No.395761

仮面ライダーディージェント

水音ラルさん

第50話:女王蜂VSマスクドライダーシステム第0号

2012-03-21 16:09:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:843   閲覧ユーザー数:843

白い髪の少年…“被検体”と称されるモノは必死になって逃げ、現在人気のない廃工場が立ち並ぶ港まで来ていた。

 

あの時、本能の赴くままにワームを倒すも、その場で倒れてしまった。それが原因で、ZECTに場所を勘付かれてしまったのだ。

何故ワームを見る度に闘争本能が湧くのか分からないし、分かりたくもない。自分をこんな風に造ったZECTの事だって……。

 

被検体は後方から追って来る二体のゼクトルーパーと、リーダー格と思われる女を何とか撒き、更に遠くへ逃れる為に曲がり角を曲がる。

 

「こっちに来たぞ!確保しろ!」

「ッ!?チィッ!」

 

しかし曲がり角で既に複数のゼクトルーパーが待ち伏せており、被検体は一瞬狼狽するもすぐに舌打ちをしながら反対側に逃げるのではなく逆に突っ込んで行く。

 

「なっ…!?」

「はぁっ!」

 

予想外の行動に驚いた隊員達を余所に、常人ではありえない跳躍力で大の大人の身長を飛び越し、地面に着くと同時に再び駆け出す。

 

「くっ…仕方ない、撃て!ただし絶対に殺すな!!」

 

ゼクトルーパーの一人が他の隊員にそう叫ぶと、各々の右腕に装着されたマズル銃でこちらに狙いを定めて追撃してきた。

 

「くぅっ…!」

 

その弾幕を右に跳んでかわして廃工場の窓を派手な音を立てながら割って中に入ると、更に奥へと進む。

廃工場の中は意外と入り組んでおり、上手くいけば何とか追手を撒けそうだ。

 

「やはり、ここで待ち伏せて正解でしたわね」

「…ッ!?」

 

しかしそれも上手く行く事もなく、リーダー格の女はこうなる事を予測していたのか、既に廃工場の中央に一人で待ち構えていた。

 

そして女と対峙している隙にゼクトルーパー達が二人を取り囲み、被検体の行く手を阻む。こうなってしまえば、もう戦う以外の選択肢は残っていない。

 

「チッ!ゼクター!!」

 

そう叫んで右手を上に掲げると、何処からともなくダークカブトゼクターが数人のゼクトルーパーに体当たりを仕掛けて吹き飛ばしながら飛来し、被検体の手中に収まる。それと同時に腹部にZECTのロゴマークの入ったバックルがジョウントされ、変身準備が整う。

 

「全員待機してなさい。私一人で十分ですわ」

 

女もこちらと同じく右手を掲げると、スズメバチを模したのライダーゼクターが飛来し、キャッチする。

予想はしていたが、やはりこの女もマスクドライダーの一人の様だ。

 

「理解なさい。貴方はカブトを倒すための唯一の希望ですわ。ここで反抗しても仕方ありませんの」

「俺は…道具なんかじゃない!変身!!」

 

[ヘン・シン]

 

音声コードを叫びながらダークカブトゼクターを右からバックルへと勢いよくスライドし、ゼクターがバックルにセットされたことを認識して電子音を鳴らす。

瞬く間に被検体の身体は銀と赤の重厚な装甲に包まれ、仮面ライダーダークカブト・マスクドフォームへと変身を遂げる。

 

「では実力行使で分からせて差し上げますわ。変身」

 

[ヘン・シン]

 

対するリーダー格の女も変身コードを唱えながら、左手首に装着されたブレスレットに蜂型のゼクター…通称、ザビーゼクターをカチリとセットする。

するとその箇所から女の身体が装甲に包み込まれ、今の自分と酷似した姿に変化する。

 

銀色の重厚な胸部装甲・ビーハイチェストに、頭部にはV字のアンテナの下に蜂の巣のような形状の黒い複眼・ビーハイヴァイが備え付けられている。

更に所々に黄色いペイントが施されており、何処となく蜂をイメージさせるデザインのライダーだった。

 

仮面ライダーザビー・マスクドフォーム。それが彼女の今の名前だ。

 

「さて、貴方は私と何時まで踊れまして?」

「ほざけぇ!」

 

まるで踊りにでも誘うかのようにお辞儀するザビーに、ダークカブトは腹立たしそうに叫んで戦闘を仕掛けた。

 

 

 

 

 

ディシードとカブトは、サソードを撃退してそこから遠退いた後、カブトの実家がある港区のとある店の前まで来ていた。

その店の暖簾には「天堂屋」と書かれており、彼と同じ名字なだけあってすぐにこの店が彼の実家なのだと察しがついた。

 

「ここがソウジさんの実家ですか?」

「ああ。今は俺のおばあちゃんと妹が二人で切り盛りしてるんだ」

 

戸が閉まってる為に中の様子が見えないが、決して開けようとしてはならない。

もしクロックアップ空間にいる自分たちがこの戸に触れれば、その瞬間に戸が粉々に砕け散るからだ。

 

今の自分達は例えるなら意思を持った銃弾だ。普通に動いているだけでも、通常空間では銃弾とほぼ同じ速度で動いてるくらいの速度なのだ。

そんな物がこの薄い戸に手を掛ければ、それだけで簡単に砕けてしまう。

カブトもその所為で何度か建物を壊してしまってるようで、それが人類の敵と称される原因にもなっているのだとか。

一体この店は何の店なのか分からないが、カブトから聞いた話だとおでん屋を営んでいるそうだ。

 

成程、確かにそれらしい節はいくつかある。

カブトは何かの格言を言う時、とにかくおでんで例えたがる。

初めて会った時にもおでんの話題を出してたし、妹の事を話す時も「マユは玉子の様に白く、そして中身のある人間だ」と言ってたりと…とにかく色々だ。

 

「何だか、寂しいですね……。目の前に大切な人がいるのに、触れる事も顔を見せる事も出来ないなんて……」

「……そうだな」

 

ディシードは今の状況に悲壮感を感じ、思わずそう呟くと、カブトは一拍の間を置いてそう返事を返した。

 

「あっ!すいません!嫌な事言ってしまって…!!」

 

カブトのその様子を見て、ディシードは言ってしまった事は失敗だったと悟った。

 

カブトは自分よりも長い間この状況に置かされているのだ。ディシードだってこの空間から出て元に戻りたいと思っているのに、彼は未だに耐え続け、こうして人の目に触れられる事もないこの空間で二年間もの間独りでいたのだ。彼の方が自分よりも辛いに決まってる。

 

「いや、いいんだ。ただこうして俺の帰るべき場所があるだけでも、俺にとっては十分だからな」

「ソウジさん……」

 

仮面で見えなくとも、カブトの素顔がはにかんでいる様に思えるほどに、清々しい声色だった。

本当は誰よりも辛い筈なのに、自分に心配を掛けまいとこうして明るく振る舞っている。

 

「ん?アレは……」

「どうしたんです?」

 

ふとカブトが何かを見つけて呟き、ディシードもカブトの見ている方向へ振り向くと、そこには先程サソードと一緒にいたザクトルーパーと呼ばれるZECTの隊員が走っているのが目に入った。

ただしその色は先程見たゼクトルーパーと違い全身黒尽くめになっており、走ってるとは言えどもクロックアップ空間にいるこちらから見れば、テレビの一時停止を見ているようにしか見えないのだが……。

 

「ここにもZECTが……。まさか、私達を追ってここに…?」

「いや、アレは第一小隊の…ザビーのお嬢さんの管轄の隊員だ。如何やら俺達とは別の奴を追って出動しているみたいだな」

「それって、ワームですか?」

「多分な。クロックアップの反応がない所から見ると、まだサナギ態の様だが、今の内に倒しておくに越した事はない。彼の向かっている先に向かうぞ」

「はい!」

 

駆け出したカブトの判断に従って、ディシードも彼の後に付いて天堂屋の前を後にした。

 

 

 

 

 

ダークカブトとザビーの戦闘は苛烈を極めていた。

 

ダークカブトがザビーとの距離を縮めて殴り掛かるが、相手はそれを軽く片腕で受け流し、更に肘打ちを顔面に当てようとカウンターを仕掛ける。

 

しかしダークカブトは左腕で弾き飛ばして反撃を阻止し、足払いを掛けて横転を狙う。

 

だがザビーはそれを後方へジャンプして回避し、更に左手首に取り付けたザビーゼクターの翅部分を前方へ押し倒し、本体ごと時計回りに僅かに傾けた。

すると、ザビーの身体にタキオン粒子特有の薄いライトグリーンの電流が迸り、装甲に間隔ができる。

 

「…ッ!チィッ!」

 

それを見たダークカブトは、この後に起こるであろう自体を阻止するために、ゼクトクナイガンをジョウントしてガンモードに変形させる。

すぐさま撃ち出そうと構えるが、ザビーにとってはそれだけの時間があれば十分だった。

 

「遅いですわよ。キャストオフ」

 

[キャスト・オフ……]

 

「ぐあぁぁっ!!」

 

ザビーゼクターが180度回転されるとザビーの重厚な装甲がパージされて吹き飛び、更にそのパーツの一部がダークカブトに直撃してしまい吹き飛ばされてしまった。

 

[チェンジ・ワスプ]

 

すぐさま受け身を取って前方を見ると、そこには先程の鈍重な姿とは打って変わったスマートな体格のザビーが立っていた。

 

その容姿も随分と変化しており、ビーハイチェストの内側に隠されていたスズメバチの尻部を彷彿とさせるプロテクターに、同じくスズメバチの顔をした攻撃的な印象を与える黒い複眼へと変わり、先程の姿よりもスピードを重視した姿だ。

 

これこそが仮面ライダーザビー・ライダーフォームである。

 

(間に合わなかったか…!だったらこっちも……!!)

 

ダークカブトは内心で毒吐きながらも、向こうに対抗するためにこちらもキャストオフを行おうとするが、ザビーはそんな余裕さえ与えるつもりはなかった。

 

「させませんわ!クロックアップ!」

 

[クロック・アップ]

 

ダークカブトがゼクターホーンに手を掛ける前に、それに勘付いたザビーが即座に右腰のトレーススイッチをスライドしてクロックアップ空間に突入し、超高速で殴る蹴るの連撃を浴びせてきた。

 

「ぐっ!ぬおあぁぁぁぁ!!」

 

[クロック・オーバー]

 

「中々しぶといですわね…流石はカブトと同じ遺伝子を持ち合わせているだけありますわ」

 

不幸中の幸いか、防御力の高いマスクドフォームであったが為にクロックアップの限界時間まで辛うじて耐えきると、ザビーが通常空間に戻って感嘆した口振りでダークカブトに称賛の声を与えながら軽く拍手してきた。

 

「………」

 

ダークカブトはその言葉を聞くと、仮面の奥で目付きを鋭くし、口元を憤怒の形に歪めた。

 

被検体はカブト…つまり天堂ソウジのDNAサンプルを培養して造られたクローンだ。

 

ダークカブトを扱う為にはカブトに近い資質を持つ人間が必要だったのだが、カブトゼクターによる選定はかなりシビアなもので、最早同一人物でなければないのではないかという声が上がっていたほどだ。

 

それを解決するためにZECT上層部が出した結論が、「いないのならば造ればいい」と言うものだった。

 

つまりカブトの装着者である天堂ソウジのDNAサンプルを培養し、カブトの装着者に近い人間…いわばクローン人間を生み出そうと言う事だ。

更にカブトよりも強くする為に、遺伝子を弄って身体能力を無理矢理向上させ、その結果誕生したのが被検体だ。

しかしその改造処置の影響か、髪の色素が抜け落ちて白くなってしまい、更に攻撃性に於いても野生の猛獣と変わらないほどにまで凶暴性を増している上に自我が強い為に命令を聞かないと言う欠点もあったが、それでもカブトと互角以上に戦わせるには十分だった。

他の名前などある筈もなく、ただカブトを倒すためだけに造られた兵器でしかない。

 

「どうなさったの?まさかもう限界でして?」

 

身体の至る所からクロックアップ状態での攻撃による摩擦熱で生じた煙を上げながら黙って立ち尽くしているダークカブトに疑問を持ったザビーが訊ねて来るが、それが被検体にとって余計に腹が立った。

 

どいつもこいつもカブトカブトカブト……。何で俺がそんな奴を倒すために生まれなきゃならなかったんだ…?

俺は確かに奴のDNAサンプルから生まれた奴のクローンだ。だが俺は俺だ…こんな奴等にこき使われる為だけに…生まれて来たわけじゃない!!

 

ダークカブトはそう心の奥で叫びながらゼクターホーンに手を掛ける。だがそれを見たザビーは当然キャストオフを妨害しようと再びクロックアップを発動させようと右腰に手を掛けた。

 

「ッ!それだけは絶対にさせませ……」

 

「ぐあぁっ!!」

「ぐぼっ!?」

 

「ッ!?何事ですの!?」

 

しかし周囲を包囲していたゼクトルーパー達に異変が起き始め、思わずその手を止めてしまった。

ゼクトルーパー達が黙視できない程のスピードで駆け抜ける何かによって次々と薙ぎ倒され、戦闘不能状態に陥れられて始めたのだ。

常人では絶対に見ることはできないだろうが、ザビーのコンパウンドアイであればその高速で動く物がある程度視認できる。

 

その視界に僅かに映ったシルエットは、間違いなくカブトだ。まさかこんな時に限って出て来るなんて…!?

 

「くっ…!今は取り込み中ですの!クロックアップ!」

 

[クロック・アップ]

 

ザビーは別の目的でクロックアップを発動させ、高速空間に突入した。

 

 

 

 

 

ディシードとカブトが目的地まで辿り着くと、そこではスズメバチを模したライダー・ザビーと、ぶ厚い装甲に身を包み、ズングリとした体格のライダーが対峙していた。

その周囲では黒いゼクトルーパー達が二人を取り囲んで遠巻きに観戦しており、一対一の状態で戦闘を行っている様だった。

 

「アレがザビーか……。でも、あっちのライダーは何でしょうか?」

「………」

「ソウジさん?」

 

一人はカブトから聞いていたので分かってはいたが、もう一人のライダーは聞いた事がない。そこで横にいたカブトに訊ねてみるが、彼はただ沈黙してその正体不明のライダーを見つめているだけだ。

 

「祐司君、俺は彼を助けて来る。君はザビーのお嬢さんが来た時の為に隠れていてくれ」

「え?あっ、ソウジさん!」

 

やがて口を開いたかと思うと、カブトはディシードの返答を聞く前に周囲に待機していたゼクトルーパー達を次々と吹き飛ばして行った。

 

今までワームと先程のサソードの時以外、手を掛けていなかった筈の彼が、何故このような行動をとり始めたのか……。

ディシードはどうするべきか悩んでいる間にカブトは殆どのゼクトルーパーを撃退しており、後はザビーを倒すかあのライダーを連れ出すかくらいだ。

 

[クロック・アップ]

 

「はぁっ!」

 

しかし、そこでザビーがクロックアップ空間に介入して動き出し、カブトに右ストレートを放つがカブトは平然とその拳を受け止める。

 

見つかるとまたサソードの時のように戦闘になる可能性がある為、カブトに言われたとおりに一旦物陰に隠れ、しばらくカブトとザビーの様子を窺う。

 

するとザビーは拳を受け止めた腕に左手でチョップを喰らわせて手を離させ、苛立たしげにカブトに問い掛けて来た。

 

「カブト…一体何のつもりでして?」

 

ザビーは問い掛けながらもハイキックを繰り出すが、カブトはそれをバック転しながら避ける。

その声は間違いなく女性の物で、口調からはどこか気品さえも窺える事からそれなりに良い家柄なのだと自分なりに勝手に解釈する。

 

「フッ…ようやくそっちから話し掛けてくれたな」

「惚(とぼ)けないで答えなさい。何故私の邪魔を…?」

 

まるで仲の悪かった旧友と話す様な口振りでザビーと攻防を続けながら会話をして来るカブトに、ザビーはその話題を素早く流して再度問い掛けながらラッシュを仕掛ける。

しかしカブトはその全ての攻撃を防ぎ、または受け流して相手の動きにムラができた所で膝打ちを放って後退させると、右手で上を指差しながらまたも意味深な格言を言い放った。

 

「おでんの具にダシが染み込むかどうかは、作る人の腕次第だ」

「はぁ?一体何の話ですの?」

 

カブトの言葉には何か意味があるのだろうが、ザビーには全くもって意味不明だ。

まぁそれは仕方もない事だろう。自分だって分からないのだから。

 

「まぁ簡単に結論だけ言うとだ…そこにいる彼をそう簡単に殺させるわけにはいかないと言う事さ」

「別に殺しはしませんわ。ただ元の場所へ連れ戻す…それだけですわ。

更に言えば、これは保護ですわ。これを野放しにしても、人民に被害を与えるだけでしょうし」

 

ズングリしたライダーを守ろうとするカブトに、そのライダーをまるで猛獣か道具のように指差しながら言い放つザビー。

ディシードには一体何の話をしているのかいまいち分からない。ただ一つ分かる事は、通常空間で立ちすくしてるようにしか見えないあのライダーが、今の状況を生み出していると言う事だけだ。

 

「元の場所と言っても、碌な場所じゃないだろう?彼にだって行くべき道を決める権利はある筈だと思うが?」

「分かっていませんわね。アレはただの人間ではなくてよ?貴方を倒すために造られた、貴方の遺伝子を持ったクローンですわ。そんな物に人権などある筈無いでしょうに」

 

クローン…聞いた事がある。確か生き物の細胞やDNAを培養してその生き物のコピーを人工的に造り出す技術……。

自分が住んでいた世界にもそんな技術があるが、それはあくまで家畜の養殖程度。人間そのものを造り出す事は技術的にも倫理的にも不可能である。そんな事が平然となされる場所なのだろうか、この世界は?

 

「……俺のクローン…成程な。彼の姿がカブトと似ていたのもあるが、俺が感じた直観はそれか」

「ええ。知ってるでしょう?ダークカブトは貴方とほぼ同じ性質を持っている。貴方を倒すのに最も適した“兵器”だと思いません事?」

(……!!)

 

兵器…その言葉を聞いたディシードは拳を握りしめながら怒りを露わにした。

いくらアレがクローンだろうがなんだろうが、人である事に変わりはない。それを蔑(ないがし)ろにする権利は、誰にも無い!

 

「兵器か…確かに普通とは違うかもしれないが、彼が人間である事には変わりない。

そして、彼が俺と同じ遺伝子を持っているのなら、俺の家族同然だ。お前達の好きな様にはさせない……」

 

カブトも自分と同じ…いや、それ以上の気持ちなのか、ゼクトクナイガンをジョウントして静かに構える。

対するザビーも何らかの拳法の独特の構えで立ち、カブトを見据える。まさに一触即発と言った感じだ。しかし、ここまで来て自分だけ黙っているつもりはない。

 

「待ってください、ソウジさん」

「ん?どうしたんだ?」

 

ディシードは物陰から出て二人の間に割って入ると、カブトはキョトンとした様子で問い掛けて来た。

 

「ここは私に任せて下さい。お願いします」

「……しかし、このお嬢さんは君がさっき戦ったサソードのお嬢さんより格上だぞ?今の君では……」

「大丈夫です、あの時みたいにはなりません」

 

代わりに戦うと言い出したディシードに、カブトが難色を示すがそれでもキッパリと言い放つ。

何時までも彼に頼ってばかりじゃいられない。今度は自分が彼の手助けをする番だ。

 

「……分かった。じゃあしばらくの間はジッとしておこう」

 

カブトはそう言うと、ディシードとザビーから後退しながら二人の間合いから離れた。この場は譲ってくれたらしい。

 

「……その姿、もしかしてディケイドでして?」

 

するとディシードの姿を見てしばらく硬直していたザビーが、またもサソードの時と同じ単語を言って来た。

ディケイド…一体何の事なんだ?

 

「先代のザビー資格者、弟切(おとぎり)前隊長の報告書に載っていましたわ。ただのお伽噺程度の物かと思ってましたが、まさか本当にいたなんて……」

「俺はディケイドなんて名前じゃない。ディシードだ。仮面ライダーディシード」

「そんなのどちらでも構いませんわ。ディケイドに酷似した別個体が存在すると言う情報もありますし、貴方はそれと同じタイプですわね?」

 

ザビーはディシードの訂正を適当にスルーし、更にディケイドに似た存在の事をぼやきながらこちらを向いて構えを取った。

 

「どちらにせよ、世界を破壊すると言われている“悪魔”をこのまま野放しにはできませんわ。この世界から出て行きなさい…ディシード」

 

完全にやる気なようだ。どうやらディケイドとやらは相当な嫌われ者らしい。

だがそれよりも重要なのは、この人を人とも思わないライダーを自分の力で倒す。

 

「どんな人間にだって、自由に生きて行く道は必ずある。俺にも、アンタにも、あそこのライダーにも、そして…ソウジさんにだって!」

「御託はよろしくて?言っておきますけど手加減はいたしませんわよ」

 

互いに宣戦布告とも取れる言葉を言い放つと、己の武器である剣と拳を振るった。

 

しかしその一方で、ダークカブトは止まっている状態であるものの、腹部に取り付けているダークカブトゼクターのゼクターホーンを既に反対側へと押し倒していた。


 
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