No.424958

超次元ゲイムネプテューヌ Original Generation Re:master 第22話

ME-GAさん

22話です mk2の終わりが見えません

2012-05-19 10:06:55 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1474   閲覧ユーザー数:1405

「……え?」

ネプテューヌはいつになく、真剣な顔つきで、たったそれだけを、答えた。

テラは後悔した。

 

彼女が、彼女から笑顔が消えてしまった、と。

彼女だけではない。

コンパからも、アイエフからも笑顔は、消えていた。

 

「……め、がみ……。私が?」

ネプテューヌはうわずった声で、そう呟いた。

テラは少し身を引いた。

それと同時に、アイエフの鋭い視線を感じたのだった。

「……いつから知ってたの?」

静かに、怒りを溜めているかのように。

アイエフはそう、淡々と、告げた。

テラは震える声でそっと答える。

「……ルウィーで、聞いた」

「誰に」

「……ホワイトハートに……」

「……そう」

アイエフは額を抑えて大きな溜息を吐いた。

しかし、ネプテューヌは衝撃を受けた割には落ち着いた声を上げた。

「……なんか、私で良いの? って感じ……」

「だれがいいとか、そういうモンダイではなく、ネプテューヌさんがメガミさまなんです。

しんじられないとはおもいますが、うけいれてください」

「でもでも、何も分からないんじゃ、プラネテューヌの人達も困るよね?」

「だいじょうぶです。シュゴのちからはほんにんのイシとはカンケイなくはたらきます。あんしんしてください」

と、イストワールの言葉に安堵したかネプテューヌはほっと胸をなで下ろす。

「でも、ねぷねぷが女神だからってとりたてて変わった感じはしないです」

「そうね。むしろ女神様がワンランク落ちちゃった感があるわ……」

二人の言葉に、ネプテューヌはショックを受けたのであった。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

コンパ宅。

とりあえず休める場所に行こうと一同はとりあえずここを選んだ。

広い、とは言えないモノの5人(4人と1冊?)では十分とはいえないがなかなかのスペースを確保してあるのでまあ大丈夫だろと言う感じである。

夜もすっかり更け、ネプテューヌ、コンパ、アイエフの三人はすっかり寝息を立てていた。

しかし、テラはと言えば布団に入ったいいモノのなかなか寝付けずに上体を起こした。

 

 

彼にとって、気になることがあったのだった――。

テラはコップ一杯の水を流し込み、ベランダの柵に腕を置き、満天の星空をなんてことはなく、ただ見つめていた。

「ねむらないんですか?」

サイドから聞こえる声に、テラは顔をそちらに向ける。

イストワールは相変わらずの微笑で、テラにそう告げてきていた。

「ん、なんか眠れなくてさ。イストワールは眠らなくていいのか?」

「わたしにねるというガイネンはないのでだいじょうぶです。それより、きになることでもありましたか?」

イストワールの問いに、テラは薄く笑い、また星空へと視線を戻して、そっと口を開いた。

「……イストワール」

「はい?」

「イストワールには、知らないことはないんだよな?」

テラの問いに,イストワールはニッコリと笑顔を携えて答えた。

「はい! わたしはせかいであり、せかいはわたしのいちぶ。しらないことなんてありません」

「そうか……」

テラは、悲しそうな表情でそう答えた。

その後に、テラは真剣な目付きでイストワールと向き合った。

「教えてくれないか? ……俺が、いったい何なのかを」

テラの言葉にイストワールは面食らったような表情を見せる。

そして、たった一瞬、険しそうな表情を見せた後に作っているかのようにぎこちない笑顔で答えた。

「それは……あなたはテラさんイガイのなにものでもないですよ? あなたは――」

「そういうことじゃない」

テラはずいとイストワールに顔を近づける。

「知りたいんだ。自分という存在が、なんであるか。

俺のこの力は、いったい何なのか――」

テラはぎゅっと拳を握った。

 

いままでの旅の中で幾度となく感じてきた違和感。

胸の内に広がる不快感。

沸き上がる高揚感。

 

 

 

 

押さえきれなくなりそうな、殺害欲。

 

 

その命を奪い、支配しようとしたくなるような独占欲。

仲間を傷つけてしまいそうになる恐ろしい力。

 

それら全てが、テラに、こんな思いを植え付けていた。

 

 

 

 

 

『――自分が、何者なのか。分からない、自分が怖い――』

と。

 

 

 

「教えてくれ、イストワール! お前に知らないことはないんだろ!? だったら――」

「しーっ。ネプテューヌさんたちがおきてしまいますよ!」

イストワールにそう諭され、テラはふと彼女たちを見やる。

少し呼吸を整えながら、テラはもう一度彼女に問うた。

「頼む。教えてくれ、俺が何なのか、俺が、誰なのか――」

そう懇願するテラを一瞥し、イストワールは星空へ視線を移した。

「……いえません」

「っ!」

テラは思わずイストワールを見た。

その横顔は、あまりに悲しそうであった。

「なん、で――?」

「いえば、きっとあなたも、みなさんも、つらくなるでしょう……」

「どうして!」

テラは、そう叫んだ。

「なんで……」

「テラさん」

イストワールは一際強い口調でそう声を上げた。

「テラさんは、いま、このセイカツがたのしいですか?」

と、予想だにしない問いにテラはしばらく押し黙る。

しかし、その後にテラは力強く答えた。

「当たり前だろ……!」

「そうですか……」

イストワールはニコと微笑を浮かべ、そして重々しく答える。

「だったら、なおさらしらなくてもよいことです。あなたが、カノジョたちといままでどおりのカンケイをたもっていたいとおもうなら……」

と。

それが、決定打だった。

テラは、もう何も言えなかった。

ただ、そこに佇み、じっと虚空を睨んだまま、そこに『居た』。

 

 

ただ、ただ、そこに、『有った』――。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

「神界に行くのは分かったけど、私はともかく他のみんなは人間だよ? どうやって神界に行くの?」

と、ネプテューヌにしてはだいぶまともな疑問を口にした。

まあ、そんなことを言えば激怒必至なのでアイエフは敢えて口にしなかったわけではあるが。

しかし、イストワールはさしてそんなことは問題ではないと言う風な態度を見せる。

「ダイジョウブです! こんなこともあろうかと、わたしがドクジにしらべておいたのです!」

わー、とか言いながらネプテューヌとコンパは拍手。

似たもの同士気が合うのかな、とかテラはどうでもいいことを思った。

「……んで? その方法とやらは何なんだ?」

テラが呆れ気味にそう答える。

「そのまえに、みなさんは『エイユウ』についてきいたことはありますか?」

「英雄……?」

ネプテューヌはキョトンと首を傾げる。

「これは、ノチにメガミさまからきいたハナシなのですが――」

 

 

 

 

かつて、女神は世界を征服するなどという野心に目覚めた。

 

しかし、それは仕方の無かったことなのかもしれない。

 

女神にだって心があれば感情がある。

 

そう思うのは当然のことであった。

 

 

しかし、それを見かねた下界の英雄達は女神の野望を阻止しようと立ち上がった。

 

女神の目論見は英雄達によって阻止され、再び世界に平和が訪れた――。

 

 †

 

「……それで何の関係があるですか?」

コンパは先程のネプテューヌと同じくして首を傾げた。

「エイユウたちはメガミさまをこらしめるためにシンカイへのミチをシヨウしたのです。シンカイへいくために」

「……なるほど。俺達もそれを使えば神界に行けるってワケだ」

テラは納得したというように声を上げる。

「そして、それはわたしのシュッセイにもつながります。メガミさまはにどとおなじアヤマチをくりかえさないために、セカイをかえるチカラのいちぶをきりはなし、わたしをつくったのです」

どうでもいいが、平仮名片仮名ばかりで面倒くさい。ホントにどうでもいいな。

「……それで、じつはそのミチはエイユウたちによってフウインされているのです」

イストワールは残念そうな声でそう告げる。

コンパは驚いた表情を見せた。

「どうしてですか? 女神様とお話できるなんて素敵じゃないですか」

「よのなか、みなさんのようにイイひとばかりではありません。わざわいのタネになりかねないとエイユウたちはおもったのでしょう」

ああ、確かに……、と一同は思った。

しかし、そうなれば神界への道はいまだ閉ざされたままとなってしまうことになる。

「ですが、シンパイすることはありません! エイユウたちはみずからのブキをカギとしてシンカイへのミチをとじたのです」

「……ああ。それで、その英雄の武器が必要になるのね」

と、そこまでアイエフが言ったところでイストワールは不安げな様子を見せる。

「ですが、ながいトシツキのなかでエイユウたちのブキはユクエがわからなくなってしまっているのです……」

「マジでか。でも、流石に簡単な場所くらいなら分かるんだろ?」

「ですが、それだとさいていでもみっかはかかりますよ?」

と、案外短い期間に一行は安堵する。

「なんだ、三日くらいなら見つかるまで待って――」

「ひとつのブキでさいていみっか。よっつとなるとはやくてもじゅうににちはかかりますよ?」

「自分達で探しに行きましょ。そっちの方が早い気がするわ」

アイエフの意見には三人とも大賛成であった。

どうでもいいが、自分達の切り替えの早さには相変わらず驚かされるなとテラは一人で感心していた。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

イストワールは情報が入り次第、連絡をよこすというのでコンパの部屋で待機することとなった。

が、まあこんな初っぱなから情報も入るわけもなく一行はなんとなくそこらをブラブラと何をするでもなく徘徊していた。

「……はぁ。ようやく一段落できると思ったらまた大陸を回らないといけないのね……」

「ホントだよねー……。もっと分かりやすい場所に置いておいてくれても良いのに」

恐らく彼女は何も学習しない子なんだろうなとテラはいままでさんざ思っていたことを改めて思い直す。

「でも、どうするです? 行き当たりばったりで見つけられるほど楽じゃないですよ?」

コンパがそう言うので一行は真面目に方法を考える。

と、テラは一瞬嫌な顔をした。

「ん? テラさん、どうしたの?」

「いや……、頼りたくはないが……アイツを頼るか」

テラは心底嫌そうな顔で後ろ頭をポリポリと掻く。

「頼るって、誰をですか?」

「……大陸に関しては、上手くいけば協会より詳しいところさ」

「それって――?」

テラは一際大きな溜息を吐き、肩を落として力無く答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――プラネテューヌ中央士官学校、」

 

テラはそこで少し間をおいて、続けた。

 

 

 

 

 

 

「俺の親父だよ……」

 

 

 

「テラさんの――」

「お義父さん?」

コンパとアイエフはそう言って首を傾げた。

テラは嫌なことを思い出すように苦い表情をして額を抑えた。

「鍵の欠片と同じ、もしモンスターがそれを所持しているとすれば可能性は、な……」

「あー、そっか。士官校の人ならモンスターの情報も持ってるよね」

「ま、第一親父は軍の人間だからな。怪しいモンスターの情報とかなら貸し出してくれるだろうよ……」

だがしかし、テラの表情は一行に晴れる気配を見せない。

見かねたネプテューヌは不思議そうな言葉でテラに問う。

「ねぇねぇ、なんでそんなに嫌そうなの?」

「あのな……。前にも話したかもしれんが、うちの親父は相当な変人なの。義理とはいえ、息子に命に関わるようなトラップ仕掛けてくるような人なの」

あー、それは確かに嫌がるのも無理ないわー、とかアイエフはそう思って冷や汗を垂らしたが、そんな人を見てみたいとも思ったので言わなかった。

「いいじゃん! 私は会ってみたいなー。ご挨拶だよ、ご挨拶!」

「……?」

果たしてテラにはその意図が分かっているのか、いやきっと分かっていないんだろうなと思うところである。

「マジで行くのか?」

「「「当たり前だよ(です)(じゃない)!」」」

三人が口を揃えて言うのに対し、テラはもの凄く嫌そうな顔をした。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

そびえる建物はなんかもう、一見して近寄りがたい雰囲気満載であった。

厳格な雰囲気の作りに、門の前には鎮圧用の簡易槍を構えた門番兵が佇んでおり、その視線からはビームの如き鋭い閃光が伸びていた。

 

それに、テラはますます嫌そうな顔をした。

「おい……やっぱり帰ろうぜ。今ならまだ間に合うからさ」

いつになく弱気な彼など知ったことではないと言う風に三人はにこやかに門の中へ踏み入ろうと一歩前に出る。

しかし、当然というかなんというか、やはり門番兵に止められてしまうのであった。

「こら! 一般人は立ち入り禁止だ!」

「えー、一般人じゃないよー? こっちの人は校長さんの身内だよ?」

ネプテューヌは嫌がるテラを無理矢理前に出す。

テラは力無くポケットを漁り、学生証を提示する。

「近戦科、A組のテラバ・アイトです……。校長に用件があり、至急予定を開けていただけますか……?」

門番兵は少し面食らったような表情を見せた後、何事かを話し合った。

そして、一行に少し待ってくれと指示をして一人は建物の内部へと消えていった。

「ああ……もう戻れない……」

テラは頭を抱えて悶絶した。

そして、そんな彼を見て三人は変人を見るような視線を向けたという。

 

 *

 

校長室で待っているとの連絡を受け、一行は敷地内へと踏み入れた。

外部の印象とは対照的に中は絵画やら観葉植物などが飾られており、上級貴族の屋敷のような雰囲気を醸し出した廊下である。

レッドカーペットの上を歩く4人はテラを筆頭にゆっくりと校長室までの道のりを歩んでいた。

「……ハァ」

「いい加減諦めなさい。歯医者に行く前の子供みたいよ?」

「何とでも言え……」

いつもならここで「誰が子供だ!」とかなんとか激怒する声が飛んできてもおかしくないのだが、それがない辺り相当なショックを言うか、そんな感じのが有るんだなと三人は少しテラに同情した。

「あと、お前ら。あんまりそこら辺のモノ触るなよ? なにがあるか――」

「あ、スイッチだ。押しちゃえー、てい!」

「おぃぃいいいいいっ!?」

そんなテラの注意も聞かずにネプテューヌはドクロマークの付いた紅い、危険度120%のボタンを躊躇いなく押した。

そして、一行の後方から漫画みたいに巨大な廊下いっぱいいっぱいの鉄球がゴロゴロと音を立てながら一行の元へ転がってくる。

「な!」

「ちょ……!」

「何か来たっ!!」

何故ここでネプテューヌが嬉しそうなのかは謎だ。

一行は鉄球とは逆方向に一目散に駆け出す。

「何よコレ!? どうなってるわけ!?」

「知らんわ! 俺に聞くな! どうせ、あのクソ親父がトラップでも仕掛けたんだろうよ!!」

アイエフの問い掛けに怒鳴り散らすテラの傍らで走っていたコンパの足下から『カチッ』という漫画のようなスイッチの音が聞こえた。

「……え?」

「……私、なにかしちゃったですか?」

「……うん」

直後、壁に掛けられていた絵画がガタンと音を立てて地面に落下した。

そして、そこから現れたのは――

「RPG-7……」

「ウソ……」

対戦車用簡易ミサイルであった。

ピピッと電子音と共にテラ達がロックオンされ、発射のカウントダウンが響く。

後方から迫る鉄球。

今、まさに放たれようとしているミサイル。

しかし、テラは次の瞬間に置いてあった観葉植物を押しのけ、そこに現れたスイッチを思いきり押す。

一行の一歩後ろの床が抜け、巨大な落とし穴が形成される。

しかし、その穴には人ではなく鉄球が落とされた。

そしてテラは三人を遠くにいっきに放り、ミサイル発射装置に弾丸を二、三発撃ち込む。

「伏せろ! 耳をふさげ!」

三人はテラの指示通りに身を屈めて両の手で耳を塞いだ。

テラも急いでそちらへと駆け、背後に爆発音を聞きながら飛びこんだ。

 

 

――。

 

 

パチパチパチ、と淡泊な拍手が響いた。

テラはゆっくりと苛立った表情で顔を上げ、そこにいるであろう男の顔を見据えた。

「流石は我が息子。これくらいは簡単にやってくれるな」

「……親父」

テラはひくついた表情で男を見た。

「む……。まあいい、聞きたいことがあったのだろう。入りなさい」

男、ギルバ・アイトはそう手招きし、4人を校長室へ招き入れた。

 

「ふむ……」

ギルバはネプテューヌ、コンパ、アイエフを順々に眺め、傍らのテラに視線を移した。

「で、どの娘が目当てなんだ? この娘か? それともこっちか?」

「「「「なっ!」」」」

4人は一斉にそんな声を発した。

顔に似合わずそんなことを言うのかと、度肝を抜かれたからであった。

「べ、べ、別にそんな誰が目当てとかそういうのは全く――!」

テラは両手が分身するほどにあたふたと忙しく動かしている。

表情は明らかに動揺しており、顔は真っ赤であった。

「まあ、父さんがお前の趣味にどうこう言うつもりはないが、なぁ……」

「おぃいいっ! いい加減にしろよ、クソ親父ぃっ!!」

と、テラが宣ったところでギルバの拳がテラの頬にクリーンヒットした。

悲鳴とも呻き声ともつかぬ声を上げてテラは後ろに倒れた。

はっはっは、と声を上げて笑うギルバは本当に普通の父親に見えた。

傍らで倒れるテラ、という構図を除けば。

「それよりも、早くこの娘達にお茶なり出さないか。キビキビ動け」

「い、イエッサー……」

グリグリと旋毛を足蹴にされるテラは呻くようにそう答えた。

そんな彼を三人は苦笑で見ているしかなかったのであった――。

 

「どうぞ……」

執事のように、しかし頼りなくテラは三人にそっと紅茶の入ったカップを目の前に置いた。

その変わりように少々ドギマギしつつも三人は一斉に紅茶を啜る。

ギルバは一息ついた後、背もたれに深く掛けて口を開く。

「それで、お前が話したいということは何だ?」

「あ……、えと、実は『英雄の武具』について知っていることがあったら聞きたいと思ってここに来た」

「『英雄の武具』……」

ギルバは少し考えたような素振りを見せた後、立ち上がり部屋の隅にある本棚から一冊の本を抜き取った。

表紙には『英雄の伝説』と記されており、なんかすごい幼稚感が漂っていないでもなかったが。

「英雄『ツリーベル』、その者が持った剣には魔力が宿り、敵を一瞬にして葬り去るという……。

英雄『マウスロープ』、その者が持つ銃は全てを精密に狙い撃ち、跡形も残さなかったという……。

英雄『ツイーゲ』、その者が持つ弓は天をも貫き、大地を抉ったと言われる……。

英雄『ハイブリッジ』、その者が持つ槍は全てを打ち砕き、やがてその跡をも腐らせる魔力を持っていたらしい……」

4人はごくりと息を呑んだ。

英雄の武具、それがどれほどのモノなのかを悟ったからだった。

「その武具の場所は何処に……?」

「詳しいことは分かっていない。……が、噂では最近、とあるダンジョンに人語を話す龍が出たらしい。

ソイツがこう言ったらしいぞ、『英雄の武具を手に入れた。これで世界は私のモノだ』とな」

その言葉に一行は息を呑む。

「それで、その龍は何処で発見されたんだ?」

テラは身を乗り出すようにギルバに問い掛ける。

しかし、彼はキョトンとした風に驚く野表情を見せた後に口を開いた。

「そもそも、なんでお前が英雄の武具なんぞを欲しがっているんだ?」

「……」

その質問には閉口せざるを得なかった。

4人はこそこそと小声で話し合う。

『どうする?』

『世界を救うなんて言っても、どうせ頭のおかしいなんて言われるだけです……』

『性格が性格だからな……』

『でも言っておかないと教えて貰えなさそうよ……?』

アイエフの言葉で仕方なくテラは口を開いた。

「せ、世界を救うため――なんて」

そう言ってアハハと笑うテラを奇異の目で見ながらギルバはふうんと納得したような声を上げた。

「まあ、お前がそう言うのならそうなのだろうな。我が校を開けていたのもそのためか?」

と、ギルバはいやに真剣にテラにそう問い掛ける。

「え、いや、信じるのかよ……」

「お前は昔からウソ、冗談なんぞ言ったことがないからな。今回もきっとそうだと踏んだだけだ」

「……そうか」

テラは、少し嬉しそうに微笑んだ。

「その龍は、今は魔窟と呼ばれる炭坑跡地にいるらしい。図体だけでも相当でかいぞ」

テラは地図を広げてその場所を確認する。

幸いなことにその炭坑跡地は中央市街、現在一行が駐留している街からだいぶ近かった。

テラはそこにペンで印を付けてそれをポケットに仕舞う。

「よーし! じゃあ行こっかー!!」

ネプテューヌは張り切って校長室を後にする。

コンパとアイエフもギルバにお辞儀をして退室する。

 

 

暫し、無言な時が流れる。

しかし、ギルバはふと口を開いた。

「……笑うようになったな、テラ」

「え……?」

いつになく優しげな声で彼はそう告げた。

そんな彼を見て、テラはそんな声を漏らした。

「こっちにいるときはどんなことにも笑いもしなかったというのに、しばらくここを開けた内にだいぶ変わったな」

「……そう、かな」

テラは恥ずかしそうに右頬を押さえた。

「それに、俺に敬語を使うこともなくなったしな」

「……あぁ」

そう言えば、とテラは思い直す。

あの頃の彼は、何もかも、役割、規則に徹するだけの人間、いや、人形だったのかもしれない。

しかし、今は思いの通りに生きている。

話している。

動いている。

それが、溜まらなく彼を高揚させたのだった――。

「それも、あの娘達のお陰か……」

「そうかもしれない……」

いや、きっと彼自身分かっていたのだ。

曖昧な答えを出したのは、彼が分かりきっていたからこその思いだったのかもしれない。

ありのままの自分を出せた。

それが何なのか、彼女たちに何があったのかは分からなかったが、彼は変わったのだ。それだけは確かであった。

「お前は、行ってしまうのか……」

「え?」

ギルバの悲しそうな声にテラは度肝を抜く。

自分ほどではないが、なかなか自分の変わった感情を見せない、義父がそんな声を漏らしたのだから。

「なに、別にお前を咎めようとは思っていない。お前は、任務としてではなく、己の意志でやるべきことを見つけたのだからな。決めたからには、最期までやり遂げればいい」

衝撃的であった。

テラにとって。

彼の言葉は。

「……元より、お前をこちらに引き込んだのは私だ。お前が自身のやりたいことを見つけたのなら、俺も何か口を挟むような権利はないからな」

そう言って彼はテラの頭を優しく撫でた。

テラはくすぐったそうに、もうすっかり訓練で硬質になってしまった彼の手の感触を感じていた。

温もり、と共に――。

「……『家族』、か」

テラは思い出したようにそう呟いた。

そして、意を決したように、振り向き、ドアノブに手を掛けた。

しかし、一瞬躊躇した後に、テラはまた彼を振り向き、こう言った――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いってきます、父さん――』

と。

 

 

 

ギルバは目を見開き、ドアの向こうに消えたテラに呟いた。

「ああ、行ってこい、テラ――」

 

 

 

 

 

 

 

 

思えば、これがテラとギルバの最後の『父子ごっこ』だったのかもしれない。

 

運命の波に呑まれ、彼らが再び相見えることはきっと無いだろう。

 

結局、彼の周りにあった『家族』とは、全て偽りであったのだから。

 

父も

 

母も

 

姉も

 

二人も

 

妹も

 

全て、偽りのモノであったのだから。

 

 

 

だが、テラはそれに気付いていない。

 

しかし、彼は、この間、

 

『父』を感じていた。

 

それだけの幸せは、きっと運命も慈悲を与えてくださったのだろうから――。

 

 

 

 

 

 

 

だが、それは結局ただ幻。

 

 

 

 

 

『家族……? そんなもの、ただの飾りじゃないか……』

 

 

 

 

 

『俺を騙していたな! フザケルナぁっ!!!!!!!』

 

咆吼と共に、彼は叫んだ――。

 


 
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