不幸体質。
それはもう、何時から始まったかなんて覚えていないくらい、ボクにとっては当たり前の事になっているモノ。
だから、溜まりに溜まった不幸が一度に押し寄せるそんな日は、出来る限り他人との接触を避けて、一人どこかでじっと身を潜め、一日が過ぎていくのをじっと待つ。
けど。
よりによって、それがこんな日に来なくてもいいじゃないかと。今回ばかりはつくづく、この体質を呪った。
十二月の二十四日。
そう。
世間はクリスマス一色で、街中カップルだらけで賑わう、特別な日。
けど、ボクには一切、関係が無かった。
いや、無くなってしまった。
時折、ほとんど何の前触れも無く訪れる、不幸が一斉に起き出し、周りの皆に迷惑をかけてしまう日が、今日と言う日に重なってしまった以上。
ボクは誰の言葉にも耳を貸さず、誰一人会う事もなく、自分の部屋にただ篭っているだけしかできない。
どれだけ寂しくても。
どれだけ辛くても。
ただじっと。
不幸が通り過ぎて行くまで、誰とも交わらずに。
それが、ボクに出来る唯一つの手段だから。
……なのに。
「……なんで、アンタはここにいるのよ」
キッ、と。ボクはソイツの事を、眼鏡の下からわざとキツくした目を向けて、睨みつける。
「……一緒に居たいから……って言うんじゃ、駄目?」
「ッ……!!」
嬉しかった。
ボクの体質を知りながらも、そう言って微笑んでくれるソイツの言葉が、ボクの心を一瞬で温かくしてくれた。
けど。
「……フンッ。……物好きな奴よね、アンタって。……ボク以外にだって、アンタの事を待ってるのが居るでしょうに。……例えば……ゆ、月、とか」
フイ、と。嬉しさで思わず紅くなった顔を見られないように、冷たい態度で心にも無い言葉を返す。ボクの大親友である月の名前をわざわざ出し、ソイツの意識を彼女に向けて、ココから立ち去らせるために。
「……月は……確かに俺にとっては大切な友達だよ。……けど、今日と言う日に、俺が一緒に居たいって思うのは、君……だけだよ」
「……不幸……降りかかっても知らないからね」
「構わないさ。……君と、詠と一緒に居られるんなら」
「……バカ//////」
何時の間にか震えだしていたボクの肩を、ソイツはそっと抱きしめてくれて。
「……詠。……メリー、クリスマス……」
「あ……」
……そして、ボクたちはそのまま、静かに、そしてゆっくりと、互いの唇を重ねあった。
そして、ソイツとボクの二人っきりの、クリスマスイヴの夜は明けて。
ふと目が覚めたボクは、上体だけをゆっくりとベッドの上で起こし、隣で幸せそうに眠っているソイツの寝顔をチラリと見た後、閉じられたカーテンの隙間から、そっと覗き見る。
「……あ……雪……」
白一面の空から、白い衣を纏った天使達が、ゆっくり、そして優雅に舞いながら、地上へと幾重にも重なって降りてくる。
「……ホワイトクリスマス、か……」
結局、何時もの不幸が訪れる事も無く、それどころか、神様はボクに、素晴らしいプレゼントを下された。
「……コイツと一緒なら、もう、何が来ても怖くない、かも……フフ」
ツン、と。未だに夢の中に居て、子供みたいなあどけない寝顔をしているソイツの頬を、指で軽くつつく。
「……来年もまた、こうして一緒に、聖なる夜を、過ごして頂戴よ、ね……?」
それだけ呟いてから、ボクはそっと彼の頬に唇を寄せた。
不幸体質。
それが治る日が来なくても。
コイツが傍に居さえすれば、後は何も望まない。
だからボクは、夢の中でこう願う。
神様どうか、ボクをずっと、コイツの傍に居させてください、と。
全ての想いを一身に込めて、この、聖なる夜の聖なる言葉と共に。
「……メリー、クリスマス……」
~エンド~
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同人恋姫祭り、その第二弾です!
いやまあ、ぶっちゃけ、クリパに詰まったんで、所要時間二時間ほどで書き上げた即興のお話ですがww
てことで、今回の紹介作品と作家さん。
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