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IS《インフィニット・ストラトス》 駆け抜ける光 第十六話~可能性を信じる者~

ついにあの人が登場! 予想はできていると思いますが……。
「――、や[―― は光輝とあの人が意思疎通で会話しているという意味です。

2012-03-18 17:35:57 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1601   閲覧ユーザー数:1539

 トーナメントが終わって数日――あるいはシャルルくんがシャルロットさんだったと分かった日から――今日の朝のSHRで臨海学校の知らせがあった。

 

 三日間の日程の内、初日はずっと自由なのだ。臨海学校というぐらいだから海は当然であって……。女子のテンションが上がりっぱなしなのですよ。

 

 あんまり泳ぐのが好きじゃないし買わないようにしてたんだけど、エリスさんに相談したら

 

「寝言は寝て言おうね。今度一緒に買いに行こう! そうしよう!」

 

とまぁこんな感じで週末に水着を買いに行くことになってしまったのです……。まぁ水着になって海を眺めるぐらいにしようか。

 

「ではSHRを終わる。今日もしっかり勉学に励めよ。それと織斑弟、昼に私の部屋に来い」

 

 そう言ってお母さんは教室を出ていく。どうしたのだろうか? 呼ぶくらいだから大切な話だと思うけど。

 

 

 

「実はな今度の臨海学校に束が来るらしい――というか来る。その時にνガンダムについて話すらしい」

 

 時は飛んであ母さんの部屋にて。まさか今度の臨海学校に来るとは、大丈夫なのだろうか? 世界的な指名手配にされてるのによくもまぁ来る気になるよ……。でも、

 

「そうなんだ。これでやっとνガンダムの事が分かるのか」

「だが会話の最後で「もしかしたら私が来る前に分かるかもね~」とか言っていたが、どう思う?」

「どう思うって、まさか!」

 

 僕のその反応が分かったのかお母さんは首を縦に小さく振る。

 

「そうだ。もしかしたらνガンダム――光輝のいう人の心の光と会話が出来るかもしれないってことだろうな」

「あの光と会話が……」

「まぁどちらにせよ臨界学校の時点で分かるのは明白だが光と話せるかは分からん。だがこれで光輝の疑問も解決できるわけだ。良かったな」

 

 お母さんはそう言いながら頭を撫でてくれた。久しぶりだからちょっと恥ずかしいな……でも嬉しいや。

 

「うん! もしあの光と話せることが出来たら、僕は変われそうな気がするんだ」

 

 お母さんがギュッと抱きしめてくれた。突然の出来事で混乱するけど、すぐに落ち着くことができた。あぁ、お母さんの暖かみはあの光のように癒されるよ。

 

「そうか。でも遠くには行かないでくれ。大切な家族だからな」

「うん……。大丈夫だよ。僕は離れないから安心してね」

 

 僕は夏兄にお母さん、いつかちゃんとした形でお礼をしなきゃね。

 

 

 

「じゃあ明日の朝、迎えにいくからちゃんと準備しててね! おやすみなさい!」

 

 金曜日の夜――あの話から三日程過ぎ――食堂から帰ってきた僕とエリスさんは明日の時間などを打ち合わせして途中で別れた。

 

「さて、今日は早めに寝ようかな。ん?」

 

 僕の部屋の扉にもたれかかっている。誰かと思えば僕を嫁と呼ぶラウラさんだった。

 

あの事件の後、いろいろ和解して今では普通に話すようになった。でも嫁と呼ぶのは止めてほしいと言っているのにこれだけは止めてくれないのが辛かったりするのです。

 

「やっと来たか。遅いぞ、一体どこで油をうっていたのだ?」

「食堂に行ってたの。で、なにか用でもあるの?」

「嫁が寂しがらないようにわざわざ話し相手に来たのだぞ? そんな態度はないだろう」

「なんでそんな上から目線なのさ……。まぁ少しだけならいいよ。どうぞ」

 

 僕は扉を開けてラウラさんを中に入るように促す。

 

「あまり珍しいものもないし、つまらないと思うけど。なにか飲み物がいる?」

「そうだな……コーヒーを貰おうか」

 

 ポットに水を入れ湯を沸かす。それまで時間があるけど……。

 

[ちょうど光輝君もラウラさんもいるし、ちょっとだけ話に付き合ってくれるかな?]

 

 何処となく聞こえる謎の声。突然の事態に戸惑ってしまう。

 

「一体どこから声が……!?」

「どうやらお前のISからのようだな。それにその声はあの光……か」

 

 ラウラさんの言葉にビックリする僕だが首に架けている待機状態のνガンダムを見ると、わずかに光っている。その光に見惚れていると光に声をかけられた。

 

[ビックリさせて悪かったね。でもこれからはちゃんと君達とも話せるよ]

「じゃあ……早速なんですが貴方は何者なんですか?」

[あぁ、自己紹介は必要だよな。僕はアムロ・レイ。このνガンダムの搭乗者だったものだ]

 

 

 

 僕とラウラさんはアムロさんから驚愕の話をされ、ただ聞くことしかできなかった。

 

 アムロさんはこの世界の人間ではない、元の世界ではMSと呼ばれる18m級のロボットを操る人だった。宇宙への進出も果たしていて、その点ではISを上回ってる。その中でいろいろな戦争――一年戦争、グリプス戦役、第一次、第二次ネオジオン抗争――が行われていたことも知った。

 

 アムロさんは第二次ネオジオン抗争時に大気圏内に入った、アクシズと呼ばれる小惑星基地をνガンダムで押し返そうとしたところで意識が無くなり気付いたら束さんの隠れ家に来ていたと言う。人間の姿ではなく――IS「νガンダム」として。その理由はアムロさんもよく分からないらしいが、まさか人がISになるなんて……。

 

 またガンダムというのは一年戦争時に開発されアムロさんが初めて搭乗したMSらしい。コストを度外視して作られただけに当時の性能としてはトップクラスなんだとか。その後もガンダムタイプが開発され、種類はたくさんあるらしい。特徴としては額のVアンテナとか。

 

「なんか凄過ぎて頭が理解しきれてない……」

「確かにな。だが全部真実だ。アムロ殿が嘘をつくような人ではないのはお前も分かるだろう?」

「う、うん。それにしてもそっちの世界は争いが絶えないんですね……」

[あぁ。だが僕は人の可能性を信じている。この世界はISのせいで女尊男卑になってしまっているが、それでも人の心の光が世界を包むと信じて……]

 

 アムロさんは僕と同じように人の心の光――人の暖かみを伝えようとしている。世界は違えど人の心の光が大切なのは同じなんだ。

 

「そういえばアムロさんはなんで今日から話せるようになったんです?」

[それは、光輝君。君という人を知りたかったからさ]

「僕という人間を?」

[そうさ。君が僕――νガンダムを持ったその時から君を見ていた。けど君はやっぱり才能がある。人を思いやる強い心を持った才能を。君がきっかけを作ったからセシリアさんだって変われたし、君の人を助けたいという心が一夏君達を助けた。そしてそこにいるラウラさんだって君が変われるきっかけを作ったからこうしてここにいるのだから。そうだよね、ラウラさん?]

「はい! あの闇の中、貴方や光輝の暖かみがあったからこそ私はこうやって自分を確立していくことができていると思っています」

 

 ラウラさんは真剣な表情で言った。前の彼女とは違い真剣さの中にも暖かさを感じる。

 

「僕は人に変わって欲しいとかそういうのじゃなくて、人の暖かみがあれば人は強くなれる、勇気を持てるって知って貰いたかったから、僕は伝えたいんです。お母さんが僕を助けてくれたように僕も人を助けたいって思ったんです」

[その想いで充分だよ。その純粋な気持ちが君の強さだ。いつまでも忘れないようにね]

「はい……!」

 

 アムロさんの言葉には力がある。人を元気づけることが出来るような力が。でも、こう言われるのは初めてだからちょっと照れるなあ……。

 

 ふと時計を見ると、20時前になっていた。あぁ! 明日の準備しなくちゃ! 朝遅れたらエリスさんに何て言われるか……。

 

「ラウラさん悪いんだけど、明日の準備をしなくちゃいけないんだ。だから今日はもう部屋に帰ってもらえると助かるんだけど……」

「む、そうなのか? なら私は自分の部屋に帰ろう。嫁の迷惑にはなりたくないしな。じゃあ、また明日な」

 

 そう言ってラウラさんは部屋をあとにした。さてお風呂に入ったりしないと寝る時間が遅くなってしまう。寝坊だけはしたくないしちゃっちゃと終わらそう。

 

[そういえば明日、水着を買いに行くと言っていたな。光輝君も大変なんだな]

「そうでもありませんよ。誘ってくれたのは嬉しいですし、良い気分転換になれば良いんですよ」

[一つアドバイスをしておこう。女の子との買い物は大変ということだけは言っておくよ]

「大丈夫ですよ。なんとかなります」

 

 アムロさんになにか意味深なことを言われてしまったが唯の買い物なんだし大丈夫だろう、とこの時は思っていた……。

「光輝くんっ、おはよ~! ちゃんと準備してる~?」

「は~い! すぐに行くから待ってて!」

 

 次の日の朝、昨日の話を聞いて中々寝つけることができなかった僕は少し寝坊をしてしまった。しかし準備はすんなりと終わり、なんとか遅れることもなくちょうど良かった。

 

[あまり女の子に待たせるのは感心しないな]

「分かってますけどなっちゃったものは仕方ありません……。おっとこれを着けなきゃ」

 

 机に置いてある羽の髪飾りを手に取りいつもの場所に着ける。うん、今日も大丈夫だね!

 

「よしっ! 行きましょうか」

 

 最後のチェックをして僕は部屋を出る。その目の前では頬を膨らませているエリスさんが立っていた。ちょっと遅かったから怒ってるのかな?

 

「むぅ、準備してって昨日言ったのに……。まぁいいやっ。早くいこっ!」

「あ、ちょ、ちょっと……!」

 

 エリスさんが僕の手を掴んで走り出す。時折、つまずきそうになるがそれをなんとか耐えて僕もつられて走る。自分で歩くことぐらい出来るから放してよ! 

 

 

 

 一時間ぐらいして僕達はショッピングモール「レゾナンツ」に着いていた。此処は本当に大規模で、ここで欲しいものが見つからなかったら他には無い、と言われるほどだ。

 

 僕も今日初めて来てビックリした。とにかく広い。単純な感想だけど本当にそれしか思えないくらいなのだ。確かにここならなんでもあるような感覚に陥ってしまう。

 

「ねぇエリスさん? 僕の水着決めてくれないかな?」

「えっ!? いいの?」

「うん。あんまりファッションとか分からないしさ、ダメかな?」

「光輝くんがいいなら私が決めるよ? ちょっとしたリクエストがあるならそれに沿って選ぶけど」

 

 ちょっとした……ね。う~ん、どうしようか。あんまり派手なのは嫌だし……。

 

「なら黒を基調にした感じのがいいかな……」

「黒ね……分かった! じゃあ行こうかっ」

 

 僕はエリスさんに引っ張られるように行くと、程なく水着売り場に着く。それにしてもホントに水着だらけだ。売り場なのもあるけど量が凄い。思わず目移りしてしまう。

 

「これなんかどう~?」

 

 早速エリスさんが見つけてくれたらしい。黒にサイドが赤線一本というシンプルなデザインだ。いろんな色が混ざってないから僕は好きかな。

 

「これに……しようかな。あまり派手じゃないし、ごちゃごちゃしてないから好きかな」

「ん~、じゃあこれにしようかっ。光輝くんはあまり派手な色はすきじゃないの?」

「そうだね。たぶん派手な色にしたら水着の部分だけが目立ち過ぎてしまうから。そういうのは好きじゃないんだ」

 

 そう言うとエリスさんの表情が暗くなる。どうかしたのだろうか? 僕は何か余計なことを言ったのか!?

 

「そ、そう暗くならないでよ。……そうだ! 臨海学校の時さ、一緒に泳ごうよ。二人でちょっと遠くまで行って帰るぐらいでさ」

「うんっ! 私、泳ぎはあまり得意じゃないけどそれでいいなら私はいいよ!」

 

 僕だってあまり得意な方じゃない。運動は好きな方だけど、水泳だけは好きにはなれない。泳げない訳じゃないんだけどね……。

 

 さて僕の水着は決まったけど、エリスさんはどうするんだろ? さすがに自分で決めるとは思うけど、その間どうしようかな。

 

「光輝くん、私の水着……決めて欲しいんだけど……いいかな?」

「へ!?」

 

 思わず声が裏返ってしまった。自分でも変な声を出したと思う。まさか……ね。

 

「別にいいけど、僕はこういうセンスがないからどうなっても知らないよ?」

「いいの! 光輝くんが決めてくれただけで……」

 

 最後の方は小声で聞こえなかったけどまぁいいか。さて、頑張って決めようか!

 

 

 

「ふぅ、これで全部かな。いや~こういうとこに来たら結構買っちゃうんだよね。光輝くん大丈夫?」

「だ、大丈夫……」

 

 水着を買い終わった後――あの時のエリスさん、無邪気で可愛かったな――何かいるものはないか、ということでいろんなお店に周っていろんなものを買ってしまいました。まぁほとんどがエリスさんのものなんだけど……そこは気にしないようにしよう。

 

 僕とエリスさんは両手に買い物袋を持った状態で、しかも重い。まさかアムロさんが言ってたのはこのことなのだろうか? 買い物が長いし荷物が重いし……疲れるよ。

 

「お、光輝にエリスじゃん」

 

 後ろを振り向いてみれば夏兄とシャルロットさんがいた。シャルロットさんはなぜかそわそわしているが、まさかこの子も夏兄のことが?

 

「二人ともデート? 一緒の部屋だったのは伊達じゃないね~」

「ち、違うよ! 今日は――」

「シャルに水着を買いに行こうって言われたから着いてきたんだよ。光輝も誘おうとしたんだけど、部屋に居なかったからさ」

 

 からかわれるシャルロットさんだがそこに夏兄が入る。夏兄の言葉にがっくりしているシャルロットさんだけど、この反応は間違いないね。

 

「シャルロットさん、ライバルが多いけど頑張ってね。エリスさん行こう。じゃあね二人とも」

「おう、じゃあな。光輝、エリス」

 

 二人に別れを告げ、僕達は後にする。最後のシャルロットさんのあの顔! 完全にビンゴだ。どうやら三人が夏兄を狙ってるみたいだね。それに気付かない夏兄もある意味凄いけど……。

 

[――光輝くん、あんまりそういうことでからかうものじゃないぞ]

「――すいません……つい反応が見たかったんで」

 

 歩きながら直接、頭にアムロさんの声が響く。出かけるときはこうやって話すようにしている。ISと話しているっていうのが世間に知られたら政府に追われてしまう可能性が出てしまうからだ。だってISと会話なんて前代未聞だもん。

 

 だったら話さなきゃいいじゃんってなるけど、それはそれで寂しいんだよ。僕のこの能力があるおかげでアムロさんと話せている。ということはアムロさんも僕と同じ? まぁ今度聞いてみようか。

 

「さて後は臨海学校まで頑張るだけ! そろえるものは揃えたし、早く来ないかなぁ~」

 

 エリスさんは臨海学校しか見えてないらしい。まぁ初日が自由なんて確かに楽しみだね。それは言えるけど、

 

[――怪我をしないように気をつけないとね]

「――って! 台詞を取らないで下さい!」

「そんなに怖い顔してどうしたの。光輝くん?」

「え? な、なんでもないよ! さあ帰ろうよ!」

 

 

 


 
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