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恋姫夢想 ~至高の鍛冶師?の物語~ 第十七話

龍々です。
第十七話投稿です。
黄巾には入れませんでした……。
そしてまた動物が増えます。

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2012-02-18 22:17:29 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:5081   閲覧ユーザー数:4295

「くそっ!なんだって俺ばっかこんな目に遭うんだ!!!」

 

でかい屋敷に忍び込んで金目の物でも頂戴しようと思ったのに

手に入ったのはやたら大事に置いてあった小汚え本一冊。

逃げてる時に変な格好した奴がいたからついでにそいつの身包み剥ごうとしたら変な女に

邪魔される。

子分二人ともはぐれちまうし。

 

「……くそっ!」

 

俺の横を通り過ぎる奴らが俺を見下した眼で見やがる。

餓鬼の頃からそうだった。どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがる。

畑仕事だって家事だって、俺は俺がやるより他の奴がやった方がいいと思ってたから

手を出さねえでいただけなのによお。

村の連中、そんな俺を追い出しやがって。

何が

 

「働きもしない、何か助言する訳でもない。上から

『あれをしろ』『これをしろ』言うだけで何でも他人任せ。

 反抗したら力づくで言う事を聞かせようとする。 

 そんな奴この村には置いておけない」

 

だ。

仕事をしようとしねえんだから殴ってでもやらせるのは当然だろうが。

こんな善良な俺を追い出す様な連中には罰が必要だ。

そう思って俺は村から金目の物をごっそり持ちだして村に保管してある食糧にも

火をつけてきてやった。

村の連中はたくさん死んじまってるかもしれねえが、自業自得ってやつだ。

それから今まで盗みや追剥で食いつないできた。

途中で子分二人ができて三人でやってきたってのに。

 

 

「ああ、苛々するぜ……ん?」

 

そんな中、俺の眼に三人組の女の姿が入ってきた。

さっき通りで歌を歌ってた旅芸人の連中だ。

ああ、本当に胸糞悪い歌だった。

いかにも夢や希望を持ってます、っていうようなだ。

あの程度の歌で何がどうなる訳がねえのによ。

 

「……現実知りやがれってんだ……あ?」

 

……そうだ。あるじゃねえか。あんな奴らに現実教える方法が。

屋敷から頂戴してきたこの本、こんなんでも盗品には違いねえ。

これをあいつらに渡して売らせでもすれば

 

「お尋ね者の仲間入りって訳だ」

 

あんだけ大事にあったって事はあの屋敷の人間にとっちゃあ大事な物の筈。

今頃この本を必死に探してるだろうし、それが売られてるとなりゃあ

売りに来た奴を血眼になって捜す筈だ。

いや、それどころかあいつらを盗んだ黒幕とも思うかもしれねえ。

 

「くく、我ながらいい考えじゃねえか」

 

そうと決まれば行動開始だ。いきなり理由なしに近づいたら不審がられるからな。

歌に感動した、とでもしておくか。

 

「あ、あの!」

 

俺は旅芸人の女達に声を掛けた。

勇気を出して声を掛けたように演じて。

さあ嬢ちゃん達、現実ってもんをしっかり噛み締めるがいいや。

 

 

 

「たあっ!」

「甘い」

 

俺に向かって突かれた槍を大袈裟と呼べる位に腕を外に向かって振る事で弾く。

 

「あわっ!?」

 

相手は両手で槍を持っていたから弾かれたら身体もそれに引き摺られてしまう。

体勢を整えられる前に相手の懐に飛び込み

 

「あいたっ!?」

 

その額にデコピンをかました。

 

 

 

「う~~、酷いよお兄さん」

「拳骨の方が良かったか?」

「そうじゃなくて寸止めするとか…」

「馬騰さんからそれはしないよう言われたからな」

「ぶ~」

 

俺が戦っていた相手…蒲公英が頬を膨らませながら不満を述べる。

今俺は馬一族の所に来ている。

切欠は数日前の事だ。

 

 

「馬?」

「そう。藍さんの所に馬を買いに行くの。真也もついでにどう?」

「馬持ってても俺は使い道無いぞ。置いておける場所も無い。

 店にはぼたんも居るし」

「普段は城に置いててくれていいわ。それに真也だってこれからずっと

 この街から出ないつもりはないでしょう?

 なら持ってても損はないと思うけど。荷物運びにもなるし」

「…ふむ」

 

確かにいずれは他の街を見てみたい気持ちはあったし、

城に置いといてくれるっていうのは魅力だった。

幸い急ぎの仕事もなかったので行く事は可能だった。

金も十分すぎるほど持っていたし。

 

「……わかった。俺も行く」

「決まりね。じゃあ後日使いを寄こすから準備だけはしといて。

 あ、あと霞が行く事になってるから」

「わかった」

 

 

で、霞に同行して馬騰さん達の所に来たのだが

 

「お兄さん久しぶり!元気だった?」

「変わらずだ。お前は……訊くまでもないか」

「えへへ」

 

ここに来て最初に言葉を交わしたのが蒲公英だった。

あらかじめ文で俺が来る事を知っていたらしい。

 

 

「お兄さん、約束覚えてる?」

「あれは約束か?お前が一方的に言ってただけの様な気がするんだが」

「細かい事はいいの!さ、お兄さんの真名教えて?」

「……真也だ」

「わかった!これからもよろしくね、お兄さん!」

 

真名預けても『お兄さん』呼びなのは変わらずだった。

 

「……なんや二人とも随分親しげやけど……そんな前からの顔見知りやったか?」

「てへ♪ひみ『前に馬騰さん達が来た時に会ったのが初めてだ』……なんで言っちゃうかな~」

 

なんかその時の事全く反省して無さそうだったので

 

「ついでに言うと往来のど真ん中で俺の独り言に勝手に反応して叫びを上げて

 馬騰さんが居る時に『恥を掻かされた』とか言ってそれを危うく俺のせいにされかけて

 その後『恥を掻かされたお詫びしろ』とか言い出して俺が飯を奢る羽目になった」

 

息継ぎ無しのノンストップで大まかに説明してやった。

 

「……災難やったな」

「まったくだ」

「そのおかげでこんな可愛い娘と知り合えたのにその言い方は酷くない?」

「前にも言ったが自分で可愛い言うな」

 

この後蒲公英込みで馬騰さんに挨拶に行き、すぐに馬の商談に入ると思ったら

それは次の日に回され、その日はささやかな宴を開いてくれた。

なんで?

 

 

そして馬の商談になったのだが、俺はあくまでおまけなので当然後回しになる。

どうやって時間を潰そうかと考えていたら馬騰さんから蒲公英と手合わせを

してくれないかと頼まれた。

基本戦う相手が決まってしまっているので、偶には違う相手と戦うのは

刺激になる、といった意図らしい。

俺はそれを了承。しばらく蒲公英の相手をする事になった。

 

「ほれ、次」

「ええ!?終わりじゃないの!?」

「商談が終わるまではやって欲しいそうだからな。早めに終わる様祈れ」

「うう……伯母様、霞さん、早く終わらせて~~~!」

 

おそらく心からであろう叫びをあげる蒲公英だが、その願いは叶わないだろうな。

もしすぐ終わらせる気なら商談の間なんて言わない筈だし。

しかも俺が馬騰さんと会うのは二回目なのに蒲公英預けて

 

「あなたが蒲公英ちゃんを害するとは思いませんから」

 

なんて言われたら、応えない訳にはいかないじゃないか。

代わりに蒲公英は気の毒だが。

さて、霞が戻るまで続けるとしようか。

 

 

「おお、おったおった」

「ん?終わったのか?」

 

霞と馬超…馬騰さんの娘が揃って歩いてきた。

馬超とは俺と霞が馬騰さんに挨拶に行った時に会って、それぞれ自己紹介した。

鉢金でポニーテール、蒲公英が元気一杯なら馬超は勝気って雰囲気の女の子だ。

 

「おう。しっか『お姉様~~!』わとと」

「ど、どうした?蒲公英」

「お兄さんに苛められた~~~!」

「……何したんだ鷹原」

 

蒲公英が霞を押しのけて馬超に抱きついた。

抱きつかれた馬超が非難する様な眼で睨んできたが、これに関しては

俺は悪くない…と思う。

 

「馬騰さんに言われて蒲公英と手合わせしてただけだ」

「諦めろ蒲公英。あたしじゃお袋には勝てない」

「うわ~~~ん!!!」

 

え?納得するのか?

 

「鷹原さん」

「あ、馬騰さん」

 

そんな疑問を持ってた時、馬騰さんがこちらに歩いてきた。

なにやら視界に男が一人立ち去って行くのが見えたが。

 

「それでは鷹原さんの馬を選びましょう。付いて来てください」

 

俺が居なくなるから手合わせは終わりだと思ったのだろう。

蒲公英はほっとしていたが

 

「ああ翠、蒲公英ちゃんの相手お願いね?」

 

その言葉を聞いて、この世の終わりみたいな顔になってた。

 

 

馬騰さんに連れられ、ある場所に着いた。

そこでは駆けたり、草を食べたりと自由気ままに過ごす馬達がいた。

 

「この中から一頭、選んでください」

「え?いや、俺は馬の見方なんか分からないんですが…」

「まずは何も考えずに」

「はあ……」

 

何も考えずにと言われても、俺は馬に関しては本当に何も分からないから

何を基準に選べばいいのか……。

視界に入る馬を一頭一頭注視してみたのだが

 

「……さっぱり分からん……ん?」

 

そんな中、俺の眼に一頭の馬が入ってきた。

なんかぼけ~っとした馬なのだが、やけに気になり

 

「あいつです」

 

その馬を選んだ。

 

 

「あの子……ですか?」

「はい」

 

馬を選んだ時、馬騰さんが少し驚いた表情をした。

やっぱりあまり良くない馬なのだろうか?

けどどうもあいつ以外を選ぶ気にはならなかった。

 

「……分かりました。では、あの子の商談を始めましょう」

「あ、俺馬の適正価格も分からないです」

 

詠も『馬によって大きく変わるから教えても参考にならない』って言ってたし。

 

「その辺りは御心配なく。素人の方を騙す様な真似は決してしませんから」

「お願いします」

 

 

その後、商談は無事成立。

乗るのも初めてなので手解きをしてもらった。

……手放しで乗れて駆けられるって馬騰さん凄すぎると実感した。

そして数日後

 

 

「お世話になりました」

「いいえ、こっちも翠や蒲公英ちゃんのいい刺激になりました」

「なり過ぎだよ~…」

「蒲公英…」

 

俺も帰る事になった。

霞は買った馬を連れ帰る人員を呼びに先に戻っている。

 

「では、馬と『藍です』…はい?」

 

今、なんと仰いました?

 

「私の真名、藍。あなたに預けます」

「……本気ですか?」

「冗談で真名は預けませんよ?」

「ならあたしも。あたしの真名は翠だ」

 

ば、馬超まで。

 

「…俺の真名は真也です。お預けします」

「はい」

「ああ」

 

藍さん、何故に満足気なのでしょうか?

……真名も交換したし、そろそろ行くか。

 

「では藍さん、翠、蒲公英、また」

「はい」

「またな、真也」

「じゃあね、お兄さん」

 

俺は買った馬…さくらを連れて帰路に就いた。

……ぼたんに引き続きさくら。

我ながらボキャブラリーの貧弱さに泣けてくるな。

おまけに

 

「なあ、他の名前じゃ駄目なのか?」

「……(ぷいっ)」

 

見事に顔を逸らしてくれやがりました。

なぜか『さくら』以外で呼ぶとこれだ。

 

「はあ……」

 

まあ、馬も手に入ったし、この辺りは妥協するか…。

 

 

「ふふ」

「どうしたんだ?お袋」

「信じられる?翠。彼、馬に関しては素人なのよ?」

 

馬を選ぶ時、彼は何頭か居た名馬と呼べる馬に全く反応しなかった。

何らかの知識があれば確実に反応した筈だ。

 

「へ?何も知らないのにあいつ選んだのか?」

「ええ」

 

あの子はあの群れの中で一番の良馬になる可能性を持った子だ。

もしかしたら私や翠の相棒の子達にも並べるかもしれない程の。

けど

 

「あの子の相棒になれるかしら?」

 

良馬は大概乗り手を選ぶ。

あの子はあまり人見知りはしないから乗るのは難しくない。

けど活かせるかとなるとまた別問題になる。

 

「次に会う時が楽しみね」

 

尤も、名前を着けられる位ならおそらく大丈夫でしょうけどね。

 

 

おまけ

 

「………」

「……落ち着きなさいよ、華雄」

「む?私は落ち着いているぞ?」

「……そう」

「?変な奴だな」

 

「(本人はああ言ってるけど…どう思う?)」

「(へう…華雄さん、そわそわしっぱなしだよ~)」

「(無自覚とか性質悪すぎですぞ)」

 

「……呂布、あの三人はどうしたのだ?」

「?」

「いや、いい。聞いた私が悪かった」

 

 

 

 

「~♪」

「何食べてるんだ?季衣」

「あ、兄ちゃん!これね、『羽丸印』のお菓子!美味しいんだよ!」

「…へえ……へ?」

「?どうしたの?」

「い、いや。なんでもない」

「?変なの」

「………なんでどら焼きが?」

 

 

後書き

 

馬入手。名前は前にコメントで答えたとおり『さくら』です。

後書きで季衣が食べてるどら焼き、実は豆乳クリーム入りだったりします。

 


 
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