No.350084

真・恋姫†夢想 『詠、その聖夜と願い』

狭乃 狼さん

同人恋姫祭り、その第二弾です!

いやまあ、ぶっちゃけ、クリパに詰まったんで、所要時間二時間ほどで書き上げた即興のお話ですがww

てことで、今回の紹介作品と作家さん。

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2011-12-20 19:51:00 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:14933   閲覧ユーザー数:6189

 

 不幸体質。

 

 それはもう、何時から始まったかなんて覚えていないくらい、ボクにとっては当たり前の事になっているモノ。

 

 だから、溜まりに溜まった不幸が一度に押し寄せるそんな日は、出来る限り他人との接触を避けて、一人どこかでじっと身を潜め、一日が過ぎていくのをじっと待つ。

 

 けど。

 

 よりによって、それがこんな日に来なくてもいいじゃないかと。今回ばかりはつくづく、この体質を呪った。

 

 十二月の二十四日。

 

 そう。

 

 世間はクリスマス一色で、街中カップルだらけで賑わう、特別な日。

 

 けど、ボクには一切、関係が無かった。

 

 いや、無くなってしまった。

 

 時折、ほとんど何の前触れも無く訪れる、不幸が一斉に起き出し、周りの皆に迷惑をかけてしまう日が、今日と言う日に重なってしまった以上。

 

 ボクは誰の言葉にも耳を貸さず、誰一人会う事もなく、自分の部屋にただ篭っているだけしかできない。

 

 どれだけ寂しくても。

 

 どれだけ辛くても。

 

 ただじっと。

 

 不幸が通り過ぎて行くまで、誰とも交わらずに。

 

 それが、ボクに出来る唯一つの手段だから。

 

 ……なのに。

 

 「……なんで、アンタはここにいるのよ」

 

 キッ、と。ボクはソイツの事を、眼鏡の下からわざとキツくした目を向けて、睨みつける。

 

 「……一緒に居たいから……って言うんじゃ、駄目?」

 「ッ……!!」

 

 嬉しかった。

 

 ボクの体質を知りながらも、そう言って微笑んでくれるソイツの言葉が、ボクの心を一瞬で温かくしてくれた。

 

 けど。

 

 「……フンッ。……物好きな奴よね、アンタって。……ボク以外にだって、アンタの事を待ってるのが居るでしょうに。……例えば……ゆ、月、とか」

 

 フイ、と。嬉しさで思わず紅くなった顔を見られないように、冷たい態度で心にも無い言葉を返す。ボクの大親友である月の名前をわざわざ出し、ソイツの意識を彼女に向けて、ココから立ち去らせるために。

 

 「……月は……確かに俺にとっては大切な友達だよ。……けど、今日と言う日に、俺が一緒に居たいって思うのは、君……だけだよ」

 「……不幸……降りかかっても知らないからね」

 「構わないさ。……君と、詠と一緒に居られるんなら」

 「……バカ//////」

 

 何時の間にか震えだしていたボクの肩を、ソイツはそっと抱きしめてくれて。

 

 「……詠。……メリー、クリスマス……」

 「あ……」

 

 ……そして、ボクたちはそのまま、静かに、そしてゆっくりと、互いの唇を重ねあった。

 

 

 

 そして、ソイツとボクの二人っきりの、クリスマスイヴの夜は明けて。

 

 ふと目が覚めたボクは、上体だけをゆっくりとベッドの上で起こし、隣で幸せそうに眠っているソイツの寝顔をチラリと見た後、閉じられたカーテンの隙間から、そっと覗き見る。

 

 「……あ……雪……」

 

 白一面の空から、白い衣を纏った天使達が、ゆっくり、そして優雅に舞いながら、地上へと幾重にも重なって降りてくる。

 

 「……ホワイトクリスマス、か……」

 

 結局、何時もの不幸が訪れる事も無く、それどころか、神様はボクに、素晴らしいプレゼントを下された。

 

 「……コイツと一緒なら、もう、何が来ても怖くない、かも……フフ」

 

 ツン、と。未だに夢の中に居て、子供みたいなあどけない寝顔をしているソイツの頬を、指で軽くつつく。

 

 「……来年もまた、こうして一緒に、聖なる夜を、過ごして頂戴よ、ね……?」

 

 それだけ呟いてから、ボクはそっと彼の頬に唇を寄せた。

 

 

 

 不幸体質。

 

 それが治る日が来なくても。

 

 コイツが傍に居さえすれば、後は何も望まない。

 

 だからボクは、夢の中でこう願う。

 

 神様どうか、ボクをずっと、コイツの傍に居させてください、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全ての想いを一身に込めて、この、聖なる夜の聖なる言葉と共に。

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 「……メリー、クリスマス……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~エンド~

 


 
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