『改訂版』 第一部 其の五
【翠turn】
反董卓連合に参加して最初の会議が、総大将を決める事なんてスゲェ馬鹿馬鹿しいものだった。
そんなモン檄文を飛ばした袁紹がやればいいじゃん!
なんて言おうとしたら副将の龐徳に止められた。
「なんでだよ!?」
「アレに関わるとどんな無理難題を押し付けられるか分かりませんよ。」
この下らない会議に参加していた諸侯もみんなウンザリしてた。
そんな時、新たに参加した劉備・・・というか、そこにいる『天の御使い』とか言ってる男が袁紹を持ち上げて総大将にしちまった。
「なんだアリャ?」
「あの男、中々面白い事をしますね♪」
「ただの軽薄な野郎じゃないのか?」
「ここからが見ものになると思いますよ。」
そう言われて黙って見てたら、兵と糧食を巻き上げやがった!
「きっと普段のあの方はああではないのでしょう・・・ほら、劉備と小さな副官さん達を見て、必死に笑いを堪えて♪」
ホントだ・・・なんで袁紹のヤツ、目の前に居て気付かないんだ?
「あの数でも先陣を切って汜水関に挑むのは厳しいと思いますが、あそこで心配そうにオロオロしてる人が一緒に戦ってくれるでしょう。」
あれは白馬長史か。
『さあ、諸侯の皆さん袁紹さんに拍手をっ!!』
龐徳が手を叩いているからあたしも一緒に叩いた。
「面白かったお芝居には拍手をしないとね♪」
なんか釈然としないなぁ・・・。
「おいおい!あいつら一日で汜水関を落としちまったぞっ!!」
一番乗りは横から乱入した孫策が持って行っちまったけど。
「これは・・・たまたま幸運が重なったのか・・・それとも・・・・・・どちらにせよ『天の御遣い』の力という事なのでしょうね。」
「この戦果はあの男の手柄だって言うのか!?」
「ええ、この間の会議で曹操と孫策はあの『天の御遣い』に興味を持ったみたいだし、それ故の戦果でしょうね。・・・色々と邪推もしちゃうけど♪」
「ふ、ふぅん。そういうもんなのか・・・」
「あら?翠も興味が出てきた?」
「な、な、なななな!」
「そうねぇ、結構翠好みの顔だし、それならさっさと声掛けないと!」
「し、し、知るかああぁぁあっ!!」
「うわぁ・・・呂布ってホントにあんな強いんだ・・・・・」
劉備の処の武将三人が同時に掛かっても難なくあしらってやがる。
呂布がどんだけ強いか気になって、こっそり劉備軍にまぎれて従いてきた。
「りょ、呂布が気になっただけだぞ!ホントだからな!」
って、何一人で言い訳してるんだ、あたしは?
「あれ?呂布の殺気が消えたぞ?・・・・・うわぁ!あの男に抱付きやがったっ!!」
武将の三人も戸惑ってるトコ見ると顔見知りって訳じゃなさそうだな・・・。
『北郷様が呂布を手懐けたぞ!』
『さすが天の御遣い様だ。姿を見せただけで呂布将軍を落とすなんて・・・』
『天の御遣いの御威光だ!』
おいおい!兵隊達が変なこと言い始めたぞ?
「・・・・・・北郷一刀・・・・・天の御遣いか・・・・・」
「あれ?お前どこの隊のモンだ?」
うわ!やべ!ここは
「劉備軍がもう出立しちまったってぇ!?」
「ええ、帝から徐州牧を拝命したそうだから袁紹に難癖付けられる前に退散したんでしょうね。」
「そうか・・・・・・行っちまったのか・・・・・」
「だからさっさと声を掛けなさいって言ったのに。」
「べ、別にあたしはそんな!・・・・・・・・・・ええっ!」
ズベェッ!!
「翠?なんで転んでるの?」
「なんであいつ曹操と歩いてんだよっ!!」
「はぁ?」
何か訳がわかんなくなってきた・・・・。
建業 城門前
【赤一刀turn】
「この子が偽装一揆を担当している呂蒙よ、一刀。」
蓮華がモノクルを掛けた女の子を連れてきた。
へぇ、呂蒙ってこんな子だったんだ。
前の外史では旗しか見なかったもんなぁ・・・愛紗が反応してたっけ。
「初めまして、俺は北郷一刀。天の遣いなんて呼ばれてるけど・・・」
「お、お噂は聞き及んでおりますっ!お、お会いできて光栄至極にっ!!」
おわっ!なんで俺こんなに畏まられてるの!?
「落ち着きなさい亞莎・・・・・・どうもあの噂の影響をかなり受けてるみたいなの・・・」
「噂って・・・あの虎牢関の?」
「えぇ、今江東では一刀、あなたは雪蓮姉さまに次ぐ英雄になってるわよ♪」
一体どんな噂になってるんだ?
怖くて訊けねぇ・・・・・・。
「わ、わたくし、姓は呂、名は蒙、字は子明、真名は亞莎といいます!よ、よろしくお願い致しますっ!」
「よ、よろしくね、亞莎。」
「その人が噂の『天の御遣い』!?」
亞莎と握手をしていると懐かしい声が聞こえてきた。
「へぇ、想像してたのよりずっとシャオ好みの人じゃない♪」
シャオは無遠慮に俺をジロジロ眺めている。
はは、変わんないなぁシャオも。
「シャオ!孫家の姫がはしたないわよっ!ごめんなさい一刀・・・」
「別に気にしてないって♪初めまして、北郷一刀です。お姫様♪」
「えへへ♪初めまして、私は孫尚香、真名は小蓮、シャオって呼んでね♥」
「よろしく、シャオ♪」
「ねえねえ、お姉ちゃん!三人居るって本当なの?」
「え?えぇ、本当よ。」
「いいなぁ、お姉ちゃん。シャオも早く三人揃ってる処見てみたいなぁ。」
「大陸が平和になったら見れるようになるさ。」
「そっか、『天の御遣い』はその為には来んだもんね♪」
「まあそういう事になってるけど、『天の御遣い』だけじゃ無理だよ。俺たちはみんなが力を合わせる手助けをしに来たのさ。」
「それじゃあシャオは妻としてその手助けをするわね♪」
「シャ、シャオ!あなた妻って・・・」
「え?雪蓮お姉ちゃんの手紙に一刀はみんなの夫だって書いてあったけど・・・・・あぁ!お姉ちゃん!まさか一刀を独り占めする気!?」
「べ、別に私はそんな・・・・」
ちょっと蓮華さん?そんな上目遣いで顔を赤くされてこっちを見られても困るんですが・・・。
・・・と、まあこんな感じで少々緩み気味ではあるけど、俺達孫呉のみんなは江東各地に散らばって一揆の鎮圧を装い、行動開始の合図が来るのを待っていた。
徐州 彭城
【緑一刀turn】
袁紹が動いた!・・・・・・西に・・・。
瞬く間に并州を落とし、続いて東、青州へと攻め込んできた。
劉備軍は并州の次は華琳の居る兗州と思っていた。
それに合わせ袁術軍の動きにも対応しやすい様に、
「これは不味いですね・・・」
朱里が思案顔で呟いた。
「このまま青州を落とされたら袁紹軍は
地図に置いた碁石を動かして説明してくれる。
「袁紹さんがこのまま徐州を目指すなら、泰山の東、海側からになると思います。ただ・・・」
「どうしたの?」
「それだと袁紹さんは北に白蓮さん、南に華琳さんを残したまま本拠地から離れる事になりますよね。」
「あれ?それだと同盟にとって都合が良いんじゃない?」
「そうなんです。でも、華琳さんからの手紙に『袁紹は派手好きだから中央で大決戦を考えてる。でもバカだから突然何をしだすか解らないから注意しなさい。』と書いてくれまして・・・」
「それじゃあ俺達は西と東両方に対応出来るようにしておかないとならないと・・・」
なんて厄介な!
「取敢えず青州との国境付近の城に守備兵の増援は送りますが、我々はまだ本格的に動く事が出来ません。」
「雛里の意見は?」
「私も朱里ちゃんと同意見です。詠さんとねねちゃんにも聞いてみましたがやはり同じでした。」
「青州から援軍の要請でもあれば行動できるんだけどなぁ・・・」
同盟を結んでいる訳でもないので勝手に他領に入り込む訳にはいかないからな。
こうして軍議をしている時。
廊下を走ってくる音が聞こえてきて、扉が激しく開かれた。
「ちょっと大変よ!幽州が落とされたわっ!」
詠の声の大きさよりも内容に驚愕した・・・。
「白蓮が落ち延びて来て、今桃香達が介抱してる!早く来てっ!」
「白蓮は無事かっ!?」
太守の間に駆け込むと敷布の上で横になった白蓮を桃香が傷の手当をしていて、みんながそれを見守っていた。
「ご主人様!致命傷は在りません。それに今、華佗を呼びに行かせてますのでご安心を。」
愛紗自身が安心してないじゃないか。
「・・・あはは・・・すまん、北郷・・・あっさり敗けちゃったよ・・・」
「馬鹿野郎!だからあれだけ注意しろって言ったのに・・・・・本当に無事で良かった・・・」
「北郷・・・・・ありがと・ひゃぁ!」
「でもちゃんと約束守ってくれたな・・・・・生きて・・・落ち延びてくれた。」
「ちょ、ちょ、おい北郷!そんな抱きついて・・・みんなが見てる・・・」
(白蓮ちゃん、今ならみんな目をつむってくれるから、ご主人さまに甘えていいんだよ♪)
「と、桃香・・・みんなも・・・・・・・・・・・う・・・うぅ・・・うあ・・・うあああっぁぁあああ!」
声を上げ、涙をボロボロと流して泣く白蓮を俺はそのまま抱きしめ続けた・・・。
「本初達が攻めて来たのは并州陥落の報告が入った直後なんだ・・・」
落ち着いた白蓮が状況の説明を始めてくれた。
「奴らは組み入れた并州兵も使ってて、私の城を包囲した後、周りの城を次々落としていったんだ。」
完全に孤立しちゃって救援も呼ぶことが出来なかったのか。
「そんなに素早い行動だったのか。まさか幽州と青州の二面作戦だったなんて・・・俺達の側からは并州の後、青州にしか攻め込んだようには映らなかったのに。」
「私たちは決死の覚悟で城から脱出して、海から船で徐州に入ったけど・・・途中、青州の港で青州も攻め込まれてる情報を聞いて
「ご主人さま、これはいよいよ持って不味いです!」
「うん。直ぐ華琳にこの事を伝えないと!」
「先に幽州陥落と白蓮さんが落ち延びてきた事は早馬を出しました。今から直ぐこの事を書簡にして早馬を・・・」
ここでまた伝令が飛び込んで来た。
「申し上げますっ!青州が袁紹軍によって陥落しました!ですが袁紹軍本隊は即座に西へ移動したとの事ですっ!!」
「西に移動したって・・・泰山の西から攻め込んで来る気なのか?」
「ご主人さま、それはさすがに無いと思います。恐らくは今の本拠地、
「朱里ちゃん朱里ちゃん、それは違うと思う。」
おや?珍しく雛里が朱里と意見が分かれるようだな。
「ご主人さま、袁紹さんは黄河を
「それって華琳から来た手紙にあったやつ?でも朱里が言うとおり一度本拠地に戻って体勢を整えた方が袁紹にとっては有利なんじゃ・・・」
「根拠は有ります。并州を併呑後直ぐにその兵を使って幽州に攻め込みました。恐らくは青州兵、それに青州には黄巾党の残党の大部隊がまだ残っていましたからそれも併合したはずです。さらに幽州の北、
袁紹がどう考えるか?
「え~と・・・・」
『おーーーーっほっほっほっほっほ!!みなさんやあぁっておしまいなさぁいっ!!』
てな感じで大軍団に号令を掛ける袁紹・・・・・・。
「あ~・・・なんか分かってきた・・・確かに袁紹なら派手な戦をしたくて集めた軍勢を一刻も早く使いたいって思うな・・・」
「そんな!玩具を与えられた子供と同じではないですかっ!」
俺達の話を黙って聞いていた愛紗が怒りの声を上げる。
将として兵をそんな使い方をするのが許せないんだな。
「うん、愛紗。それは俺も同じ意見だ。こんな戦は許せない。」
「ご主人様・・・」
「それで雛里、袁紹軍の兵数はどれ位になると思う?」
「ええと・・・少なく見積もっても十五万・・・多ければ二十万は超えるかと・・・・・」
この場に居る全員が声を上げた。
「に、二十万って・・・うちだって多くても五万だろ、華琳の処だって十万はいないはず・・・」
「しかも我々は袁術さんを迎え撃つ為、軍を分けないといけません。どちらも苦しい戦いになるとおもいます・・・」
「全く・・・虎牢関であれだけ数を減らしたというのに・・・」
星も憎々しげに漏らした。
「人の思惑が通じない大群・・・ご主人さま、私はなんだかイナゴの大群を相手にしている気分になってきましたよぅ・・・」
朱里が愚痴も良く解るなぁ。
「イナゴは冬がくれば死滅するが、袁紹は放って置けばいつまでものさばるから始末に悪い。」
星の毒舌も最もだ。
「それにイナゴは食べれるけど袁紹は食えないのだ。」
ははは、鈴々らしいなぁ。
「鈴々、間違っても袁紹を食べるなよ。」
「袁紹が感染るぞ。」
「・・・それは絶対にイヤなのだ・・・」
愛紗と星の冗談に本気で嫌がってる・・・・・気持ちは解るぞ。
「さてと、それじゃあ俺達がこれから取る行動だが・・・」
「ご主人様!私に騎兵五百で先に華琳殿の所へ行かせて下さいっ!」
「愛紗?」
「私ならばこの情報を持って華琳殿に逢っても、ご主人様と桃香様の名代として問題在りません。」
「・・・うん、そうだな。でも少しだけまってくれる?色々と手紙を用意するから。」
「はい!有難う御座いますっ!」
「じゃあ部隊の割り振りだけど、先ず華琳の援護に向かうのは愛紗、星、桃香、朱里、雛里。兵は三万で。」
「北郷!私もそっちに参加させてくれっ!」
「白蓮!?」
「白蓮ちゃん!!」
「本初にやられっぱなしじゃ気が収まらないんだ!それに私の兵達も恨みを晴らしたがってる!頼むっ!!」
「身体は大丈夫なのか?」
「これから華佗の治療を受ければ大丈夫だ。任せてくれ!」
言っても聞きそうにないな、これは。
「判った。白蓮も対袁紹戦に参加してくれ。」
「ありがとう北郷。」
「それから、袁術を迎え撃つのに、鈴々、恋、ねね、あと詠と月もこちらに来てもらう。」
「詠ちゃんと月ちゃんも?」
「朱里と雛里が北に行くから南側の軍師はねねだけだからね。詠、頼むよ。」
「軍事には関わらないって話だったっはずだけど、しょうがないわよね。人手不足だし。それよりどうして月も一緒なの?」
「まだ合流出来てない董卓軍の部隊があるだろ。それをこの戦いの最中にも集めたいんだ。」
「分かりましたご主人さま。早速手紙を書いて捜索部隊に出発してもらいます。」
「頼むよ、月。」
「はい♪」
「お兄ちゃんはどうするのだ?」
「俺は鈴々たちと一緒に南に向かう。その為に桃香には北に向かってもらうんだ。」
「そうだね・・・ちょっと寂しいけど、こういう時うちは便利だね。」
「それは大丈夫♪」
「へ?どういう事?」
「紫に手紙書くから協力して貰うんだ。華琳にもお願いの手紙書いて置くから。」
「華琳さんの所に居るご主人さま・・・」
「俺たちは同じ『北郷一刀』だよ。安心して行って来て。」
「う、うん。こっちは心配無いけど、ご主人さまの事が心配だよ・・・」
「鈴々と恋が居るんだ、心配いらないよ。なあ鈴々!恋!」
「任せろなのだっ!お兄ちゃんは鈴々が絶対守ってみせるのだっ!」
「・・・ご主人さまは絶対守る。」
「それに雪蓮たちだって直ぐに駆けつけるさ。むしろこっちを先に片付けて、そっちの増援に早く行くようにしなくちゃな。」
「うん、待ってるからね、ご主人さま♪」
こうして俺達は出撃準備と愛紗に持たせる手紙の作成に取り掛かり、その日の内に愛紗と董卓軍部隊の捜索隊が出発していった。
こうなってくると彭城に移動していて助かったな。少しでも早く移動できる。
豫州 許昌
【紫一刀turn】
「幽州が落ちたですってぇっ!?」
なんとその知らせは徐州の劉備軍から届けられた。
華琳がこんな大声で驚くなんて珍しいがその気持ちは分かるなぁ。
何しろうちの情報部隊は幽州が攻撃されているという報告を持ってきたのが朝。
青州が落ちたという情報が昼に、そしてもう直ぐ夕暮れという時刻にこれだ。
まるで幽州は一日保たずにその全土が陥落したかに感じるが、それはうちの情報部隊が袁紹軍の青州攻略部隊に阻まれ戻るのが遅れたせいだ。
「洛陽で麗羽を
「取敢えず白蓮が無事で良かったよ。」
「せめてもう数日保たせていればこちらが攻め込んでやることが出来たのに!」
「華琳?」
「ええ、判っているわ。済んでしまった事は仕方ないし、白蓮が無事だった事も良かったと思っているわよ!でも千載一遇の好機を逃したかと思うとどうしてもね・・・」
「気持ちは判るよ。」
「華琳様!袁紹軍の動きが掴めました!」
桂花が玉座の間に駆け込んんで来た。
「麗羽の軍は今どの辺まで迫っているの?」
「青州を攻略した部隊は黄河を遡って今頃は
「結局こちらは黄河を渡る事も出来なかったのね・・・数は?」
「華琳様の予測通り十八万といった所です。」
「対するこちらは八万。中々面白い戦いになりそうだわ・・・・・官渡、陳留、
陳留は俺達の前の拠点で許昌の北に位置している。
現在そこに曹操軍主力を移動させており、朝の段階ではそこから冀州を目指す予定だった。
官渡は陳留の西にあり、この二つの城の北には黄河の支流が流れていて防衛するのに都合がいい。
定陶は陳留の北東になるが河も北東に向きを変えているので、やはり河を挟んでの防衛になる。
「秋蘭、流琉、霞、真桜を四万で官渡に、春蘭、季衣はそのまま陳留に、私と桂花も五千を連れて陳留に。凪と紗和は五千で定陶に。一刀、あなたも五千をここから連れて定陶に入りなさい。」
「遂に俺も部隊指揮か。」
「本当ならあんたなんかに任される物じゃないんだから、勘違いするんじゃないわよ!」
桂花の罵声も少し大人し目だな。
それだけ局面が緊迫してるって事だろう。
「判ってるって、でも・・・」
「何かしら一刀?」
「欲を言えば軍師が欲しかったな。凪、紗和、俺じゃあその辺が少々心許無い。」
「そこは大丈夫よ。今定陶を守ってる指揮官二人は軍師候補で仕官してきた者だから緒戦で一刀が査定して頂戴。」
「俺が査定するの!?」
「貴重な軍師候補なんだから変なちょっかい出して逃したら、あんた殺すわよ!」
桂花の目がマジだ・・・。
「戦の最中にそんな余裕あるかっ!!」
ここでまた廊下を走ってくる音が聞こえてきた。
「今日は騒がしい日ね、今度は朗報だといいけど・・・」
「申し上げます!徐州より関羽将軍がお見えになり、曹操様への謁見を求めております!」
「「「愛紗が!?」」」
「ご無沙汰しております、華琳殿。この度は桃香様並びにご主人様の名代として参上致しました。早急の用向きにて仔細は書簡をご覧ください。」
うわ、沢山持ってきたな。
愛紗は三本の書簡を華琳に手渡した。
「桃香と朱里、緑一刀からね。」
華琳が読み始めると愛紗は桂花にも一本渡した。
「こちらは朱里から預かった物だ。」
「朱里から?何かしら?」
内容が気になったのでこっそり覗いて見ると・・・・・・・。
『同志桂花。共に力を合せ悪の巨乳を倒しましょう!』
という一文から始まっていた。
見なかった事にしよう・・・・・。
「あの、紫の・・・ご主人様。こちらを・・・」
少し
そう言えばこの外史の愛紗とは、殆んど面と向かって話して無いもんな。
「うん、ありがとう愛紗。」
やはりこちらも緑、朱里、桃香からだった。
緑からは白蓮の無事と袁術の迎撃に向かう事、そして自分のいない劉備軍を支えて欲しいと日本語で書いてあった。
『みんなには、俺たち三人は同じ北郷一刀だから何時も通りに接してくれと言ってある。』
さっきの愛紗の躊躇いはそういう事か。
桃香の手紙も緑とほぼ内容は同じ。
桃香とは反董卓連合中は結構話す事が出来たもんな。
『大徳』と呼ばれるだけあって優しい感じの子だったな。天然っぽかったけど。
緑の処は癒やし系が多くて少し羨まし・・・・別にここが嫌だって訳じゃないぞ!
朱里の手紙には策が幾つかと華琳の考えを読んで、定陶に向かうと書いてあった。
流石は朱里だな。
桃香と朱里の手紙は両方
『よろしくお願いします、ご主人さま。』
と締め括られていた。
「成程、流石は諸葛亮といった所かしら。一刀、私への手紙にはあなたに劉備軍の補佐を頼みたいと有ったけど?」
「俺の方にも書いてあった。それで連携が良くなるなら俺は構わないよ。」
「そうね、じゃあお願いするわ。」
それを聞いた愛紗の顔が嬉しそうだ。
「だけど愛紗、一つだけこちらの要求があるわ。」
「はい。何でしょう?」
「あなたには劉備軍に戻らず官渡で五千の兵を率いて貰うわ。」
「「「えぇ!?」」」
「今回の主戦場は官渡になる。これだけの大軍が展開出来る場所と考えれば自ずとそこになるわ。朱里も同じ事を言ってきている。しかも劉備軍がこちらに到着する前に戦が始まる可能性がおおきいわ。」
愛紗が俺の方を見る。
「本当だ。敵はもう黎陽まで来ている。明日には
「・・・・判りました。兵五千お預かり致します。」
「安心しなさい愛紗。官渡で敵を撃破したら軍の再編時に劉備軍に戻してあげるから。」
「ふふ、ならばそれを励みに袁紹軍を蹴散らしましょう。」
愛紗が不敵に笑って見せた。
「よし!では今から移動するわよっ!!」
華琳、桂花、愛紗の三人が兵五千を連れ陳留へ。
俺は一人、定陶へ兵五千を連れて出発した。
あとがき
麗羽が何故并州、幽州、青州に攻め込んだのか?
答えは魏√と同じ
河北四州の覇者
を、名乗りたかっただけです。
それを思いつかなければ
さっさと兗州に攻め込んで
あっさり負けていたことでしょう。
翠のお話
ここで入れておかないと
書く機会がないと思い入れました。
なんかストーカー一歩手前になってますねw
地名が沢山出てきますが
興味のある方は
三国志の地図など検索してみると
どう麗羽が移動して
華琳が築いた防衛線がどこなのか
わかると思います
ただし、地図によっては
場所がかなり違っている物も
有りますのでご注意を。
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大幅加筆+修正となっております。
最初に反董卓連合編のおまけ【翠turn】です。
そして各陣営の官渡の戦いに向かう動向のお話です。
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