ある日、部室の扉を開けると俺が沢山居た。
「あら、またキョンじゃない。 ……頭が疲れているのかしら」
「……この状況は?」
「知らん」「分からん」「さあな」「……この状況を説明してくれ」
部室中がざわめく。 ……正直五月蠅いな。
「俺のそっくりさんが沢山居る。 ハルヒがどれを本物か決める。 こんな感じでどうだ?」
「ハルヒは俺を見つけ出して新しい世界に連れて行ってくれるのさ」
「そうだな」「名案だ」「それが良いと思う」「むしろお前が本物じゃないのか?」
「いや、お前だろ」「俺じゃない」「あいつじゃないのか?」
……マジで五月蠅い。 こうなったら俺は偽物でいいか。
「俺が本「俺だ「ハルヒ、「俺だ 信じろ……」
「――五月蠅い、五月蠅い!五月蠅い!」
ハルヒがヒステリックに叫ぶ。 むしろヒステリックになって良いのは俺、いや俺達だろう。
……せいぜい新世界を楽しんでくれ。 俺はこの世界でお前から逃れ朝比奈さんと幸せになる。
「キョン!」
「何だ「何だ「何だ「何だ「何だ……」
周りの俺……キョン達が返事をするだけで鼓膜が破れそうだ。
「一人だけ逃げようなんて、あんたが“キョン”じゃないの?」
「いや、俺はキョンじゃない。 ジョンでもない」
ハルヒは俺を睨み付けて笑う。
「かかったわね。 あたしは此処の連中の誰にも“ジョン”の事なんか言ってないわよ」
「ははは、引っかかったな。 考え直せ、俺は偽物だ。 そっくりさんを選んでも俺の面倒を見なきゃいけないんだぞ?」
「あんたがホンモノよ」
「馬鹿を言うな、これだけいれば分からないはずだ」
「あんたがホンモノよ」
俺はハルヒの手を振りほどいて俺の一団に紛れ込む。
「もし違うキョンを選んでも、連れて帰らなきゃいけないんだ」
「チャンスは一度きり! 違うキョンを連れて帰っても一生面倒を見なければいけません」
「キョンはどこ? キョンを探せ!」
キョン達はそれぞれ好き勝手なことを言いやがる。
このキョンどもは五月蠅いな、まあ……俺も紛れておけばいいか。
「キョンはコイツだ! さあ、早く!」
ははは、俺は逃げない、コレなら分からないだろう。
「キョン!? キョンね!」
「俺だ俺だ俺だ…………!!」
俺と俺の周りで大合唱が起こる。 鼓膜が破裂しそうだ。
「この辺ね、そっくりだけど違う~♪ 違うけどそっくり~♪」
「もし違う人を選んでもその人のことを一生面倒見無ければいけません!」
「wawawa~」
「ははは、ハルヒ! 俺は此処だよ!」
クソ、俺の頭がおかしくなったのかよ! 狂ってやがる! 関係ない、偽物だからな!
俺が好きなのは朝比奈さん、ハルヒは俺に興味がないはず、適当に、勝手に新世界に行くさ。
はは、見つけられっこない。
「そっくりだけど~違う! 違うけど……居た」
ハルヒは俺の腕を掴んで満面の笑顔を浮かべる。 強く握りすぎだろ、痛い。
「外れ! 残念だったな!」
「キョン、やっと見つけた!」
「勘違いだろ、違うけど、そっくり~♪」
「そっくり同じ~♪ ……逃げないでね。」
「そ、そっくりだけど違う! 違うんだよ!」
「みぃつけた~! やっぱりキョンはジョンだったわね!」
「キョン入ります!「発見したのか!「手こずらせちゃいけないな!」
周りの俺達は拍手で俺を迎え入れる。 ……馬鹿を言うんじゃない、お前らが新世界の神になれる。
俺じゃない、俺はハルヒの宇宙じゃない。 嘘だ!
「ああああああああああああああああああ」
「あるハレた日の事~魔法以上のユカイが~~! あはははは! キョン見つけた!」
「俺がぁ~、本物なんだよ!」
「だから、あんたじゃない」
「違うよ、ブラフだ」 「いえ、あんたよ」「違うよ」「違わない!」「五月蠅い!」
俺は涙目のまま、ハルヒを振りほどき俺の群れを掻き分けて逃げていく。
狂ってるな、俺狂ってる。 こんなの夢だろ。 あははっははh
でも、いつまでもハルヒは俺を許してくれない。 見逃してくれない。 誰か、そこでヒマしてる俺、助けて。
おわり
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はっきり言って谷山さんの歌に影響されました