No.446438

盾のお姉さんと槍の少年

rocklessさん

エリオが入校した訓練校の短期コース。そこでエリオとコンビを組むのは高町なのはに推薦を受けて入校した18歳のアスリート上がりの女の子だった。10歳の少年と18歳の女子の年の差コンビの物語

2012-07-05 14:53:57 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1968   閲覧ユーザー数:1943

私の目の前に、10歳の少年がいる

 

「エリオ・モンディアルです。3ヶ月間よろしくお願いします、スクーデリアさん」

 

(この子が私のパートナーですか)

 

年齢に見合わない妙に固い言葉遣いで挨拶をされて、私はついそんなことを思ってしまう

パートナーといっても伴侶という意味ではなく、相棒という意味なんだけど・・・

 

「よろしく、えっと・・・エリオ君、でいいかな?3ヶ月でもコンビとしてやっていくのだし、同じ訓練生だからそんなに固くならなくてもいいよ。私のこともセレナでいいから」

 

私はそう言って右手を出して握手を求めた

 

「は、はぁ・・・」

 

私の言ったことにエリオ君は少し戸惑いがちに握手に応じる

無理も無いか・・・8歳も年上の人にそう言われても簡単に切り替えれないよね

 

「いきなり言われても困るかな?そこら辺は徐々に慣れていこうか」

 

「わかりました。セレナさん」

 

これが、私セレナ・スクーデリアとエリオ・モンディアルとの出会いでした

 

 

 

 

 

通常、訓練校での仮コンビというものは男は男同士、女は女同士で、男女で組むことは無い。それならばなぜ私とエリオ君はコンビになったのか?それは入校したのは訓練校の短期コースだったからだと思う

 

短期コースとは魔法実技に秀でた者を短い訓練期間で早く現場に送り出すためのプログラムで、魔法実技の訓練をほぼ免除して、学科の講習のみを行うことで訓練期間の短縮を図っている

 

当然、入校条件には高い実技能力が求められている。魔導師ランクで言えば卒業時、つまり3ヶ月後にBランクが取れる見込みのある者という、合格者は年に数十人程度の狭き門だ

 

なら当然男女の人数が偶数にならない可能性も出てくる。特に私のようなスカウトを受け、優秀な局員の推薦を受けた人間がギリギリで入校してくるかもしれないし・・・コンビは寮の同室で寝食を共にするのだけど、年齢差もあるし色々な意味で大丈夫だと判断したのでしょうね

 

ちなみに私は射砲撃手の大会『クラナガンバスターズカップ』を優勝し、そのときに管理局からゲストとして呼ばれていたエースオブエースこと高町なのは教導官の目に留まってスカウトされた

 

 

 

 

 

入校して1週間、普通の学校のように席について教官の講習を聞き、講習の終わりに小テストをしたり、レポートなんかを書かされている。高卒の私にとっては特に難しくなく、ついていくのも容易な講習進度だった

 

しかし、10歳のエリオ君には少し難しい内容だったみたい

 

(当然といえば当然かな・・・10歳といえば普通なら初等科の4年生だから・・・)

 

「えっと・・・これは・・・」

 

夜、就寝前の時間に次の日の予習に四苦八苦しているエリオ君の後姿を見ていた

内容が管理局法や任務中の服務規程なんかだし、私が小学生のときって予習とかしてなかったし・・・

 

(まぁ、短期コースに10歳で入校してる時点でエリオ君が普通の小学生じゃないのは明らかなんだけどね)

 

「どこかわからないところあったりする?」

 

「あ、えっと、だ、大丈夫です」

 

机に向かっているエリオ君に私が後ろから尋ねると遠慮するように答えた

 

「コンビなんだから遠慮しなくてもいいんだからね?」

 

「・・・えっと、ここなんですが・・・」

 

エリオ君は少し迷った後、私に質問してきた

 

それから毎日、私はエリオの予習復習に付き合うようになった

 

 

 

 

 

それからさらに1週間後・・・

 

「そういえばセレナさんは・・・聞かないんですね」

 

いつもどおり次の日の予習をしているとエリオ君がそんなことを言ってきた

なにが、というのは問い返す必要ないだろう

 

10歳で短期コースに入って局員になろうとしている理由について

 

「私、人のことを詮索するのって好きじゃないんだ。エリオ君は聞いてほしいの?」

 

「いえ・・・」

 

エリオ君は少し悲しそうな顔をして私の言葉に首を横に振った

 

「私はね、18年間特に不幸らしい不幸も無く生きてきたの。だからね、聞いても何も言えないか、変なことを言ってエリオ君を傷つけることしかできないと思うの・・・でもね、それでもいいっていうなら、そのときはちゃんと聞くよ。だから話したくなったら話してよ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

(何もしてあげれてないのに、何でお礼を言うんだか・・・)

 

エリオ君のお礼の言葉に私は少し胸を痛めた

講習ばっかりの短期コースとはいえ、実技の訓練をしなくていいわけではない

卒業すればすぐに陸士部隊に配属となるので、勤務に耐えれるだけの体作りはしておかないといけない

だから週に数時間は実技の訓練があるし、週末の休日には自主練習をする訓練生を訓練スペースでチラホラと見かける

 

「セレナさんのデバイスって普通のに比べて大きいですよね。色々手が入ってるように見えますし、自作ですか?」

 

とある休日、いつもは予習復習に当てているが、たまには魔法戦の訓練でもということで、私とエリオ君は訓練スペースにやってきていた

 

「ううん、これは8年前、私が10歳のときに安売りされていたデバイスなんだよ。民間向けで市販のデバイスだから性能も局員向けの最新の支給デバイスと比べたら10%から20%は低いんじゃないかな?といっても私は今のところ記憶容量の少なさ以外に不満は無いんだけどね」

 

私は2メートル以上ある騎士杖型のデバイスを見ながらエリオの質問に答える

カートリッジシステムのリボルバー機構から上に1メートル、下に1.2メートル棒がついたかなり不恰好なデバイスだ。しかも繋げているので強度にも不安があり、アームドデバイスなのに武器としての使用はできない仕様になっている。しかし私は近接で格闘しながら戦う適性が無いのでこれでも別に困らない

 

「じゃあ準備運動してから軽く1本模擬戦しよう」

 

「はい」

 

 

30分後・・・

 

「真っ直ぐ突っ込むだけじゃ私のバリアは破れないよ!」

 

エリオ君が体ごと突っ込んできて放ってきた突きを私はプロテクションで受け止めて言う

エリオ君のデバイスはストラーダという名前の槍。エリオ君は近代ベルカ式、移動系が得意みたいでとにかく速い

しかし、私は防御系魔法が一番得意で、防御の固さには少々自信がある。なんせあの高町教導官が『私でも砲撃魔法使わないと破れないかも』なんて言うくらいなのだから・・・

 

「くっ・・・」

 

エリオ君は破れないとわかるとすぐに後退する。以前押し切ろうとしているのをバリアバーストして吹き飛ばしたから、それをされるのを嫌ったのだろう

 

「はぁっ!」

 

追撃されるのを避けるためにエリオ君は下がりつつストラーダを振って、真空刃のようなものを飛ばしてくる

私はそれをラウンドシールドで防いだ

 

「今度はこっちの番ね」

 

私はそう言って、アクセルシューターを起動して5発のシューターを作り出し、発射する

エリオ君はシューターをうまくかわしながらストラーダで叩き落した

 

「まだまだ」

 

今度はカートリッジを1発ロードし、倍の10発作って撃ち出した。その中の1発にトラップを仕込んで・・・

エリオ君は先ほどと同じようにシューターを叩き落していく。そして最後にトラップを仕込んだシューターを叩き落そうとして・・・

 

ボフン

 

「うわっ?!」

 

シューターを叩いた瞬間、シューターが煙幕を放出した

視界が奪われて驚いているエリオ君を私はクリスタルケージで捕獲した

 

「はい、私の勝ち」

 

「まだです、よっ!」

 

勝利宣言する私にエリオ君は電撃を使ってケージを壊しながら返す

しかし私もそれを黙って見ていたわけではない

 

「これでもかな?」

 

「ま、参りました・・・」

 

砲撃姿勢を取り、発射寸前の私を見て、エリオ君は降参した

 

(ちょっと大人気なかったかな?でもエリオ君は凄いね・・・突撃の速さや勢いもそうだけど、判断力もあるし、それに変換資質まで・・・今はまだ経験の差で勝ててるけど、いつか追い抜かれるかも・・・)

 

負けたことに落ち込むエリオ君を見ながら私は思考する

10歳だけど訓練生だし、男の子だからわざと負けてあげるようなことはしない。エリオ君は伸び代が凄いあるし、この程度ではへこたれるような性格でもないので鍛えがいがある。私は学校の魔法戦クラブで後輩の指導をしていたから教えるのは得意なほうだと思うし、指導をするのは好きだ

 

「じゃ、今日はここまでにしようか。午後からは買い物に出ないといけないしね」

 

「はい」

 

デバイスを解除し、私とエリオは寮に帰り、外出の準備をした

 

 

「はい、メット」

 

「ありがとうございます」

 

駐輪場からバイクを押してきて、エリオ君にヘルメットを渡す

訓練校は都心から少し離れていて、交通の便が悪いので移動の足がないと買い物ひとつでも大変だ。私は射砲撃の練習ができる場所まで行くのに使うために16歳で免許を取っていた。短期コースの訓練生は人数の少なさからバイクや車を訓練校に置かせてもらえる。もちろんお金は取られるけど・・・

エリオ君用のヘルメットは以前出かけたときに買った。エリオ君は移動の足が無いから不便だろうから乗せてあげられるようにと思ったからだ

 

「それじゃ、いくよー」

 

「はい」

 

私の後ろに乗っているエリオ君に声をかけて、ゆっくり発進させる

バイクに乗ってるエリオ君は少し楽しそうで、こういうところはやっぱり男の子だなと思った

 

 

「それじゃ、ちょっと行ってくるからバイク見ててね」

 

「はい」

 

都心部に着き、昼食をとってから、私はとあるショップの前にバイクを止めた

そこはデバイス関係の専門店。デバイスを組むためのパーツや道具はもちろん、整備用のメンテキットやカートリッジも販売している

ここは私の行き付けのショップで、店長とも顔馴染みだ

 

「いらっしゃいま・・・あらセレナじゃない。久しぶりね」

 

出迎えた店長が私だと気づいて話しかけてくる

ちなみに、女口調だけど店長は男性だ。オネエ系というやつです

 

「どうも、店長。早速だけど、カートリッジ30本とスピードローダー5個、あとメンテキットを2セットほしいんだけど・・・」

 

「あらあら、ずいぶんと買ってくのね。山篭りでもするの?」

 

「正解。実は私、今陸士訓練生なんだ。短期コースの。それで今度サバイバル訓練があってね」

 

サバイバル訓練は短期コースの中の唯一と言ってもいい、訓練らしい訓練だ

詳しい内容はまだ知らされてないけど、5日間山の中で魔法も使いながらの訓練になるらしい

 

「へぇ凄いじゃない。じゃあこれを機に新しいデバイス組まない?安くするわよ~」

 

「いえ、私にはこれがありますから・・・」

 

店長の誘いに私は待機状態でネックレスになっている自分のデバイスを服の上から触れて言う

 

「でもそれってもう10年以上前のなのよ?AIも積んでないし・・・今は局の支給品でも簡易のAIがサポートをしてるのよ?」

 

「だからですよ。デバイスはどこまで進化しても道具なんですから。私のこれは、私を支える杖であり、私を守る盾で・・・そんなのに意思や人格があって、言葉なんか交わせたりしたら、私はもうこれを起動できないと思います。道具として使うのが怖くて・・・」

 

「そっか・・・その考え方、今の50代60代の人たちが若いころ、インテリジェントシステムをデバイスに入れたがらなかった理由と全く同じ・・・」

 

「デバイスと同じで私の考え方も古いですね・・・」

 

「そうね・・・でも古いからってダメなわけじゃないわ。私はその考え方結構好きよ。ところであなたのバイクに乗ってるあの子は誰なの?弟さんなの?」

 

「あぁ、あの子はですね・・・私の・・・」

 

 

「さっき、店員さんと僕のほうを見て話してましたよね?」

 

寮への帰り道、エリオ君にショップでの会話について聞かれる

 

「うん『弟さん?かわいい子ね。お姉さんタイプだわー』だってさ」

 

「え゛?」

 

「冗談冗談」

 

私の答えにエリオ君は引き気味に言葉を発し、私はクスクスと笑って冗談と返した

 

「まぁ、弟さん?って聞かれたのは本当だけどね。『私の彼氏』って答えといた」

 

これも嘘だけど

 

「えぇぇぇっ?!」

 

「男の子だし、子ども扱いされるのは嫌でしょ?」

 

「え、あ、その心遣いはありがたいですし!セレナさんのことは好きですけど!それはセレナさんに迷惑が・・・」

 

(え?今、私のこと好きって言った?)

 

エリオ君はパニックになって色々と恥ずかしいこと言ってしまっている

 

「・・・あ、あのさ・・・パニックになって色々言ってしまってるところ悪いけど、今のも冗談なんだ・・・」

 

「え?あはは・・・そうですよね」

 

「まさかそこまで取り乱すとはね・・・ごめんね。今聞いた事は忘れるから安心して」

 

「はい・・・すみません・・・」

 

(そっか・・・好きか・・・恋愛的なことじゃなく、年上のお姉さんに対する憧れのようなものが混ざったものだろうけど、嬉しいな・・・)

 

アスリート魔導師として練習ばっかりで、色恋に縁の無かった私には、10歳の少年の『好き』という言葉は思いのほか効いたのだった

数日後、サバイバル訓練初日

短期コース生はミッド南部の温暖な地域の森林山岳地帯に来ていた

 

そして訓練内容が公開された

内容はここからコンビごとに設定されたチェックポイントを通ってそれぞれのゴールに向かうという踏破訓練。大体4日で踏破可能な距離で、食料等は3日分の9食が支給される

最大5日でゴールに着かなかったら遭難とみなされて救助される(もちろん私たちの位置はGPSで教官たちにモニタリングされている)

途中、もしも野生動物に襲われて場合は魔法での撃退すること(ただし生態系に影響を出さぬように非殺傷設定を使用の上、できるだけ怪我を負わせないようにすること、とのこと)。飛行は禁止で、地図やコンパスは支給のもの以外の使用も禁止するという条件

スタートはコンビごとに数分ズラして森に入っていく

 

「9番コンビ、踏破訓練開始!」

 

「「了解」」

 

教官の指示で私とエリオ君は森に入っていった

 

 

初日の夜、今日は夕方に第1チェックポイントに到着した。そこで報告の通信を入れ、場所が合っていたので次のチェックポイントの情報をもらって、日没前にテントを建てる場所を確保した

 

「明日、早めに行動開始できるようにもう寝ようか」

 

「そうですね」

 

夕食をとって、次のチェックポイントまでのルートを確認したところで、私はそう提案する

明日に疲れを残さないために休めるときには休んだほうがいいだろう

地図を映し出していたモニターをオフにして、テントの明かりも消す。モニターはデバイス経由で私の魔力だけど、明かりはバッテリー式だから節約しないと使えなくなってしまう

 

私とエリオ君はそれぞれ寝袋に睡眠をとろうとした・・・が

 

(寒くて眠れない・・・)

 

ここが温暖な地域といっても今は2月で季節は冬、雪が降るほどではないがそこそこ寒い

魔法を使ってテント内の温度を上げれないことはないけど、明日以降の行程を考えると使うか悩む

 

エリオ君も眠れないようで、隣の寝袋で震えていて、その僅かな振動が私にも伝わってきていた

 

(魔法は無しで何とかするしかないかな・・・)

 

私は意を決して自分の寝袋のファスナーを開けた

 

 

「うぅ・・・(///)」

 

今、二重にして防寒性の上がった寝袋の中で私はエリオ君を抱くようにして寝ている

正直魔法を使わないとなると、これしか思いつかなかった

エリオ君は耳まで真っ赤になっている

 

「ごめんね。でも疲れですぐ眠れると思うしね」

 

「はい・・・」

 

予想通り、私たちは疲れであっさりと眠りに落ちた

 

 

 

 

 

次の日

 

私のデバイスが電子音のアラームを発し、私は目が覚める

時間は日の出より少し前、空が少し明るくなってきた頃

 

(エリオ君は・・・うん、まだ寝てるか)

 

幸運にもアラームで目覚めなかったエリオ君を寝袋に残し、私はテントから出て色々と準備を始めた

 

 

「エリオ君、起きた?え・・・?」

 

「あ、その!これは・・・」

 

日が出始めて、エリオ君を起こそうとテントに入ると、エリオ君が涙を流していた

テントを出てから気づいたけど、私の服にも涙のような跡があったし・・・

 

「やっぱり、嫌だった?ごめんね勝手なことして・・・」

 

「いえ、そうじゃ、ないんです・・・すみません。大丈夫です」

 

そして、少し気まずい空気の中で朝食をとり、テントなどを畳んで、2日目の行動を開始した

 

 

「実は、母親のことを思い出したんです」

 

12時に第2チェックポイントに到着し、第3チェックポイントの場所を確認しながら昼食をとっているとエリオ君がポツリと言った

 

「お母さん?」

 

「はい、ずいぶん前に両親とも、死んでしまって・・・」

 

「そっか」

 

私はエリオ君の表情からそれが嘘だってわかったけど、あえて何も言わず聞いていた

 

 

2日目の夜

第3チェックポイントへのルートの途中だ

初日同様に日没前にテントを張れる場所を確保した

 

「それじゃ明かり消すよ」

 

「はい」

 

明かりを消してそれぞれの寝袋に入る

昨日のはある意味ズルだからできればしないほうがいいだろう

苛酷な環境に耐えるのも訓練の内なのだし・・・

 

私は寒さに震えながらもなんとか眠りにつくことができた

 

 

 

 

 

 

サバイバル訓練3日目の午前

お互い不十分な睡眠時間で、欠伸をかみ殺しながらテントなどを片して出発

10時過ぎに第3チェックポイントに到着。ゴールの位置情報が送られてきた

 

チェックポイントまでの距離は段々と長く、険しくなってきていて、ゴールには4日目の午後までかかりそうだった。どのタイミングでご飯を食べるか、どこまで行ったら休むかの判断が難しいね・・・

 

「よし、出発しよう」

 

「はい」

 

 

「エリオ君、大丈夫?」

 

「はい・・・」

 

3日目の午後に入ってエリオ君の表情に疲労の色が色濃く見え始める

 

(まだ夕暮れには時間があるけど、テントを張る場所を探して休んだほうがいいのかな・・・?でもそれだと4日目のうちにゴールにたどり着けなくて食料が・・・)

 

食料は4日目の昼食分までしかない。食料は1度開封すると食べ切るしかない仕様だから残しておいて後で食べるとかはできない

 

私は判断に迷う・・・

タイムリミットは5日目の日没だから、今日はこの辺りで1泊してもゴールするのは確実にできると思う。しかし食料が切れて、空腹の状態で5日目を迎えるのは・・・

 

「エリオ君、今日はこの辺りでテントを張れる場所を探そうと思うんだけど・・・」

 

「え?でもまだ夕方までは時間が・・・」

 

「エリオ君の状態を考えるとこれ以上は・・・」

 

「大丈夫です」

 

「いや、でも・・・」

 

「セレナさん!」

 

エリオ君が初めて声を荒げて私の言葉を止める

このときのエリオ君の顔は『男の子』ではなくまさに『男』のそれだった

 

(そんな顔で言われたら信じるしかないか・・・その上で私にできることをする)

 

「・・・わかったよ。ただ、このまま行ってもペースが上がらないから5分だけ休もう。私も疲れてるし・・・」

 

「ありがとうございます」

 

私とエリオ君は荷物を置いた

 

休憩中、私はエリオ君に疲労抜きの為にヒーリング魔法をかける

適正が低いので魔力消費量に対して効果は少ないがやらないよりはいいだろう

 

 

その後、出発して夕暮れまでゴールを目指して進み、テントを張った

 

「はぁ~・・・」

 

ヒーリング魔法で魔力を消耗したのでエリオ君だけでなく私も疲労困憊状態で夕食の手が進まない

 

「すみません・・・ヒーリング魔法まで使ってもらって・・・」

 

「ううん、気にしないで」

 

「コンビなのに、なんかセレナさんには助けてもらってばっかりですね・・・」

 

「そりゃコンビでも私のほうが年上だからね。ポジション上も私はウィングバックで、ガードウィングのエリオ君をフォローするのがメインだし・・・まぁ悔しいと思うなら、頑張って強くなって私を助けられるようになるんだね」

 

「わかりました」

 

 

なんとか夕食をとり終えて、早めに休もうとテントの中で寝袋を広げていると・・・

 

「あ、あの・・・きょ、今日は寒いですね・・・(///)」

 

エリオ君が顔を赤くしながらそんなことを言った

 

「う、うん・・・」

 

「あ、明日の為に少しでも多く寝ておいたほうがいいと思うんです・・・」

 

エリオ君はアワアワしながら言葉を並べている

 

「えーっと・・・つまりは一緒に寝たい、と?」

 

「は、はい・・・」

 

(エリオ君からそう言われるとはね・・・)

 

 

初日の夜と同じように寝袋を重ねて私はエリオ君を腕の中に収めている

エリオ君はやっぱり耳まで赤くしていた

 

「・・・眠れそうですか?」

 

「うん、エリオ君暖かいし、よく眠れそう」

 

エリオ君の質問に私はそう答えた

でもエリオ君は何か別のことを聞きたいように見えた

 

「あの、セレナさん・・・」

 

「ん?なに?」

 

「僕の過去、聞いてくれませんか?」

 

「うん、いいよ」

 

 

エリオ君が自分の過去、というか出自を語りだした

 

簡単に言うと、『自分は昔に死んだエリオ・モンディアルという人間のクローン』ということだ

記憶まで移せる特殊なクローン技術で生まれ、それを知らずに生きていたが、とある研究機関がエリオ君を両親から引き離し、両親は違法技術故にあっさりとエリオ君を手放した。それからエリオ君は実験動物扱い。管理局に保護されたが人間不信状態がしばらく続いたとのこと

 

「酷い・・・」

 

私は思わずエリオ君を抱きしめてしまう

 

「うぅ・・・(///)そ、それからフェイトさんに出会って、保護者になってくれて、今の僕になりました」

 

「そっか・・・」

 

『よかったね』と言いそうになるがなんとか引っ込めることができた

 

「やっぱり私には何も言えないや。ごめんね」

 

「いえ・・・」

 

私の言葉にエリオ君は気丈に返す

 

「でもね、私は頑張って勉強してるエリオ君を知ってる、模擬戦で負けて悔しがるエリオ君を知ってる、バイクに乗ったときに年相応に嬉しそうにするのも、ビックリして私に告白したり・・・私にとってはエリオ君だけがエリオ・モンディアルだよ」

 

「セレナさん・・・そ、それ・・・」

 

「ごめんね。やっぱり忘れられなかった。だって初めて男の子から好きって言われたからね。私も好きだよ」

 

(弟として、または相棒として、だけど・・・)

 

「あぅ・・・(///)」

 

エリオ君が消え入りそうな声を出して恥ずかしさに悶えている

 

「じゃ、明日の備えてもう寝ようか。おやすみ、エリオ(・・・)」

 

「はい、おやすみなさい」

 

(しかし10歳の少年に好きと言ってる私は・・・ま、いいか)

 

 

 

 

 

サバイバル訓練4日目

初日や2日目よりもグッスリ眠れて、すっかり疲労も取れた

 

「よし、頑張って今日中にゴールしようね、エリオ」

 

「はい!セレナさん!」

 

そして私たちは15時ごろに無事3位でゴールした

 

 

「エリオ、エリオ・・・」

 

4日目にゴールした訓練生を乗せたバスが寮に着き、道中で眠ってしまったエリオを揺すって起こすが起きない。どうやら疲れと、ゴールした安心から深く眠ってしまっている様子

 

(仕方ないなぁ・・・)

 

私はエリオをおんぶしてバスから降りた

 

部屋に着いて、エリオを2段ベッドの下に寝かせて、シャワーを浴びてきてもまだ寝ていたので、今日も抱き枕にさせてもらった

だって仕方ないじゃん・・・2段ベッドの下は本来私が使ってるところなんだから・・・

 

サバイバル訓練の疲れが吹き飛んだ気がした

サバイバル訓練も終わって、あと目立ったものはランク認定試験のみ

私とエリオは陸戦Bランクを受けた

 

実技の教官から私はAAランクでも通ると言われたが、AAランクの学科試験はランク未取得の訓練生がいきなり受けても合格は難しいので、エリオと一緒にツーマンセルでBランクを受けることにした

 

結果は見事2人そろって合格

卒業条件も無事クリアして、卒業となった

 

「ん~、これで短期コースも終わりかぁ・・・」

 

「そうですね・・・」

 

最後の講習が終わって、私は体を伸ばしながらエリオに話しかける

 

「といってももうしばらくここで陸士の出向研修があるんだけど・・・」

 

「・・・」

 

エリオが段々悲しそうな顔になる

別れが近づいてるからだろう・・・

エリオは新設される遺失物対策部の機動六課に配属予定だけど、私はまだ配属先が決まっていない

 

「大丈夫、同じところじゃなくても連絡は取り合えるし、休みの日が合えば会うこともできる。ずっとさよならってわけじゃないんだから・・・」

 

「セレナさん・・・」

 

我慢の限界に達したみたいで、エリオがポロポロと涙を流し始めた

この3ヶ月間寝食を共にして、深く関わり合った相棒との別れは私も悲しい。でもエリオは自分を助けてくれた保護者の仕事を手伝うために、自分で決めたことだから、私は笑って送り出そう思う

 

「もう泣かないの、男の子でしょ」

 

「はい・・・」

 

私がしゃがんでエリオの涙を拭きながら言うと、エリオは涙声で返事をする

なかなか泣き止まないエリオに少し困りつつも、ここまで私との別れを悲しんでくれるのを嬉しくも思う

 

そのとき・・・

 

「あ、いたいた・・・なかなか出てこないから探しちゃった」

 

私の後ろからそんな声が聞こえる

この声は私をスカウトした・・・

 

「高町教導官?」

 

私の声にエリオがビクッとして慌てて私に抱きつくように顔を隠した

 

「なのはでいいよ。久しぶり、セレナ。その子ってもしかしてエリオ?」

 

なのはさんに呼ばれてエリオがまたピクッとする

 

「はい、お久しぶりです。なのはさんはエリオを知っているんですか?」

 

「うん、私の友達が保護者だからね・・・えっと、それでエリオとは・・・どんな関係?というかどういう状況?」

 

そういえば・・・フェイトさんことフェイト・T・ハラオウン執務官はなのはさんこと高町なのは教導官と仲がいいって有名だったね・・・

 

「コンビです・・・卒業して別れるのが悲しいみたいで、泣きだ・・・」

 

「わーわー!!」

 

泣いたことを言おうとするとエリオが声を上げて言葉を遮った

 

「お、お久しぶりです・・・なのはさん」

 

「うん、久しぶり、エリオ」

 

エリオがなのはさんのほうを向いて挨拶する

私の制服に涙の跡がしっかり残ってて、エリオの目も少し赤くなってるけど、私もなのはさんも気づかない振りをする

 

「えっと、それでなのはさんはどうしてここに?」

 

エリオも今の状況は気まずいだろうから早めに本題に入ってもらう

 

「セレナの配属先を知らせにね。ちょっとほかの子のスカウトがあって今日になっちゃった、ごめんね」

 

「いえ、大丈夫です。それで、私の配属先は・・・?」

 

私がさらに質問する

エリオの顔をチラッと見ると不安そうな顔をしてなのはさんを見ている

なのはさんはそんなエリオにニコッと笑いかけてから私に向き配属先を言う

 

「遺失物対策部、機動六課。そこの隊舎の警備と防衛をするバックスとして来てほしいんだ」

 

「機動六課ですか。それってエリオも・・・」

 

私とエリオが顔を見合わせる

 

「エリオとは別の分隊になっちゃうけど、同じ部隊だね」

 

なのはさんがそう言った瞬間、エリオが私に飛びつくように抱きついてきた

 

 

 

 

 

数日後、局員IDの更新の為に私とエリオはとある窓口センターに来ていた

私の更新が終わって別の受付で更新を行ったエリオを探す

 

「あ、いた・・・エリオー」

 

メガネをかけた女性局員と話しているエリオの後姿を見つけ、声をかける

 

「あ、セレナさん」

 

振り返るエリオの向こうに通信モニターが見え、その中の人や女性局員が驚く

 

「セレナ・スクーデリア三等陸士です。短期コースでエリオとコンビを組んでいました」

 

私は慣れない敬礼をしながら自己紹介をする

 

『エリオの保護者のフェイト・T・ハラオウンです』

 

『フェイトの使い魔のアルフだ』

 

「フェイトさんの補佐官でシャリオ・フィニーノ一等陸士です」

 

通信モニターに映る2人と女性局員が自己紹介する

 

『なのはから聞いてたけど、仲がいいみたいだね』

 

「はい。セレナさんは大切なパートナーですから」

 

『え・・・?』

 

エリオの爆弾発言にモニターに映る2人、そして私とフィニーノ一士が固まった

 

「エ、エリオ?それはどういう意味かな?」

 

「えっと、強くなっていつか守れるようになりたい、そんな人です」

 

フィニーノ一士の質問にエリオは答える

 

(あれ?これプロポーズじゃない?)

 

しかしエリオはそれに気づいてる様子はない

 

『セレナ・・・エリオを誑かしたね・・・』

 

ハラオウン執務官の声のトーンが低くなる

 

「え?いや・・・あ」

 

ハラオウン執務官の言葉を否定しようするが、今までの言動を顧みるとそう言えなくもないことに気づく

 

(あはは・・・こりゃ責任取らないといけないかな)

 

私は苦笑しながらエリオの頭を撫でて・・・

 

「期待してるよ、エリオ」

 

「はい、セレナさん」

主人公設定

 

名前 セレナ・スクーデリア

 

年齢 18歳(STS開始時点)

 

性別 女

 

身体情報

・身長167センチ

・髪は短め(元は長かったが、シャワーの時間が長くかかって、エリオを待たせてしまうからバッサリ切ったという設定とかどうだろう?)

 

概要

 

訓練校の短期予科コースでエリオの同期でパートナー

短期コースは魔法実技訓練をほぼ免除されるため、入校時に実技がある一定レベルに達している必要があるために受講人数が少なく、男女であるが年齢差があるからとコンビを組まされて部屋も同室になった

 

多種の射砲撃と硬い防御魔法によって、その場に立ち止まって火砲支援をし続ける固定砲台タイプのウィングバック。拠点防衛型魔導師として機動六課の隊舎の警備と防衛を行うバックス要員。コールサインはロングアーチ09。自身をスカウトしたなのはの魔導師や教導官としての技量には尊敬をしているが、ティアナやスバルを生徒としてしか接していないことには否定的で、『もしかしてあの人部下持った経験無いんじゃないの?シグナム副隊長がスターズの隊長をしたほうがいいのでは?』と思っている

 

魔法を始めたのは6歳(小学校入学)からで魔法暦12年。中学時代インターミドルに出場していたが、最初はスーパーノービス戦敗退。2回目と3回目もエリートクラス1回戦敗退といい成績は残せていない(セレナ曰く、『防御魔法で防いでるのになんでライフが減るの?』とのこと)高校に入ってからは射砲撃手オンリーの大会の出場して3年のときに優勝し、ゲストとして来ていた高町なのはにスカウトされ、高校の卒業試験を前倒しでパスして卒業、訓練校に入校した

 

デバイスにAIを組み込むことに抵抗がある(人格や意思があって、人と話すことができるものを道具扱いできない)ちなみにこの考え方はインテリジェントシステムが出回り始めたとき、当時の魔導師たちがインテリジェントシステムを嫌がった理由と同じである

 

特に不幸なこともなく普通の日々を送ってきた

バイクの免許を持っている

 

魔法関係

・ミッドチルダ式

・魔力量AAAランク

・魔導師ランク 陸戦B(STS開始時点)ただこれは短期コースの講義内容がBランクの学科試験をパスするためのものだったためで(ほかツーマンセルで一緒に受けるコンビのエリオの技量も考慮して)、入校時点でAAランクの実技能力がある

 

適正(優54321劣)

・射砲撃(広域攻撃含む)4 ・防御5 ・バインド系3(一部4) ・身体強化系(飛行、高速移動系含む)1 ・武器威力強化(打撃斬撃両方)2 ・ヒーリング系2

※バインド系の一部とは絡束盾や捕縛盾などのシールド系との併用魔法

飛行適正無し

変換資質無し

魔力効率高めで、少ない魔力で高い効果を出すことができる(しかし適性が低い魔法は効率の限界が低い)

 

デバイス

セレナが10歳のときに安売りされていた型落ちの騎士杖型のアームドデバイス。デバイス名称は登録していない

AIは無く、民間向けの市販デバイスのため、管理局員向けの当時の支給デバイスにも劣る性能

セレナは魔法適正上、武器として使う気は無く、後付で6発リボルバー式のカートリッジシステムや記憶装置の増設をしているため、強度が落ちて武器としては使えないようになっている。サイズも1.2メートルだったものが2.3メートルにまで長くなっている。改造を施したのは16歳のとき

 

六課で製作された実践用のデバイスは、はやてのシュベルトクロイツの同型機にストレージ機能などを組み込み、フェイトのバルディッシュと同型のカートリッジシステムが組み込まれた騎士杖型アームドデバイス

変形機構はなく、本人の希望でAIや音声出力機能は入れていない

記憶容量が10%、ほかの性能も平均30%向上して、セレナは初めて使ったときは性能差に凄く驚く

 

バリアジャケット

上は長袖の普通の服装、下はなのはのような前開きのスカート?の中にスラックス、靴はブーツで、素肌の露出が少なく、防御力が高い

 

 

 

名前の由来

セレナ→日産セレナ

スクーデリア→フェラーリF430スクーデリア


 
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