……さて、どうしたもんか。
俺は隣にいるレヴィ、そして応援席にいるシュテル、ディアーチェ、ユーリの三人を見るが皆固まっている。
そしてすずか達のいる相手チームの方にもう一度顔を向けるとあちら側のメンバーも驚いた表情で固まっている。直博の叔父さんと話し終えた士郎さんもシュテルを見て固まった。まあ自分の娘と瓜二つの少女がいたらそういう反応するのも仕方ないかも。というよりもこの場にいるほとんどの人が驚いた表情でシュテル達とすずかの傍にいるなのは、フェイト、はやての顔を交互に見ている。
「(よく考えたらすずかは原作キャラなんだし友達でもあるなのは達を連れてきても不思議じゃないわな)」
自分のうっかりに情けなさを感じ、とりあえずどうしようかと考えていると
「お、おい長谷川…」
俺の近くで固まっていた直博が再起動し、声を掛けてきた。
「どうした?直博」
「あ…あそこにいるの、お前ん所の家族とソックリじゃないか?」
「そうだな」
「こ…これって偶然なのか?」
「偶然だろ」
「だけど似過ぎだろ!?もう双子って言われた方が納得できるぞ!?というか双子だよな!?」
「直博…世の中には自分にソックリな人間が三人はいるって言うじゃん。その内の二人×三組がここに揃っただけだって」
「それで納得しろってか!?」
だって、正直に言える訳ないじゃん。でもある意味では双子っていうのも間違っては無いんだよなあ。
それよりこの試合の後どうするか考えないとな。
「……ハッ!!どど、どうしようユウ!?オリジナル達がいるよ!!?バレちゃったよ!!?」
固まっていたレヴィが突然目覚め、俺の肩を掴み揺さぶりながら聞いてくる。
「落ち着けレヴィ!てゆうか揺さぶるな!!」
ガクガクと揺らされるせいで脳がシェイクされ気分が悪くなってくる。
とりあえずレヴィの頭を叩く。
「みぎゃっ!」
またうずくまるレヴィ。何とか肩から手を離させる事に成功した。
「う~っ!ユウがまた頭叩いた~!」
「お前がいつまでも揺するからだ!」
またも涙目で抗議するレヴィだが、俺はそんなレヴィを無視し、シュテル達に念話で話し掛ける。
「《シュテル、ディアーチェ、ユーリ。どうしようか?》」
「「「《……………………》」」」
三人共反応が無い。まだ固まってるな。
「《三人共!!》」
少し念話のボリュームを上げて再度呼び掛ける。
「「「(ビクッ!)《な、何ですか?(な、何だ?)(な、何でしょうか?)》」」」
やっと再起動したか。
「《とりあえずお前等の事バレたけど、どうする?何か良い案無いか?》」
三人に尋ねてみる。
「《私には特に何も…》」
「《我もだ…すまぬ》」
「《…申し訳ありません》」
やっぱり何も無い…か。
「《なら試合中、もしくは試合が終わったら向こうから接触してくるかもしれないからそれまではとりあえず大人しくしといてくれ》」
はあ~、もう正直に話すしかないかもな。
ここで原作組から逃げたとしても街中にサーチャーなんて張られたらすぐに家まで特定されるだろうし、今の俺とレヴィのやり取りを見て関係者だって思われたかもしれないし。
「《ですが…》」
「《向こうもいきなり襲い掛かったりはせんだろ流石に。それに
こちら側のユーリを助けた後は、なのはGODのエンディングと同じ流れでそれなりに皆仲良くなってたからバトルにはならん筈だ。そもそもこんな所でいきなり魔法使う事も無いだろうし。
「《それはそうかもしれんが我等と
「《向こうはこちらの事情を知らないから、それは仕方ない。その事も含めて全部説明するしかないな。後はお前等のオリジナル達に信じてもらうしかない」
「《そう…ですね》」
「《とりあえず今は何もせずに普通に試合観ててくれたら良い。全ては後の状況次第という事で」
「「「《分かりました(分かった)(はい)》」」」
「《よし》…レヴィ、そろそろ試合が始まるからお前もシュテル達のとこに戻れ」
「う~、僕の頭叩いたのに謝りもしないんだ。ユウは鬼畜だよ」
未だ俺を睨んでそんな事言うレヴィ。頭叩いただけで鬼畜扱いかよコイツは。
「……はあ~」
またレヴィの頭を撫でる。
「あ……//」
「悪かった。とりあえず機嫌直して皆のいる所に戻れ」
「う…うん。分かった//」
いきなり素直になったレヴィがコクリと頷いてシュテル達のいる応援席に戻る。
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……
再び応援席から発生するプレッシャー×4。あれ?視線が多い様な…。
「「「《ユウキ、後でO☆HA☆NA☆SHIです(だからな)(しますから)》」」」
「何で!!?」
思わず声に出して叫んでしまった俺。
「ど、どうした長谷川?いきなり声出して」
「あ、スマン。気にしないでくれ」
「あ、ああ。分かった。ところでよ」
「ん?」
「さっきレヴィちゃんが言ってた『オリジナル』って何の事だ?」
……………………どうしよう?
レヴィが確かにそう言ってたのをしっかりと覚えていやがる。これが謙介なら一撃で沈めて解決するんだが直博は良い奴だからそんなやり方はしたくない。
……レヴィには悪いが…
「直博。レヴィはただのアホッ娘だけじゃなく時々電波を受信して電波ッ娘にもなるんだ。多分さっきも何か電波を受信したんだと思うぞ?」
「そうなのか!?そんなレヴィちゃん、今まで一度も見た事無かったぞ!?」
「レアな現象だからな。俺もたまにしか見かけない電波っ娘レヴィだ」
「そうか…。レヴィちゃんにそんな一面が…」
簡単に納得した直博。さすがにあっさり信じられると良心が痛む。
「そんな事よりもうすぐ試合だ。皆集めてポジションや作戦の確認しようぜ」
俺は強引に話題を打ち切る。
「そうだな」
そして多少混乱しているチームメイトを集め監督である叔父さんが最終確認を行った。チラッと原作組の方を見ると向こうも何やら話している。いつの間にやら再起動したみたいだ。
俺は試合後の展開がどうなるのか若干心配しつつも作戦の内容を聞いていた…………。
~~すずか視点~~
私は……ううん、
火曜日のお昼休みに勇紀君の事について色々聞かれちゃった。『何処で出会ったの?』とか『どんな子なの?』とか質問攻めに合って大変だったなあ。勿論、私が誘拐された事や勇紀君が魔導師だっていうのはなのはちゃん達には内緒にしてる。
その時アリサちゃん達に今日の試合の事を言っちゃったから皆も着いて来ている。
…どうしよう?
なのはちゃん達に勇紀君が魔導師だってバレちゃうかもしれない。もしバレちゃったら勇紀君との約束を破っちゃう事になる。勇紀君は普段リミッターっていうのを付けて力を抑えてるらしいから大丈夫だろうとは言っていたけどやっぱり不安だよ。
そんな心配をしつつも楽しそうに話しながら着いて来る皆と河原に向かっていると
「よお、俺の嫁達。こんな所で会うなんて奇遇だな」
後ろから一人の男の子の声が聞こえた。その瞬間、私達は全員苦い表情になりさっきまでの楽しそうに歩いていた雰囲気が一瞬で消え去った。
「これから何処かへ行くのか?良かったら俺も一緒にいいか?」
そういって私達の中に無理矢理割り込んでくる男の子。
銀髪のショートカットに左右の瞳の色が違うオッドアイ。そして小学生にしてはあまりにも不釣り合いな整った顔立ち。
それが彼、『
「良くないからアンタは来ないでくれる?」
アリサちゃんが彼に対する嫌悪感を隠そうともせずに出しながら答えるが
「相変わらずのツンデレっぷりだなアリサは」
彼はアリサちゃんの発する嫌悪感にも気付かず、何事も無いかの様に答えている。
「ツンデレじゃないわよ!私達はアンタの事なんか何とも思ってないんだから勝手に嫁とか言うな!!」
アリサちゃんの言う通り、私達は彼の事を好きなんかではない。むしろ彼に接するのは苦手で正直に言うと嫌いだ。
彼とは小学校に入学して以来の付き合いだが、彼は人によって付き合い方が極端に変わる。特に私達に関わろうとする男の子に対しては敵意を隠そうともせずにする。男の子の友達が出来ないのも絶対に彼のせいだし。
それに私達に対する視線が何だかいやらしくすごく不快な感じがする。以前誘拐された時、私に向けてきたあの視線と同じ様な目をする時があるのだ。
それに私達の事を『俺の嫁』とか勝手に周りに言っているせいで、たまに同じ学校の彼が好きな女の子達からも嫌味を言われる時があるのだ。私達が悪い訳じゃないのに。
途中から学校に編入してきたフェイトちゃん、アリシアちゃん、はやてちゃんに対してもそんな態度で接するため私達の中で彼に対する評価は最悪だ。
「そんな事言わないでたまにはデレろよアリサ~」
「こっち来んな~!!」
逃げるアリサちゃんを追いかける彼。アリサちゃんは本気で嫌がっているのにどうして気付かないんだろう?
「アリサちゃん…。ご愁傷様なの」
「私達も人の事言えないけど」
「アイツに会うなんて今日は最悪の休日やわ」
「はやて、シグナム達呼んでアイツ何とかしてもらってよ」
なのはちゃん、フェイトちゃん、はやてちゃん、アリシアちゃんがそれぞれ口を開く。
「彼、管理局でも皆に付きまとってそうだね」
そう…彼も管理局員だったりする。なのはちゃんとはやてちゃんが管理局に正式に入局すると同時に彼も局員になったとか。
「…うん。しょっちゅう私のとこに来るの」
「…私と姉さんの所にも」
「…わたしの所にもや」
「…管理局内でアイツに会うだけでその日は働く気無くなるのよね~」
皆大変なんだね。私やアリサちゃんは局員じゃないからなのはちゃん達に比べたらまだ会うのは少ないからマシな方なんだ。
「このままだと彼も私達に絶対着いてくるよ。どうするの?すずか」
フェイトちゃんが私に聞いてくるけど、本当にどうしたらいいだろう?
「全員バラバラに散って現地集合すれば?」
アリシアちゃんが提案してくれる。
「にゃっ!?それは困るの!そんな事されたら私が絶対追いかけられるの!!」
「わたしもまだ足が完治してへんし、早く走る自信無いんやけど」
なのはちゃんとはやてちゃんはその案を否定する。
「でも彼にかまっていて時間取られていたら試合が始まっちゃうし…」
……こうなったら彼を無視してさっさと河原に向かおう。多分彼も着いてくるだろうけど仕方ないよね。ここで時間を使う訳に行かないし。
「とりあえず河原に向かおう皆。彼も着いてくるだろうけど、それはもう諦めるよ」
「……それしかないよね」
「……わかったの」
「……しゃーないわな」
「……じゃあ、アリサ呼んでさっさと行きましょ」
皆納得してくれたので彼に追いかけられているアリサちゃんを呼んで皆で決めた事を伝えた。アリサちゃんは嫌そうな表情をしていたがとりあえずは納得してくれ、再び私達は河原に向かって歩き始めた。
勝手に彼は着いて来て私達に話し掛けているが、私達は一言も喋らず黙って目的地に向かっていった………。
そして河原に着いた。ちょうどなのはちゃんのお父さん、士郎さんがコーチをしているサッカーチームも私達と同じタイミングで着いたようだ。私は勇紀君の姿を探したのだが彼の姿を見つけた瞬間に固まってしまった。
彼…いや、正確には彼の隣にいる子を見たからだ。水色の長い髪を青いリボンで両サイドにまとめている女の子が私の良く知る…というより一緒にここまできた私の友達であるフェイトちゃんに瓜二つだったからだ。
それだけじゃない。相手の応援席にいる二人の女の子も髪型や髪の色が違うだけでなのはちゃんとはやてちゃんに瓜二つだった。
それからしばらく固まっていた私達に
「ちょ、ちょっとどういう事!?あそこにいるのってなのはにはやてじゃない!それにグラウンドにいるのはフェイトよね!?」
アリサちゃんが声を出した事により私もハッとして意識が戻る。すぐになのはちゃん達の方を見るとなのはちゃん達も私と同じ様に意識を取り戻した様だった。
「ね…ねえフェイトちゃん、はやてちゃん、アリシアちゃん。あっちにいるのって…」
「う…うん。間違い無いよなのは。あれはレヴィ達だ」
「何で王様達がおるんや!?あの時管理外世界から来たおねーさん達と一緒に行った筈やで?」
「あのユーリって子もいるね。どういう事だろ?帰ってきたのかな?」
どうやらなのはちゃん達、魔導師の皆はなのはちゃん達にそっくりな彼女達を知っている様だ。
「アンタ達、あの子達の事知ってるの?」
アリサちゃんがなのはちゃん達に尋ねる。
「うん。一年以上前にこの街で起こった事件の際に色々あってね…」
そういってフェイトちゃんが彼女達の事について話してくれる。どうやら魔法関係みたいで周りに聞こえない様小声で。
それから彼女達について理解出来た。それと一年以上前に起きたという事件の事も。でもその子達は他の世界から来た人達に着いて行ったという事らしい。そしてその世界を救うために今も頑張っている筈だという事も。それが今ここにいるのが不思議だとなのはちゃん達は思っているみたい。
「そう。なら後で彼女達にここにいる理由を聞きましょ。それよりすずか。アンタの知り合いの子って何処にいるの?」
「えっ?あ…うん、あそこだよ。あのフェイトちゃんそっくりな女の子の横にいる今、ガクガク揺さぶられている男の子」
アリサちゃんに聞かれたので私は答えると、皆も勇紀君の方を見る。あっ、勇紀君がフェイトちゃんに似てる子の頭を叩いた。
「なんか女の子の頭叩いたわよあの子」
「でも、暴力を振るってるっていう感じじゃないよね」
「うん。どっちかといえば妹を叱るお兄ちゃんみたいな感じだ」
「えらいレヴィと仲ええみたいやけど」
「知り合いって事?じゃあここに彼女達がいる理由知ってるのかな?」
勇紀君の方を見て、アリサちゃん、なのはちゃん、フェイトちゃん、はやてちゃん、アリシアちゃんが口を開く。確かに仲が良さそうだ。ひょっとしたら勇紀君が言っていた家族って…
「あっ!今度はシュテル達の方を見てるよ」
「ただ見てるだけじゃない…。ひょっとして念話で話してるのかな?」
「て事はあの子も魔導師っちゅー事か?」
「そうなの?ねえ、すずか。彼って魔導師?」
アリシアちゃんが聞いて来て他の皆も私に向き直る。
「えっ!?ど、どうかな?」
私は知らないと答えておいた。勇紀君との約束だもん。本当の事は言えないよね。
「本人に聞けばいいんじゃないかな?…あっ、今度はレヴィの頭撫でてるの」
なのはちゃんがそう言ったので彼の方に振り返ると確かに彼がフェイトちゃんに似てる子の頭を撫でている。撫でられている彼女は嬉しそうな表情だ。
「(むう~~~~~~)」
胸がもやもやする。私、嫉妬しちゃってる。
思わず私は勇紀君をジト目で睨んでしまう。
「「「「「す、すずか?(ちゃん?)」」」」」
皆が私を見て少し震えている。
「何かな?」
「「「「「な、何でもないの(よ)(で)(わ)(から)」」」」」
そういって視線をそらす皆。どうしたのかな?
……まあいいかな。それより勇紀君には後で色々O☆HA☆NA☆SHIだね。フッフッフ……。
~~すずか視点終了~~
さて、作戦も決まり試合が始まった訳だが俺はさっきすずか達の姿を見た際、気になった人物が二人程いた。
この世界の『闇の書事件』から『砕け得ぬ闇事件』までに何回か飛ばした際にサーチャーの映像で確認していた二人。
一人はフェイトにそっくりだがフェイトよりやや幼い容姿とツインテールにしているリボンが緑色の女の子。
間違い無いな。彼女はおそらくアリシア・テスタロッサだろう。
だけど原作では彼女は死んでいた筈だし、今の彼女からは魔力を感じる。確かアリシアには魔法の資質が受け継がれなかったのに。
これもIF世界の影響か原作ブレイクのせいだろうな。
まあ、彼女の事は良いのだがもう一人、こっちの奴が何て言うか…。
銀髪のオッドアイで小学生なのに出来上がった顔立ち。いかにも二次小説でお約束な容姿。
間違い無く転生者だなアイツ。
しかも魔力がダダ漏れだ。上手く制御出来ないのかワザとなのかは知らないが。
やっぱアレかな。原作キャラ達と仲良くなってハーレムとか目指してんのかな?
そんな事を考えていたら
「長谷川君!」
チームメイトの一人が俺にパスを回してきた。
「よっと」
ボールを受け取ると俺もドリブルしながら走り出す。ボールを奪いに相手チームの子が近付いてくるが
「直博!!」
俺はフリーになった直博にパスをする。直博のポジションはFWだ。ボールを受け取った直博はそのまま相手ゴールまで駆け出しそのままシュートを放った。相手のキーパーも手を伸ばすが僅かに届かずボールはゴールに入っていった。
「「「「「よっしゃあ~~~~!!!」」」」」
まずこちらが先制点を決め、味方の控え選手や監督の叔父さんも歓声を上げる。
「ナイスシュート」
俺は直博の肩を軽く叩いて声を掛ける。
「お前こそナイスパスだったぞ」
直博も笑顔で答えてくれる。
「まあお前をマークしてた子がボール取りにこっちにきたからな」
おかげでフリーになった直博にパスが出せた。もしボールを取りにこないならそのまま俺がゴール前まで上がり、シュートしていただろうけど。
「俺がお前にどんどんボール回すからちゃんと取ってくれよ?」
「任せとけ」
そう言い合いながら味方側のフィールドに戻る。
それからは一進一退の攻防が続き…………。
ピピィィィィィィィッ。
試合終了のホイッスルが鳴り響く。
結果は3-0で俺達のチームが勝った。
直博は2得点、チームの子が1得点上げた。
最初に先制点を決めて以降は中々点がとれなかったが、試合の途中に例の転生者らしき少年が突然相手チームの選手と交代し、試合に加わってきた。だが味方にパスを出そうとせず完全に個人プレーに走っていた。自分自身に身体強化の魔法使って参加とか大人気無い奴だ。
だが個人プレーに走るおかげで簡単にオフサイドトラップに掛かったりしてボールを奪い取れる。その上ファールの連続で、試合に参加して僅か10分程で退場処分を受け、相手チームは十人で戦わざるを得なくなった。
数的有利になったこちらのチームが一気に攻勢に出た事で結果、追加で2点加える事が出来たのだ。
「いや~勇紀君。ナイスアシストだったよ。君が味方に的確なパスを出してくれてたおかげでうちのチームが勝つ事が出来たよ」
直博の叔父さんが満面の笑みで声を掛けてくる。相手チームに勝てたのが余程嬉しいのだろう。
そういえばこの人、相手のコーチが因縁(?)の相手だったっけ。そのコーチが士郎さんって事は直博の叔父さんが好きな人って高町桃子さんって事になるのか?そんな事を考えていたら
「これから祝勝会を上げるんだ。勇紀君も是非参加してくれ」
直博の叔父さんが祝勝会に誘ってくれた。参加したいけど…
「あ~、すいません。昼は用事があって…。これからすぐに行かなきゃいけないんですよ」
すずかとの約束は夕方からなので昼は用事なんて無いがそう言って断っておく。
「そうなのかい?残念だね。君は活躍してたから参加してほしかったんだが」
「ホント、すいません」
俺は頭を下げて謝る。
「いやいや!用事があるなら仕方ないさ。でも今日は本当にありがとう。今度、何か奢らせてもらうよ」
「別にそこまでしてもらわなくてもいいんですけどね」
そう言い、挨拶をしてから直博の叔父さんはチームの皆を連れて行く。相手のチームも皆帰り始める。
残ったのは長谷川家の面々と原作キャラ一同。そして転生者らしき銀髪君。
「結局、試合中には何もしてこなかったな」
「はい」
「これからどうするのだユウキ?」
「こっちから……ってその必要はないか。向こうから来てくれたし」
俺が視線を向けるとこっちに近付いてくる、原作キャラ達。
「お疲れ様勇紀君。大活躍だったね」
すずかが声を掛けてくれる。
「あはは、ありがとうすずか。でも大活躍って程じゃないぞ。俺、基本的にパスしかしてないし」
「そんな事無いよ!勇紀君のパス凄い正確でいい所に出してたし」
「まあ、味方が何処にいるのかは常に確認してたし」
「勇紀君ボール持ってる時間も少なかったよね?相手の子もマークしようと近付いたらすぐにパス出してたし」
「チームの皆が上手く相手のマークから抜けてくれたからな」
「それに「ちょっとすずか!!」…って、アリサちゃん?」
すずかの言葉を金髪の少女が遮る。
「そんな事は後にして今は聞かなきゃいけない事があるでしょ!?」
「あっ…そうだったね」
すずかは俺の傍にいるシュテル達をチラリと見て、俺に聞いてくる。
「えっとね勇紀君…。そっちの子達の事なんだけど…」
「ん?ああ、シュテル達の事か?」
「う、うん」
「そうだな。別に教えてもいいんだけど…」
「けど?」
「昼メシ食ってからでいいか?元々試合が終わったらどっかで食う予定だったんだ」
俺がそう言うと腹からグウ~と音が鳴る。
「え?あ、うん。私は別に良いよ。皆もそれでいいかな?」
すずかが振り返り原作組に聞く。彼女達は首を縦に振り頷く。
「決定だな。何処で食おうか…」
俺がそう言って考えようとすると
「あ、あのっ!」
一人の女の子が声を掛けてきた。栗色の髪をツインテールにし、シュテルと瓜二つな少女…
高町なのはだ。
「なら私のお父さんとお母さんが経営している喫茶店に来ませんか?」
「喫茶店?」
一応らないフリをするが喫茶店というと翠屋の事だな。
「はい。そこだとお昼ご飯も食べれますし、人に聞かせられない様な事もお話できますから」
人に聞かせられない…か。多分魔法の事だな。
「あれ?なのはちゃん、今日はお店お休みじゃなかったの?」
「うん。お店の模様替えで今日一日は臨時休業してるの。だからお客さんは今日はいないよ」
すずかの質問になのはちゃんが答える。しかし…
「というか店が休みなら何も食べれないんじゃないのか?」
「…………あっ」
いや、『あっ』って…
「ちょ、ちょっとお母さんに聞いてみます!」
そう言って電話するなのはちゃん。しばらく会話が続いた後
「えっと…お母さんは来てくれても大丈夫って言ってました。後、何か食べれる物も作ってくれるって」
「う~ん。何だか悪いな。昼メシぐらいは他の所で食っても良いんだけど」
「お母さんは気にしないと思うから別に良いですよ」
「そう?……じゃあお言葉に甘えようかな。シュテル達もそれでいいか?」
俺はシュテル達にも聞くが四人共頷いてくれた。
「じゃあ案内しますね」
そう言って歩き出すなのはちゃんの後を俺達は追いかけた………。
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神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。