No.402503

【獣機特警K-9】その時歴史が動いた【警察関係者】

古淵工機さん

これ(http://www.tinami.com/view/399251 ) の続きみたいなもの。
せっかくの設定なので、ちょっと掘り下げてみることにしました。

◆出演:
アイヴィー総監(http://www.tinami.com/view/401918 )

続きを表示

2012-04-04 01:07:59 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:845   閲覧ユーザー数:796

ラミナ市内、とある酒場にて。

先の不祥事でその立場すら危うくなっていた、アルジャン・コション警察総監は、

数名の警視監を引き連れ酒を飲んでいたのであった。

 

「くそっ…!あと一歩のところだったのに…トリッカーズのガキどもめ!」

「あいつらが邪魔さえしなければ、この計画も上手く行っていたんですがねェ」

「しかしどうするんです?マスコミももう騒ぎ立ててますよ」

 

警視監の言葉に対しアルジャンは、半ば酔っていたのかこう答えた。

「いいか、我々は何一つ疚しいことなどしていない。あくまでも市民の安全と平和のためだと言い張るのだ」

「はぁ、しかしそんなことして大丈夫なんですかね」

「知ったことか!とにかく何かの間違いだということにしておけ!これは命令だ、いいな!」

と、部下に対して怒鳴り散らすアルジャンのもとに、一人の女性ロボットが現れた。

 

「取り込み中失礼いたします。隣、よろしいですか?」

「なんだ、誰かと思えばアイヴィー・ヒルトン警視監ではないか。用件はなんだ?」

「先ほどお話しされていたことについて、少々お伺いしたく存じまして」

その女性ロボット、アイヴィー・ヒルトンはアルジャンを見つめながら話を続ける。

まるで何かを見透かしたような眼差しで…。

 

「フン、その件か。君も聞いているだろう。あれは何かの間違いだ。そういうことにしておけ、わかったな」

しかしアイヴィーはその言葉を聞くやいなや、鋭い眼差しをアルジャンに向けこう切り返した。

「それはご自分の立場を守りたいから、ですか?」

「ロボット風情に私の気持ちなどわかるものか。とにかく今までのことは全て誤解だ。私は何もやっていない!」

と、やや自棄気味になっているアルジャンだったが…

 

「では、これを見ても同じことを仰るおつもりで?」

と、アイヴィーは制服の内ポケットからメモリスティックが入ったケースを取り出した。

そして、そのケースには一枚の手紙が添えられていた。

"親愛なる警察関係者へ…アルジャン・コション総監に関する記録をここに贈ります トリッカーズより愛を込めて"

「フン、私に関する記録だと?冗談はやめたまえ。総監室は厳重なセキュリティが敷かれているのだ。そもそも私はファンガルド市民のために全力を尽くしてきたのだ。疚しい事などは何一つしてはおらんよ」

「ですが、このメモリスティックにはあなたの行動に関する記録が入っています。本庁のスーパーコンピュータに残されたデータがね。最初は私も何かの冗談かと思いましたが」

「ならば私を疑う決定的な証拠にはならんな。コンピュータのデータなどというものは消去すれば痕跡は残らんからな」

しかし一歩も引かないアイヴィーは、そのケースに添えられていたもうひとつの書類を取り出すと、アルジャンに突きつけて言った。

 

「では、ここにあるこの契約書の束は何なんですか?」

「フン、偽造に決まっている」

「果たして本当にそうでしょうか?…怪しいと思って鑑識に回してみたのですが、私もにわかには信じられませんでしたよ」

と、アイヴィーはため息をつくと、今まで見せたことのない恐ろしい目つきでアルジャンを睨むように見つめながら言い放った。

「書類についていた汚れから、あなたのDNA情報が出てきたということがね!」

「なっ…」

「調べましたよ。隅から隅までね。ある時は機動隊演習の準備と偽って商業地区を破壊。さらに特殊部隊の隊員に対する薬物の投与、そしてその薬物をめぐるマフィアとの密約…」

「うっ、うう…!?」

次々に暴かれる悪事に、それまで威張り散らしていたアルジャンの顔が青ざめていく。

「まったく…何が『市民のため』ですか。あなたのしてきたことは、守るべきはずの市民を裏切るばかりか、尊い命を奪っている…」

「くっ……!!」

「これだけの悪事をしでかしては、市民に合わせる顔などあるはずがありませんよね?…『もと』総監殿」

 

アイヴィーの言葉に動揺するアルジャンは、開き直るかのように大笑いした。

「ククク…ハハハハハハ!まさか私を逮捕するというのかね?面白い冗談だな、ええ?」

「これは冗談ではありませんよ…こちらをご覧ください」

と、アイヴィーはさらに内ポケットから書類を取り出す。

どうせまたくだらん茶番だろう、と作り笑いを浮かべていたアルジャンだったが、その書類を突きつけられた瞬間、表情が一変した。

「ま…まさか…!?」

「冗談ではないと申し上げたはずです。司法局から正式に発行されたあなたの解任通知書です。これが発行されたということはつまり…」

「あ、あ…」

「…この時点であなたは、全ての権限を失った。あなたはもう総監ではなくなったということです」

あまりの理不尽にアルジャンの顔が引きつる。その顔は汗だらけだった。

「そんな、バカ…な…」

「そして…」

さらにもう一枚、アイヴィーは書類を取り出した。それは―――

『=逮捕状= 被疑者氏名:アルジャン・コション 被疑事実の要旨:別紙の通り 上記の被疑事実により、被疑者の逮捕を許可する ファンガルド最高司法局』

「…アルジャン・コション、贈収賄、建造物破壊、特定薬物取締法違反、および特定犯罪組織取締法違反等の容疑により…あなたを逮捕します」

アイヴィーは、逮捕状を突きつけながらアルジャンに近づいていく。

恐怖と絶望で混乱に陥ったアルジャンの顔は引きつり、その目には涙が浮かんでいた。

「ま、待て…待ってくれ!頼む!見逃してくれ!!」

「見逃す?アレだけの悪事を働いたあなたを私が?…あなたはまだご自分の置かれた状況がわかっていないようですわね…」

「私がどんな思いでここまで上り詰めてきたか…死に物狂いの努力をしてきたんだ!それをここで全部失うなど…私には、耐えられない!!どうか見逃してくれ!助けてくれ!!頼む!!」

大粒の涙を流しながら必死に叫ぶアルジャン。泣き落としに入って相手の油断を誘うつもりなのだろう。

しかし、アイヴィーは一歩も引き下がることなくアルジャンを追い詰めていく。

「確かに人間が相手ならば…泣き落としで相手の同情を誘い、その隙に逃げることも出来たでしょうね、でも…」

と、一気に右腕を伸ばし、アルジャンの左肩に掴みかかると、アイヴィーは静かに、しかし強い口調で言った。

 

「お生憎様…私はロボットです。あなたがあれほど嫌っていた、冷たい機械の身体のね」

「うっ…くっ……!」

アイヴィーの気迫に押され、もはや返す言葉もなく、がっくりとうな垂れるアルジャンの腕には、やがて手錠が嵌められたのであった。

 

この前代未聞の不祥事、そしてその当事者であったアルジャン・コションの逮捕…。

そして彼に近かった部下の相次ぐ逮捕は、ファンガルド星全体を騒然とさせた。

市民を守るはずの警察が、市民を裏切っていた。

しかも、その警察の総監ともあろうものが犯罪に手を染め…結果、逮捕されてしまったのだから。

事実、アルジャンの逮捕が決まった瞬間、ファンガルド市民からは歓喜の声が上がったくらいである。

この一件以後、ファンガルド・プラネットポリスは大きな転換期をむかえることになる。

犯罪組織との癒着を徹底的に撲滅し、組織としての体質向上、改善が強く求められるようになった。

そして、プラネットポリスにはもう一つ、前代未聞の出来事が起こった。

それはなんと、ロボットが総監の座に就いたことである。

今までロボットは、警察の最高職たる総監の座に就いたことがなかっただけに、警察史上に残る最大の事件として大いに注目された。

そして、そのロボットは―――。

数日後。

ラミナ警察署のK-9ルームに、マキ・ロックウェル署長が入ってきた。

「みんな聞いた?今度新しく就任された総監が初めて本署を訪問されるそうよ」

「新しい総監がですか?」

マキの言葉に真っ先に反応したのはK-9隊の隊長ロボット、エルザ・アインリヒト。

そしてさらにイシス・トライスターと九段下久遠が続く。

「新しい総監…?」

「一体どんな人なの?」

その言葉を聞いたマキ署長は、

「ふふっ」

と、もったいぶったように微笑むと、

「新しい総監はロボットだそうよ。まあ、実際に説明するより会えばわかると思うわ」

すると、K-9ルームの入口にフィーア・天神が現れ、マキ署長に敬礼をする。そして、

「署長。総監がお見えになりましたわ」

と、ニッコリ笑顔で報告した。超 五華がそれに反応する。

「へえ、その総監どのはどこに?」

するとその言葉を待っていたかのように、フィーアの背後から一人のロボットが現れてこう言った。

 

「K-9隊のみんな、元気かしら?」

「え…ええぇぇぇぇええええええ!?」

 

そう、そのロボットこそ…彼女こそが先のアルジャン逮捕で大手柄をあげ、

今回新たにファンガルド・プラネットポリス総監に就任したアイヴィー・ヒルトンその人だったのだ。

 

「というわけだから…よろしくねっ。ラミナ署の諸君!」


 
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