No.437439

ポケモンになってしまった俺物語 8

ネメシスさん

8話です。
やっと旅のスタート……かな?

2012-06-15 07:56:56 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:6955   閲覧ユーザー数:6868

 

 

 

『くそっ! くらえ、“電気ショック”!』

 

 

「オギュァアァァアァァ!!!?」

 

 

俺は襲ってくるオニスズメに対し“電気ショック”を撃ち迎撃する。

以前の強化フラグでしっかりと強化していた俺の“電気ショック”は、そこらでよく見かける野生のオニスズメくらいならば敵ではない……一匹ずつならばな。

 

 

『あぁ、くっそ! なんでこんなにオニスズメの大群が襲ってくるんだよ!!?』

 

 

「そ、そんなのわからないよ!? と、とにかく早く逃げないと!」

 

 

俺とイエローは一番道路をダッシュで南下していた。

そもそもなぜ俺たちが今こうしているかというと、あれからさらに2か月が過ぎ、とうとうイエローがポケモントレーナーとして旅立つことを認められる10歳の誕生日を迎えたのだ。

そのためポケモントレーナー許可証がはがきで届き、初めてのポケモンとトレーナーの身分証明ともなるポケモン図鑑を受け取るため、マサラタウンにいるオーキド博士の研究所を訪ねることになったのだ。

そしてトキワシティを出発して半日が経という時、いきなりオニスズメの大群が殺気立って俺たちに襲いかかってきた。

 

 

(てか、俺たち本当に何もしてないだろ! なんだあの殺気は、尋常じゃなかったぞ!?)

 

 

訳の分からないまま襲いかかられて、訳の分からないまま俺たちは慌てて逃げ出した。

確かに俺は以前のパワーアップで電気の総量、出力ともに大幅にパワーアップしている。

若干苦手としていた電気制御もこの数ヶ月の間みっちりと訓練をこなしてきたためにそんじょそこらのピカチュウなんぞ目じゃないくらい上達もした。

以前の俺ならまだしも、今現在の俺ならばオニスズメ相手に早々遅れをとることはないだろう。

……まぁ、それも相手が1匹2匹という少数ならばという話だが。

そもそもオニスズメは群れで行動をする習性があるとはいっても、一つの群れで多くても大体5~6匹くらいだ。

だというのに、今俺たちを襲っているオニスズメの数は、軽く見積もっても30は超えている。

しかもその全員が、殺気立たせて「絶対に逃がすものか!」という意思をありありと感じさせて襲ってくる。

あそこまでの殺気を放つとなると、ほんと俺たちの方が何かしたのではないかと思ってしまうが、はっきり言って俺たちは本当に何もしていない。

となると、誰かほかのトレーナーに嫌な思いでもさせられたのかもしれないが、今までオニスズメの大群に襲われたというトレーナーの情報はなかった。

そういう情報は襲われたトレーナーが少なかったとしても多少なりとも、それこそ噂話程度だろうとも広まっていくはずであるのに、この数か月間トキワシティで一度も耳にしたことがない。

つまり、奴らは不特定多数のトレーナーを狙っているのではなく、ある特徴を持つトレーナーを限定してあそこまで執拗に襲っているという可能性が高いわけだが、そうなると俺たちがその何かしらのバカをやらかしたトレーナーと、何らかの共通点があるということになる。

一体俺たちとそのバカにどんな共通点があるのだろうか。

……そう考えたとき、俺はあることを思い出した。

 

 

(も、もしかして!?)

 

 

俺はバッと顔だけを振り返ってオニスズメを見てみると、その怒りの表情を向けているのはトレーナーであるイエローにもあるのだが、その大半は俺に向けられているように見える。

つまり、奴らの限定している特徴は俺、というかピカチュウを所持しているトレーナー。

しかも、ボールに入れているのでは判別つかないから恐らくボールの外に出して行動させているトレーナーを限定しているのではないだろうか。

そう予想するとおのずとあの怒り狂ったオニスズメ達が誰に対して怒っていたのか思いつくことができた。

 

 

『……な、なに面倒くせぇこと押し付けてくれてんだ、あのバカ主人公はぁぁぁぁあ!!!?』

 

 

「ふぇ!? な、なに!? どうしたの!?」

 

 

いきなり叫びだした俺にビクッとして見つめてくるイエロー。

それに俺はなんでもないと言って言い訳をして、走りながらも自分の心を落ち着かせる。

 

 

(お、落ち着け、今はそんなことでどうこう言ってる場合じゃねぇ。ほんと面倒くせぇけど、今はこの状況を乗り越えねぇと!)

 

 

『ち、ちっくしょぉ! やってやるわぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 

 

「だ、だからどうしたっていうの!?」

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

その後、執拗に続けてくるオニスズメに対して“電気ショック”と時々“十万ボルト”、そんでもって広範囲にわたる効果を期待できる“電磁波”をぶつけるといったことを繰り返し、やっとのことでオニスズメ達を追い返すことに成功した。

今回何とか逃げ切れたのは、当初この世界に来た時にトキワの森で野生のポケモンたちに襲われた時に行っていた“逃げながらの牽制”で慣れていたことが功を成したといっても過言ではないだろう……嬉しいような嬉しくないような微妙な気持ちだ。

オニスズメ達を追い払うまでの間、ずっと走っていたイエローの体力はきっと赤状態、かくいう俺も体力面ではまだ余裕はあるものの休む暇もなく電撃を放っていたため、すでに電気残量は残りわずか。

しかも今回は俺だけじゃなくイエローもいて、イエローになるべく攻撃がいかないように気を配りながらの逃走劇だったということで肉体的疲労以上に精神的疲労の方が勝っていた。

もうこのまま眠ってしまえたらどれだけいいだろうか、そう考えてしまう。

しかし、このままここで野宿をしてしまえば、またいつオニスズメ達に襲いかかられるかわかったものではない。

そう考えるとこんなところでおちおち休んではいられず、早々にマサラタウンに向かうことを余儀なくされた。

……幸い、かどうかは疑問に残るが必死に走っていたということもあり、歩いていたらあと1日はかかってしまうだろうという距離があったに、マサラタウンまでの道のりをかなり短縮することができた。

このままいけばあと数時間ほどで着くことができるだろう。

そのため、俺たちは悲鳴を上げる体に鞭をうちながらも、マサラタウンへの道を歩き続けた。

 

 

「……や、やっと……ついた、ねぇ」

 

 

『そ、そう……だな』

 

 

結局俺たちがマサラタウンについたのはオニスズメ撃退から6時間後。

きれいな夕焼け空から漆黒が支配する夜へと変わる境目。

 

 

「と、とにかく、まずはオーキド博士のところに行こうか?」

 

 

『そう、だな。マサラタウンには泊まるところほとんどないし、こんな時間じゃどこも空いてないだろうから、できれば博士のところに泊まらせてもらえたらいいんだけど』

 

 

恐らくあの人ならば泊まらせてくれるだろうと思いながら、俺たちは研究所への道を行く。

知識でしかないが、基本的にこの世界の人たちというのはなぜかとても良心的だ(悪の組織に属している人ら以外はだが)。

まぁ、ポケットモンスター自体、元々子供向けの作品であることから、ある程度良心的な設定だったのだろうけど……と、考えて止めた。

この世界は設定なんてものは存在しない、現実なのだ。

作品の事を考えながらこの世界の人たちに接するのは流石に失礼すぎるし、そんな考えでいたらいつか足元をすくわれかねない。

そして、しばらく歩いているうちにオーキド研究所と看板が立ててある大きな建物の前に辿りつく。

さっそくイエローが扉の前のインターホンを押すと、中から昔俺が人間だったころに聞いたことのあるような男性の声(まぁオーキド博士の声なのだろうが)が聞こえてきた。

 

 

「……ほいほい、なんじゃね?」

 

 

そこに出てきたのは、人のよさそうな白衣に身を包んだ老人。

 

 

(……この人が、オーキド博士か)

 

 

「えっと、私はイエロー・デ・トキワグローブと言います。トレーナーになるためにここに来ました。えぇと……あ、あった……はい」

 

 

イエローはカバンの中から許可証たるはがきを取り出すとそれをオーキド博士に手渡した。

 

 

「……ふむふむ、確かに。あいわかった……しかし、今日はもう遅い。見るに、マサラに着いて間もないところじゃろ? この時間帯じゃし、もう宿は空いていないだろうからのぅ。……うむ、今日は泊まっていきなさい、要件は明日済ませるとしよう」

 

 

「え、いいんですか!?」

 

 

「うむ、もちろんじゃ。ささ、中に入りなさい。今日は疲れたじゃろ? ちょうど夕飯の時間じゃし、一緒に食べようかのぅ」

 

 

「……え、えっと……何から何まで、すみません」

 

 

そう促され、俺とイエローは研究所の中に入って行く。

 

 

「なに、かまわんよ。 ……む、そのピカチュウは?」

 

 

どやら、ようやく俺の存在に気付いたようでオーキド博士が視線を向けてくる。

 

 

「あ、この子は私のパートナーです!」

 

 

「はて、パートナーとな? しかし……ふむ、ボールに入れてないようじゃが?」

 

 

「はい。この子、ボールに入るのが嫌いで……」

 

 

「ふむ、ボールに入るのが嫌いとな。これまた珍しい……事もないのかのぅ?」

 

 

どうやら、オーキド博士はサトシのピカチュウの事を思い出しているようだ。

あのピカチュウもボールに入るのが嫌でなんやかんやと主であるサトシと揉めた後、そのまま一緒に旅に出たのだ。

そのことを考えると、俺の事も珍しくはあるが有り得ないということではないのだろう。

まぁ、あのピカチュウと俺の違いは捕獲されているか、されていないかくらいなんだけどな。

……そういやぁ、捕獲されていないポケモンでも一緒に旅をしていたら、トレーナーの手持ちということになるんだろうか?

 

 

「あ、でも、この子は別に捕獲したわけでもなくて……。でも私の友達で一緒に旅をすることになったんですけど、この場合私の手持ちって認められるんでしょうか?」

 

 

あ、イエローが俺の聞きたかったことを聞いてくれた。

 

 

「……ふむ、一般的にはボールに入れられているポケモンを手持ちと言っておるが、実はそれは少々違っていてのぉ。

ボールはあくまでもポケモンを収納しておくだけの入れ物にすぎん。

行動するたびに手持ちのポケモンが出歩いていたら、他の人の邪魔になるじゃろ?

実際に大きさが数メートルといった大きなポケモンや、体重が重くて歩くたびに多少なりとも地響きをさせてしまうようなポケモンもおるわけじゃし。

そのために、開発されたのがポケモンを収納することができるこのモンスターボールなのじゃ。

まぁ、ボールの機能に収納されたポケモンをそのトレーナーのポケモンと認識する機能がついているのは確かじゃが、捕獲していないから手持ちではないということにはならんよ。

なにせ、君たちは友達で、この先ともに旅をすることに決めたのじゃろ?

ならば君たちはすでに立派なパートナーであり、仲間であるといえるじゃろう。

つまり、そのピカチュウは君の手持ちポケモンに間違いない」

 

 

……ふむ、なるほどねぇ。

ボールはあくまでもポケモンを収納しておくだけの入れ物に過ぎない、か。

そういえばロケット団のニャースもそもそもムサシの手持ちでもないというのにいろいろなコンテストに出場したこともあったな。

イエロー自身、あまりバトルは好きじゃないからジム戦などはやらない可能性が大いにあるが、何らかのコンテストに出場しないとも限らない。

……ま、まぁ、いざとなったらイエローにならば捕獲されるのもやぶさかじゃないとだけは言っておこう……誰にだよ?

まぁ、とりあえずイエローたち人間側にも色々と積もる話はあるだろうが、取り合えずそれは後日に持ち越ししていただくことになった。

流石に疲労がピーク、はっきり言って夕飯なんて食べずにそのままベッドにダイブしたいくらいだったが、せっかく用意してくれるというのに食べないのは失礼だろう。

 

 

……夕飯後、お風呂を借りて汗を落とした俺たちはやっとベッドに入ることができた。

やはり疲労がたまっていたのだろう、布団をかぶると強烈な睡魔に襲われた俺たちはその睡魔に抵抗することもなく、そのまま眠りについた。

 

 

 

 


 
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