第五話 デバイスゲットだZE!
「さて、どうしよう……」
俺の手元にはジュエルシード。有希が帰り道で見つけて拾ってきたらしい。
「このジュエルシードはもう封印した?」
「ううん。まだ」
ならまずは封印しないとまずいのだが、
「封印ってどうやるんだ?」
「デバイス持って、ジュエルシード封印! って言えばいいんじゃない?」
「そもそもデバイス持ってないし」
残念なことにジュエルシードの封印の仕方が分からない俺と有希。
「じゃあお義父さんたちに頼む?」
「無理だ。父さんたち今ミッドに出張で、しばらくの間家に帰ってこれないって言ってただろう」
困った。このままじゃいつジュエルシードが暴走するか分かったもんじゃない。
「デバイスがあればな……」
そう言った瞬間、ジュエルシードが光りだした。
「「え?」」
事態についていけない俺と有希。
ジュエルシードはそのまま光を増し、次の瞬間ジュエルシードは強烈な光を放つ。俺と有希はあまりの眩しさに目を瞑った。
「な、なんだ?」
光が収まり目を開けると俺の手元にあったジュエルシードは無くなっていて、代わりに青い宝石が付いた指輪が俺の手の中にあった。
《貴方が私のマスターですか?》
「え?」
いきなり喋り出す指輪。
なんだか嫌な予感がしてきた。
「もしかして、デバイス?」
《はい。そうですが》
「ジュエルシードがどこ行ったか分かる?」
《私がそうです》
やっちまったぁああああああああああああ!?
ジュエルシード持ったままデバイスがあればなんて思うから、ジュエルシードが発動してデバイスになりやがった! 最悪だ……。変に暴走されるよりはましなんだけど!
「有希。どうしよう」
「もうしょうがないし、翔也のデバイスにしちゃえば?」
「……そうするしかないのか」
ロストロギアをデバイスにしてるなんてことが管理局にばれたら捕まるだろうけど……ここは腹括るしかないか。
「俺がお前のマスターの宮崎翔也だ」
《……マスター登録完了。これからよろしくお願いしますマイマスター》
「よろしくな。……ところでお前のことはなんて呼べばいい?」
《好きなように呼んでくださって結構です》
「なるほど。つまり名前がないのか。じゃあ考えないとな」
腕を組み名前を考えるのだが、なかなかいいのが思いつかない。
「有希。何か良さそうな名前とかないか?」
「あるよあるよ!」
「なら言ってみ」
「ポチ!」
「犬じゃねんだから!? もう少しちゃんとした名前を《名称登録完了しました》すんなよ!?」
《今から私のことはポチとお呼びください》
「嫌だよ!」
《では犬とお呼びください》
「もっと嫌だよ! これ名称変更とかできないの!?」
《できません》
「マジでか!?」
なんだよ……。デバイスの名前がポチって色々とおかしいだろ。
「よろしくねポチ!」
《よろしくお願いします有希さん》
有希はこの名前が気に入っているらしい。
ポチって絶対にデバイスに付けるような名前じゃないだろ。
こうして俺はデバイスを手に入れた。
*********
翌日。学校で昼休みに健斗がまた俺のところへ相談にやってきた。
「プレゼント渡してみたけどダメだった」
「何をあげたんだ?」
「蝋人形」
こいつバカなの? いや、バカだろ。どこの世界に小学生の女子に蝋人形をプレゼントする奴があるか。普通喜ばない。世界中探せば蝋人形貰って喜ぶ小3女子もいるかもしれないがそんなのは稀だ。
「何でそんなものをあげたんだよ」
「……何あげればいいか分かんなくてさ」
だからって蝋人形を選ぶ理由が分からない。
「てか、よく蝋人形なんて持ってたな。どうやって手に入れたんだよ?」
「作った」
「作ったの!? 蝋人形を!?」
「あまりにいい出来だったんで写真を撮ってあるぞ。見るか?」
「いや、いい。興味ない」
……こいつはバカなんだろうか?
「プレゼントはやめだ。違う手段でいく」
とは言ってもどうすればいいかなんて俺にもよく分からない。有希に関しちゃ会ってすぐ告白したし、前世じゃ恋人なんてできなかったし。
「そうだな……。じゃあ、しばらくの間アリサに近寄るのをやめてみろ」
「な、何で!?」
「そうすることによって「いつもはすぐに自分の所に来るくせに、最近は全く近寄って来なくなった。何で?」みたいな感じになり、お前のことを意識するようになる」
「お、おお!? 翔也は天才か!?」
まぁ、ぶっちゃけそんな上手くいくとは思わないけど。こうすればしばらくは俺のところに相談に来ることもないだろう。
これが昼休みの出来事。その日の放課後に今度は立華に屋上へ呼び出された。
何故だろう? 今度こそ俺のことがばれたのだろうか?
屋上に来てみるとまだ立華は来ていなかったので、しばらく待っていると立華が急いだ様子でやってきた。
「ご、ごめん! 待たせちゃったかな?」
「そんなには。で、何のようだ?」
昨日に引き続き、今日も有希と帰れなかった俺は少しイライラしている。
「う、うん。ちょっと聞きたいことがあってね」
……何か昨日と同じような展開になってきたぞ。
「なんだ?」
「その……ど、どうやったら僕も橋爪君と仲良くなれるかな!?」
何でだろう? 殆ど昨日と同じ展開になってしまった。
「何で俺にそんなことを聞くんだ?」
「昼休みに仲良さそうに話してたから」
俺はただ相談事を適当に聞いてただけなんだけどな。
「普通に声掛ければいいんじゃないか?」
「僕もそうしたいんだけど何故だか橋爪君に敵視されてるみたいで、僕を近寄らせてくれないんだ」
健斗が敵視している理由を十中八九アリサなんだろう。立華にアリサをとられないようにと見ていて必死なのが丸わかりだし。でも、そのことに気が付かない立華。
「だったら……あれだ。俺にしたように、健斗のことを呼び出せばいいんじゃないか? そうすりゃ二人でゆっくり話せるだろ」
「あ、そっか。……でも来てくれるかな?」
「大丈夫だろ。もしダメでも、その時は別の方法を考えればいい」
「うん。そうだね」
「ところで、何で立華は健斗と仲良くなりたいんだ?」
「え!? えっと……その、橋爪君とはなんて言うか、僕と似たようなところがあると言うか…共通点があるというか……」
こいつ嘘とか苦手なタイプだ。でも、理由は大体分かった。立華は健斗が自分と同じ転生者だから仲良くなりたいだけなんだろう。実はハーレム狙っていて、自分以外の転生者は殺すなんて考えるような奴ではないだろうし。
そしてそのことを俺に必死に隠そうとしているということは、立華も俺が転生者だということには気が付いてないってことになるな。
「ふーん、まぁいいや。んじゃ俺はもう帰るな」
「あ、うん。相談に乗ってくれてありがとうね」
「どういたしまして」
「良かったら宮崎君のこと、これから翔也君って呼んでもいいかな?」
「え? 別に構わないけど……」
「そっか。僕のことも玲衣って名前で呼んでくれてかまわないから」
「ああ、うん。分かった」
「じゃあね翔也君! また明日!」
「……また明日」
********
それから何日か経ち、アリサとすずかがこんなことを話しているのを聞いた。
「最近、アイツが私のところに近寄って来なくなったのよね」
「あいつって橋爪君のこと?」
「そうよ」
「もしかして、アリサちゃん。橋爪君とお話しできなくて寂しい?」
「そんなわけないでしょ。むしろ清々してるわよ。もう、このまま近寄って来なければいいんだけど」
健斗にこのことを言うのはやめといてあげよう。
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五話目です。