真・恋姫無双 ifストーリー
蜀√ 桜咲く時季に 第43話
(一刻=1時間)、(一里=4km)
【蒲公英の遠乗り大作戦】
《蒲公英視点》
「ふんふふ~ん♪今日は楽しい遠乗りの日~♪」
たんぽぽは鼻歌を歌いながら準備をしていた。
「もう少ししたら雪華も来るし、それに……にひひ♪ご主人様も」
話は少しさかのぼる……
………………
…………
……
「ふえ?遠乗りですか?」
「うん!」
「嬉しいですけど、でも、みんな忙しいのに私たちだけ良いのでしょうか?」
雪華は嬉しいそうだったけど、やっぱり周りが気になっているのか心配そうに聞いてきた。
「大丈夫!ちゃんと愛紗から許可も貰ってるし!それに毎日訓練じゃ、大変だろうからたまには息抜きしてきていいって言ってもらえたし」
「で、でも……」
それでも躊躇う雪華。ホント、まじめだな~。
「あ、それと、愛紗からこうも言われたよ。『雪華の事だから自分だけ休んでいて良いのかと言うだろう。だからこう言ってくれ、休むことも我らの仕事だと。いつでも万全に入れる為には、休息も必要だっとな』ってね」
「ふぇ……」
「みんな、雪華の事、良くわかってるね。まあ、そういうことだから楽しもうよ」
「そうですね。楽しまないと損ですよね」
観念したのか雪華は苦笑いを浮かべていた。
「うんうん!そういうこと!いっぱい楽しもうね!」
「はい♪」
「あっ、雪華って、料理出来る?」
「ふえ?はい、一応人並みには」
「それじゃ、雪華にはお弁当を作ってもらおうかな」
たんぽぽも料理は出来るけど馬の準備とかあるからね、今回は役割分担ってことで。
「わかりました。頑張って作りますね」
「うん!期待してるよ!あ、それと多めに作って来てね」
「ふえ?わかりました」
疑問に思いながらも雪華は了承してくれた。にひひ♪ここまでは作戦通り!雪華驚いてくれるといいな♪
私は雪華の驚く顔を想像して雪華に見えない様に笑った。
………………
…………
……
「さてっと!馬の準備はこれで良しっと!」
遠乗りの為に、黄鵬と麒麟をお姉様に言って借りている。自分の馬を使ってもいいんだけど、まあ、気分かな。
他にもう一頭、紫燕って馬が居るんだけど。今日はお姉様が騎馬の調練をするってことで借りることはできなかった。
まあ、それも見込んで今日を選んだんだけどね。
「あとは二人を待つだけだね」
「ぶるるるるっ」
「ん?どうかしたの、黄鵬」
黄鵬は私の服の端を咥え、くいっくいっと引っ張ってきた。
「あ、雪華が来たのを教えてくれたんだね。ありがとう、黄鵬」
「ぶるるるるっ」
撫でてあげると、黄鵬は気持ちよさそうに摺り寄せてきた。
「お待たせしました蒲公英さん」
「ううん、全然待ってないよ。お弁当ちゃんと作って来てくれた?」
「はい、言われた通り、多めに作ってきました。けど、二人で、こんなに食べられるのですか?」
雪華は手に持っていた荷物を持ち上げて見せてくれた。うんうん!これだけあればご主人様の分も足りるよね。
「無問題!きっと全部無くなっちゃうと思うよ。それじゃ、お弁当も積んじゃうね。貸して」
「あ、はい。重いですから気を付けてくださいね」
「了解~♪」
雪華からお弁当の包みを受け取る。
「それじゃ、黄鵬。これも宜しくね」
「ひひぃぃいんっ!」
黄鵬は任せとけと言わんばかりに、鳴いた。
「それじゃ、行きましょうか、蒲公英さん」
「えっ!?あ、も、もうちょっと待ってね」
「ふえ?構いませんけど……何かあるんですか?」
「え、え~っとね……ほ、ほら!もう一度荷物の確認をしようかなって思って!忘れ物があったら大変だからね!」
たんぽぽは適当な理由を見つけて雪華に伝えた。
「そうですね。それじゃ、私も手伝います」
「ゆ、雪華はいいよ!お弁当作りで大変だったと思うし!ここは私に任せてここで待ってて!」
「は、はい。分かりました」
雪華はたんぽぽの勢いに押されて、驚きながらも頷いてくれた。
もー!ご主人様、早く来てよぉ!
心の中で早く来てと叫ぶ。
「……っ!」
荷物の確認する振りをしながらご主人様が来るであろう方向をチラチラと見ていると、手を振ってこっちに来る人影があった。
来たっ!ご主人様が来た!
たんぽぽは心の中でご主人様が来たことを喜んだ。
「やぁ、蒲公英、雪華」
ある程度近づいてきたご主人様は、たんぽぽと雪華に挨拶してきてくれた。
「やほ~、ご主人様♪」
「ふえ!?ご、ご主人様!」
にしし♪作戦通り!
突然後ろから声を掛けられて、予想通りの驚きっぷりをした雪華にたんぽぽは心の中で笑った
「ふえ?ふえ?な、なんでここにご主人様が?あっ、私たちを見送りに来たのですか?」
「え?」
「ふえ?」
話がかみ合わず二人して首を傾げていた。
「ち、違うんですか?」
「ああ、俺は蒲公英に遠乗りを誘われたんだけど」
「……ふえ、ふえぇぇえええっ!?た、蒲公英さん!どういうことですか!?」
大きな声を上げて驚き、雪華はたんぽぽに説明を求めてきた。
「あははははっ!大成功!」
たんぽぽは大成功したことに大笑いしてご主人様たちに人差し指と中指を立ててみせた。
「実はね、雪華を驚かせようと思って秘密にしてたんだよ。もちろん、ご主人様にも口止めしてもらってね!そうしたら、雪華はたんぽぽの予想通りの驚き方をしてくれたから、これは大成功と言わざるを得ないね」
「ふ、ふぇぇえ……酷いですよ、蒲公英さん」
「ごめんごめん。でもさ……」
「?」
たんぽぽはご主人様に聞こえない様に雪華に耳打ちをした。
「ご主人様と一緒で嬉しいでしょ?」
「ふぇ~~~~……」
雪華は顔を真っ赤にして照れちゃった。もう、可愛いな~っ!
「そ、それじゃ、お弁当を多く作ってってお願いしたのは」
「そっ!ご主人様の分!」
たんぽぽはにかっと笑い頷いた。
「よ~っし!それじゃ、出発しようか!」
たんぽぽは意気揚々と黄鵬に跨った。
「あ、あの蒲公英さん」
「ん?どうしたの?」
「お馬さんが一頭足りないんですけど」
「これでいいんだよ」
「ふえ?」
「雪華はご主人様と一緒に乗ってね♪」
「……ふええぇぇええええっ!?」
本日二度目の雪華の大声。これも予想通りの反応♪
「で、でも、二人だなんてお馬さんも大変じゃ……」
「多分、黄鵬に積んだ荷物とたんぽぽとで、ご主人様と雪華くらいあると思うよ」
「ふぇ……っ!も、もしかして、蒲公英さんの馬だけに荷物が積んであったのって」
流石は軍使見習い、見事な洞察力!でも、重そうに見えるこの荷物だけど、実は殆どが空なんだよね~♪
「にしし♪ご想像にお任せするよ~♪」
でも、たんぽぽは含みを持たせて雪華に笑うだけだった。
さ~って!この後もまだ色々と考えてあるけど、この調子なら全部成功しそうだね!にひひ、どうなることやら♪
「ふぇ……なんだか、蒲公英さんの笑顔が怖いです。まだ、何か企んでますか?」
「え!?な、なにも企んでなんていないよ!いやだな~!」
意外と鋭いな……でも、雪華は素直だから直ぐに騙されそうだけど。
「それともたんぽぽが雪華を騙そうとしているように見える?」
「そうは見えませんけど……わかりました、信じます」
本当に信じちゃったよ、う~ん。ちょっと素直過ぎな気がするよ。悪い人に騙されて着いて行っちゃう典型だよ。
「?どうかしましたか?」
「え?ううん。なんでもないよ。雪華を守らないとって思ってただけ」
「ふえ?これでも蒲公英さんと同じくらい強いってご主人様に言われてますけど」
「あ~、そう言う話じゃなくてね……ま、まあ気にしないで!」
「は、はぁ~」
雪華はたんぽぽの曖昧な回答に気の抜けた返事が返って来た。
「お~い、二人でいつまで話してるんだ?」
「あ、今行くよ、ご主人様♪ほら、雪華、ご主人様が待ってるよ」
「ふえ!?ほ、本当にご主人様と乗るんですか!?」
「そだよ♪」
「ふぇ~~~、た蒲公英さん、交代しませんか?」
「だ~め。それに黄鵬は少し気難しいから雪華じゃ扱えないよ?」
「うぅ~、絶対何か企んでましたね、蒲公英さん。はぁ……」
雪華は頬をぷく~っと膨らませてたんぽぽを睨んできたけど諦めたのか溜息を吐いていた。
う~む。雪華の行動一つ一つが可愛過ぎる……これじゃ、もっと可愛い仕草を見たくて、からかいたくなっちゃうよ。でも、我慢我慢それはこの後のお楽しみだからね。
「お待たせご主人様♪」
たんぽぽは、からかいたくなる衝動を何とか抑えて、ご主人様の下へと戻った。
「何を話してたんだ?」
「それは女の子の秘密だよ、ご主人様。ね、雪華♪」
「ふえ!?あ、あの、その……(こくん)」
たんぽぽの後を着いて来た雪華に話を振ると頬を赤くして慌てながら頷いていた。
「まあ、そういうことなら。それで遠乗りって事だけ、ここには馬が二頭しか居ないけど、一頭足りなくないか?」
「これでいいんだよ」
「え?どういうことだ?」
「実は、もう一頭、紫燕って言う馬がいるんだけど、その子、お姉様の馬なんだよね」
「まあ、黄鵬も麒麟もお姉様の馬なんだけど、紫燕だけ演習でお姉様が乗って行ってるの、それなのにこの子達だけ走れないのは可哀想だと思って、お姉様に言って借りて来たの」
「そうだったのか。そう言うことならわかったよ」
ご主人様もたんぽぽの説明に納得してくれた。
雪華もそうだけど、ご主人様も人を信じやすいよね。疑うことってしないのかな?まあ、今日に限っては好都合なんだけどね♪
「それじゃ、あっちにいる黄鵬はたんぽぽが乗るから、この子はご主人様と雪華の二人で乗ってね」
近くに居た麒麟の首を撫でながら説明する。
「了解、君が麒麟だね。よろしくな」
「ぶるるるっ」
麒麟はご主人様が撫でながら挨拶すると擦り寄っていった。
「へ~。麒麟が初めて会った人にこんなに懐いてるのはじめて見るよ」
「そうなのか?結構人懐っこいのかと思ったけど」
「麒麟は基本的に人見知りしないからね。でも、ここまで懐いてるのはご主人様が初めてだよ」
これも天の御遣いの力なのかな?
「よしよ~し。毛並が艶々だな」
「ぶるるるっ」
ご主人様を見ると麒麟の首を撫でていた。麒麟も気持ちよさそうにしてご主人様にすり寄ってるし。
天の御遣いの力ってよりも、ご主人様の人の良さって感じかな。馬は人の感情に敏感だからね。
「それで蒲公英さん。どこまで行くんですか」
「考えてないよ」
「ふえ?だ、だって遠乗りですよね?目的地があるんじゃ……」
「ぜ~んぜん!風の赴くまま、気の向くまま。馬を走らせるだけだよ」
「ふえ!?そ、そんなのでいいのですか!?」
「いいのいいの!大丈夫だよ。帰り道が分からなくなるわけじゃないんだから」
「ふぇ~。ご、ご主人様~」
雪華は困り果てながらご主人様に助けを求めた。
「まあ、たまには良いんじゃないかな。雪華も折角の休日だ。今日はのんびり羽を伸ばそう」
「ふぇ。は、はい……♪」
微笑みながらご主人様に頭を撫でられて頷く雪華。
「よ~っし!それじゃ、しゅっぱ~~~つ!」
「ひひーーーーーんっ!!」
たんぽぽは早速、黄鵬に跨り馬を走らせた。
「お、おい、蒲公英!俺たちまだ乗ってないぞ!」
「ま、待ってください。蒲公英さ~~~んっ!」
「あはははっ!早く乗って来ないと置いてっちゃうよ~~っ!」
たんぽぽは後ろで慌てる二人に大声で言った。
《雪華視点》
「ふぇ、行っちゃいました」
蒲公英さんは馬を走らせて先に行ってしまいました。
「だな……俺たちも早く追いかけようか」
「はい」
「それじゃ、乗らせてもらうよ、麒麟……よっと」
「ぶるるっ」
ご主人様は麒麟を撫でて馬に跨りました。
「さぁ、雪華。掴まって」
ご主人様は片手で手綱を握り、空いた片手を私に向けて下してきました。
「は、はい……」
「よっと!」
「ひゃぅ!」
ご主人様の手を握るとご主人様は片手で私を持ち上げて馬に乗せてくれました。
一瞬驚いて、声を出しちゃいましたけど。
持ち上げられた私はご主人様の膝に座るような感じで、横向きに座らせられました。
ふぇ~、ご、ご主人様のお顔がこんなに近くに……
横を見れば、目の前にご主人様のお顔があり、ちょっと恥ずかしくなっちゃいました。
「よし、それじゃしっかりと掴まててね、雪華」
「は、はい」
私はご主人様に言われた通り、ご主人様の腰に手をまわして、ぎゅっと自分の手を握り締めた。
ふぇ~、ご、ご主人様のこんなに近くに居るのは久しぶりです。なんだかどきどきします。
でも、今までと違うのは『ご主人様から』ではなく『私から』抱き着いていることだ。
こ、こんな大胆なことをしてもいいのでしょうか?
だけど、抱き着いていないと振り落とされてしまうかもしれないですし……ふぇ~
「雪華」
「ふえ!な、なんでしょうか?」
急に呼びかけられて我に返る。
「もう少し早く走らないと蒲公英に追い付けなさそうなんだ。だからしっかりと掴まっててくれよ」
「は、はい!わかりました!」
(ぎゅ……)
私はさらにご主人様に力強く抱きつきました。
わわ、ご、ご主人様の胸の鼓動が聞こえる……
(ドクンッ……ドクンッ……)
ぴったりと抱き着いているからか私の耳にご主人様の心臓の音が聞こえてきた。
「……」
なんでだろう、さっきまで恥ずかしかったのにご主人様の鼓動の音を聞いてたら落ち着いてきた、不思議……
「……ご主人様」
「ん?どうした、雪華」
「風が気持ち良いですね」
「そうだね」
私の気持ちが落ち着いて来てからなのか、周囲の状況を見回す余裕ができてきました。
でもきっと、ご主人様の顔を見るとまた胸がドキドキしちゃうと思うから抱き着いたまま上を見ない様にしていました。
「綺麗な景色ですね」
「ああ、大陸で戦いが起きているなんて嘘みたいだな」
「はい」
周りの景色はとても穏やかでした。本当に大陸で戦が起きているとは思えません。
「ふぇっ!」
「雪華、どうした?」
「あ、ご、ごめんなさい、景色に見とれていて手の力が緩くなっちゃいました」
「危ないな」
「ごめんなさい、気を付けま……す?あ、あのご主人様?」
ご主人様は片手を手綱から離し、私の腰の辺りに回してきました。
「これなら、大丈夫だろ?好きなだけ景色を見ていて良いよ」
「ふぇ……あ、ありがとうございます、ご主人様」
抱き寄せるご主人様、私は先ほど以上にご主人様にくっついてしまっていた。
ふぇ~~、こ、これは落ち着いて景色を見ている余裕が無いです。
先ほどはご主人様の心臓の鼓動を聞いて落ち着いていたけど、今は腰に回してきた手に鼓動を聞く余裕が無くなっていました。
「ほら、雪華。大分追いついてきたぞ」
落ち着かないと……ご主人様に変な子だと思われちゃいます。落ち着いて……落ち着いて、私……
心の中で何度も自分に言い聞かせる。
「……」
「雪華?」
(ぎゅっ)
「ふえっ!な、なんでしょうか、ご主人様!」
話しかけられていたことに気づかなかった私は抱き寄せられて我に返る。
「蒲公英に大分追いついて来たって言ったんだけど、どうかしたのか?」
心配そうに私を見てくるご主人様。
ふえ~~~~っ!ま、また近くなっちゃいました。こ、これ以上は無理です~~。
「い、いえ!何でもないです。け、景色に見惚れていただけです」
「そっか、それじゃ悪いことをしちゃったかな?」
「い、いえ!教えて貰いありがとうございます!」
謝ってくるご主人様に私はお礼を言った。
ごめんなさい、ご主人様。雪華は嘘を吐きました。本当は景色に見惚れてなんていませんでした。
思わず、心の中でご主人様に謝る。
きっと声に出して謝ると、なんでぼーっとしていたのかと聞かれると思ったから。そうなったら恥ずかしくて本当の事を言えないですから。
そして、蒲公英さんに追い付くまでの間、ご主人様に抱き寄せられたままの私は景色を見る余裕がありませんでした。
はぁ、勿体無いことしちゃったかな……折角、ご主人様と二人っきりだったのに……
《蒲公英視点》
たんぽぽは追いかけてくる二人をチラリと後ろを振り向き確認する。
「うんうん、いい感じだね♪」
雪華は振り落とされないようにご主人様にしっかりと抱きついていた。
ご主人様も雪華が振り落とされないように腰に手を回して抱き寄せていた。
「それにしても片手であそこまで馬を乗りこなせるなんて、ご主人様って凄いな~」
ご主人様の馬さばきに驚く。
「なんだか悔しいな……これで武あるんだから、卑怯だよね」
一度だけだけど、ご主人様と恋が鍛錬しているのを見たことがあったけど、あれは次元を超えていた。
あれで、お互い本気じゃないって言うんだから、化け物だよね。
だって、早すぎて剣先が見えないんだよ!?
ご主人様の得物なら細くて軽いから分からないでもないけど、恋の得物なんてたんぽぽの銀閃よりも何倍も重たいんだよ。
それに、ご主人様はあんな細い得物で恋の攻撃を受け止めてるのがまた凄い。普通、折れちゃうよ。
でも、一番凄いと思うのは、その強さをひけらかさないってことかな。
たんぽぽだったら確実に自慢しちゃってるよ。
「でも、馬の扱いは負けるわけには行かないんだから。もしこれで負けたら菫おば様やお姉様になんて言われるか……」
『あらあら、馬一族であるあなたが、ご主人様に負けてしまうとはいけませんね。これは少し鍛え直したほうが良いでしょうか』
『かーっ!鍛錬をサボってる証拠だ!これからはみっちりとしごいてやるからな、覚悟しておけよ蒲公英!』
「~~~~っ!!ま、負けられないよ!」
笑顔で迫ってくる菫おば様に、指を鳴らし近づいてくるお姉様を想像したら身震いが出てきた。
「黄鵬っ!ご主人様に負けないで!」
「ひひーーんっ!」
たんぽぽは黄鵬のお腹を蹴って速度を更に上げた。
………………
…………
……
「さてと……確か、この近くだったよね……」
しばらく走り続け、日も大分昇ってきた。そろそろ目的の場所に近づいてると思うんだけど……
走りながら周りを見回す。周囲に広がる荒野。遮るものが無く、遠くまでよく見えた。
「あっ!あそこっぽいな」
遠くてよく分からないけど、荒野の中に一箇所だけ木々が生い茂っている場所を発見した。
「位置からして、あそこで間違いないかな?黄鵬、あそこに行くよ」
「ひひーんっ!」
黄鵬の手綱を操作して方向転換をする。
「……そろそろ、速度を落としてご主人様たちと合流しないと」
後ろを見ると近づいて来ているとは言え、それなりに離れてる。
「出発した時より、距離が縮まっている気が……き、気のせいだよね?」
苦笑いを浮かべてたんぽぽはそれを否定した。否定しないといけないの!
「と、兎に角、ご主人様と合流、合流!」
気持ちを切り替えて、黄鵬の走る速度を駈歩くらいまで落とした。
「ん~!やっぱり、風を切って走るのは気持ちが良かったな~、黄鵬もそう思うよね?」
「ぶるるっ!」
「あはは、だよね!」
走りながら鳴く黄鵬にたんぽぽは笑いながら首を撫でた。
………………
…………
……
黄鵬を駈歩にしてすぐ、ご主人様たちはたんぽぽに追いついてきた。
「ふぅ、やっと追いついた」
「遅いよ、ご主人様~」
「ふぇ~、蒲公英さん行き成り走り出すなんて酷いです」
本当は追いつかれるんじゃないかとヒヤヒヤしてたけど、ご主人様たちには秘密。
「え~。ご主人様たちが遅いんだよ!ねぇ、黄鵬?」
「ぶるるるっ」
「ほら、黄鵬もそう言ってるよ」
「それじゃ、もう少し訓練しないとな。今度、翠にもで教えて貰うかな」
「ん~。ご主人様はもう十分上手いと思うよ?あとはどれだけ、馬に乗ってるかだけだと思うな」
「そうかな?それじゃ、政務の間に乗馬の稽古でもしようかな」
正直な感想を伝えると、ご主人様はやる気を見せていた。
「練習したら蒲公英さんにも勝てるかもしれませんね、ご主人様」
「ははっ、どうだろうな。生まれた時から馬と一緒の生活をしている蒲公英や翠、菫には一生掛かっても勝てないような気もするけどな」
「あたりまえだよ~!そう簡単には勝たせてあげないんだから」
そう言って見たものの……たんぽぽも真面目に鍛錬しないとな……本当にご主人様に追い抜かされそうだよ。
「ところで蒲公英さん」
「ん?なに?」
「ここが目的地なんですか?」
「ううん。ここは入り口、目的の場所はこの林の奥だよ」
「この奥に一体、何があるんですか?」
「それは行ってからのお楽しみだよ!それじゃ、行こっか!」
たんぽぽは雪華の質問には答えず、馬を進ませた。
《雪華視点》
「到着~」
馬を進ませること少し、どうやら目的の場所に着いたようです。
「ふえ~、綺麗ですね」
思わず声に出てしまうほど綺麗な場所だった。
そこは森の中にあり、小さな滝が流れる小川でした。
「やっぱり、のんびりするにはこういった場所が一番良いよね!」
蒲公英さんが言った様にここはとても静かでのんびりするには絶好の場所だと思いました。
「んーーーっ!空気も美味しいし、なかなか良い所じゃないか。蒲公英はここを知っていたのか?」
「全然知らなかったよ」
「それじゃ、どうしてここに川が流れているとわかったんですか?」
「んふふ~♪それはね、朱里と雛里がここいら一体の地図を見ている時にちょっと覗かせて貰ったんだ~。そうしたらここに川が流れてるのを見つけたってわけ。まあ実際、ここに来るまでこんなに綺麗な場所だったとは想像もしてなかったんだけどね」
「そうだったんですか」
「良くやったぞ、蒲公英」
「えへへ♪もっと褒めて褒めて~」
得意げに答える蒲公英さんにご主人様は褒めて頭を撫でていました。
いいな~。
そう言えばここ最近、ご主人様に頭を撫でて貰ってないな。
仕事が忙しいせいもあり、ご主人様とはあんまりご一緒出来なかったからなぁ。
私は思わず、じーっと撫でられている蒲公英さんの頭を凝視していました。
「……」
「ん?どうした、雪華?じっとこっちを見て」
「ふえ!?あ、えっと、な、何でもないです!」
「?」
「にひひ♪」
慌てふためく私を見てご主人様は首を傾げ、蒲公英さんはなぜか笑っていました。
ふえ~、凝視しちゃいました。恥ずかしい……
「よし!それじゃ、まずは、ここまで連れてきてもらった黄鵬と麒麟の体を洗ってあげよーっ!」
蒲公英さんは元気良く答えると、黄鵬に積まれていた荷物をほどき始めました。
「手伝うよ」
「ありがと、ご主人様♪」
「わ、私も手伝います!」
嬉しそうに答える蒲公英さんを見て、なぜか私も手伝うと言っていました。
「それじゃ、たんぽぽは黄鵬を洗うから、ご主人様と雪華は麒麟をお願いね」
「了解」
「わかりました」
そして、二手に分かれて麒麟たちを洗うことになりました。
「よし、おいで麒麟。怖くないぞ」
「ぶるるっ」
ご主人様は麒麟の手綱を引きながら川の中へと入って行きました。
「よし、それじゃ体を拭いてあげようか」
「はい」
私とご主人様は、ここまで連れてきてくれた麒麟の体を洗い始めた。
(ゴシゴシ)
「ぶるるっ……」
「気持ち良さそうだな、麒麟」
「ひひぃん」
「そっかそっか、気持ちが良いか!」
ご主人様は麒麟の体を洗いながら話しかけていました。多分、安心させるためだと思います。
こういう心配りを人以外にも出来るのは凄いことです。私も見習わないと……
「麒麟さん、どうですか?気持ちは良いですか?」
「ぶるるっ♪」
「わぷっ!えへへ、良かったです」
話しかけながら洗ってあげると、麒麟は頭を近づけ、摺り寄せてきてくれました。
「雪華に良く懐いているね、麒麟に気に入られたのかな?」
「そうだったら嬉しいです。でも、ご主人様の方がもっと懐いていると思いますよ?」
「そうかな?」
「はい。蒲公英さんも言っていたではありませんか。いつも以上に懐いていると」
「そう言えばそんなこと言ってたな」
「はい。きっとご主人様の事を気に入ったんですね」
「ははっ、なら麒麟は雪華の事も気に入ったってことだね。そうだろ、麒麟」
「ぶるるっ」
「わぷっ!」
麒麟は唸ると頭を私の頬に摺り寄せてきました。
「ほらね。馬は繊細な生き物だからね。人の感情を敏感に察知するんだよ」
ご主人様は麒麟の背中を擦りながら説明してくれました。
「だから、悪戯や、悪いことをしようとする、馬は自分を守ろうと反撃してくるんだよ」
「ふえ~、そうなんですか。ご主人様は物知りですね」
「ん?ん~、まあ、雪華よりは少し長く生きてるからね」
ご主人様はそう言いながら、私の頭を撫でてきました。
「まあ、それ以外にも、馬にもやっぱり個性があるからね。だから人の好き嫌いもあるんだよ」
「なるほど、勉強になります!」
「ぶるるっ!」
「ああ、ごめんごめん。さあ、雪華、麒麟の体を洗うのを再開しよう」
少し不機嫌そうに唸る麒麟にご主人様は謝りながら麒麟の体を洗うのを再開した。
「はい!ごめんね、麒麟さん。すぐに綺麗にしてあげますから」
麒麟に謝り、体を洗うのを再開した。
「ぶるるるっ♪」
体を洗い出してすぐ、麒麟は気持ち良さそうに唸り、長い尾をパタパタと振り始めました。
やっぱり、体が綺麗になると気持ちが良いもんね。
「……」
き、汚くない、よね?
思わず自分の体を見回してしまいました。
お風呂はとても貴重です。大量の水と大量の薪が無ければお風呂に入ることはできません。
だから、と言う訳ではありませんが、お風呂に入れる回数が多いほど、その国には財力があると言われてもいます。
「どうかしたか雪華?」
「ふえ!?な、なんでもないですよ!」
ご主人様に声を掛けられ思わず腕で自分の体を隠してしまいました。
「?ならいいけど。調子が悪くなったらすぐに言うんだぞ」
「は、はい」
ご主人様は気にした風も無く、私を心配してくるだけでした。
うぅ~、私が気にし過ぎなだけでしょうか?
《蒲公英視点》
よしよし、雪華はご主人様と麒麟の体を洗ってるね。
取り合えず、ここまでは計画通りだね!あとは上手い具合に二人っきりにすれば、作戦は大成功なんだけど……
「どうやって、抜け出そうかな……」
どう抜け出すかまでは考えてなかったんだよね。ここは状況によって大きく変わっちゃうから考えて無かったんだけど。
う~ん。どうしようかな……
「ぶるるっ!」
「わぷっ!ちょ、黄鵬。なにするの」
「ぶるるっ!」
黄鵬は体をたんぽぽに強引に摺り寄せてきた。
「わ、わかったから。ちゃんと洗ってあげるから!」
急かされて黄鵬の体洗いを再開する。
「もう……考えているところだったのに……はぁ」
とりあえず、黄鵬を満足させてから考えることにしよう。
たんぽぽは仕方なく、体洗いに専念する。
………………
…………
……
「もう疲れた~~~っ!いい加減、たんぽぽを開放してよぁ!」
「ぶるるっ!……ひひーーーんっ!」
「もーなんなのよぉ!」
あれから一刻は経ったと思う、けど黄鵬はまだたんぽぽを開放してくれなかった。
「何がそんなに不満なわけ?こうやって遠乗りにも来たし、体も洗ってあげてるのに!」
「ぶるるっ、ぶるるっ……」
黄鵬は首を何度も振り、何かを訴えてるようだった。
「首が痒いんじゃないか?」
「良くわかりますねご主人様」
たんぽぽが悩んでいると、後ろから話しかけられた。
「ご、ご主人様!?それに雪華まで!どうしたの?」
「え?麒麟の体洗い終わったから連れてきたんだけど」
「ぶるるっ♪」
ご主人様と雪華の後ろを見ると、満足したように麒麟が嬉しそうに鳴いていた。
「それよりもご主人様、今さっき何か言ってなかった?」
「ああ、首が痒いんじゃないかって言ったんだけど」
「でも、首回りも綺麗に洗ってあげたんだよ。それで痒くなるなんて変だよぉ」
「虫に刺されたとか」
「む、虫?」
「ああ、ちょっとごめんよ」
「う、うん」
ご主人様はそういうと、黄鵬の首回りを丁寧に調べ始めた。
「……これだ。蒲公英、ここを見てごらん」
「う、うん……あっ!」
ご主人様に指示された場所を良く見てみると、首に小さく腫れている部分があった。
「これのせいで機嫌が悪かったんだ……でも、動物に効く、虫刺されの薬なんて持ってきてないし……」
「それじゃ、俺が処置しよう。怪我を治すほど、難しくは無いからね」
「そ、そんなこと出来るの!?」
「そっか、蒲公英さんはまだ見たことなかったんですね」
「う、うん。菫おば様の病気を治したとは聞いてたけど、薬か何かかと思ってたから」
「ご主人様は凄いんですよ♪」
「そう褒められるとくすぐったいな……それじゃ、はじめるよ。黄鵬、大人しくしててくれよ」
ご主人様は、黄鵬を撫でながら話しかけると、虫に刺された部分に手をあてがった。
「あれって、氣功の一種なの?」
「そこまでは良くわかりませんが、なんでも宝玉の力を使って治療するらしいですよ」
「へ~」
へー、あれで菫おば様を治療してくれたんだ……
「これでよし。どうだ?痒みはなくなったか?」
「ぶるるっ」
「おお、そっか、そっか。それは良かったな」
黄鵬は鳴くと、ご主人様に擦り寄っていった。
「よし、それじゃあ次は……」
「次は?」
(ぐ~~~っ)
「お昼にしようか!」
「……」
「……」
ご主人様のお腹がなり、たんぽぽと雪華は二人して動きを止めてしまった。
「はぁ~。折角、ご主人様の事、少しは見直してたのに幻滅だよぉ」
「あはは、面目ない」
頭を掻きながら謝ってくるご主人様。でも、なんだかその仕草がとても憎めなかった。
「え、えと……わ、私もお腹すきましたし。お昼にしましょう!ね?蒲公英さんも!」
雪華はご主人様を庇うように自分もお腹が空いたと言って来た。
「え~、でもまだ……」
(くぅ~~~)
「……」
「……」
たんぽぽのお腹が鳴り、ご主人様と雪華は一斉にたんぽぽを見る。
な、何でこんな時にお腹が鳴くのよ、たんぽぽのお腹!
「ま、まあ、たんぽぽもお腹空いて来たし、丁度いいか」
「そうですよ!それに麒麟さん達にもお昼ご飯をあげないと」
雪華はさっきのご主人様のようにたんぽぽも庇ってくれた。
あぁ~、こんないい子、たんぽぽの周りには居なかったよ!
改めて、雪華と友達になってよかったと実感した瞬間だった。
《一刀視点》
「おっ!旨そうだな!」
日も昇り、お腹が空いて来たので俺たちは昼食にすることにした。
「すごーい!これ雪華が一人で作ったの!?」
並べられる料理の数々に俺と蒲公英は驚きの声を上げた。
「えへへ♪、沢山作ったのでどんどん食べてくださいね」
「ねえねえ、ご主人様。早く食べようよ。たんぽぽ、もうお腹ペコペコだよ!」
「そうだな。ん~……でもどれから食べたらいいか迷うな~」
並べられた弁当を見回して一人悩む。
「だったら雪華のお勧めは?」
悩んでいると、横から蒲公英が雪華に話しかけていた。
「ふえ?私の、お勧めですか?」
「そうそう!雪華の自信のある料理でも良いし、好きな料理でも良いし、それをご主人様に食べて貰うの!」
「それはいいな。雪華、選んでくれるかな?」
「ふえ、えっと……えっと……」
雪華は並べられた自分の料理を見回してどれにしようか悩んでいた。
「これなんてどうでしょうか」
雪華は料理の中から一つ、手に取った。
「これは、チマキ?」
手渡してきたのは俺の世界でもお馴染みの笹にくるまれたチマキだった。
「はい。私が自信をもってご主人様にお出しできるのはこれくらいしかありませんから」
「そんなことないよ。どれもみんな、すごく美味しそうじゃないか」
「ふえ……あ、ありがとうございます、ご主人様」
「もう!早く食べてよ、ご主人様!たんぽぽ、待ってるんだからね」
「ああ、ごめんごめん、それじゃ、頂きます……はむ」
「ど、どうですか?」
「どうどう?」
「……もぐもぐ……ごくん」
「……」
「……」
雪華は不安そうに蒲公英はそわそわしながら俺が感想を言うのを待っていた。
「うん。とても美味しいよ」
「ふ、ふえ~~~~~、よ、良かったです」
雪華は俺の感想を聞くと安心したのか乗り出していた体の力が抜けぺたんと座り込んだ。
「そんなに緊張しなくてもいいのに。俺は美食家じゃないぞ」
「緊張しますよ。せっかくご主人様に頂いてもらうのですから」
「本当に美味しいよ。特に、筍のシャキシャキとした食感が凄くいいね。食べごたえがあるよ」
「ふぇ……ありがとうございます」
雪華は照れたのか頬を赤くして俯いてしまった。
「よかったね、雪華!それじゃ、たんぽぽも食べようかな。えっと、これとこれと……あとこれ!」
蒲公英は待ってましたっとばかりに次々に料理を手に取っていった。
「おいおい。俺の分も残しておいてくれよ?」
「へへ~ん。早い者勝ちだよ、ご主人様」
「あはは……まだ沢山あるのでゆっくり食べてくださいね」
蒲公英を見て苦笑いを浮かべる雪華。でも、どこか楽しそうにも見えた。
やっぱり、歳が近いと打ち解けるのも早いな。
確かに雪華は愛紗たちとも歳はそんなに離れてはいない。だけど雪華は少し距離を置いていたような気がする。
多分それは、尊敬する先輩として見ていたからだろう。
「それにしても美味しいな。雪華にこんな才能があるとは思わなかったよ」
「だよね!たんぽぽも料理教えて貰おうかな」
「良いんじゃないか?最初は簡単なのから教えて貰えば」
「ふえ、私、教えるほど上手くは無いです」
「俺はそんなこと無いと思うよ。俺の世界の料理とは違うけど、なんだか『家庭の味』って気がして俺は雪華の料理好きだぞ」
「あ、ありがとうございます」
「もう!雪華ったら照れちゃって可愛いな~」
「ふえぇ!?て、照れてなんていません!」
慌てて否定する雪華。その仕草もとても可愛かった。
う~ん。やっぱり雪華は見た目通りの精神年齢より下な気がするな。まあ、可愛いから問題ないんだけど。
「と、兎に角、蒲公英さんに教えることについては問題ありません!」
なんとか標的から逃れようと話を逸らす雪華。
「ホント!?それじゃ、今度お願いしようかな!」
「やる気だな。蒲公英は」
「もちろんだよ!あっ!それじゃ、たんぽぽが作った時、ご主人様が味見してくれる?」
「いいぞ。その時は覚悟して味見するよ」
「もー!なにそれ、ご主人様ひど~い!蒲公英、お姉様より料理下手じゃないんだからね!まあ、簡単な料理しか出来ないけどさ」
「はははっ、冗談だよ。楽しみに待ってるよ」
「ぶー。でも、約束だからね!出来上がったら一番最初に食べてね♪」
「ああ、約束だ」
「えへへー。たんぽぽ、がんばっちゃうよ!」
頭を撫でてあげると蒲公英は嬉しそうにしてガッツポーズをとった。
どうやらたんぽぽは気合十分みたいだな。まあ、その方向が変な方向へ行かなければ、失敗することは無いだろう。
「まあ、今は雪華の料理を楽しむとしようか。雪華も見てないで一緒に食べよう」
「はい」
こうして俺たちは雪華が作ってくれたお弁当を食べた。
どれも美味しくてとても満足した。
「ご馳走様。美味しかったよ、雪華」
「ご馳走様~。ホント、美味しかったよね」
「お粗末さまです。最初はお口に合うかすごく不安でしたが、喜んでもらえて嬉しいです」
「いや、お世辞抜きで美味しかったよ。雪華は良いお嫁さんになるな」
「およさん?……ふえぇ!?お、お嫁さん!?」
一瞬、何を言っているのか分からなかったのか雪華は首を傾げ考え始め、直ぐに理解して、驚いていた。
「なんでそんなに驚いてるんだ?」
「ふえっ、だ、だって、その……ふぇぇ」
「あははっ!良かったね、雪華!良いお嫁さんになれるって言われて!」
「ふぇっ……は、恥ずかしいです……」
蒲公英にも褒められて恥ずかしがる雪華。
「ねえねえ、ご主人様?」
「ん?なんだ?」
「ご主人様は、やっぱりお嫁さんを貰うなら料理が上手い人が良いの?」
「そうだな……出来ないよりは、出来た方が良いかな。でも、もちろん出来なくても全然気にしないけど」
「でも、お嫁さんの手料理は食べたいって事だよね?」
「まあ、理想はね」
「っ!愛紗ちゃん……」
「どうかしましたか、桃香様」
「私、急に料理の練習をしたくなっちゃったよ」
「奇遇ですね。私もそう思っていたところです」
「愛紗ちゃんもなんだ」
「ええ」
「それじゃ……」
「そうですね、厨房に向かいましょう」
「~~~っ!!」
一瞬、悪寒を感じ身震いをしてしまった。
なんだろ……この身に危険が及びそうな感覚は?
「?どうかしましたか、ご主人様?」
「い、いや。何でもないよ。ちょっと寒気がしただけだから」
「寒いって事?こんなにポカポカで暖かいのに?」
「温かい飲み物でも作りますか?」
「いや、もう大丈夫だよ。ありがとう、心配かけてごめんな、二人とも」
二人に微笑み、頭を撫でて心配してくれたお礼を言った。
「お昼ご飯も食べ終わったし、たんぽぽ。少し林の中を探検してくるね!」
「なら、俺たちも行こうか」
「はい、そうですね」
「た、たんぽぽ、一人行きたいんだよ!だからご主人様たちはここでゆっくりと食休みしててよ」
立ち上がろうとする俺と、雪華を蒲公英は慌てて止めさせた。
「それじゃあね!」
蒲公英はそれだけを言うとあっという間に居なくなってしまった。
「行っちゃいましたね」
「ああ、そんなに一人で探検したかったのかな?」
「でも、危険じゃないですか?どこに盗賊が居るのかも分からないですし、一緒に居たほうが」
「雪華の言うことももっともだけど、取り合えず、周囲には人の気配は無いみたいだから平気だと思うよ」
「そうですか……良かった」
雪華は一安心とばかりにホッと息を吐いた。
「それじゃ、少しゆっくりしようか」
「そうですね」
俺と雪華は蒲公英が言った様に食休みをすることにした。
「静かですね」
雪華は俺の横で食べた残りを片付けていた。と言っても、食べ残しは一個も無く、包みを纏めているだけだが。
「そうだね。聞こえるのは川の流れる音と木々の擦れる音だけだ」
「はい」
俺は寝転がり、目を瞑ってその音を聞いてた。
「雪華も片付けが終わったら、こっちにお出でよ。気持ちが良いぞ」
「は、はい……ふぇえ!?」
(どさどさっ!)
なぜか急に慌てだした雪華は手に持っていた籠を豪快に落としてしまっていた。
「だ、大丈夫か?」
「だ、大丈夫でしゅ!」
「?ならいいけど、手伝うか?」
「い、いえ!ほ、本当に大丈夫ですから!ご主人様はごゆっくりしていてください!」
「そういうことなら」
まあ、雪華がそう言うなら大丈夫だろう。本当に大丈夫じゃない時は助けを呼ぶだろうし。
俺は、雪華を少し気にしながら雪華が来るのを待つことにした。
「お、お待たせしました、ご主人様」
待つこと数分、雪華は片付けを終え、俺の下へやってきた。
「よっと、随分と速かったね」
俺は起き上がり、雪華に話しかけた。
「ご主人様をお待たせしては悪いかと思いまして、急いで片付けました」
「別に気にしないのに」
「いえ!そう言うわけには行きません!」
「そっか、ありがとうな、雪華」
力強く答える雪華に俺は頭を撫でてお礼を言った。
「ふえ、い、いえ。対したことでは……」
照れる雪華を見て俺は微笑んだ。
「ほら、雪華も寝転びなよ。気持ちがいいぞ」
「い、いえ、私はこのままで」
「いいからいいから……それっ!」
「ふぇええっ!?」
俺は無理やり雪華の手を取り抱き寄せるとそのまま寝転んだ。
「ふぇ、あ、あの、その……」
動揺する雪華。ちょっと無理やりだったかな?
「もしかして、嫌だった?それならごめん。謝るよ」
「い、いえ!そんなこと無いです。そ、その……嬉しかったですし」
「え?」
最後のほうが聞き取れず、俺は聞き返した。
「い、いいえ!なんでもないです!」
慌てる雪華だったけど、取り合えず、嫌ではなかったようで一安心かな。
「いい風だな」
寝転がっていると心地の良い風が俺と雪華を通り抜けていった。
「そうですね……空も快晴ですし、本当に気持ちが良いですね」
「ああ」
真上に見えるのは真っ青な天井。雲一つ無い晴天だ。
「なんだか、眠く……なっちゃいます、ね」
「ああ、こう、ぽかぽかと気持ちが良いと昼寝したくなるな」
「ふぁ……は、ぃ……」
「雪華?」
「すー、すー」
雪華の反応が悪くなり、どうしたのかと見てみると、雪華は眠ってしまっていた。
「朝早くから、お弁当作り頑張ったみたいだからな。このまま寝かせてあげよう」
俺は雪華を起こさない様に起き上がり、自分が着ていた服を雪華の体が冷えないように掛けてあげた。
「ん……すー、すー」
一瞬、小さく声を出したが、どうやら起きたわけではないようだ。
「可愛い寝顔だな……やっぱり、雪華をこの世界に連れてきたのは間違いだったのかな……」
この世界は今戦争中だ。こんな小さな子を、俺の妹と歳も変わらない女の子を戦いに向かわせている。そのことに罪悪感を覚えないわけがない。
『いいえ。私は自分の意志でここに居ます。だからご主人様は気にしないでください』
そう言えば、雪華は前にそんな風に答えていたな。
雪華が仲間になり、ひと月たったくらいかな、不意に雪華に聞いてみたことがった。
「雪華、無理矢理仲間になって貰っちゃったけど、良かったのか?」
俺は筆をいったん休め、本を整理している雪華に話しかけた。
「ふえ?何のことですか?」
「いやさ。俺たちのやっていることは相手の領土を奪ったり、攻めてくる相手を打ち負かすことじゃないか、つまりは相手を殺したりとか……仲間に加えた俺が言うのもなんだけど、故郷に戻ってもいいんだぞ?」
「いいえ。私は自分の意志でここに居ます。だからご主人様は気にしないでください」
雪華は考えることも無く、首を横に振って見せていた。
「ならいいけど……無理だけはしないでくれよ?心配事とか、不安なことがあったらいつでも相談に乗るからな」
「はい、ありがとうございます。でも、大丈夫です」
「そっか」
「はい……だって、ご主人様がそばに居てくれますから」
「え?」
小声で喋っていた雪華の声を俺は聞き取れず、聞き返していた。
「っ!い、いえ!なんでもありません!あっ、わ、私、作業に戻りますね!」
雪華は「何でもない」と慌てて作業に戻って行った。
「もうあれから結構経つな……なんだかあっという間だったな、色々なことがありすぎて」
ふと、俺の膝で眠る雪華を見る。
「……早くこんな争いを終わらせないとな……」
「ん……えへへ……すー、すー」
雪華の頭を撫でる、すると雪華は寝ながら微笑みを浮かべた。
「どんな夢を見ているのかな……いい夢だといいな」
俺は微笑みながらまた雪華の頭を撫でた。
………………
…………
……
《蒲公英視点》
「もーっ!なんでそこで雪華も寝ちゃうかな~。まあ、朝早くお弁当作ってたみたいだから、責任はたんぽぽにもあるんだけど……」
たんぽぽは茂みからこっそりとご主人様と雪華の様子を覗いて見ていた。
「でもこれじゃあ、計画が台無しだよ。たんぽぽが離れてご主人様と雪華が二人っきりになって良い雰囲気になるようにしたのにさ」
「ぐるるるるるっ!」
「へ?」
たんぽぽが考えていると、背後から呻る声が聞こえてきた。
「……げっ!あ、あはは~、げ、元気?」
振り返ると後ろに居たのは狼だった。
こ、こんな時に限って得物をご主人様たちの所に置いてきちゃうなんて、たんぽぽのバカバカバカッ!
得物無しで狼なんかと相手が出来るのはお姉様とか愛紗、ご主人様くらいなだけだよぉ!……そ、そうだ、ご主人様っ!
「ぐるるるっ……ワウーーーーーっ!」
「わひゃーーーーーっ!!」
狼が吠えたと同時にたんぽぽは茂みから抜け出し、ご主人様の下へ走って逃げた。
「ご、ご主人様~っ!た、助けてぇ~~~っ!!」
「蒲公英?どうかしっ……っ!?」
声に気が付き振り返ったご主人様は、たんぽぽの状況を見て驚いていた。
ご主人様は雪華を起こさないようにそっと膝から下ろして立ち上がった。
「蒲公英っ!こっちはで走ってくるんだっ!」
「う、うん!」
ご主人様に言われ、全力でご主人様の下まで走る。
「ご、ご主人様、こんな時に何拾ってるの!?」
たんぽぽがご主人様の下へ行く間、ご主人様は地面に落ちている何かを拾い集めていた。
「と、兎に角、今は、ご主人様を信じて走らないと!」
「がうーーーーーーっ!」
「今だ!蒲公英、屈んで!」
「う、うん!」
ご主人様は狼がたんぽぽに飛び掛かってきたと同時に屈むように叫んできた。
「~~~~っ!」
「きゃんっ!」
(どさっ)
「きゃんきゃんっ!」
屈んだたんぽぽの近くで何かが落ちる音がしたと同時に鳴きながら声が遠ざかって行った。
「もう大丈夫だよ、蒲公英」
「う、うん……」
目を開けて立ち上がるとそこにはもう狼は居なかった。
「ご主人様、どうやって狼を追い払ったの?」
「これさ」
「これって……小石?」
ご主人様が手を開いて見せてくれたのは小石だった。
「もしかして、石礫ををぶつけたの?」
「ああ、お腹が空かせていたとはいえ生き物だからね。人を食い殺した獣じゃない限り、殺すつもりは無いよ」
「それにしても、ご主人様って自分の得物が無くても強いよね」
「まあ、獲物が無くても戦えるようにじいちゃんにしごかれたからね」
「そ、そんなに厳しかったの?」
「ああ、俺が覚えている中で一番ひどかったのは素手の俺に真剣で斬り掛かってくるじいちゃんだったかな。二時間以上も追い掛け回されてあれはもう死を覚悟したよ」
「……」
ご主人様の話を聞いて、お姉様や菫おば様の鍛錬が可愛く思えた。
「んっ……あれ?わ、私いつの間にか眠って……?お二人とも何かあったのですか?」
さっきの騒ぎでなのか眠っていた雪華が起きちゃった。
「何にもないよ。俺の昔の話をしていただけだよ」
「ご主人様の昔の話、ですか?」
「そうそう!って、なんで雪華頬膨らませてるの?」
「む~っ!」
ご主人様に話を合わせて雪華を見ると頬を膨らませて睨まれていた。
でも、その仕草は『怒る』と言うより『可愛い』かった。
「ずるいです!私が寝て居る間にご主人様のお話を聞くなんて!」
「わかった、わかった。それじゃ、ご主人様、ご主人様の国の事、いろいろ教えてよ!たんぽぽ、すっごく興味があるんだ!」
「私も聞きたいです!」
「わかった。それじゃ、何から話そうかな……」
こうしてたんぽぽ達は、ご主人様の国の話を夢中になりすぎて夕暮れになるまでずーっと聞いていた。
急いで帰ったたんぽぽ達だったけど、お城の前で仁王立ちをして腕を組んでいる愛紗が待ち構えていた。
愛紗に謝っているご主人様は、本当にたんぽぽ達のご主人様なのかな?って言うほどすごい低姿勢だった。
でも、そんな姿を見ながら、たんぽぽの横で雪華は苦笑いを浮かべながら言ってくれた。
「ご主人様はお優しいですから。ああして、私たちの事を庇ってくれてるんですよ」
確かに……
今回の原因はたんぽぽ達にある。本当ならたんぽぽ達がご主人様をお守りしないといけない立場なんだから。
それなのに時間を忘れてご主人様の話をずっと聞いていた。夜になれば夜行性の肉食動物が出てきて危険なのも知ってたのに。
それでもたんぽぽ達は怒られることも無く、ただ愛紗に怒られるご主人様をずっと見ていた。
「はぁ、もういいです。以後気を付けてくださいね」
「ああ、気を付けるよ」
話が終わったのか愛紗はたんぽぽ達の方へ歩いてきた。
「ご主人様にお礼を言っておくのだぞ。本当なら、お前たちを叱らなければいけないのだからな」
それだけを言うと愛紗は城の中へ入って行ってしまった。
「やれやれ、まいったな」
頭を掻き、苦笑いを浮かべて戻ってくるご主人様。
「よし。今日はもう遅いから二人は早く部屋に戻ってお休み」
「え?ご主人様は部屋に戻らないの?」
「うん。ちょっと急ぎの案件が出てきたみたいだからさ。それを片付けてからかな」
「なら、お手伝いします!」
「大丈夫だよ。それに雪華は朝早くからお弁当を作ってくれたんだし、これ以上無理はさせられないよ」
「そうですか……それでは、お休みなさい」
残念そうに肩を落とし部屋に戻ろうと歩き出す雪華。
「あ~、そう言えばのどが渇いたな。仕事の前にお茶が飲みたいかな。雪華、お願いできるかな?」
「は、はいっ!喜んで!直ぐにお持ちしますね!」
「よろしく、執務室に居るから」
「はい!」
嬉しそうに駆け出していく雪華。本当にご主人様の事が好きなんだな。
好きな人の為に少しでも手伝いたいって気持ちはたんぽぽもわかるよ。
「ホント、雪華は働き者だな~」
まったくもって見当違いなことを言い出すご主人様。ご主人様、鈍すぎ!
「はぁ……なんでここまで鈍感なのかなご主人様は」
「ん?何か言ったか?」
「なんでもないよ~。それじゃ、たんぽぽは部屋に戻るね」
「あ、ああ……お休み、たんぽぽ」
「お休み、ご主人様♪あ、それと昼間助けてくれてありがとうね。これはたんぽぽからのお礼だよ!」
そう言ってたんぽぽはご主人様に近づき……
「ちゅっ!」
「えっ……」
ご主人様の頬に軽く口付をした。
「えへへ♪それじゃね、ご主人様♪あっ!それとたんぽぽが狼から逃げ回ったことお姉様や菫おば様には内緒だからね!」
「あ、ああ……」
呆けるご主人様をしり目にたんぽぽは軽快な足取りで部屋に戻って行った。
「今日は良い一日だったな♪それに、雪華とご主人様の間も少しは縮まったみたいだし」
主に雪華の方だけだけど……ご主人様の鈍さはあれほどまでとはたんぽぽも予想外だったよ。
「それと……今回の事で自分の気持ちも理解できたし」
そう、たんぽぽもどうやら、ご主人様の事が好きみたいってこと。
「よ~し!明日から色々、がんばるぞ~~~っ!がんばれ、自分!」
自分で自分を応援したたんぽぽは意気揚々と所々に火が灯る廊下を歩いて行った。
《To be continued...》
葉月「どうも、ご無沙汰しています。葉月です」
愛紗「愛紗だ、みな、久方ぶりだ」
葉月「そして、お分かりだとは思いますが、ただ今、愛紗から拷問を受けています」
愛紗「何が拷問だ。三週間も間を開けて、良くもぬけぬけとそんなことが言えたものだな」
葉月「こちらにも事情と言うものが……」
愛紗「どうせ、げぇむ、なる物をしていて書く暇がなかった掛けであろう」
葉月「……」
愛紗「どうやら図星の様だな。では、今から葉月に制裁を行う」
葉月「ちょ!ま、待って~~~~っ!」
愛紗「聞く耳持たん!」
葉月「ぎゃーーーーっ!」
「しばらくお待ちください」
三三\ /三
三三三\ /三三
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
Nice boat. ~~~
~~~~
_ィ†N==ュ_ ~~~
/互巫乢/"/L ~~
Lェェェェェイ"/L|彡~
「ロロロロロロロイL/|彡
∥ ̄ ̄ ̄7/ /彡
∥===/ /彡
`ミ\j_/ /彡
ミヽ__/彡
ミ 彡
愛紗「中に誰もいませんよ」
葉月「げふっ……ひどい」
愛紗「自業自得だ」
葉月「うぅ……」
愛紗「さて、制裁はここまでにしておくとして、今回は雪華と蒲公英の話か」
葉月「はい。年齢も近い二人の話を書いてみたかったので」
愛紗「なるほどな」
葉月「まあ、結果として『ミイラ取りがミイラ』蒲公英も一刀の事を好きになっちゃいましたけどね」
愛紗「ああ、忌々しき事態だ。これ以上、ご主人様の事を好きになる者が出ないことを祈るしかないが……その前にやはり一発殴らなければ気が済まないな」
葉月「あ、あの愛紗さん?」
愛紗「大丈夫だ。痛いのは最初だけだ。きっとそのあとは病み付きになるぞ」
葉月「いやいやいや!ならないですから!ちょ!こ、来ないで!い、いやーーーーーーっ!」
「しばらくお待ちください」
葉月「うぅ……ひどい」
愛紗「ふぅ……少しはすっきりしたぞ、葉月」
葉月「さいですか……さてと、気を取り直して次回のお話は星の話を書こうと思っています」
愛紗「おい。いいのか?」
葉月「はい?何がですか?」
愛紗「あそこで数名がいじけているのだが」
葉月「え?」
朱里「はわわ……最近全然、私たちのお話が無いね雛里ちゃん」
雛里「そうだね……ちょっと、淋しいね」
鈴々「鈴々だって面白くないのだ!」
白蓮「まだお前らは良いじゃないか
葉月「……み、見なかったということで!」
愛紗「お前も随分と酷い奴だな」
葉月「き、気が向いたら書きますよ!」
愛紗「いったいいつになることやら」
葉月「うぐっ!……と、兎に角、今日はここまでです!それではみなさん!また次回お会いしましょう!」
愛紗「逃げたな……まったく……では皆の者、また次回会おう。投稿が長引かないことを願っていてくれ」
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遅れてしまい、申し訳ありません。
第43話投稿です。
仕事が忙しかったりと、色々とあるのですが、それを理由に未完で終わるのは不本意なので、最後まで書き終えますぞ!
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