No.351408

真・恋姫†無双 外伝:幼なじみは耳年増 ~今日はなんの日?その2~

一郎太さん

という訳で、第3回恋姫祭り参加作品です。
タイトルから分かる通り、今回はこの御方。
今回の恋姫祭りで一郎太を初めて知ったという方は、右上のレスポンス元をお読みください。

マジリア充とか消えればいいのに。

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2011-12-23 20:10:29 投稿 / 全13ページ    総閲覧数:10718   閲覧ユーザー数:7744

 

幼なじみは耳年増 ~今日はなんの日?その2~

 

 

pppppp……―――。

 

「うぅ……」

 

毎朝耳にする電子音が鳴り響いている。もぞもぞと身体の向きを変え、その音源へと腕を伸ばした。

 

「……………朝、か」

 

時計を見れば、短針は時計盤の6を指している。窓へと顔を向ければ、まだ陽も射していない。これは別に、今朝だけ早起きをしたという訳ではない。毎朝の恒例行事だ。

いつものように布団から抜け出して軽く伸びをすると、いつものように着替える為に立ち上がろうとして――――――

 

「………はぁ」

 

――――――そしていつもとは違う溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

冬だという事もあるが、部屋のなかは薄暗い。というか、外も暗かった。窓の下端にかすかに見える白い色に、億劫な気分と、ほんの少しの喜びを抱えながら窓を開く。

 

「うぅ…寒いと思ったら、やっぱり積もってやがる………」

 

窓の外は、一面銀世界………とは言えないまでも、家々の屋根の色は見えず、道路も新聞配達のバイクが通り、灰色の溝が出来ている以外は真っ白だ。

 

「―――くちゅんっ」

「やべっ」

 

背後から聞こえてきた可愛らしいくしゃみに、俺は慌てて窓を閉める。

 

「うぅぅ……さみゅぃ………」

「あぁ、悪かったな。もう窓は閉めたから、もう少し布団に入ってな」

「ゃあ…おにぃちゃんもー」

「寝呆けてる時は甘えん坊なんだな」

 

いや、起きている時もか。いまコイツが此処にいるって事は、昨日の夜中にでもまた怖い夢を見て、忍び込んできたに違いない。

 

「………ん?」

 

待て待て。これだけ雪が積もってるって事は、昨日の夜から降っていたんだよな。

 

「このバカタレが!」

「はぅっ!?」

 

雪の降るなか、屋根を伝って来たのか。まったく、危ないったらありゃしない。

 

 

 

 

 

 

放置して鍛錬に行けば雛里が泣き出してしまう事は分かっていたので、着替えを終えた俺はその小さな身体を揺する。

 

「うぅ……寒いよぉ………」

「起きなかったら置いていくぞ。それでもいいのか?」

「やぁ……」

 

ぐしぐしと眼を擦りながら布団から這い出る雛里。パジャマ姿のままでは流石に風邪をひいてしまうので、その身体に俺のパーカーを着せ、さらに毛布でぐるぐる巻きにして抱き上げる。

 

「この恰好で走るの?」

「いや、今日は雪が積もってるからな。道場でやるよ」

「あ、雪降ったんだ……」

「そうだよ」

 

腕の中で丸くなっている雛里と話しながら階段を降り、道場へと向かう。隅に敷いてある座布団に雛里を座らせると、俺はさっそく準備運動を開始した。

ストレッチをして、寒さで固まっている身体を温め、壁に掛けてある木刀を手に取る。

 

「お兄ちゃん、凄いね」

「んー?」

 

素振りをしていれば、雛里が話しかけてきた。少し赤い鼻の頭が可愛らしい。

 

「毎日こんな風に修行してるんでしょ?」

「まぁな。慣れてるってのもあるけど」

「でも…凄いね」

 

そう告げて微笑む雛里。ほんの少しだけ年齢よりも上に見えて、思わずドキリとさせられた。

 

 

 

 

 

 

朝食も終え、土曜の部活へと向かう俺は、雛里を送りがてら隣家に向かう。

 

「おはよう、一刀君。いつも雛里をありがとうね」

「おはようございます。それはいいんですが……」

「あら、何かあった?………あ、ついに雛里に手ぇ出しちゃった?もう、ダメよ一刀君。あと5年は待ってもらわないと」

「違ぇよ!?………そうじゃなくて」

 

どこかネジの緩んだ雛里のお母さんに溜息を吐きながらも、俺は今朝気づいた事を告げる。

 

「今日、雪じゃないですか」

「そうね。こんなに積もったのも久しぶりじゃない?」

「えぇ。で、雛里が昨日の夜に来たんですが……アイツ、雪の積もった屋根の上を伝って来たんですよ」

「………あ」

「流石に危ないんで、何か対策考えといてくださいね」

「わかったわ。考えとく」

 

やはりどこか抜けている母親に進言をし、俺は学校へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「さて、それじゃ出かけるか」

「はいっ」

 

部活も終えた俺は、雛里と共に、雪道を街へと歩く。デートなどではない。俺はロリコンじゃないからな。

 

「雛里は何が買いたいんだ?」

「えと…わかんないです」

「なんだ、それ」

 

俺の問いに苦笑しながら答える雛里の右手は、俺の左手と繋がれていた。指無しの手袋なんぞを着けている所為か、もともと幼い容姿がさらに低年齢化して見える。

 

「まぁ、いい。適当にぶらつくか」

「はい」

 

朝の口調は、やはり寝惚けていたからだろう。いまでは、すっかりいつもの敬語口調が出てきていた。

 

「まずは定番だな」

「えへへ」

 

照れ笑いするも、その意識はすでに宝の山に向けられている。好きに見ていいよと伝えれば、さっそく小説コーナーへと向かっていった。

 

「さて、俺は―――」

 

雛里が本を読む時の集中力は相当のものだ。俺は自分の本といっしょに、ある物を購入するのだった。

 

 

 

 

 

 

「俺はコーヒーでいいや。雛里は何にする?ケーキでもいいぞ」

「えと、んと―――」

 

1時間の物色の後、雛里は3冊の本を購入する。荷物を受け取って再び手をつなぎ、俺達は近くのコーヒーチェーン店へと足を運んでいた。

 

「お待たせしました」

 

店員が持ってきたのは、ホットコーヒーにホットティー、それとホイップクリームの乗ったチョコケーキだった。

 

「雛里ってチョコ好きだったっけ?」

「私は何でも好きですよ。今日は、お母さんがショートケーキ作ってくれるって言ってたから、こっちにしました」

「なるほどな」

 

今年は土曜と重なっているから、雛里の両親も仕事はない。久しぶりの団欒の為に、あの人も張り切ってるんだろうな。

 

「美味いか?」

「はい、美味しいです」

 

ちまちまとケーキを口に運ぶ姿は小動物を思わせ、知らぬうちに頬は緩む。

 

ちょうどいいタイミングか。一生懸命ケーキを食べる雛里を横目に、俺は先ほど購入した荷物を開封した。

 

 

 

 

 

 

「――――――雛里」

「はい?」

 

クリームのついたケーキをフォークに乗せ、口に入れようとしていた雛里が顔を上げる。タイミングを間違えたか。小さな薄桃色の唇の端に、クリームがついている。まぁ、いいや。

 

「はい」

「?」

 

頭上に疑問符を浮かべながら首を傾げる雛里の目の前には、俺の手―――に摘ままれた緑を基調とした紙の包み。

 

「………えと、お兄ちゃん?」

 

おっと、新発見だ。寝起きだけでなく、驚いた時にも口調が変わるらしい。

 

「開けてごらん」

 

フォークを一旦皿に置き、雛里はテーブル越しにそれを受け取る。丁寧に金色の楕円形シールを剥がし、ゆっくりと梱包を解いていった。

 

「………これ」

「メリークリスマス。まだイブだけどな」

 

雛里の手にある包み紙の中には、大きさの違う、同形の革製品。雛里の髪の色に合わせて水色を選んだが、違うのでもよかったかもな。

 

「…ブックカバー?」

 

小さいものは文庫本サイズ。大きいものはハードカバーを覆えるような、ブックカバーを3つほど購入した。本好きの雛里だが、何度も同じ本を読み返す所為で、外側がボロボロのものもあるしな。

 

「あぁ、しっかり使ってやってくれ」

「………………」

 

俺の笑顔とは裏腹に、雛里は俯く。………何か間違ったのか?

 

「………っく」

「雛里?」

「ひっく、えぐっ………ふぇぇぇん」

「なんでっ!?」

 

雛里は泣き出してしまった。

 

 

 

 

 

 

「ど、どうした、雛里?何か気に障る事言っちゃったか!?」

「ふ、ふぇっ…ふぇぇぇん」

 

大慌てで宥めようとするも、一向に泣き止む気配はない。周囲からの視線が痛い。

 

「何かやっちまったんなら謝るから。なっ?なんで泣いてるのか教えてくれないか?」

「ち、ちがっ、違うのぉ……うれ、嬉しいの………ふぇぇぇぇん」

「は……?」

 

雛里の言葉に、俺は呆気にとられる。同時に、雛里の大きな声で、周囲の雰囲気も元に戻っていた。おい、後ろのカップル。「ただのリア充か」って聞こえてんだよ。

 

「だって、お兄ちゃんからプレゼント貰えるなんて、思ってもなかったからぁ………」

「そんな大げさな。去年だって上げただろう?」

「でもでもっ、去年は買ってくれるって最初に言ってくれたもん!今年は言ってくれなかったから、もう貰えないと思ったんだもん!」

「あー…そりゃ、すまんかった」

 

そういえば言ってなかった。だが、そこまで思い詰めるものか?

 

「ありがとぉ…ふぇぇぇぇん………嬉しいよぉ、ひっく、ふぇぇぇん」

「わかったから!わかったから泣き止んでくれぇ!」

 

先程と打って変わって、周囲の生温かくなった視線が痛いです。

 

 

 

 

 

 

しばらくして、雛里はようやく落ち着きを取り戻してくれた。少しだけ赤くなった目が申し訳ない。

 

「お兄ちゃん…」

「ん?」

 

テーブルに備え付けのペーパーで目元と鼻水を拭った雛里が口を開いた。

 

「あの、私、何も準備してない………」

「なんの準備だ?」

「お兄ちゃんへの…プレゼント……」

 

そんなのはいらないのにな。

 

「別に気にしなくていいんだぞ?その気持ちだけで十分だ」

「でも……」

 

まぁ、雛里も真面目な性格だからな。貰ったからには返さないといけないと思っているのだろう。「でも」「どうしよう」などと呟いていた雛里を見ていて、俺はふと悪戯を思いついた。きっと俺も正常じゃなかったのだろう。魔が差したんだ。

 

「じゃぁ、お返しはこれでいいよ」

「ふぇ?」

 

俺の言葉に顔を上げた雛里の顔に、手を伸ばす。

 

「あわわっ!?」

 

そのまま人差し指を雛里の口元に近づけ、ずっとついたままになっていたクリームを拭ってやり、それを舐めとった。

 

「美味しかったよ。ごちそうさま」

「………………」

 

一部始終を見終えてから、ようやく状況を理解したのか、雛里の顔が一気に朱に染まった。

 

「どうした?」

 

そして、真っ赤のままの雛里が口を開く。

 

「えと……お兄ちゃんはクリームプレイがしたいの?」

「どこで覚えた、んな言葉!?」

「………お兄ちゃんの本」

 

なんてこった。

 

 

 

 

 

 

そのままブラブラと散策を続け、日も暮れたところで、俺と雛里はいまだ雪の残る道を家へと歩き出した。

 

「ねぇ、お兄ちゃん」

「どうした?」

 

住宅街に入ったところで、ふと雛里が立ち止まり、俺の左手を握る右手に力をこめた。

 

「あのね、その…えと………」

 

だが、口籠る。言いたい事はあるのだが、どう切り出せばいいのか分からない。あるいは、言い出すには勇気がいる。そんなところか。

 

「んと…えっと……」

「………」

 

そんな少女を、俺はじっと見つめる。第三者が見れば、きっと俺はどうしようもない程に穏やかな笑みを浮かべている事だろう。だって、心がそうなっているのだから。

 

「言ってごらん」

 

俺は、膝を曲げて雛里の高さに視線を合わせ、空いた右手でその小さな頭を撫でる。

 

「………お兄ちゃん!」

「うん」

 

都合5分ほど経った頃。意を決した雛里が顔を上げた。

 

「あのね、その……」

「うん…」

「………………………………好きっ」

 

ぎゅっと目を瞑った雛里が、ぶつけるようにその気持ちを口にする。俺はといえば。

 

「………うん」

 

優しく、返事をした。次の瞬間、

 

「………っ」

 

目の前の小さな女の子は、俺の胸に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

雛里の告白を受けてからさらに数分後。俺は再び歩き出した。腕のなかには、小さな身体。

 

「あのな、雛里」

「うん」

 

名前を呼ぶだけで、雛里が嬉しそうに顔を綻ばせる。その表情に申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらも、俺は諭すように言葉を紡いだ。

 

「雛里の気持ちは、すごく嬉しい」

 

その切り出しに、何かを感じたのだろう。一転して、雛里の表情に影が差した。

 

「でも、雛里はまだ小学生だ。俺が雛里と付き合ったりしたら、俺は当然、雛里までもが変な目で見られてしまう」

「………」

「だから、もう少しだけ、このままでいないか?」

「………この、まま?」

 

首を傾げる雛里に、俺は笑いかける。

 

「あぁ、このままだ。俺が兄貴で、雛里は俺の妹。もう少しだけ、雛里のお兄ちゃんでいさせてくれないか?」

 

雛里は聡い娘だ。きっと理解してくれる。

 

「ダメか?」

「………ダメ、じゃない」

「そっか、ありがとな」

「うぅん……ありがとね、お兄ちゃん」

 

そう呟いて首に抱き着いてくる雛里を、俺も優しく抱き締めた。

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

21時を回った頃。風呂から上がった俺の耳に、インターホンの音が聞こえた。

 

「一刀ちゃん、出てもらっていい?」

「あいよー」

 

婆ちゃんに言われるがまま玄関を開ければ、そこには夕方に別れた筈の小さな姿があった。

 

「………雛里?」

 

厚手の白いコートに身を包んでいるが、膝下にはいつものパジャマ生地が覗いている。首から上の顔は真っ赤だ。今日はずっと赤くなりっぱなしだな。

 

「どうしたんだ、こんな時間に」

 

俺が問いかければ、雛里は遠慮がちに口を開いた。

 

「あの、お母さんが……」

「?」

「お母さんが、『雪対策の為に、最初から泊めてください』って、言えって………」

「………………………」

 

もしかして……冬の間ずっとか?

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

はい、今日2回目の投稿。そして第3回恋姫祭り参加作品。

恋ちゃんSSとどっちにしようか迷ったけど、最近ずっとロリっ娘ばっか書いてたので、こっちに。

 

Yedロリータ!Noタッチ!

 

明日はクリスマスイブですよ。

一郎太は何をするのかって?

バイトに決まってんだろうが。

9時ー17時が原宿で、23時ー8時が横浜だよ。

もっと言うと、25日はそのまま最近始めた塾のバイトが6時間だよ、コンチキショウ。

 

という訳で、TINAMIユーザーの皆様も素敵な夜を過ごされますように。

 

けっ。

 

バイバイ。

 

 

 


 

 
 
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