No.415659

超次元ゲイムネプテューヌMK.2 叶えたい願い

ゆきさん

ネプギアに街案内をしてもらっていたカイト。
ネプギアとはぐれてしまったカイトがたどり着いたのはジャンク屋だった。そこの店主はかつてカイトと一緒に冒険していたある男であった。今回は若干カイトの昔について触れています。

2012-04-29 08:16:31 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1185   閲覧ユーザー数:1049

第3話 かつての戦友と隠されし力

 

1人プラネテューヌの街を歩くカイト。

先程までネプギアに街の案内をしてもらっていたのだがはぐれてしまったのである。

 

「まったく、何で迷子探しなんてしなきゃいけないんだ」

 

カイトは気付いていないのだ。自分が方向音痴ということに。

カイトの知るプラネテューヌはプラネタワー以外全てがはじめてみるものだった。

(どっかに迷子の呼び出しコールないかな?)

辺りを見てみるがそれらしいものは一つとしてなかった。あったほうが不思議である。

迷いに迷ったカイトが行き着いた場所はジャンク屋だった。

武器に少なからず興味があるカイトは店の中に入っていった。

 

「いらっしゃい!......おう、まさか、カイトか!?」

 

店に入るなり店長らしき人物がこちらに駆け寄ってきた。

カイトは必死になってこの人物のことを思い出していた。

(だれっだけ?......まさか)

 

「お前、ジュンなのか?」

 

「おうよ!お前は相変わらず何も変わらないな」

 

ジュンはカイトの顔を見るなり「ホントに全然変わらんな」と何回も連呼していた。

この初老のおっさんこそかつてゲイムギョウ界をカイトと共に救った男ジュンなのである。

ジュンの背丈はカイトより少し大きくがっしりとした体つきをしている。

逆撫でになっている黒い髪の毛。見たもの全てが萎縮する目つきは昔と変わらず衰えていなかった。

 

「お前も結構経つってのにあんまり年取ってないじゃないか」

 

「そりゃ、オレの願いが叶えられたからな」

 

この男、前回の大会で「長生きできますように」みたいなことを願ったのである。

もちろん、願いは人それぞれなのだがカイトはそれよりも大きな願いを抱えていた。

 

「彼女はどうだ?」

 

ジュンが神妙なおもつきでこちらを見ていた

 

「あと一つの願いでやっと救える。まあ、どちらにしろ俺は此処が危険になったら願いなど関係なく呼ばれるがな」

 

カイトはそう言い店内を見て回った。

置いてある物はどれも冒険者にとってはレアものばかりであった。

その中でも特にカイトの目を見張ったのは刀身がなく柄しかない剣であった。

 

「お前、俺の預けたものを売ろうとするなよ」

 

「何言ってんだ。ちゃんと大事に保管してるじゃねえか」

 

この武器はカイトがかつて使用していた武器の一つである。

しかし、これは使用者を選ぶためかつて使用していたカイトさえも今では使えるかどうか分からない。柄を保管しているガラスの横についてあるボタンを軽く押す。

 

「よっこらせと。ダメだな。まだ、使えないか」

 

「まあ、それは持ってけや。もともと、お前の武器だからな」

 

「サンキュ」

 

本来の力は使えないが、ある程度魔力をを注ぎさえすれば投擲用に使えるので持っておいて損は無い。

 

「あー、あと、ラスト・ソードの侵食率も見てくれないか?」

 

「おう、任せろ。じゃあ、そこにかけてくれや」

 

カイトはすぐ近くにあったイスに腰掛て、そのまま目の前の工具用の机に突伏した。

ジュンは工具用の机とセットになっているイスに座ると白紙の紙を広げ、手には鉛筆といった装備で机に向かう準備を整えていた。

カイトは封印剣を呼び出し、工具用の机にどさっと置いた。

 

待つこと十分

 

「解析完了だな。侵食率は57%と言ったところだな」

 

ジュンは疲れきったのか数字だけ言うとすぐに机に突伏した。

 

「あと半分か.....ありがとうな。ジュン」

 

カイトはそう言い立ち上がろうとすると店の扉がゆっくりと開いていった。

ジュンはすぐさまお客様の下に駆け寄り深々と挨拶をしている。

 

「おじさん。なんか新しく改造した?」

 

「おうよ、ネプギアちゃんのためにいろいろと改造していたぞ」

 

カイトはジュンと話しているネプギアをたった今見つけてしまった。

(何でネプギアがこんなところに来るんだ?まあ、いい)

カイトは身を乗り出しすばやい動きでネプギアの背後を取り

 

「ネプギア、お仕置きだ」

 

「え、カイトさん!?」

 

急に現れたカイトに驚き悲鳴にも似た声をあげるネプギア。

カイトはそんな反応を無視してネプギアの脇に手を滑り込ませ指を動き始める。

 

「ふぁ、や、やめてく、ださい、カイトさ、ん、はは、そ、そこは、ダメ」

 

ネプギアは笑いを耐えながら何とか抗議の眼差しでカイトを見つめる。

だが、カイトはそれでもやめようとしない。

それを見かねたジュンがカイトの頭めがけて手刀を落とした。

 

「イって!何すんだよ、ジュン」

 

「お前、こそ女神候補生様に何しとるんじゃい!?」

 

「だから、お仕置きって言っただろ。...それよりもジュン、お前はネプギアと知り合いなのか?」

 

カイトはお仕置きをやめ、ジュンに向き直る。

見た限りネプギアはジュンにとってただの客ではない。

 

「ネプギアちゃんはよ、こういうところが好きでたまたま俺の店を見つけたわけだ。で、まあすっかり常連さんなわけだ」

 

「なるほど。とにもかくにも「おじさん、あれはどこに行っちゃたんですか?」.....帰るぞ」

 

「また来いよ!」

 

カイトは駄々をこねるネプギアを無理やり店から連れ出した。

カイト自身、もしネプギアに昔のことを知られてしまったらと言う恐怖感を感じているのだ。

 

街は先程までとは違い妙に人ごみが多く避けて通るのは少々面倒くさい。

(何だ、何か始まるのか?)

 

「はいはい、押さないで。マジェコンはまだいっぱいあるからねー」

 

少し離れた距離から少女らしき声が聞こえてくる。

すると、ネプギアはカイトの傍を離れ声のしたほうに向かっていく。

 

「ネプギア!?おい、待てよ!」

 

カイトの声が届いたのかネプギアは一瞬こちらを向いたがすぐに人ごみの中に入っていった。

人ごみは勢いを増すばかりでカイトも流れに流されていく。

(くそが!!あの力で......あれはダメだ。地道に進むか)

人と人との隙間を見つけては踏み込みを行いどんどんと先に進んでゆく。

 

「おっと、お兄さん。そんなことまでしてマジェコン欲しいのかい?」

 

全ての人ごみを掻き分けてたどり着いたのは、殺風景な何もないステージの上だった。

目の前に立つ緑髪の少女が先程の言葉の主だ。

カイトの後ろのステージの下にはたくさんの人が見える。

みな、同じように「マジェコンをくれー!」などと叫んでいる。

 

「そんなにいいものなのか?」

 

「そりゃもちろん!これ一個で何個ものゲームが無料できるんだぜ!」

 

少女はカイトの手に無理やりマジェコンを持たせる。

普通ならば、これは違法物だ。なのに、こうして一般にも出回っている事実。

(これが、犯罪組織マジェコンヌのやり口か。まるで、あの頃と似ている)

 

「お兄さん、後ろの人たちが並んでいるから、早いところどいてくれない?」

 

少女は横においてあるダンボールから大量のマジェコンを取り出している。

そんなところに、ステージの上にネプギアが上がってきていた。

ネプギアはカイトの手にあるそれを見ると少女に向かって、

 

「マジェコンを売りつけるのは、やめてくだ「うるせえな!ガキは黙っとけ!」お、おねがいだから、やめてよ。このままじゃプラネテューヌのシェアが消えて無くなっちゃうよ」

 

ネプギアはその場に座り込み泣き始めてしまった。

それを見たカイトの胸の中にどうしようもない怒りが溢れてくる。

そんな怒りに反応するかのように強風がステージを襲う。

カイトはネプギアに近づき頭を軽く一撫でして、

 

「ネプギア、プラネテューヌのシェアは奪わせやしない。....後はオレに任せろ」

 

ネプギアは涙を流しながらも笑顔でカイトの顔を見て「ありがとう」と言ってきた。

カイトは手に持つマジェコンを握りつぶし少女に向かって投げつける。

 

「のわ!何しやがんだ!」

 

カイトの耳には少女の声などまったく聞こえてこない。

少女の顔が近づいてくるたびにカイトの怒りのマグマは激しくなってゆく。

カイトはすばやい動きで魔法剣に魔力を注ぎ少女の横にあったダンボールに投げつけ破壊した。

カイトは少女を鋭い目つきで見据える。カイトと目があった少女は急に金縛りにあったかのよう額に冷や汗をかきながら動かなくなってしまった。カイトの手には聖剣が握られている。

風は容赦なく吹きつけ台風並みの暴風が吹きつける。

集まっていた人々は悲鳴を上げ逃げ惑って行く。

 

「今すぐ、立ち去れ。さもなくば.....分かっているよな?」

 

カイトの気迫の入った声が少女の向けられる。

ひどく、冷たく、感情の無くなったしまった

カイトの顔を見て少女は恐怖を覚えたのか立ち去ってしまった。

それと同時に突風はやみ、聖剣は粒子となり跡形もなく消えて、カイトの表情も直った。

カイトは魔法剣を回収しすぐにネプギアの手を取り、その場から去って行った。

 

 

 

 

先程の場所から少し離れた公園にカイト達はいた。

周りに人はおらず、カイトとネプギアの2人だけだ。

二人の手にはおいしそうなクレープがあった。これはここに来る途中でカイトが買ったものだ。

ベンチを見つけネプギアはぎこちない動作でベンチに腰をかける。

カイトもそれに続いて席に座ってゆく。

 

「さ、さっきは、ありがとう.....カイトさん」

 

「ああ、ネプギアの為だからな」

 

ネプギアはクレープをちまちまと食べ始めた。

カイトはそんなネプギアの姿をとある人物と照らし合せていた。

(前もこんなことあったな。さすがは姉妹というべきか。あいつとまったく同じだな)

 

 

ネプギアはカイトの手を握るタイミングを見計っていた。

先の事で助けてもらって、ネプギアの心には恋に近いものが芽生え始めていた。

握るチャンスは何回もあったのだが、どうしてもあと少しの勇気が出ない。

クレープを片手で持ち少し食べつつ頭をフル回転させて考えていた。

(あ、どうすればいいんだろう。やっぱり、私じゃダメなのかな。.....けど、これくらいなら世間一般じゃ普通何だよね?ここは一気に攻めてみる!)

頭の回路がショートしたネプギアはいきなり、カイトの膝の上に乗って抱きついた。

 

 

ネプギアの行動は百戦錬磨のカイトでさえ驚いた。

何故、急に抱きつかれたのか、そんなことを考える余裕は今のカイトには欠片もない。

(ただでさえ、可愛い顔がー!ち、近すぎるだろ!)

心の叫びはネプギアに聞こえるわけもなくどんどんと柔らかい感触を胸に感じてくる。

 

「ネ、ネプギア!?そ、そんなに密着したら、や、やばい!」

 

「カイトさん.....もう少しだけ、こうさせて」

 

「........ネプギア」

 

カイトはネプギアを抱き返した。

(この温もりを、俺は守ることが出来るのだろうか?.....アイツはオレよりも強い。けど、今までも仲間と協力して何回もやつを倒してきた。今度こそは、アイツを完全に!)

忘れもしない恐怖。カイトの全てを奪っていった男。

カイトはすぐにそんな思考を吹き飛ばし、ネプギアをよりいっそう強く抱きしめた。

 

抱きしめること十分

カイトの手はいつの間にかネプギアの胸を揉んでいた。

後ろからカイトがネプギアを抱きしめているような体勢になっている。

 

「カ、カイトさん!?んあ、ダメです、やめて!」

 

ネプギアはカイトの手を振り払い涙目で叫んでくる。

対するカイトの目にはいつもの穏やかで優しい目ではなく、瞳には紅い炎が灯っていた。

カイトの表情はとても苦しそうであり、胸に右手を押さえつけている。

 

「カイト、オレの邪魔を!たかが、器の存在で!ぐっくっ!お、お前は....」

 

カイトの声ではなく別の青年の声がカイトから聞こえてくる。

先程の行動はカイトではないと言う事を知りほっと胸を撫で下ろすネプギア。

カイトの体は何者かに完全に意識を取られたわけではなく何とか空いた左の手で魔法剣を取り出し、魔力を出来るだけ注ぎ込む。魔法剣は徐々に大きさを増し刀身は軽く十mを越えていく。

あふれ出す魔力の奔流にネプギアは吹き飛ばれそうになりながらも剣を構える。

 

「だ、大丈夫だ、ネプギア。い、今すぐ、ここから離れるんだ」

 

「カイトさん?カイトさんなの!?」

 

「ふ、ふざけるな!俺の力を利用しようって言うのか!?昔の貴様なら、ま、まだしも、今の、貴様に、そのような、資格は!!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

カイトの左手の魔法剣はカイトの胸を深々と貫いていた。

カイトとは違う別の青年の怨嗟がプラネテューヌ中に鳴り響いた。

 

「は、速く、逃げろ.....ネプギア......」

 

「カイトさん!!」

 

魔法剣の魔力は会とを包み一瞬で爆発した。

カイトは魔力の奔流に飲まれその姿は跡形もなく消えていた。

残ったのは破壊され尽くした公園とその場に佇むネプギアだけであった。


 
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