No.412796

ポケモンになってしまった俺物語 プロローグ

ネメシスさん

いつものように過ごし、いつものように寝て起きたら、なぜかかつて全米で人気を集めたポケモンの世界に!?
そして俺はその中でもかなりの人気者となったあの電気ネズミポケモン、ピカチュウに!?

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少しずつ加筆修正しながら投稿していきます

2012-04-22 23:16:32 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:6871   閲覧ユーザー数:6749

 

 

 

 

 

 

 

 

(……ん、うぅ、なんだ? なんか、肌寒いような)

 

 

閉じられた瞼に日差しがあたり眼の奥まで刺激してくる。

まぶしさを避けようと向きを変えたところ、いつも以上に感じる肌寒さに少しづつ眠気が覚めてくる。

 

 

(……ん……あれ?)

 

 

少しづつだが着実に起動し始めた頭が今身に起こっている違和感に気付かせる。

ベッドで寝ているはずなのに冷たく硬い肌触り、いやそれどころかまるで土の上で寝ているかのように身じろぎするたびに砂を擦るような音が響く。

一体どうしたことだと、重い瞼を擦りながら開くと

 

 

(……はい?)

 

 

そこは俺の部屋などではなく外、それもどこかの森の中のようだった。

昨晩は確かに自分のベッドで寝たはずなのに、なぜか森の中で目が覚めたことに混乱する。

なぜ? どうして? 何が起きた? ここはどこ? 俺は誰?

などと次々と浮かび上がる疑問。

とりあえず冷静になるために何やら定番らしい素数をかぞえることにした。

 

 

(……2,3,5,7,9,11……あれ、9って素数だっけ?)

 

 

とりあえずわかったこと、素数を数えても冷静になんてなれるわけがない。

てか誰だよ、素数を数えたら冷静になれるって言ったやつ、これだったら手のひらに「人」って書いて飲み込むの方がまだ良くね?

 

 

(……人、パク…人、パク…入、パク……人が入になったじゃねぇか!!! てか、これは緊張を紛らわせる時のやつだろ!!!)

 

 

とかなんとか考えている時点で何気に冷静さを取り戻しているんじゃないかと思えたので、効くのか効かないのかよくわからない行為を続けることだけは止めることにした。

ちなみに先ほど浮かび上がってきた疑問の中の一番最後、よく考えてみれば普通に自分の名前が思い浮かんでくるし昨日何をしてたのかも覚えてることから別に記憶喪失という状況ではないようだ。

そして、今更ながらに周囲の様子がおかしいことに気付いた。

 

 

(なんか……木がでかすぎね?)

 

 

周囲の木が、なにやら少し前まで見ていたワ○ピースのアッパー○ードに群生している巨大な木並にでかい。

ふと足元を見てみると、今度はいつも以上に地面が近く、そして同時に見えた自分の足が……なぜか黄色かった。

 

 

(……うぇ!? ちょ、な、なにこれ!?)

 

 

慌てて自分の体を調べてみる。

すると

 

 

(え、ちょ、ちょっと?こ、これって……)

 

 

短い腕、短い脚、おおよそ二頭身と半分くらいの小さく黄色い体、尖った耳に、極めつけがまるで雷を表しているかのようなギザギザの尻尾。

これは俺にとって、いや俺だけじゃないだろう、この姿を見たらおそらく誰でも即答できるくらいかなり見たことのある格好だ。

全米でかなり人気になった作品で、子供だけでなく大人でも知っているあの作品。

そしてその作品の中で、最も人気があった一匹、体は小さくとも他を凌駕する力を内に秘めているあの電気ネズミ。

そう、その名は……

 

 

 

「ピ、ピカチュウゥゥゥゥゥウゥゥゥ!?!?!?!?」

 

 

 

俺はその日、ポケモンとして、ピカチュウとして新しい一歩を踏み出した。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

あの後、いきなり身に起きた出来事に頭がショートしそうになり、とりあえず考えるのをやめて不貞寝を決め込んだ。

起きてみると明るさ的に朝の8時くらいか?

あぁ、野生のポッポがポッポポッポ鳴いてるな。

とりあえず自分の体や周囲の状況が昨日と変わっていないことから、この状況が夢じゃないことはわかった。

……てか、昨日不貞寝した時まだ明るかったのを考えると、最低でも10時間以上寝てたのか?

流石に、いつまでも不貞寝しているわけにもいかないので、とりあえず食事をとることにする。

 

 

(……って、自分の家じゃないから食料も自分で見つけなくちゃいけないのか)

 

 

てか、ポケモンって何食うんだろうな、ポケモン同士食い合うってわけじゃないだろうし、そんなんだったらマジで怖い。

……いや、アニメや漫画だからそこまで描かれていなかっただけでほんとはどうだかよくわからないけど、とりあえずそれはないと信じたい。

まぁ、常識的に考えて木の実とかだろうか?

そう考えて、木の実を探すために歩き出した。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

「ピ、ピカァ(み、みつからねぇ)」

 

 

しばらく木の実を探していたが、なかなかに見つからない。

こんなに草木で一杯なんだから、その中の一つくらいは食べれる実がなっている木が見つかってもいいだろうにと思うも、やはりそう簡単に見つかるほど自然は優しくないようだ。

現実の厳しさを味わい一つ溜息を吐く。

しょうがなく、次はあっちに行ってみようかと別の方向にむけて歩き出したとき、何やら声が聞こえてきた。

 

 

(これは……人の声か?)

 

 

少し気になり声の方に向かっていくと、人の声だけでなくそれ以外の何かがぶつかるような荒々しい音も聞こえてくる。

目の前の茂みを抜けると、どうやらポケモン同士が戦っているようだった。

片方のポケモンの背後にはトレーナーらしき人がいて、自身のポケモンに指示を出しているようだ。

トレーナーの方はコラッタ、そして野生と思われる方はポッポだ。

トレーナーの容姿、ポケモン、その技、そして戸惑いながら指示を出しているところを見る限りどうやらそのトレーナーはまだ駆け出しの新米のようだ。

ポッポが“つつく”をするとコラッタがギリギリのところで躱し、隙をついて“体当たり”を繰り出すという行動を繰り返すだけ。

かなり単調で他の人ならつまらなく思ってしまうようなものかもしれないが、それでも俺は初めてポケモンバトルを生で見ることができて感動していた。

かれこれ数年ほど、それこそ大学ももう少しで卒業という時になってもなおポケモンのファンでい続けるくらいポケモン好きなのだ、どんなバトルであっても初の生バトルで興奮しないはずがない。

そしてついにコラッタの“体当たり”がポッポに命中すると急所にでも当たったのか、かなりふらふらしていて、ついには地面に下りてしまった。

それを見てチャンスと思ったのか、トレーナーは腰から丸い赤と白とで半々に色付けされたボール、モンスターボールを取り出すとそれをポッポに向けて投げる。

ポッポは躱せるほど力が残っていなかったようで、避けようとじたばたしていたみたいだがそれも無駄に終わりボールが命中してしまった。

すると、ボールから発せられた光に包まれるようにしてボールの中へと入っていく。

それはカタカタ、と小刻みに何度も何度も動いている。

まるでポッポの最後の抵抗とでもいうかのように何度も何度も。

そして、ついに動かなくなってしまったボールをトレーナーは喜んで拾った。

ボールの中からポッポを出すと、さっきまで戦っていた相手とは思えないほどそのトレーナーになついていた。

 

 

……ゾクッ

 

 

それを見たとき時、俺は悪寒がした。

さっきまで感動に震えていた体が、今度は恐怖によって震えている。

 

 

(なんだ、あれは……まるで洗脳したかのようにトレーナーに対して敵意が消えている)

 

 

今までゲームをやり、アニメを見て、漫画を見て、それが普通だと思っていた。

しかし、今現在、自分がこの場でその現場を目撃して、なぜ今まで普通だと思っていたのか不思議でしょうがない。

ポッポは確かに敵意を持ってトレーナーと対峙していた。

それが、負けてボールに収められたからと言って気は収まるものだろうか?

 

 

もしかしたら、モンスターボールで捕獲するということは、ボール内でポケモンの脳に対し何らかの作用を働かせ、意思を捻じ曲げて自分に従わせるようにすることなのではないだろうかと、ポッポの変わりようを見て俺はそう思ってしまった。

だが、テレビを見る限りだと自分の方から仲間になったポケモンもいたし、そのポケモンはボールから出した後も何の変化もなかった。

つまり、脳に影響を与えるのではなく、ただボール内では鎮静効果にも似た働きをしていてポケモンを落ち着かせるということも考えようによっては考えられるということだろうか?

……いや、そんな保障どこにもない。

これが一体どういうことなのか、専門家でもなんでもない俺には理解できないが、一つだけ確かなことがある。

 

 

(……捕獲はされない方がいいな)

 

 

洗脳なのかどうなのか、それは試してみないことにはわからないことだし、試してみたいとも思わない。

だが、ここがポケモンの世界ならば、トレーナーがいるのならば、俺がポケモンなのだとしたら、俺にも捕獲される危険性は十分ある。

何よりここにはトレーナー以外にもロケット団やポケモンハンターなどという無理やりポケモンを捕まえようとするやつらだって存在している世界なのだ、そういう奴らに会わない可能性だって決して無くはない。

なんで俺がポケモンの世界に来たかなんてわからないし、帰れる保証だってどこにもない。

これから先、このポケモンの世界で一匹のポケモンとして生きていかなくちゃいけないのならば、その危険性から決して逃れることはできないだろう。

だったら、俺は

 

 

(……強く、強くなろう。負けないためにも、捕獲されないためにも、自分が自分でい続けるためにも)

 

 

そう、硬く決心した。

 

 

 

 

 


 
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