真・恋姫†無双~赤龍伝~第94話「趙雲・甘寧 対 氷雨」
―――汜水関・内部―――
外からは戦いの音が聞こえてくる。
聞こえてくる音からも戦いの激しさが分かる程だった。
思春「始まったようだな」
趙雲「それにしても、随分と簡単に入り込めたものだ」
思春と趙雲は汜水関の中に潜入していた。
思春「早く袁紹を探して捕えるぞ」
趙雲「うむ。そうだな。しかし、ここには"奴"がいる。十分に注意しよう」
思春「ああ、分かっている」
そう言うと思春たちは汜水関の奥へと進んでいった。
―――汜水関・最奥部―――
袁紹「何故、私が出てはいけないんですの!?」
氷雨「君ってバカかい? 君は一応ここの総大将なんだよ。だから、ここで待ってなって♪」
袁紹「何を言っていますの! 今度こそ、華琳さんにぎゃふんと言わせてみせるんですから!」
氷雨「ムリだと思うけどね。君が出て行くと逆にこっちの戦況が悪くなりそうだよ」
袁紹「私が出れば、すぐさま華麗に勝利できますわ!」
氷雨「そんな根拠のない自信が、どこから出てくるのか不思議だよ」
袁紹「私を誰だと思っていますの? 袁本初ですわよ! 三国一の名家であるこの私が、華琳さんのような宦官の娘に負けるはずはございませんわ!」
氷雨「…………君って、……本当にバカなんだね」
袁紹の態度に氷雨は心底呆れてしまった。
袁紹「何ですって?」
氷雨「はぁー。……もういいや。そこまで言うなら好きにしておいで」
袁紹「おーっほっほっほ! ようやく分かったようですわね。猪々子さん、斗詩さん、すぐに行きますわよ!」
そう言うと袁紹は高々に笑いながら駆けて行った。
そんな袁紹を氷雨は冷やかな目で見送ると、背後にある柱に向かって話しかけた。
氷雨「はぁー。汜水関はこれで落ちたね。………ほら、いい加減に出ておいで♪ 居るんでしょう?」
氷雨が言い終えると、柱の裏から二つの影が出てきた。
氷雨「やっぱり君たちか♪ ひさしぶりだね♪」
趙雲「ほう。気がついていたか」
思春「……」
氷雨「何しに来たのかな? まあ、さしずめ袁紹を捕えるか、殺しにきたんだね♪ でも、嬉しいよ♪」
趙雲「嬉しい?」
氷雨「だって、趙雲とも甘寧とも決着が着いていなかったからね。ここに来てくれて本当に嬉しいよ♪」
氷雨は笑みを浮かべながら、背中の槍を手にとって、そのまま構えた。
趙雲「我ら二人を同時に相手する気か?」
思春「死ぬ気か?」
氷雨「ふっ、洛陽や南蛮で戦った時の私だと思わない事だね。少しでも油断すれば死ぬのは君たちだよ♪」
先程まで、まったく感じられなかった氷雨の身体から殺気が溢れ出した。
思春「こ、これは!」
趙雲「何という殺気だ!」
呉と蜀を代表する武将の二人だったが、氷雨から発せられる殺気に飲まれそうになっていた。
氷雨「ふふ……怖気づいたかい? ほら二人ともかかっておいでよ♪」
氷雨の挑発に、思春と趙雲は無言のまま頷くと、氷雨に対して武器を構えた。
思春「鈴の音は……黄泉路を誘う道しるべと思え!」
趙雲「参るぞ! 我が名は趙子龍! 一心これ刃なりっ!」
掛け声とともに、二人は氷雨に斬りかかった。
氷雨「遅い遅い! 遅いっ!!」
思春と趙雲の攻撃を氷雨は余裕で躱していく。
氷雨「言っただよね? 前の私と思うなってね♪ 君たち程度なら二人がかりだろうと負けないさ♪」
趙雲「確かに南蛮の時よりも腕を上げているようだ。だが、我ら二人相手にその余裕は早いのではないかな?」
氷雨「そうかなぁ? 今の私なら呂布にだって勝つ自信があるんだよ♪」
思春「呂布にだと!?」
趙雲「……それは楽しみだな」
氷雨「じゃあ、そろそろ本気で行こうか♪」
氷雨はそう言って槍を構え直すと、放たれてる殺気が冷たく鋭く変わっていった。
そして、氷雨の姿は趙雲と思春の視界から消えた。
思春「なっ!」
思春から驚愕の声が出る。そして、それと同時に隣にいた趙雲から苦痛の声が聞こえた。
趙雲「ぐぁっ!」
思春が趙雲の方に目をやると、そこには左肩に深々と槍を突き刺された趙雲の姿があった。
氷雨「ふふっ…油断したね♪」
決して油断をしていた訳ではなかった。だが、二人の視界から氷雨は消えたのだ。
思春「趙雲!!」
氷雨「おっと」
氷雨に思春が斬りかかるが、氷雨はそれを軽く躱した。
趙雲「うっ!」
槍を引き抜かれて、趙雲から声が苦悶の声が漏れる。
思春「大丈夫か?」
趙雲「ああ、何とかな…ぐっ」
趙雲の左肩からは夥しい血が流れてくる。
趙雲「それより……お主は奴の動きが見えたか?」
趙雲は思春に小声で尋ねる。
思春「……いや」
思春も小声で答えた。
氷雨「まさか、今の動きが見えなかったの? うーん。困るなぁ」
思春「困るだと?」
氷雨「だって今のが見えないんじゃ。君たち……なぶり殺しだよ♪」
思春「舐めるなぁー!」
思春が氷雨に再び斬りかかる。趙雲も一緒に斬りかかるが、氷雨にはかすりもしない。
逆に趙雲と思春の身体には傷の数がどんどんと増えていった。
思春「はぁはぁ…」
趙雲「はぁ、はぁ…」
気がつけば、二人は体力もつき、血まみれになって床に膝をついていた。
氷雨「……こんなもんかな。結構二人とも頑張ったんじゃない?」
趙雲「はぁはぁ…残念だが、我らではお主には勝てないようだ。だが……ただでは死なん!」
思春「…奴は…いずれ蓮華様に害をなす存在……はぁはぁ、そのような事は……絶対にさせん!」
氷雨「ん?」
趙雲も思春も残った力を振り絞って立ち上がった。
思春「我が命は、蓮華様の御為にっ!」
趙雲「……行くぞ! 我らの命の昇華、その目にとくと焼き付けい!」
氷雨「ふふっ。二人ともありがとう。楽しかったよ♪ けれど、これで終わりにしよう!」
氷雨が二人に止めを刺そうとした瞬間だった。
汜水関内に雷が落ちたような衝撃が走った。
趙雲「これは…」
思春「な、なんだ!」
氷雨「いったい何!?」
辺りを見回すも何も変化は見られない。
否、先程まで誰も居なかったはずの場所から、人の気配を感じた。
氷雨「誰だい?」
?「…………」
無言のまま姿を現した人物に、その場にいた全員が驚いた。
思春「な…何だと!」
趙雲「お主は…」
氷雨「…………呂布」
つづく
~あとがき~
呂です。読んでくださって、ありがとうございます。
真・恋姫†無双~赤龍伝~に出てくるオリジナルキャラクターの紹介
オリジナルキャラクター①『風見赤斗』
姓 :風見(かざみ)
名 :赤斗(せきと)
字 :なし
真名:なし
武器:花天と月影……二振りの日本刀(小太刀)。赤色の柄で赤銅の鞘に納まっているのが“花天”で、黒色の柄で黒塗りの鞘に納まっているのが“月影”。
本編主人公の少年。
身長168㌢。体重58㌔。年齢17歳。赤髪。左目は黒色、右目は輝く金色。
放課後に道場で古武術の達人である先生に稽古をつけてもらうのが日課だったが、ある日道場で黒尽くめの男に襲撃される。
その際、赤い光に包まれて恋姫の世界に飛ばされる。
死にかけていた所を、火蓮によって保護され“江東の赤龍”という異名を付けられる。
古武術 無双無限流を学んでおり、その奥義を使えば恋姫の世界の武将とも闘えることができる。
無双無限流には、『全ての奥義を極めしとき、その身に龍の力が宿る。』という伝承がある。
奥義には“疾風”“浮葉”“流水”“月空”“烈火”“絶影”“龍鱗”“狂神”などがある。
奥義の同時発動は可能だが、奥義単体の発動以上に身体に負担がかかる。
現在、奥義“狂神”を発動させて、龍脈の気が流れ込んだ影響で右目は金色に変化している。
龍の眼は、あらゆる情報を視認できる眼。使う事により赤斗の気も増える。しかし、消耗はそれ以上に多い。
好きなもの:肉まん
苦手なもの:海(泳げないから)
能力値:統率3・武力4・知力4・政治2・魅力4
オリジナルキャラクター②『孫堅』
姓 :孫
名 :堅
字 :文台
真名:火蓮(かれん)
武器:南海覇王……やや長めの刀身を持つ、両刃の直刀。派手な装飾はないものの、孫家伝統の宝刀。
孫策(雪蓮)たちの母親。
身長173㌢。腰まで伸びる燃えるような赤い髪の持ち主。
血を見ると雪蓮以上に興奮してしまう。
孫尚香(小蓮)には非常に甘い。周りの人間が呆れるほどに甘い。
この外史“赤龍伝”では孫堅は死んでいない。
好きなもの:娘たち(特に小蓮♪)と酒
能力値:統率5・武力5・知力3・政治4・魅力5
オリジナルキャラクター③『諸葛瑾』
姓 :諸葛
名 :瑾
字 :子瑜
真名:藍里(あいり)
武器:風切羽(かざきりばね)……火蓮から受け取った護身用の短刀。諸葛瑾(藍里)の実力が低いので、あまり役に立っていない。
諸葛亮(朱里)の姉。
諸葛亮(朱里)とは違い、長身で胸も大きい女性。髪は金髪でポニーテール。
温厚で気配りのできる性格で、面倒見も良い。赤斗の世話役として補佐につく。
一時は、自分たちとは違う考え方や知識を持つ赤斗に恐怖心を持っていた。
政治、軍事、外交と様々な仕事をこなすが、諸葛亮(朱里)には僅かに及ばない。
苦手なもの:酒(飲めるが、酔うと周りの人間にからむようになる)
能力値:統率3・武力1・知力4・政治4・魅力4
オリジナルキャラクター④『太史慈』
姓 :太史
名 :慈
字 :子義
真名:嶺上(りんしゃん)
武器:雷電(らいでん)……二本の小型の戟。
非常に勇猛かつ、約束に律儀な武将。銀髪レゲエの女性。
孫策(雪蓮)と一騎打ちして引き分けたことがある。
それ以来、孫策の喧嘩友達になっており、よく喧嘩をしている。
孫尚香(小蓮)や諸葛瑾(藍里)と仲が良く、孫尚香(小蓮)の護衛役をしている事が多い。
子供好きで、よく街の子供たちと遊んでいる。
弓の名手でもあり、その腕は百発百中。
好きなもの:子供
能力値:統率4・武力4・知力3・政治2・魅力3
オリジナルキャラクター⑤『司馬懿』
姓 :司馬
名 :懿
字 :仲達
真名:不明
武器:不明
黒尽くめの衣装を身に纏った、曹操軍の軍師。
曹操軍に属しているが、曹操からの信頼はないといっても良い。
色々と裏で暗躍しており、虎牢関では張遼を捕え、術により自分の傀儡にしている。
魏から姿を消していたが、赤壁の戦いに現れ曹操に反旗を翻した。
能力値:統率5・武力5・知力5・政治5・魅力?
オリジナルキャラクター⑥『玄武(げんぶ)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:魏軍正式採用剣……魏軍に配備されている剣。
司馬懿の部下。
普段は何の変哲もない魏軍の鎧を身に纏い、普通の兵士にしか見えない。
しかし、眼の奥からは異質な気を醸し出している。
鎧の下には黒の衣を纏っており、素顔は司馬懿に似ている。
虎牢関では、鴉と一緒に張遼を捕えた。
能力値:統率2・武力4・知力3・政治1・魅力2
オリジナルキャラクター⑦『鴉(からす)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:爆閃(ばくせん)……司馬懿から受け取った回転式拳銃。
司馬懿の部下。
性格は軽く、いつも人を馬鹿にしているような態度をとる。
司馬懿と同じ黒い衣装だが、こちらの方がもっと動きやすい軽装な格好をしている。
寿春城では、孫堅(火蓮)を暗殺しようとした。
能力値:統率2・武力4・知力2・政治1・魅力3
オリジナルキャラクター⑧『氷雨(ひさめ)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:氷影(ひえい)……氷のように透き通った刃を持つ槍。
司馬懿の部下。
青い忍者服を着た長い白髪の女。
背中には“氷影”を携えている。戦闘時には全身からは氷のように冷たい殺気が滲み出す。
洛陽で董卓(月)と賈駆(詠)を暗殺しようとした所を、赤斗と甘寧(思春)に妨害される。
官渡の戦いでは、呂布の部下を連れ去り、それを止めようとした陳宮を殺害する。
能力値:統率2・武力4・知力3・政治1・魅力3
オリジナルキャラクター⑨『宮本虎徹』
姓 :宮本(みやもと)
名 :虎徹(こてつ)
字 :なし
真名:なし
武器:虎徹……江戸時代の刀工が作った刀。
赤斗の古武術の師匠。
年齢は50歳。実年齢よりも、肉体年齢は若い。
赤斗と一緒に、恋姫の世界に飛ばされたと思われる。
最初は河北に居て、それからは用心棒をしながら、色々と辺りを転々としている。
赤斗の修行をやり直した後、天の世界に戻ったようだが、詳細は不明。
赤斗曰く、『無双無限流の妙技を見せてやるっ!』が口癖で、その実力は呂布(恋)以上。
能力値:統率?・武力6・知力5・政治?・魅力?
オリジナルキャラクター⑩『兀突骨』
司馬懿の部下。
全身鎧を纏った大男。
許緒や典韋以上の怪力の持ち主で、気を操る事もできる。
赤壁の戦い後、呉蜀同盟の本陣に単独に乗り込み、赤斗との戦い敗れる。
その後、尋問を受けている途中に自爆する。
能力値:統率3・武力4・知力3・政治2・魅力3
オリジナルキャラクター⑪『木鹿大王』
司馬懿の部下。
無精髭を生やし頭から虎の毛皮を纏った大男。
虎や豹などの獣を操る事ができる。
南蛮で兀突骨とともに劉備軍を襲撃するが、失敗に終わる。
関羽たちに殺された獣の復讐をする為、黒い巨獣と化して関羽を襲撃する。
透明になって関羽や赤斗を苦しめるが、二人の連携により倒される。
能力値:統率4・武力4・知力2・政治1・魅力3
※能力値は「5」が最高だが、呂布の武力と劉備の魅力は「6」で規格外。
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袁紹さんを捕縛する為、汜水関に潜入した思春と星。
かつて洛陽や南蛮で戦った氷雨と遭遇する事に。
主人公も含めてオリジナルキャラクターが多数出てきます。
未熟なため文章や設定などにおかしな部分が多々あるとは思いますが、長ーーーい目で見てくださると助かります。
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