ある日の事だった。
無事にアーサー・カシイとの結婚が決まったエルザ・アインリヒトは、
今日もラミナ警察署横のバーでビールを飲みながら一息ついていた。
「ふぅ…私もますます頑張らねばいけないな…」
と、呟いていたエルザの横から、何者かが声をかけた。
「そうだな…女というのは結婚した時からが大変だからな」
「ああ、まったく…」
と、振り返るエルザはその視線の先にいた人物を見て、思わず目を疑った。
「…ね、姉さん!?」
そこにいたのはエルザと同じジャーマンシェパード形のロボット。
しかしその顔の模様は微妙に違い、機体の各部分もエルザよりもやや年季が入っていた。
彼女こそエルザの『姉』にあたる、フュア・フランバージュである。
(まさか本庁の人間にも広がっていたとは…しかもよりによって姉さんがこのことを知ってしまうとは…!)
「?…どうしたエルザ、顔真っ赤だぞ?」
「…いや、何でもない。それよりどうして姉さんがこの事を知っているんだ?」
「いや、お前の署にいる金髪のお嬢さんに聞いてなw」
「そ、そうなのか…」
と、エルザは作り笑いをしてみせたが、心の中ではこうつぶやいていた。
(セシール…お前だったのかっ…!!)
そんなエルザを心配そうに見つめるフュア。
「おい、どうしたんだエルザ、さっきから」
「…だから何でもないと言っているだろう…!」
そう言いながらエルザは、目の前にあるウインナーにかじりついていた。
「しかし、こうしてみるとやはり血は争えんな」
「確かに…言われてみれば姉さんもすでに既婚だったな」
そう、フュアにも実は彼氏がおり、すでに結婚している身だった。
彼の名はヒロキ・フランバージュ、オオカミ形ファンガーとテラナーとの間に生まれたハーフファンガーであり、
ラミナ市内で小さなパーツショップを経営している。
当時フュア・アインリヒトと名乗っていた彼女はある事件で機体を損傷、その時に修理をしてくれたのがヒロキだったのだ。
やがて何度か顔を合わせているうちに二人は恋に落ち…そして結婚したのだ。
「私が言うのもなんだが、ヒロキはいい男だぞ。そっちはどうだ?」
「まあ…ラミナ商事の副社長ではあるが、悪い人ではない。仕事も出来るし、なにより優しいからな」
「フフ、いい男にめぐり合えたようで良かったな…」
と、微笑みながらフュアが言う。そしてそれに応えるようにエルザもまた微笑む。
二人はしばらく、お互いの顔を見つめあう。やがてフュアが沈黙を破り、店員に声をかける。
「何かご用でしょうか?」
「ああ、すまないがエルクラントワインを頼めないか?」
「私は…シャフェルフント・シュバルツ、それとレーヴァーケーゼ(ミュンヘン風ミートローフ)を」
「かしこまりました」
しばらくして二人の下にワインとビール、そしてレーヴァーケーゼが運ばれてきた。
「…では、改めて…おめでとう、エルザ」
「…ああ、ありがとう」
「我が妹の門出に…
二人は食べて飲んだ。今の幸せに身を委ね、そしてこれからの幸せを願い、話して飲んだ。
「…ところでエルザ」
「なんだ?」
「…結婚と言えば…
「…上手くいっているといいがな…w」
…二人は早くも、弟の将来について話していた。
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妹の幸せを願うは、ほかならぬ姉だった
◆出演
エルザ(http://www.tinami.com/view/375135 )
フュア(http://www.tinami.com/view/453370 )
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