No.396378

IP〜インフィニット・ストラトス・パラドックス〜 第六話



ダメだ・・・いろんなことにやる気が出ない。一人は寂しいって感じてるのかな?自分のことが一番わからない・・・

2012-03-22 20:50:00 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2082   閲覧ユーザー数:2028

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、逃げずに来ましたのね」

 

「逃げる理由もないしな」

 

 

試合開始のブザーは既に鳴っているのに、話しかけてくるとはね〜。・・・・・馬鹿?

 

まあ、いいや。俺もおとなしく待ってあげますか。

 

 

「最後のチャンスをあげますわ」

 

 

オルコットがビシッ、と人差し指を俺に向けて突きだして言う。

 

 

「わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理。ですから、ボロボロの惨めな姿を晒したくなければ、今ここで謝るというのなら、許してあげないこともなくってよ」

 

 

——警戒、敵IS操縦者の左目が射撃モードに移行。セーフティのロック解除を確認。

 

・・・やれやれ、何がチャンスなんだか・・・・

 

 

「・・・・知ってるか?オルコット」

 

「あら?謝る気になったのですか?」

 

「・・・・日本にこんな言葉がある。『弱い犬ほどよく吠える』」

 

「なっ!?」

 

「御託はいい。かかってきたらどうだ、サニーガール?」

 

「サニー・・・・青二才ですってっ!?・・・もう我慢なりませんわっ!!徹底的に痛めつけてあげますっ!!」

 

 

そう言い放つとオルコットは手に握られている2メートル超えの銃器——検索、六七口径特殊レーザーライフル≪スターライトmkⅢ≫——から閃光を放つ。

 

俺はそれを半身になってかわす。そしてオルコットの死角になってる手から『黒雷』を取り出す。そして数発、放つ。が、オルコットは普通にかわす。

 

 

「このわたくしに銃撃戦を挑む気ですかっ?笑止ですわっ!!」

 

 

そう言い放つと、オルコットは、空いている右手を横に振り、『ブルー・ティアーズ』のフィン・アーマーに付いているビット、4機がパージされ、宙を舞う。

 

 

「さあ、踊りなさい。わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!」

 

「生憎とダンスは得意ではなくてな・・早めに切り上げるとしよう」

 

 

ビットからの絶え間ないレーザーの弾雨が俺に降り注がれる。しかも一つ一つが俺に正確に向かってくる。

 

俺はそれを翼にあるスラスターを瞬時に連続して噴出し、細かく動くことで完璧にかわし切る。

 

 

「なっ!?」

 

「言っただろう?早めに切り上げるとな」

 

 

おおう・・・・ぶっつけ本番の動きだったけど、なんとか出来たぜ・・・・・

 

俺は拳銃をしまい、ショットガンを取り出す。そしてオルコットが驚いたことで動きが止まっているビットに向けて数発、打ち込んで破壊する。

 

 

「残り3つ」

 

「っ!?・・くっ!!」

 

 

ビットを落とされたことに驚いたのか、再びレーザーを大量に放ってくる。

 

 

「同じ手は二度は喰らわない」

 

 

再び、レーザーをかわしビットに一気に近づく。そしてショットガンを至近距離で放つ。

 

 

「くっ!?また・・」

 

「残り2つ」

 

 

今度は遠距離からのビット攻撃。・・・・・まあ、ビットとライフルともう一つしか武器ないもんな・・・

 

俺はそれをかわしつつ、ショットガンをしまう。そして『黒嵐』を取り出し、ひたすら連射しまくる。

 

・・乱れ撃つぜぇぇぇぇっ!!!!!

 

・・・・・・ごめんなさい。言ってみたかっただけです・・・・・・でも、実際は言ってないもんねっ!

 

そしてそのまま残りの2つとも一気に破壊する。

 

 

「・・これで全部」

 

 

俺は『黒嵐』をしまい、雪片弐型を取り出す。ビットを破壊されたことに怯んでるオルコットに向けて突っ込む。

 

 

「かかりましたわねっ!」

 

 

不意にオルコットが笑った。そしてその腰部に広がったスカート状のアーマーから突起が外れ、動いた。

 

 

「残念でしたわね。ブルー・ティアーズは六機あってよ!」

 

 

しかもさっきの四機と違い、レーザー射撃型ではない。これはミサイルだ。

 

だけど、

 

 

「ああ。知ってるさ」

 

「え?」

 

 

俺は翼にあるレールカノンを展開。そしてミサイル目がけて放つ。すると、俺が放った弾丸はそのままミサイルに激突し貫通した。

 

そしてそのまま突き進み。オルコットに激突した。

 

 

「きゃあっ!」

 

 

俺はその隙に零落白夜を発動。すると、雪片弐型が輝きだした。

 

・・・・零落白夜・・まさにISにとっては一撃必殺。・・・・うん、チートだよね〜。

 

 

「・・・・お前の罪は二つ」

 

 

オルコットは慌てて体勢を立て直し、ライフルを連射してくるが、俺はそれをかわしつつ突っ込む。

 

そして一気に切り捨てる。

 

 

「男を馬鹿にし過ぎたことと驕っていたことだ。・・・さあ、お前の罪を数えろ」

 

 

驚愕に染まったオルコットの目を見ながら、俺はその言葉を突き付けた。

 

 

『試合終了。勝者、織斑一夏』

 

 

・・これにて一件落着、ってか?・・・・・・ってやばっ!?

 

一息ついた俺の目に飛び込んできたのはISが解除されて、自由落下していくオルコットだった。

 

俺は慌ててオルコットの元へ飛んでいき抱きかかえる。・・・やれやれ、気絶してるのか・・・・

 

仕方がないので、そのままビットに行くことにした。

 

 

 

 

 

 

「いい御身分だな。織斑・・」

 

 

ビットに着き、ISを解除すると、俺の耳に何やら不機嫌そうな声が入ってきたので、何事かと思いそちらを見る。

 

そこには何故か不機嫌になっている織斑先生と箒、そして何故かうらやましそうにこちらを見る山田先生の姿があった。

 

 

「どうやら俺に切られた衝撃で気絶をしているようなので、ここまで運んできました。保健室に運んでください」

 

「・・・・・・・分かった」

 

 

・・・なんで返事が遅いわけ?

 

俺は救護の人にオルコットを渡すと、改めて織斑先生達に向き合う。

 

 

「では、失礼します」

 

「・・・・待て、織斑」

 

「何か?」

 

 

そのまま更衣室に行こうとすると、織斑先生に呼び止められたので、振り向く。そこには顔を若干赤くした織斑先生がいた。

 

 

「・・・その、なんだ・・・・よくやった」

 

 

・・・・・え?何このかわいい生き物?

 

・・・・・・・・というか、滅茶苦茶嬉しいんですけどっ!!!いや、だって日頃ほとんど褒めてくれないんだよっ!?

 

千冬姉さんが褒めてくれて嬉しくなった俺は笑顔で返事をする。

 

 

「はい、ありがとうございました。織斑先生」

 

 

そして今度こそ更衣室に向けて足を運んだ。・・・・どうやら今日は最高の日みたいだっ!!

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「・・・・あの笑顔は反則だろう」

 

「・・ですね」

 

「・・・・はい」

 

 

そして一夏がいなくなった後、顔を真っ赤にした女性が3人いましたとさ。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「・・・・・ここ、は・・?」

 

「む、起きたか。オルコット」

 

 

ベッドの脇に置かれていたパイプ椅子に腰掛け雑誌をめくっていた千冬がセシリアが意識を取り戻した事に気付き顔を上げた。

 

 

「・・・・・織斑先生? そうですわ、試合は・・・・・っ!」

 

「お前の負けだ、オルコット。そしてお前は織斑に斬られた衝撃で気失って落下したところを助けられたんだ。後で一応礼を言っておけ」

 

「は、はい・・・・」

 

「起きたなら、もう大丈夫だな。部屋に戻るといい」

 

「分かりました・・・」

 

 

そう言った後、千冬は保健室を出て行った。そしてセシリアも部屋に戻ることにした。

 

部屋に戻ったセシリアは、汗を流すためシャワーを浴びることにした。

 

 

サアァァァァ・・・

 

 

シャワーノズルから熱めのお湯が噴き出す。水滴は、白い肌に当たっては弾け、流線美なボディラインをなぞるように流れていく。

 

シャワーを浴びながら、セシリアは物思いに耽っていた。

 

今日の試合のことだ。

 

 

(負けた・・・・しかも圧倒的大差で・・・)

 

 

事実、一夏はダメージをほとんど受けておらず、精々かすった程度ぐらいしか喰らっていなかった。

 

 

(・・・・・・織斑、一夏・・・・)

 

 

あの男子のことを思い出す。

 

 

『さあ、お前の罪を数えろ』

 

 

バイザーをしていたのに何故か感じた、あの強い意志を宿した瞳を・・屈することなく自分に向かって来たあの姿を。

 

他者に媚びることのない眼差し、堂々とした風貌。それは不意にセシリアの父親を逆連想させた。

 

母は強い人だった。

 

女尊男卑社会以前から女の身でありながらいくつもの会社を経営し、成功を収めた人だった。厳しい人だった。けれど、憧れの人だった。

 

それに対して父は、いつも母の顔色ばかり伺う人だった。名家に婿入りしたせいか、母に多くの引け目を感じていたのだろう。 いつもオドオドしている父親を見て『情けない男とは結婚しない』という思いを幼い頃から抱かずにはいられなかった。

 

その両親は、もういない。・・・三年前に事故により他界したのだ。

 

越境鉄道の横転事故。その日に限って何故一緒にいたのかはわからない。けれどとてもあっさりと、両親は帰らぬ人となった。手元には莫大な遺産が残った。

 

そして、周りには金の亡者が群がった。

 

セシリアは遺産を金の亡者から守るため、ありとあらゆる勉強をした。その一環で受けたIS適性テストで『A+』が出た。政府は国籍保持のためにいくつもの好条件がだされ、両親の遺産を守るために、即断した。

 

第三世代装備ブルー・ティアーズの第一次運用試験者に選抜され、稼働データと戦闘経験値を得るために日本に、IS学園にやって来た。

 

 

「・・・・わたくしの、罪・・」

 

 

それは分かってる。一夏が言ってたし、今までの自分の行いを振り替えるとよくわかる。では、これからどうすればいいのか、それが分からない。

 

 

「・・・・でも、きっと聞いてはいけないのでしょうね・・」

 

 

おそらく、それを考えることも罪を数えること。

 

 

「では、まずその一歩を踏むために・・」

 

 

自分の惚れた男のことを知らなくては・・・・

 

そう呟いたセシリアの顔には笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 


 
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