どうやら、この金髪ロリっ子がこの国の王らしい。・・・いや、女王か?しかし、とてつもない美少女だ。大きな瞳は深い蒼に染まっているし、長い金髪は、まるでそれ自体が発光しているかのような神秘的な輝きを持っている。体は一般的な子供体型だ。・・・いや、別に深い意味はないよ?そして、どことなく羊のような草食動物を感じさせる雰囲気。これは、守ってやりたくなる感じだな。
「さぁ、用意して。」
「・・・・・・???」
パンパンと手を叩きながら、ロリっ子に食事を要求する凛音。だが、言われたロリっ子は、俺たちに怯えながらも頭に?を沢山浮かべている。
ま、そりゃそうだわな。召喚した勇者が、食事を要求するためだけに城まで攻めてくるとか、普通は考えつかないよな。
「凛音、その子お前が何を要求しているのか全く分かっていないぞ。人に要求をするときは、何を求めているのかを明確にしましょう。」
と俺が言った途端、凛音から怒りのオーラが漂ってきた。
(え・・・俺なんか地雷踏んだ!?何か不味いこと言った!?)
長年一緒にいた俺ですらあまり見たことの無いほどの怒り。一体、コイツは何に怒っているんだ!?ロリっ子は、怯えすぎて腰が抜けてしまったようで座り込んでしまっているぞ!?
「まさか・・・食事も用意していないの・・・?」
ユラリ、と幽鬼のように体を揺らす凛音が、マジで怖い。笑っているようだが、その背後には鬼が幻視出来る。
ガタガタガタガタと震えていたロリっ子は泣き出してしまった。
(これはやりすぎだろ・・・)
流石にこれは可哀想だ。下手をすれば、一生もののトラウマを植え付けてしまうかもしれん。俺は、意を決して目の前の怒れる龍に話しかけようとする。だが、その前に・・・
「・・・飽きた。」
「え?」
唐突に、凛音から怒りのオーラが吹き飛んだ。何事も無かったかのように涼しい顔をしている。
「怒るのにも飽きた。もういいや、龍騎。食堂でも探して作らせよう。」
(こ、この野郎・・・。いや野郎じゃないけど、女だけど!ここまでやっておいて最終的にそれかい!)
流石に、このロリっ子が不憫過ぎる。今もグスグス泣いてるし。イジメって良くないと思うんだよ?ま、まぁ、この怒りが収まったのは良いことだ。このロリっ子には悪い事をしたけど、こっちも突然召喚なんていう誘拐紛いの事をされたせいで気が立っていたのも事実だしな。お互い様ということにしておこう。・・・と思っていたのに・・・
「グス・・・何で怒ってるんですか・・・・・・?私、何か悪いことしたんですか・・・?あ、貴方たちは誰ですかぁ・・・?」
扉に向かっていた凛音の足がピタッと止まった。そして、先程異常の怒りのオーラを纏って振り返る。
『ひっ・・・。』
やべ、俺でさえ声出しちまった。それ程に怖い。今のコイツなら、魔王(いるのかどうかわからんが)すら視線だけで殺せそうだ・・・((((;゚Д゚))))
「ほぅ・・・自分でやっておいて、私達の事を知らないと・・・?いい度胸だ。」
ユックリとロリっ子に近づく凛音。
(ヤバイヤバイヤバイ!これ、本気でキレてるじゃん!)
昔、一度だけ見た事のあるマジギレ凛音。その時は、コイツが暴れた地域が廃墟となり、その後10年間草地の一本も生えない大地が広がっていた(一部誇張が入っております)。
コイツが一歩を踏み出す度に、曇一つ無く綺麗だった床や壁に罅が入っていく。ば、馬鹿な、最早コイツの気は物理的な攻撃力を持つほどだとでも言うのか!?どれ程人間離れしてるんだ!?
ロリっ子なんか、既に気絶寸前じゃん!?ヤバイ、マジでヤバイって!
「私達が誰かだって?知らないなら教えてあげよう。私たちはね、勇者召喚とやらで召喚された異世界人だよ。」
ロリっ子まであと数歩というところまでやってきた凛音。その距離がゼロになったとき、ロリっ子の命があるかどうかは保証出来ない・・・!
(くそ、流石にあんな幼女を殺したりしたら目覚め悪すぎだろ!)
だから、足を動かした。コイツの放つオーラに飲まれて少しも動かせなかった体を、根性で動かす。だって、俺は・・・この世でただ一人、『天上凛音の手綱を握れる人間』なんだから!コイツを止められないで、何が『天地コンビの片割れ』だよ!
「う、動けええええええええええ!!!」
その叫びと同時に、体が動くようになった。それに気が付いた俺は、直ぐにダッシュして、凛音に後ろから抱きついた!
「え・・・キャッ!?」
(ヤバイ、コイツのこんな声、始めて聞いたかも。・・・可愛い)
何て馬鹿な事を思いながら、力いっぱい抱きしめる。
「ちょ・・・ちょっと龍騎。痛いし、それに苦しい・・・よ。」
(俺程度の力でコイツが痛がる筈がないんだが・・・?)
などと思いながら力を弱めると、あからさまにホッとした雰囲気を出す凛音。見ると、耳まで赤くなっている。・・・本当に、今日はレアなコイツを沢山見れる日だな・・・。
取り敢えず、先程までの怒りのオーラは既に霧散している。た、助かった・・・。
「おいおい、お前らしく無いぜ。こんな小さい子供に本気で怒ってるんじゃねぇよ。ただ元の世界に返して貰うだけでいいじゃねぇか。」
な?と耳元で囁きながら頭を撫でていると、「う、うん・・・。」何て弱々しい言葉が返ってきた。
(良かった。落ち着いたみたいだな)
俺が安心していると、やっと話せるくらいまで回復してきたらしいロリっ子に凛音が話しかけた。
「と・・・兎に角、そういうわけだ。私たちを、元の世界に返してよ。」
(良かった。これで一件落着・・・)
などと安心したのがフラグだったのだろうか。ロリっ子は、とんでもないことを口にした。
「だ、だから・・・勇者とか召喚とか、一体何の話なんですか?私、この国の女王ですけど、王様じゃないから分かりません・・・。」
『・・・え?』
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口癖は「飽きた。」熱しやすく飽きやすい幼馴染と俺が、異世界に勇者として召喚された。・・・俺はオマケだったらしいが。・・・だけどさぁ、この『残念美人』を制御出来ると思ってる訳?最悪の場合、コイツに色々されて世界滅ぶんじゃないの?しょうがない、俺が手綱を握ってやるかね。