状態で武器の無所持はそれだけで攻撃手段が激減し不利な状態になってしまう。

 

 

 

(ここは少し無理をしてでも武器を回収すべきかしら……、ん?)

 

 

 

私がフェンリルと対峙しながら対策を練っている最中、微かに私以外の人間の声が聞こえました。私は幻聴で無いことを期待して耳を凝らします。

 

 

 

「……オネちゃん……天使!もう僕と結婚………い!!」

 

 

 

(間違いない!男性の声だわ。こんなダンジョンにいる男性ですもの、きっと冒険者かそれに近いものに違いない!!)

 

 

 

私は見ず知らずの男性に助力を請うことに決めました。この場を凌ぐにはその男性と力を合わせフェンリル達を討伐、むしろ撃退でも構いません。この分が悪い戦闘を乗り切ることこそが勝負の別れ目と私は肌で感じました。

 

 

そうと決まった私はもう迷いません。私の持てる気力をそのまま声力に変換し、短い言葉をもって男性の元へ届くよう高らかに叫びあげました。

 

 

 

「助けてくださーーーい!!」


 
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