No.410750

【獣機特警K-9】死のゲームは続く【戦闘】

古淵工機さん

ポレモス星で続く紛争。
それはいつしか、ただのゲームに成り下がっていた。死のゲームに…!

◆出演
ルナ大佐(http://www.tinami.com/view/399409 )

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2012-04-18 23:16:05 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:960   閲覧ユーザー数:900

戦乱に燃える空の下を、数機のホルアクティが駆ける。

いまだ紛争の収まらないポレモス星の治安回復任務のため、宇宙軍とともに派遣されたキリシマ小隊。

隊長の霧島瑠奈大佐は、専用の白いホルアクティを駆り、戦場を駆け抜けていた。

 

「まだ来るか…こいつ!!」

ターゲットスコープに敵のライドアーマーを捉える。

一機、また一機。必要最小限の攻撃で確実に相手を仕留めるべく、機体の関節部分を狙い攻撃する。

だがその最中、他の隊員から通信が入る。

 

「隊長、さっきから敵さん、様子が変ですけど…」

「確かに、攻撃のパターンも戦闘慣れしてるとは言いがたいし、まるで踊ってるみたい…」

そこまで言いかけたところで、ルナははっと気づいた。

「踊っ…て…!?」

「隊長!?どうしたんですか?」

「どうも引っかかるのよ。紛争にしてはこいつら、攻撃がハチャメチャすぎる。まるで…『戦いを楽しんでいる』みたいにね…」

そう言いながらルナはホルアクティのコックピットハッチを開き、拳銃を携えつつ沈黙した相手方のアームローダーに歩み寄る。

そして、外部の操作ボタンを押し、相手のハッチを開ける。

 

「…っ!」

そのコックピットを見た瞬間、ルナは言葉を失った。

中のパイロットはおびただしい量のよだれを垂らし、虚ろな目で宙を見ていた。

 

「隊長!どうしました!?」

「…また、薬物中毒のパイロットね…これで25人目よ。やつらの雑な戦い方といい、このヤク漬けのパイロットといい…この紛争、何かおかしいわ!」

数日後、ファンガルド軍総司令部。

その中央会議室には陸・海・空・宇宙軍の将官やプラネットポリス各警察署の署長、刑事部長が集まっていた。

まず口を開いたのはライオン形のファンガー、宇宙軍司令官の朝霧大祐(あさぎりだいすけ)だった。

「…というわけで、こちらが現在ポレモス星に派遣されている部隊からの映像です」

ダイスケはそう言うと、スクリーンに映像を映し出した。

そこには、拳銃を手に殺戮を楽しむ傭兵、薬物中毒に陥った兵士、そして死体に火を放って馬鹿騒ぎしている兵士。

まるで子供の遊びのように、残酷な宴が繰り広げられていた。

 

「なんてことだ…奴らは罪のない人々をこうも簡単に…」

陸軍司令官のジョージ・バーモントは歯を食いしばり画面を睨み付ける。

「正規の軍隊でもあそこまで残酷な仕打ちはしないというのに…」

「紛争地域だからといってあれは許される問題ではない!すぐに増援を出すべきです!!」

口々にがなりたてる面々に、ダイスケは言った。

「静粛に。確かにこうした行動は目に余るものがあります。ですが、この紛争には大きなカラクリがあったのです」

「カラクリ?」

「…この紛争…いや、果たして『紛争』と言っていいものかどうか…こちらをご覧ください。軍の情報部が入手した情報です」

映像が切り替わるとそこは、兵器工場だろうか、攻撃ヘリやライドアーマーなどが並んでいた。

そしてその目の前にいるのは、ポレモス星において兵団を率いる各陣営の代表たち。

「どうなってるんだ!?敵同士の関係にある実力者たちが何故一堂に会して…」

「それだけではありません。彼らが話をしている相手。どこかでご存知ではないでしょうか?」

その言葉に、ピューマ形ロボットの女性が答える。ファンガルドプラネットポリス総監のアイヴィー・ヒルトンだった。

「ワイル・ジャクアですね。現在はゴクセイカイ系列となったジャクア・カンパニー社長の」

「そう。今回の紛争…もともとは5年前に終結するはずだった。各陣営とも疲弊しきった状態でしたからな。ところがです」

さらにダイスケは続ける。

 

「ジャクア系列の兵器開発会社が割って入ったことで事態は急変した。ジャクア側は新型兵器を売りさばくため、デモンストレーションを展開してくれる相手を探していた」

「その、デモンストレーションというのは…」

「そうです。先ほど見えた数名の実力者。彼らにジャクア製兵器の性能をアピールしてもらおうという策に打って出たのです」

「…そんなバカな!ではあの紛争は…」

「もはや紛争はその意義を失った。にもかかわらず戦いが続いている理由。表向きはポレモサイト鉱山の争奪ということになっていますが、実際各陣営とも自前の鉱山を抱えており、鉱山に対する不可侵協定が結ばれた今では鉱山争奪という大義名分も消え果てた」

「つまり、今続いているこの戦いは…!?」

「…ジャクア社の企業戦略です。自社製品の性能をアピールしてもらえるだけでなく、上手くつぶしあってくれればその分補充も出来てジャクア社にとっては儲け話になる…。さらに鉱山に対する不可侵条約が結ばれた裏にもカラクリがありました」

映像が切り替わる。鉱山の映像だ。鉱夫たちの姿をよく見てみると、やはり何かがおかしいことに気づいた。

「これは…ローゼン海賊団のシャークロイド!!」

「そうです。各陣営が自分の鉱山を守っているように見えますがこれは表向き。実際に働いているのはローゼン海賊団なのです」

ダイスケの言葉にアイヴィーが問う。

「それはつまり、鉱山をローゼン海賊団に売り渡した、ということですか?」

「仰るとおりです、アイヴィー総監どの。各陣営はすでに鉱山を売り渡した。そして表向きは自分たちの鉱山を守るフリをして、実際はローゼン海賊団に快適な作業環境を与えている、というわけです」

ジョージが問う。

「じゃあ、鉱山の争奪戦というのは…」

「まったくもって真っ赤な大嘘です。鉱山の争奪戦ということにしてローゼン海賊団を守り、なおかつお互いがつぶしあうことでジャクア社は兵器を上手く売りさばける。そうしている間にローゼン海賊団はポレモサイトの密輸を行うことが出来る。そしてその売り上げは」

さらに映像が切り替わる。そこには、ローゼン海賊団の幹部とともに、先ほどの実力者たちが映し出されていた。

「こ…これは!!」

「そう、ポレモサイトの密輸、密売で得た利益が例の実力者に渡っているというわけです。そしてその実力者たちはその金で兵器を買う…と」

ジョージは頭を抱えて嘆いた。

「なんてこった…!これでは得をしているのは…!!」

「お察しの通り。この『紛争もどき』で一番得をしているのはローゼン海賊団とジャクア社、およびその背後にいるゴクセイカイだけだったのです。彼らはそれまで大儀のもと行われていた戦いを…単なるゲームへと変えてしまったのです」

ダイスケの言葉に周囲がざわつく。

 

「では…朝霧司令…」

「もはや大儀を失った戦いに意味など皆無。ファンガルド宇宙軍は総力を上げ、ポレモス星紛争根絶に向け、本格的な武力介入を開始いたします」

宣言があった数日後、カフェ・ラ・ヴォルペ。

「…結局、得をしてたのがゴクセイカイとローゼン海賊団だけだったなんて…」

と、ため息をついているのは九段下久遠。

「…でもさ、ファンガルド軍も動いたし、これで一安心なんじゃない?」

「そうだよ」

と、ジャネット・エマソンとデイジー・ハインツが声をかける。

「そういうわけにも行かないんだ。密輸ルートを徹底的に潰せって、総監直々のお呼びがかかってるんだよ」

「そういえばクオンちゃん、アーマー・ジャケットなんか着ちゃってどうしたんだろうと思ったら…」

「察しの通り張り込み中ってわけ」

そうして会話を続けていた三人に、店の看板娘ことルチア・マルティーニが声をかける。

「事情は全て聞かせてもらったわよ。クオンちゃんも大変ね。学生なのに警察の特殊部隊の仕事だなんて」

「いえ、もうすっかり慣れましたよ…リク君もきっと、ボクと同じ気持ちなんだと思う。でも…」

「?」

「これはボクが…自分で決めた道だから…」

 

その時、クオンの耳に内蔵されていた通信機に着信が入る。通信の向こうからはエルザの声が響いていた。

『K-9隊各員に告げる。ローゼン海賊団の密輸船がル・ブラン宇宙港に着陸しようとしている。すぐに出動するぞ!』

「ごめん、もう行かなくちゃ。行こうリクくん!…ジャネット、デイジー、後よろしく!!」

「了解!」

「了解!って、ちょ…おぉぉい!?」

クオンは、すぐさまリクを連れて店を飛び出していった。

 

…ジャネットとデイジーを残して。

「で、ジャネット…」

「ん?」

「三人分の会計どうしようか…」

するとジャネットは、デイジーの肩をぽんと叩くとこう囁いた。

 

「…ごめん、私これからPANのライブに行かなくっちゃwデイジー、会計よろしくー!」

「え、ちょ、ちょっと待って…」

「はい、三人でお会計3ホーン80クロウ(約3800円程度)になりますw」

「ジャネットー!この裏切り者ーっ!!!」


 
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