No.398424

異世界冒険譚 月殺し編 其の漆 差し伸べた手

RYOさん

交通事故によって死んでしまった主人公。しかし、それは神の弟子が起こした事故だった!?主人公はなぜか神に謝られ、たくさんの世界へ冒険する。

2012-03-26 21:33:21 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:5304   閲覧ユーザー数:5189

yukito side

 

「1回目の訴えでうまくいくとは思ってなかったけど予想以上だな」

 

児童相談所に沙都子の事を訴えたが反応はあまり良くなかった。相談所の人には客観的に判断して保護の必要が無いと言われた。あの親父が客観的にセーフだったらどんなのがアウトなんだよ?

 

俺はクラスメイト達を見る。

 

「梨花。クラスの皆はまだ諦めてないぞ。逆に燃えたみたいだ」

 

「そうね」

 

梨花はクラスの皆を見ながら少し驚いたような顔をしている。

 

「梨花がこれまでの世界の中でどんな努力をして失敗をしてきたのかは俺は知らない。どれだけ辛かったのかも俺には分からない」

 

俺の言葉を聞いて梨花が俺を見つめてくる。

 

「辛いとは思うけど簡単に諦めないでほしいんだ。そして、皆を信じてやってほしい」

 

「信じる……」

 

「そう、信じてほしい。あの仲間のために頑張れるあいつらを」

 

俺はクラスメイトや圭一たちが居るほうを見る。相談所の態度で落ち込むどころか逆にやる気を出したように見える。

 

児童相談所の対応があれだったおかげでクラスの皆は更にやる気を出してくれたから良かった。熱血に対応してくれた実は何もしてくれませんでした。とかだったら最悪だしな。

 

「皆初めての経験なんだよ。全員で力を合わせてクラスメイトのために戦うって事が」

 

やる気を出したクラスの皆を見ながらレナが言う。

 

「一人には二人で石を投げ、二人には四人で四人には八人で、八人には十六人で、千人には村すべてで立ち向かえ……か」

 

「なぁに? 諺?」

 

魅音が呟いた事にレナが聞いた。

 

「ダム戦争のときに使われたスローガンらしいです。村全体で結束して戦えって」

 

詩音が説明する。

 

「それだけではありませんよ。一人の痛みを村人全員で共有し、我が身と思って戦おうという意味があるのです」

 

知恵先生が補足する。

 

「今の私たちには凄く重みのある言葉だね!」

 

「雛見沢の心意気ってやつか……諦める訳にはいかないな」

 

レナと圭一が言う。

 

「でも、今日と同じメンバーで押し掛けても『またか』で終わりだよ?」

 

魅音が皆に聞く。

 

「じゃあ、今日よりももっと大勢で行けば良いって事かな? かな?」

 

「それしかないと思う。他に方法が無いから」

 

レナの言葉に俺が返す。

 

「魅音。子供以外の戦力ってのはやっぱり絶望的なのか?」

 

圭一が魅音に聞く。

 

「う~ん。町会関係は北条に関わりたくない人が多いからね」

 

「今でも皆、北条家を罰当たりだと信じていますから」

 

魅音が圭一の問いに答え、詩音が補足する。

 

「ダム戦争以来のしがらみ……か」

 

圭一は何かを考えた後、にやりと笑った。

 

「しょうがねえ、俺が集めるしかねえな!」

 

その日、圭一はエンジェルモートで亀田君たちを仲間に、詩音がエンジェルモートの店員達を連れてきて俺達の人数は60人を超えた事をここに記しておく。

 

 

次の日

 

今日も沙都子は学校に来なかった。俺達は沙都子が無事である事を祈り、相談所に向かう。

 

相談所も50人を超えた人間が来た事にかなり動揺しているがまだ動いてくれていない。結局、今回も駄目だったよ。

 

この人数で来ても動いてくれないってことはやっぱり難しい問題なのかな? でもなんとしても沙都子を助けなきゃいけない。悪く思わないでくれよ? 児童相談所の皆さん! ……と、意気込んだがそこで問題が起こった。

 

圭一と亀田君が相対する。

 

「明日は来れない、だと!? 何故だ!? 言ってみろ!」

 

圭一は亀田君に怒鳴りながら聞いた。

 

「すみませんK」

 

亀田君はあることがあってから圭一を『K』と呼んで慕っている。何故彼が圭一を慕っているのかは本編の祟殺し編を見てくれれば分かると思う。

 

「明日はデザートフェスタなんですよ。 デ・ザ・フェ♪ 人数限定、一日限りのプラチナチケットを無駄にしろって言うんですか!?」

 

どうやら亀田君は少し考えが甘かったようだ。普通に考えたら高校生で相談所に陳情しに行くなんて無い事だからしょうがない事なのかもしれない。

 

「てめえ! 指導指導指導!」

 

亀田君の言葉に怒った圭一が亀田君にうめぼしを食らわせる。

 

「ひぃぃ! 許してくださーい! ガクガクブルブル!」

 

無茶苦茶怖がってるな。

 

「け、圭一君。明日は勘弁してあげても良いんじゃないかな? かな?」

 

「いいや! ダメだ! 少女とケーキを天秤にかけるやつは外道だ! この二つのあまあまスイーツに国境は無い! 切っても切り離せない一心同体の存在なのだ! よって少女を救えないやつに生クリームを愛でる資格は無ーい!」

 

ガーン!!!! そんな効果音が聞こえてきそうなほどショックを受ける亀田君。

 

「俺が間違ってましたー!」

 

圭一に言われた事にショックを受けた亀田君はそう言って土下座をしてきた。

 

「さすがは圭一! 俺に出来ない事を平然とやってのける! そこに痺れる憧れるぅ!」

 

さすがは口先の魔術師やでえ!

 

「K! 沙都子ちゃんを救うにはもっと人数が必要なんですよね!?」

 

「ああ!」

 

亀田君の言葉に圭一がうなずく。

 

「話は聞こえていたな!? 同士諸君!」

 

「「「「おお!」」」」

 

亀田君が周りに向かって叫ぶと周りに居た人間も同意の声を上げた。どうやらエンジェルモートの常連客のようだ。

 

「…………これは……皆! 俺と共に来てくれるのか!?」

 

圭一は立ち上がった常連客を見渡して聞いた。皆、圭一についてくるようだ。

 

「「「「「おおおお!」」」」」

 

どうやら結束が強くなったようだ。

 

 

更に次の日

 

沙都子が登校してきた。俺達にとっては嬉しい事だがその嬉しさは沙都子を見た瞬間に吹き飛んだ。

 

沙都子は生きた人間とは思えない目をしていた。普通の人間であれば宿している光が宿っていなかった。肉を求めるリビングデッドのほうが生きていそうだ。そう思えるほどの目を沙都子はしていた。

 

「三日間、熱が下がらなかったんですの」

 

そう言って沙都子は自分の席に向かった。

 

「熱の事なんて誰も聞いてないのに……」

 

「たぶん、叔父さんからそう答えるように強く脅されてるんだと思う」

 

魅音の呟きにレナが返す。

 

「こうして登校を許したって事は沙都子を一人で外出させても自分の不利にはならないって確信したんだろうね」

 

「そんな! 調教を終えた動物じゃあるまいし! 酷過ぎます!」

 

魅音と詩音の言葉を聞いて圭一が沙都子へ向かって歩いていく。

 

一応、藤隆や他の分身たちが監視している時に酷いことは暴力以外はやっていないみたいだが……子供じゃあかなり辛いはず。

 

『羽生、沙都子は一年前に叔父夫婦から暴力以上のことはされなかったのか?』

 

「はい。沙都子は暴力以上のことはされていません」

 

羽生はそう言いきった。

 

『それは確実か?』

 

「はい。私の名に懸けて確実です」

 

『そうか』

 

よかった。そう思って俺は息を吐く。そんな事を沙都子がされていたら、この雛見沢に居られないこと覚悟で鉄平を潰していた。男の勲章的な意味で。

 

圭一と沙都子を見ると圭一が沙都子の頭を撫でていた。沙都子が圭一を突き飛ばさないという事は叔父がそこまで酷い暴力は振っていないって事か。

 

圭一が沙都子の頭を撫でると沙都子の瞳から涙があふれる。涙は頬を伝わり落ちる。

 

「沙都子ちゃん。今は泣いても誰にも言わないよ」

 

レナの言葉で沙都子は涙を流す。

 

「あたしたち、児童相談所に訴えてるんだ。沙都子を一刻も早くあいつから取り戻してほしいって」

 

「しかも、俺達だけじゃない。クラス全員が戦ってくれるんだ」

 

「僕達は諦めませんよ!」

 

「また一緒に遊ぼうよ!」

 

魅音も圭一も富田と岡村も沙都子を説得しようと声をかけている。しかし、皆の必死な説得とは逆に沙都子の表情は沈んでいく。

 

「だから……相談所の人が来ましたのね?」

 

ポツリと沙都子は言った。

 

「ひょっとして相談所の人が来た事であいつ、何かしたんですか!?」

 

詩音がそう聞くが沙都子は俯いて何も答えなかった

 

「本当に大丈夫ですから」

 

「嘘だよ!」

 

レナが沙都子の言葉を否定する。

 

「沙都子ちゃんは大丈夫なんかじゃないよ! 皆が知ってるよ! 皆が助けようと手を差し伸べている! 私もね? 昔そうだったから分かるの。どうせ誰にも自分は救えない。だから、自分がしている事が最善だと勝手に思い込んで仲間が差し伸べてくれた手を掴めなかった。でも、本当に選びたかった世界にたどり着くにはお互いに手を差し伸べなければダメなの!」

 

そうだ。行きたい世界に、仲間と一緒に行きたい世界に手を取り合わずに行ける筈が無い。仲間が差し伸べた手を振り払って行き着いた世界に仲間が居るわけが無い。

 

「誰かがそう教えてくれたの」

 

圭一がレナに言ったんだ。圭一は疑心暗鬼で何も信じなかったレナの心を融かした。あんなに怯えたレナを説得できるなんてやっぱり圭一は俺の師匠に相応しい。

 

「だから、ね? 手を伸ばして!」

 

そう言ってレナは沙都子に手を差し出す。

 

「俺達は助けたい! だが、あと僅かが届かない! だから掴め! お前が掴むんだ! あとは引っ張りあげてやる!」

 

圭一も沙都子に手を伸ばす。

 

「沙都子、俺は雛見沢に来てから一年も経っていない。それでも皆の事を仲間だと思ってるんだ。だから、今苦しんでる仲間を助けたい! 俺の……俺達の手をとってくれ!」

 

俺も手を伸ばす。

 

「ありがとうですわ。 本当に、ありがとうございますわ。でも……」

 

そこで沙都子は急に怯えだした。叔父が来る。そう言って沙都子は半狂乱になり違うと言っても聞かなくなった。梨花が何とか沙都子を落ち着かせて寝付かせた。

 

……どうやらもうタイムリミットは近いらしい。もし、俺がこの世界に来たことでこのまま何も進展せず沙都子が危なくなったら……その時は。

 

 

次回予告

 

 

時代の風は魔法少女に吹いている!

 

……何を言っているのですか? 梨花

 

最近魔法少女に限った話じゃないけど強い女の子がでる作品が多いじゃない?

 

そうですねー。でも、それがどうかしたのですか?

 

つまり最近は強い女の子が持て囃される時代! 肉食系女子の時代!

 

ふむふむ。

 

だから私も強くなって見る事にしたわ!

 

なぜ?

 

赤さk  そうだと思いましたよ! やめてあげてください!

 

まあ、その事は抜きにしてもそろそろ自分の力で運命の袋小路を打ち破ってみようと思ってね。

 

それで魔法少女とか言い出したのですか。

 

そうよ。さて、ここに魔法のコンパクトがあります。

 

そ、それはまさか……

 

テクマク  アウトーーーー! アウトなのですよーーー! というか梨花が魔法を使い出したらある人と見分けがつかなくなるので止めてください。

 

ちっ。しょうがないわね

 

 

次回

 

月殺し編 其の捌

 

看破

 

 

というか1○才にもなって魔法少女ってありえないわよね。しかも、凄い脳筋だし。そんなんだから魔王とか冥王とか言われるのよ

 

梨花ああああああ!

 

 

 

 

 

 

っ!?

 

なのは?

 

今、誰か私の悪口言った?

 

!!? 言ってないよ! 誰も言ってないって! だからいくら犯罪者だからってスターライトブレイカー撃つのは止めてあげて! 犯罪者の皆さん逃げてええええ!

 


 
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