No.38887

窓を開けたら。1

さん

よろしくおねがいします。
追記//次です→http://www.tinami.com/view/42349

2008-11-01 18:24:10 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:509   閲覧ユーザー数:495

「じゃあね。」

彼女は言った。僕は下を向いて手を振った。何も言えなかった。

「ひとつだけ聞いてもいい?」

空は赤かった。

「何?」

ぼくは前を向いた。彼女はきれいだった。

「もし帰ってきたら、けいくんのお嫁さんにしてくれる?」

時は止まる。

「もちろん。」

僕は答えた。彼女は笑った。

「約束だよ。」

「うん、約束だ。あっちゃん。」

僕らは幼かったんだ。

 

 

メールが届いた。

今は夏休み。といっても8月31日。当然のごとく宿題が終わってない。

最初にメールに気づいたのはヤスだった。

「おい、ケーイチ、メールだ。」

マサは俺の携帯電話を投げてよこした。

毎年のように宿題をやってない俺にとって、ヤスの家に行って宿題を写すのは一年の行事だ。

こいつが親友で本当によかったと思っている。

「うおっ、投げんなって。」

俺がマサの宿題を写している間に暇にならないように貸してやった携帯電話のゲーム機能。たしか昔ブレイクしたRPGのリメイク。五百円。便利な時代になったものだ。文明様様です。ハイ。

しかし、

「なんだこりゃ?」

パッと見てスパムかと思った。見たこともないメールアドレス。しかし件名は

『笹倉恵一様へ』

なんでこいつ俺の名前知ってんだ?そう思って開けてみる。

 

内容:

空は青いですね

約束覚えていますか

私は空を飛び

窓からやってきます

驚かないでくださいね

私は今日帰ってくるのです

今夜あなたの部屋に行きます

必ず待っててくださいね (-_-;)

 

は?

「どうした。ミスって請求書でも来たか?」

ヤスは笑って言った。

「違うわ、これを見ろよ。」

メールを見せる。

ヤスは俺の携帯をジッと見た。

「ハァ?なんだこりゃ。」

なんだこりゃとしか言いようが無い。

「だろ?」

と俺は言った。

「ケーイチ、お前に宇宙人の友達なんかいたか?」

「いねーよ。」

「なんで飛ぶんだ?」

「さぁ。」

「これ、家にくるのか?」

「知らねー。」

「なんで顔文字焦ってんだ?」

「こっちが聞きてーよ。」

ヤスは

「わかんねー。」

さじを投げた。

「わかんねーか。」

俺もさじを投げた。

「まぁ今夜んなればわかるんじゃねぇの?」

マサはベッドに倒れこんだ。

「突っ込むところが多すぎるよな このメール。」

俺は椅子を回転させぐるぐると回る。

「それよりお前は早く宿題をやれ。そしてお前の携帯をかせ。今ようやく仲間と再会した所なんだよ。」

 

 

「ただいま。」

家に帰ってきたのは8時だった。

「おかえり。遅かったじゃないの。」

母さんが言った。

「ご飯は?」

「食ってきた。」

「じゃあ早く自分の部屋に戻りなさい。」

なぜに?まぁいいや。

階段をのぼって自分の部屋の電気をつけてから、ベッドに横になる。宿題、あとは読書感想文だけだ。これだけは写させてもらえなかった。

「あーあ やるか。」

しかし、そこで携帯電話に目がいくのが俺のダメな所。キーを動かし、さっきのメールを開く。

今夜か…。

外はもう暗かった。またメールを見なおす。

約束…。

そこに目がとまった。なんか一瞬思い出した。

でもすぐに消えた。

チリリリリリリリ

外では鈴虫が鳴いていた。

チリリリリ

もう秋か。

チリリリリリリコンコン

いい音だ。

チリリリリリリコンコンコン

ん?コンコン?俺は驚いて外を見た。そこには一人の女の子が立っていた。窓をたたいて、開けてっていうしぐさをする。もう一度いうが俺は驚いた。彼女の肌は白く髪は長く漆黒で丸い大きな瞳をしていた。一言で言ったら綺麗だった。彼女の窓をたたく音がドンドンに変わる。俺は急いで窓を開けた。

「けいくんっ。」

彼女はそうさけんで、なぜか俺に、その、抱きついてきた。

「ひさしぶりです。」

彼女の眼が潤んだ。

おいおい、髪が腕にあたってますって。なんかやわらかいもんも。

「あの、どちらさまですか?」

声を絞り出して言った。

「ほらっ隣の家でよくあそんでたのおぼえてませんか?あきです。」

ん、あぁ。思い出した。そういやあのころはずっと一緒にままごととかやってたな。

「あの…。あっちゃんか。」

「そうですっ。」

彼女はうれしそうに笑った。

「けいくんのお母さんにたのんでメールアドレスを聞いたかいがありました。」

ああ あのメール、キミのね。

「でもなんで窓からなんだ?」

俺は聞いた。

「よくベランダをつたって遊びに行ったじゃないですか。また隣になったんです。それで。」

「じゃあ飛ぶってのは。」

「はい、飛行機できました。」

「じゃあなんで顔文字が焦って…。」

「はずかしかったんです。」

そうかいそうかい、わかったよ。

「それより」

彼女の顔がさらに赤くなった。

「あのっ、約束覚えてますか?」

「えっ。」

そういえば…   彼女はとびっきりの笑顔だった。

「結婚しましょうっ。」

「ええっ?」

とりあえずあきは来た。

 

 

あっでも宿題終わってない…


 
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