午前7時30分。ラミナ・セントラル駅。
ファンガルド星の到るところへ向けて走る列車が集うこの駅のプラットホームで、
一人のシェットランドシープドッグ形ロボットの女性が待ち合わせをしていた。
「まだかな…あ、来た来た」
彼女の名前はイシス・トライスター。K-9隊の3号機として活躍中のロボット警官である。
何故彼女がここにいるのかというと…。
時は3日前にさかのぼる。
「休暇届?」
K-9ルームの隊長席で、休暇届を受け取ったK-9隊隊長エルザ・アインリヒトが問う。
「いけませんか?」
「いや、そんなことはないが…どうしたんだ一体」
エルザの問いに対して、イシスは答える。
「隊長は
「ああ、女性型ロボット同士が戦うスポーツのことだな」
「じゃあ、『夜の戦女神』…ってご存知ですか?」
「ネフティス・トライスターのことか。
キョトンとした表情を浮かべるエルザ。
すると、イシスはクスクスと笑いを浮かべた後に言った。
「あの子、私の妹なんですよ」
「そうか…どうりで似たような
「ええ、実はこの間の試合で5連勝を記録したそうで…せっかくだから旅行に行かないかって誘われちゃったんです。ちょうどこっちも大きな
その話を聞いたエルザは、静かに微笑むと、イシスの肩を叩いて言った。
「いい妹を持ったな、イシス。…よし、行ってこい。せっかくの休暇だ、思う存分楽しんでこいよ」
「隊長…ありがとうございます!」
そう言って立ち去ろうとするイシスに、エルザは一言声をかけた。
「何かあったら、すぐに連絡するんだぞ」
「はい。では行ってまいります」
…というわけで、イシスはセントラル駅で妹の到着を待っていたのである。
待つこと10分。遠くから、イシスによく似た声が響いてきた。
「おーい!」
そこに現れたのはイシスとよく似た、というよりもまったく同じ
違う点といえば、髪型と目つき、瞳の色ぐらいだろうか。
「ネフティス、久しぶりね」
「姉さんこそ元気そうね。でも、仕事は大丈夫なの?」
「ちゃんと休暇届を出してきたからね。それより5連勝なんですって?すごいじゃない!」
「えへへ、まあねw」
と、久しぶりの再会を喜び合っていた二人の会話を、構内の案内放送が遮った。
<ご案内を申し上げます。午前8時ちょうど発、FREX2184列車『エノーカー・リミテッド』にご乗車のお客様は、15番ホームにお回りください。午前8時ちょうど発、FREX2184列車…>
「と、そろそろ時間みたいね。行こう、姉さん」
「そうね。私たちの席は
二人は手を取り合って、エノーカー行きのFREXに乗り込んだ。
FREXは全車両が2階建て、ファンガルドの主要都市を結ぶ特急列車だ。
トライスター姉妹が乗ったのは、今回の列車では一番先頭の2階にある1等座席。
エノーカーまではおよそ2時間程度である。
「んー、やっぱり1等とっといてよかったわw」
「本当ね。わざわざありがと、姉さん」
「いやいや、いつも
「それもそうねw」
1等座席の一角で、会話を弾ませる姉妹。
やがて鐘の音を模した発車ベルが鳴り響くと、案内放送が列車の出発を告げる。
<お待たせをいたしました。FREX2184列車『エノーカー・リミテッド』は、ただいま発車いたします。お見送りの方は、ゲートの内側で…>
「見送りに来る人って誰かいたかしら?」
「さあ?」
と、二人がホームをチラッと見たときだった。
『お二人とも お気をつけて!』
という横断幕を持ったアラン・ミツザワとミハエル・アインリヒトだった。
「まあ、アランったらw」
「あれ?ひょっとしてあのハーフファンガーの子、姉さんの彼氏?」
「一応そんなトコね。結構いい感じよ」
「おやおや、こりゃ私も負けてられないわねww」
二人を乗せて列車はひた走る。目指すは温泉街エノーカー。
トライスター姉妹は、これからどんな旅の思い出を作っていくのやら…?
Tweet |
|
|
3
|
3
|
追加するフォルダを選択
たまにはのんびり旅行するのもいいよねってことで、今回はまったりとしたお話でも。
ロボットが温泉浸かって大丈夫なの?
…うん、大丈夫なんだなこれがw
続きを表示